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乳腺症(2006年3月8日掲載)

鎌田義彦(那覇西クリニック)

大半は心配不要 定期検診を

乳がん検診で「乳腺症」といわれたことはありませんか? 検診で精密検査を受けてくださいという通知を受け取り、どきどきしながら専門病院で検査を終え、医師に「乳腺症です」と言われたことはありませんか? この乳腺症とはなんでしょうか? がんになりやすいものでしょうか? 実は答えはそう簡単ではないのです。

最近、学者先生が集まって「乳腺症の臨床」(篠原出版一九九七年)と言う本をまとめましたがそこには、「乳腺症とは、乳房の正常からの逸脱による腫瘤あるいは硬結、乳頭分泌などを認め、しばしば疼痛を伴う臨床概念である。ただし、腫瘍性、炎症性の病変を除く」とあります。

ところが、そもそも女性の乳房には「正常な」とか「普通の」とか言うようなのはないわけで、大きかったり小さかったり、硬かったり軟らかかったりといろいろあるのです。また、月経に伴うホルモン量の変化にも反応しますし、加齢による変化、授乳や体重の増減などにも反応して変化します。そう考えると、多くの人は「乳腺症」と言われる時期があると言う事になります。実際、検診などで乳房を触った医者が「乳腺症ですね」と言うのは、左右の乳房の硬さが違うか同じ乳房でも少し硬い個所がある、という位の意味です。

超音波検査やマンモグラフィー検査などの精密検査を受けて、乳腺症と診断された場合は、乳腺に通常と少し違った何かがあると言う事になります。ただし、それはがんではないなにものかなのです。医学用語で説明しようとすると難しいので、ここは「おっぱい先生」の表現を借りますと、「騒がしいおっぱい」ということになります。騒ぎ方にもいろいろありまして、超音波やマンモグラフィーで「これは心配ありません。一年後の検診の時にまた診ましょう」と言えるものから、「半年後にもう一度確認させてください」と言うもの、「判断が難しいので、小さな針で細胞を採らせてください」となるものまであるのです。

では、乳腺症はがんになるかということですが、乳腺症と診断された百人に一人か二人の割合で、通常よりも五倍位の確率でがんになりやすい乳腺症があります。乳がんになるというのではなく、なりやすいと言うことです。おっぱい先生流だと、「ほとんどの乳腺症は大丈夫、ただ騒がしいおっぱいの中にはごく一部、少しぐれやすいのがあるので時々見ておかないといけない」と言う事になるでしょうか。一度でも乳腺症と診断された方はぜひ、定期的に検診を受けてください。