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平成25年度 沖縄県総合防災訓練

出口宝

災害医療委員会 委員長 出口 宝

はじめに

平成25 年11 月28 日(木)に平成25 年度 の沖縄県総合防災訓練が南部圏域市町村(4 市 4 町6 村)で開催されました。今年度は緊急消 防援助隊九州ブロック合同訓練との合同訓練 となり、主会場となった中城港湾マリンタウ ンには県内約80 機関に加えて九州各県から緊 急消防援助隊ならびにDMAT が集結して、約 1,600 名が参加する大規模な訓練となりまし た。当初予定されていた海上自衛隊おおすみ 型ヘリ搭載輸送艦や輸送用エアクッション艇 LCAC の参加はフィリピン台風被害における 国際緊急援助活動のためにキャンセルとなり ましたが、多くのヘリコプターに加えてUS-2 救難飛行艇が参加するなど大掛かりな訓練と なりました。

本会からは26 名が参加して、県災害対策 本部医療調整斑への参画と本会対策本部訓練、 JMAT 訓練、HOT 緊急対策会議訓練を行いま した(Fig.1)。さらに南部地区医師会災害対策 本部や透析医会との連携訓練を行いました。

Fig.1

Fig.1 訓練参加者

1. 訓練目的

【沖縄県総合防災訓練】災害対策基本法第48 条 及び沖縄県地域防災計画並びに市町村地域防災 計画に基づき、大規模地震等による各種災害の 発生を想定し、防災関係機関及び地域住民等の 参加のもと、総合的に実施することにより、災 害発生時における防災機関の連携・対応状況を 検証・確認するとともに、広く県民の防災意識 の高揚を図ることを目的とする(原文)。

【救急医療調整斑】沖縄県本島南東部において 地震等の大規模災害を想定し、緊急消防援助隊 の迅速出動、応援要請訓練、部隊集結訓練、部 隊移動訓練、野営訓練及び実践的な部隊運用訓 練等を、実施するとともに県内外DMAT を含 む各医療機関との連携を図る。今回の訓練は、 島嶼県という地理的条件を踏まえ、九州各県開 催時とは異なることを確認しながら、訓練を通 して九州各県緊急消防援助隊の効率的な部隊移 動及び部隊運用を図るとともに、緊急消防援助 隊の使命を自覚し、各医療機関を含む関係機関 との一致団結した連携活動を確立することを目 的とする(原文)。

【本会】沖縄県医師災害会対策本部を立ち上げ て南部地区医師会災害対策本部と情報収集等の 初動訓練を実施、県災害対策本部医療調整斑へ 参画して連携を図り、JMAT 初動訓練(参集・ 装備・出動・現地行動)を実施するとともに、 災害時要支援者対策として透析医会との連携な らびにHOT 緊急対策会議を招集し訓練を実施 して各々の連携・対応状況を検証する。

2. 訓 練

災害想定は与那原町東浜を震源とするM6.5 の地震が発生、この地震と連動して沖縄本島南 東約150km 沖を震源としたM8.0 の地震が発生。 この地震により沖縄県沿岸全域に大津波注意報 が発令され、大津波が沖縄本島南部に到達し、 各地で被害が発生とするものでした。

緊急消防援助隊九州ブロック合同訓練と DMAT 訓練は平成25 年11 月26 日から開始さ れており、28 日(木)が沖縄県総合防災訓練 との合同訓練となりました。

災害医療委員会では5 月から2 回の沖縄県 総合防災訓練全体会議ならびに4 回の医療部会 会議に出席して県ならびに関係機関と本会の訓 練計画に関する調整を行いました。そして、南 部地区医師会への説明ならびに打ち合わせ、与 那原町ならびに東部消防との調整、訓練参加 JMAT の編成を行い28 日の実動訓練となりま した。

本会災害対策本部は南部地区医師会ならびにHOT 緊急対策会議と透析医会との訓練の関係 上で南部地区医師会館に訓練場所を移動しての 開始となりました。発災後を想定した9 時に災 害対策本部を立ち上げて情報収集しJMAT を 招集して(見なし)、9 時30 分に南部地区医師 会からのJMAT 派遣要請を受けてJMAT を出 動しました。さらに南部地区医師会からの会員 被災状況の情報を受けて県医療調整斑と連携 し、要救援と判断された病院への対応訓練を行 いました。さらにHOT 緊急対策会議、透析医会、 JMAT からの支援要請に対して県医療調整斑と 連携調整して対応に当たりました。

JMAT は8 時に県医師会館に集合してブリー フィングを行い、装備を準備して待機、9 時30 分に出動要請を受けて出発、主会場に到着後は 現場対策本部と調整、救護所の設置を行いまし た。続いて搬入されてくる傷病者対応訓練を行 いました。傷病者役の模擬患者が救護所に搬入 され、記録からトリアージなどの一連の対応を 行いました(Fig.2)。また、救護所での対応が 不可能な患者が発生するシナリオが用意されて おり、後方医療機関への搬送が必要と判断した 後の対応として衛星電話を使って本会対策本部 へ連絡、そして本会から県医療調整斑調整へと 要請を行いました。なお、患者想定は全てブラ インドで用意しておいたため、JMAT は当日現 場で対応が迫られるという実践的な訓練となりました。

Fig.2

Fig.2 救護所で活動するJMAT

県医療調整斑には、県庁医務課担当者、 DMAT 関係者、消防関係者、赤十字社沖縄支 部関係者らに加えて、本会から玉井理事と業務一課職員一名が参画しました。ここで救急・医 療に関する各方面からの情報収集を行い、要請 の調整を行っていました。本会災害対策本部か ら上げる情報ならびに要請もここで対応され、 救援を要請した施設へDMAT の派遣が行われ ました(Fig.3)。

Fig.3

Fig.3 県災害対策本部医療調整斑

HOT 緊急対策会議は9 時に県内HOT 取扱 業者6 社(ITI、オカノ、小池メディカル、帝 人在宅医療、南西医療器、フクダライフテック) の担当者と災害医療委員会の担当が南部地区 医師会館に参集しました。そして、被害想定シ ナリオを前提に図上訓練を行いました。各社が 各々の利用者への個別連絡による情報収集(見 なし)、各社の対応能力を検討しました。その 結果、業者対応能力をはるかに越えており、大 規模災害や長期停電時に酸素取扱業者としての 専門性からどのような対応が良いのか検討し、 必要な支援要請を県医療調整斑へ行いました(Fig.4)。

Fig.4

Fig.4 HOT 緊急対策会議( 南部地区医師会館にて)

南部地区医師会は8 時30 分に関係者が南 部地区医師会館へ集合、9 時から名嘉会長を 本部長として災害対策本部を立ち上げました (Fig.5)。詳細は南部地区医師会からの報告(P94)をご覧下さい。

Fig.5

Fig.5 南部地区医師会災害対策本部

透析医会は南部地区医師会館へ集合して、 9 時から日本透析医会災害時情報ネットワー クにログインをして各施設の被害状況ならび に対応可能情報の収集活動を開始しました (Fig.6)。詳細は透析医会からの報告(P96)をご覧下さい。

Fig.6

Fig.6 透析医会訓練( 南部地区医師会館にて

主会場ではヘリコプターによる孤立者救出や 崩落現場からの救出訓練などが行われ(Fig.7)、 その様子は一般市民や招待者用の見学席テント に設置された大型モニターに映し出されていま した。会場にはこれらの様子を解説するアナウ ンスが流れていました。12 時に全ての予定さ れた訓練が終了となり、参加団体が整列して閉 会式となりました(Fig.8,9)。

Fig.7

Fig.7 崩落事故現場からの救出訓練

Fig.8

Fig.8 閉会式

Fig.9

Fig.9 本会参加者

3. 考 察

今年度の訓練について、まず全体的に感じた ことは緊急消防援助隊九州ブロック合同訓練 との合同開催ということもあってでしょうか、 様々な災害現場ケースでの救出と搬送という切 り出し場面の訓練に重きがおかれた印象が強い 訓練となりました。

災害に備えるには事前の周到な計画とシミュ レーションを行い、問題点を洗い出して改善し、 繰り返し訓練を行って災害時に関係者が円滑に 動けるようにしておくことが重要です。現実に 大規模災害が発生した場合は、県災害対策本部 とその下に合同本部調整会議が設置されて各防 災機関が参集する事になります。そして、各々 の能力を活かし、補完し、優先順位を決めて限 られた資源を必要なところに投入することが求 められます。そのためには各機関の間での情報の共有が必要です。この言葉はよく耳にします が、それが出来るためには各機関の間での用語 の統一や情報処理方法の統一化など情報処理 の標準化が必要です。また、人間の身体に例え るならば頭が災害対策本部と合同本部調整会議 であり手足が現場対処となるでしょう。様々な 情報を頭が処理をして指示を出さなければ、目 的に対して適切に手足を動かす事は出来ませ ん。このためにも頭の訓練である県対策本部と 合同本部調整会議の訓練を繰り返し行うことが必要です。

救急医療部門では、今回の訓練で県医療調整 斑が設置され、本会からも担当理事と業務一課 職員が参加しました。以前から本会では災害 対策本部への参加を強く要望してきましたが、 それが今回の医療調整班への参加という形に なりました。本会災害対策本部や地区医師会、 そして透析医会やHOT 緊急対策会議ならびに JMAT も県医療調整斑と連携して対応を図る訓 練をすることが出来ました。そして、これらを 通していくつもの課題も見えてきました。今後 は沖縄県総合防災訓練とは別に県医療調整斑に おける統括指揮訓練(図上)をしていく事も必 要ではないかと考えています。

おわりに

沖縄県総合防災訓練は県内防災関係機関が一 同に集まる貴重な機会です。後に県から本訓練 の成果と課題等の評価が出されると思います が、今後はより現実的なシミュレーションとし て、県災害対策本部と合同本部調整会議ならび に現地災害対策本部が設置されて関係機関が連 携して対処にあたる頭と手足の訓練が実施され ることを期待しています。