浦添総合病院 手術部長兼麻酔科部長
島袋 勉
「輸血」は、それを必要とする患者さんにと っては、命を左右するとても重要な治療法です。 私も、平成3 年に麻酔科医師となって以来、手 術室での外科手術中の突発的な大量出血に遭遇 したことが幾度となくありました。そのたびに、 さーっと血の気が引くという言葉通りの思いを しつつ、輸血によって、何度も何度も救われま した。時には、県内の在庫が底をつき、県外か ら大至急空輸にて取り寄せるということもあり ました。また、出血傾向が強くて、なかなか、 止血ができないというような患者さんに、新鮮 凍結血漿(FFP)や、血小板製剤(PLT)を 投与することによって、出血が止まったという ことも目の当たりにしました。
輸血のありがたさを日々、実感しているもの として、「安全な血液製剤の安定供給の確保」 を推進するということは、とても大切なことだ と思います。しかしながら、沖縄県の献血者数 の年度推移をみると、偶然かもしれませんが、 バブルが弾けるのと軌を一にして、平成2 年の 8 万人をピークに献血者が減り続け、平成24 年には、約5 万8 千人/ 年まで減少しています。 年代別では、20 代、10 代の献血者が激減して います(20 代:2 万5 千人→ 1 万3 千人/ 年。 10 代:1 万7 千人→ 4 千人/ 年)。逆に、血液 製剤の需要は、毎年増加傾向(平成2 年:13万単位→平成24 年:22 万単位/ 年)で、需要 と供給のバランスが崩れており、なんとかしな くてはなりません。
そういう状況もあり、厚生労働省・各都道府 県・日本赤十字社が主催となって、献血者が減 少する冬期の輸血用血液の確保のために、毎年 1 月1 日から2 月末日までの2 か月間、「はた ちの献血」キャンペーンとして、新たに成人式 を迎える「はたち」の若者を中心に、広く国民 各層に献血に関する理解と協力を求め、特に成 分献血、400ml 献血を中心に実施しています。
輸血療法に直接的にしろ、間接的にしろ、携 わる可能性のある私たち医療従事者も、当県が 抱える問題点を熟知して、日頃の診療のなかで、 輸血のありがたさ、献血行為の尊さと、献血者 が毎年減少して、輸血の安定供給が危機的状況 にあるという現状を、患者さんや、そのご家族、 そして、多くの県民の皆様にお伝えしていこう という積極的な行動が求められているのではな いでしょうか。
アベノミクスによって、デフレから脱却し、 経済が上向きになるのと軌を一にして、献血者 が毎年増えて、沖縄県の輸血医療に、明るい未 来が開けていくことを祈念いたしたいと思います。