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内臓脂肪型肥満(2005年7月6日掲載)

平良朝秀(平良クリニック院長)

食事制限より運動で防止を

沖縄県民の肥満の割合は、五十歳代の男性が63%で最も高く、全国平均29%の二倍を越し、四十歳代の女性も38%で全国の二倍となっています。四十歳代と六十歳代の男性、五十歳代と六十歳代の女性でも半数を占めています。疾患別の死亡率でみても、心疾患や脳血管疾患などによる死亡率は、どの世代でも沖縄男性は全国上位で中高年の女性も心疾患などによる死亡率が高いのです。

二〇〇二年に厚生労働省が発表した県別平均寿命では、沖縄の女性は全国一位でありますが、男性は全国二十六位に急落しています。生活習慣病の増加により近い将来、沖縄は短命県になりかねないと推定されています。

肥満は身体における脂肪の蓄積量が増加した状態をいいます。肥満には原因疾患が見当たらない単純性肥満と他の基礎疾患や特殊な疾患の一症状として発現する二次性肥満とがあります。肥満のほとんどは単純性肥満であり二次性肥満は多くありません。

最近、同じ肥満でも内臓脂肪型肥満が注目されています。メタボリックシンドローム(MS)という古くて新しい考え方です。MSは内蔵型肥満が原因で肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病が複数重なり、最後は動脈硬化を引き起こす症候群ですが、心臓病や脳卒中による突然死の危険も高まります。ウエスト周囲径で男性八十五センチ以上、女性九十センチ以上。中性脂肪、血圧、善玉コレステロール、空腹時血糖の五項目で、三項目以上で異常値があった場合にMSと診断され、早期の治療が必要です。各個人の状態により異なることがありますので、かかりつけの医師とよく相談するようにしましょう。

肥満は摂取カロリーと消費カロリーのバランスによって決まります。肥満を防止、解消するには、食事を減らして摂取カロリーを少なくするか、運動を行って消費カロリーを多くするかのいずれか、あるいは両方を行うしか方法はありません。ところが、食事を制限することは栄養の面からも問題がありますので、ある程度十分に食べ、その代わり運動によって余分なカロリーを燃焼させるやり方が健康維持のためには良いと言えます。運動には軽運動を長時間にわたって行う有酸素運動と強い運動を短時間だけ行う無酸素運動の二種類があり、脂肪を燃焼させるためにはウオーキング、水泳のような有酸素運動が効果的。ダイエット食など楽して健康的および恒常的に肥満を防止する方法はないのです。各個人にあった食事療法や運動処方を主治医に相談してみてください。