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平成25年度 沖縄県総合防災訓練に参加して

名嘉栄勝

西崎病院 名嘉 栄勝

平成25 年11 月28 日沖縄県総合防災訓練と 緊急消防援助隊九州ブロック合同訓練が与那原 町(中城湾港マリンタウン)で実施されました。 今回の訓練の被害想定は与那原町東浜を震源と するマグニチュード6.5 の地震と、その地震と 連動した沖縄本島南東約150km 沖を震源とす るマグニチュード8.0 の地震による大津波が沖 縄本島南部に到達し各地に被害が発生したとい う内容でした。主な訓練内容は1)住民による避 難、初期活動訓練、2)住民・防災関係機関によ る避難所設置運営訓練、3)緊急消防援助隊、警 察、海上保安庁等による救助訓練、4)自衛隊に よる救助、被災者支援訓練、5)民間企業による ライフラインの設置訓練、6)災害時協定に基づ く物資支援、応急対策訓練、7)自衛隊航空機に よる避難民・傷病者輸送訓練、8)ヘリテレによ る現地映像伝送訓練、9)九州DMAT、医師会 による救護訓練10)陸自、九州DMAT の広域搬 送医療施設設置運営訓練(SCU)、11)ドクター ヘリによる海軍病院へ患者輸送などが行われ、 県内や九州各県から109 団体、約1,600 人が参 加した大規模な訓練でした。

私は沖縄透析医会の災害担当理事の比嘉啓先 生と一緒に、災害時における透析施設 ―医師 会―県への情報伝達訓練を行うために参加しま した。沖縄県内の透析患者数は約4,500 名で、 透析患者は4 日以上透析を受けることができな いと尿毒症に陥り生命の危険が迫ります。その ため広域大規模災害時にはどこで透析が行える か情報が不可欠となります。沖縄透析医会では 沖縄県内の透析施設への様々な透析療法の医療 安全対策、災害対策、感染対策などの情報提供 や研修会の開催を行っています。今回の防災訓 練では午前9 時災害発生時に県内各透析施設に対して日本透析医会のホームページにある『災 害時情報ネットワーク』への被害状況および応 援要請の書き込みを依頼し集計を行った後、そ れを県医師会へ報告し患者輸送の応援を依頼す るという伝達訓練を行いました。

その後10 時過ぎに災害医療委員会委員長の出 口宝先生に連れられて東浜マリンタウンの本会 場の訓練見学に向かいました。あいにく曇りと 時折小雨の天気で、地面がぬかるんでいる状態 でしたが会場では参加者の真剣に訓練に取り組 む姿が見られました。会場ではいくつかのブロ ックに分かれて災害時の救助シミュレーション が行われヘリコプターや専用車両による搬送な ど自衛隊・消防隊・医療チームの連携の他,NTT や沖縄電力、沖縄県トラック協会、沖縄県高圧 ガス保安協会、沖縄県建設業協会などのインフ ラに関わる業種の参加も見られました。また一 般の参加者による炊き出しや土のう作りの訓練 なども行われていました。その他医療チームは 九州沖縄各県から50 チーム以上のDMAT が参 加し、沖縄県医師会からもJMAT の参加があり ました。県医師会の災害対策本部では県医師会 理事の玉井先生が衛星電話や携帯電話を使って 各所から連絡を受け、それをホワイトボードに 逐一書き込み、それを他部署への連絡・調整す るなど忙しくされており、JMAT は設置された 救護所で救急搬送された患者さんのトリアージ や救命・救護活動、検視を行っていました。

今回の訓練参加と準備で最も強く感じたこ とは「広域大規模災害時の組織力」「情報伝達 の難しさ」「平時の防災訓練の必要性」でした。 大規模災害時には行政機関や自衛隊をはじめ多 くの団体・業種と連携が必要です。今回の訓練 にも多数の団体が参加しており、それぞれとの連携は指揮系統・本部の所在がはっきりしてい ないととてもまとめきれるものではありませ ん。また透析医会における情報伝達訓練ではノ ートPC やタブレット端末からインターネット への接続、スマホや携帯電話でメールを活用し ようとしましたが、うまく通信出来なかったり メール送信先からの返信が遅いなどの事前の打 ち合わせが不十分だったことがありました。ま た伝達手段の一つである衛星電話もなかなかス ムーズに繋がらない場面もありました。人命救 助を迅速に行うには多くの団体をまとめる「災 害時の組織・本部」が速やかに立ち上がり、「正 確な情報を早く伝達」することの難しさ、重要 さをこの訓練の中で強く感じました。しかし日 本透析医会災害時透析医療対策部会員の赤塚東司雄先生が講演会で「人は、いざというとき(災 害時)には普段行っていないこと(手技・対応) をやろうとしてもまずできせん」とお話されて いましたが、災害発生時にマニュアル通りにな んでもやれるものではありません。平時に繰り 返し訓練をしなければ出来ません。災害発生時 に出来ることを一つでも増やすには医師会・会 員が総合防災訓練に積極的に参加(参加方法は 現場参加以外にも伝達訓練などもあります)し、 災害に対する危機意識を引き上げ、平時より行 政・地域の関係団体と連携をしていくことが必 要だと思います。出口先生も「災害に備えて平 常時から各関係機関との顔が見える関係を作っ ておくことが大切」とおっしゃって言いました。 皆さん次回の防災訓練ぜひご参加を。