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予防接種(2006年3月1日掲載)

具志一男(ぐしこどもクリニック院長)

水痘やおたふくかぜも防ぐ

三月一日から七日までは、子ども予防接種週間です。有効な予防接種を忘れずに受けましょうという週間です。「予防接種を受けるより、病気に罹ったほうが強い抵抗力が得られるから良い」と言われる方がいます。確かに麻疹(はしか)や水痘(みずぼうそう)などは一度罹ったら二度罹ることはありませんが、麻疹では五-六日間の発熱と気管支炎や肺炎、脳炎、失明などの合併症があり、乳幼児を中心に千人から五千人に一人は死亡することがあります。

かつては、麻疹を乗り切れれば強い児だ、という意味で「命定めの病」とも呼ばれていました。麻疹に罹って強くなるのではなく、強い児だけが生き残るのです。水痘も数十年後の帯状疱疹の原因となります。風疹では、妊娠初期にかかりますと、胎児に影響があり先天性風疹症候群として、難聴や視力障害などをおこします。おたふくかぜでは髄膜炎が比較的多く、入院することもあります。片側のことが多いのですが、難治性難聴もあります。強い抵抗力を得る代わりにこれらの危険を乗り越えなければならないのです。

予防接種は、弱くしたウイルスを接種しますので、発病はしませんが、患者さんと接しても、ぎりぎり発病しない程度の弱い抵抗力が得られます。患者さんの多い病気では予防接種を受けたあとも、患者さんと接することにより、二回目、三回目の予防接種を受けたようになり強い免疫を得ることになりますが、最近の麻疹のように患者数が減った病気では、患者さんと接することがなく抵抗力が弱くなってしまい、予防できない程度になってしまうことがあります。そのために、二回目の予防接種を行う必要があるのです。しかし、病気になってつらい思いや、合併症、後遺症に悩むよりはずっと安全ですので、二回もしないと抵抗力がつかないから予防接種がよくないということはありません。

今年の四月からは、麻疹と風疹の混合ワクチンが使用され、一歳代に一回目、二-三年後からは五-六歳時に二回目の接種が行われます。しかし、これまでの麻疹と風疹のワクチンを片方しか受けていない方や二歳を過ぎる方は定期接種(無料)では受けられなくなる可能性があります。今月中に忘れずに受けましょう。おたふくかぜや水痘のワクチンも任意(有料)ですが、九割以上有効です。麻疹や風疹の予防接種の後には受けておきたいものです。