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第57回 九州ブロック学校保健・学校医大会
平成25年度 九州学校検診協議会(年次大会)
「健やかな子どもの未来 ―子どもたちとの絆を求めて―」

宮里善次

常任理事 宮里 善次

去る8 月4 日(日)、ANA クラウンプラザホテル沖縄ハーバービューにおいて開催された「第57 回九州ブロック学校保健・学校医大会並びに平成25 年度九州学校検診協議会」 について、以下のと おり報告する。

また8 月3 日(土)は、関連の諸会議として平成25 年度九州学校検診協議会第1 回専門委員会、 平成25 年度九州学校検診協議会幹事会、九州各県医師会学校保健担当理事者会が開催されたので併 せて報告する。

< 1 日目:平成25 年8 月3 日(土)>

T.「平成25 年度九州学校検診協議会第1回専門委員会」

1. 各専門委員会別協議会

1)心臓部門

座長:吉永正夫先生(鹿児島県)

報告1)九州各県における学校管理下の心臓性突然死(平成24 年度)について(福岡県)

<提案理由>

継続調査中、九州各県での状況について報告する。

<報告内容>

平成24 年4 月1 日から平成25 年3 月31 日 の期間において、学校における心臓性突然死が 長崎県と福岡県で合計3 件発生したとの報告が あった。

提案1)学校心臓検診二次検診対象者抽出基準について(大分県)

<提案理由>

大分県の心臓検診の三分の二を行っている学 校心臓検診委員会では、二次検診対象者の抽出 が課題となっている。一次検診では、医師によ る心電図の判読を行い、抽出された心電図と調 査票の情報を参考にして他の医師が判定して二 次検診へ送るシステムである。昨年度までは二 次検診への判断基準は緩く、医師も充足してい たために見落としのない様に広く対象者を拾え る状況にあった。

しかし、今年度は二次検診に従事する医師が 大幅に減少したために二次検診対象者を絞り込 む必要が生じた。スクリーニングの精度を落と すことなく、二次検診対象者を減らすためには 判定医が共有できる診断基準の確立が必要で、 検診の効率化にもなる。

各県において、二次検診、精密検査に回すた めの判定基準や判定方法をお知らせいただきた い。また、これも統一診断名と同じ様に共通の 二次検診への抽出基準を作ることが必要ではな いかと思う。

各県の意見をお伺いしたい。

<協議内容>

佐賀県では、心電図判定基準、調査票で概ね 15 点以上の生徒、学校医より心雑音等を指摘さ れた生徒を二次検診にあげているとのことであ った。また、宮崎では、小児科と循環器の医師 20 名数名でダブルチェックを行っており、ある 程度の基準を設けているため医師による判定の バラツキはないと思われる等の意見があった。

提案2)「児童生徒に心肺蘇生事例調査票概要」と「児童生徒の心肺蘇生事例調査票」の改訂に伴う、報告について(鹿児島県)

<提案理由>

昨年11 月17 日に開催された九州学校検診 協議会の第2 回専門委員会で改訂することとな り、検診協議会から九州各県医師会長あてに依 頼文のあった件について報告をお願いしたい。

<協議内容>

提案5)で一括協議とする。

提案3)心臓検診時の統一病名について(鹿児島)

<提案理由>

昨年11 月17 日に開催された九州学校検診 協議会の第2 回専門委員会で検診協議会から九 州各県医師会長あてに周知文があった件につい て報告をお願いしたい。

<協議内容>

各県から、平成24 年度の学校心臓検診の集 計結果が報告された。

提案4)成人期に達した先天性心疾患の診療形態について(沖縄県)

<提案理由>

成人期に達した先天性心疾患の診療形態が問 題となっているが、九州各県において小児科か ら内科への移行をどのように行っているか、各 県の状況をお伺いしたい。

<協議内容>

各県の状況について報告があった。福岡県で は、18 歳以上は内科に移行しており、シンプ ルな疾患は循環器へ、複雑な疾患は循環器内科・ 心臓外科の合わさった心臓病専門施設を紹介し ているとのことであった。

提案5)児童生徒の心肺蘇生事例調査の検証及び今後の対応について(福岡県)

<提案理由>

現在、実施している「児童生徒の心肺蘇生事 例調査」について、消防・学校より報告が得ら れている。その結果を有効活用し、心臓検診並 びに現場(学校・家庭・救急など)に反映できるように努める必要がある。

<協議内容>

次回委員会では、心肺蘇生事例調査について、 対象年齢を小学生から高校生ではなく、0 歳か ら20 歳までとし、集計期間を1 月〜 12 月ま でとする。消防・学校等に1 月・2 月に調査を 依頼し、4 月までに返答をもらい報告する形を 検討することとした。

2)腎臓部門

座長:服部 新三郎(熊本県)

提案1)九州学校腎臓病検診マニュアル:「正しい尿のとり方」に注意事項を加えることに関して(長崎)

<提案理由>

尿検体の中に、ほとんど「水」ではないかと 思われるものが散見する。意図的に水を混入し ている場合もあろうが、水洗トイレの水溜りに 排尿し、そこからスポイトで採取しているので はないかと考えられる。「直接コップに採尿す る」ことを注意書きに加えてはどうか。

<協議内容>

注意書きの追記について承認され、次回マニ ュアル改訂の際に反映することとなった。

提案2)九州学校腎臓病検診マニュアルの運用要項の作成(宮崎県)

<提案理由>

九州学校腎臓病検診マニュアルを利用した検 診や、検診結果の集計が行われるようになり九 州システムとして定着してきている、マニュア ルの運用について習慣的に毎年行っていること を文章にまとめることによりマニュアル利用し やすくなると考えられる。

<協議内容>

宮崎県よりマニュアル運用要項案が提案され 協議の結果、次のとおり承認された。

1)マニュアル作成は九州学校検診協議会腎 臓専門委員会が行う。腎臓専門委員会はマニ ュアルの作成委員を選出し作成するが、作成 や改訂は委員会の承認が必要である。

2)マニュアルの診断名、診断基準の統一性 を保つため、毎年4 月に各県医師会は各郡市 医師会の腎臓検診担当理事に九州学校腎臓病 検診マニュアルを送り、マニュアルの基準に ついて診断するように通知を行う。

3)検診結果を集計するため、各県医師会は 各郡市医師会に毎年4 月に集計表を送り、翌 年3 月までに集計表を回収して集計する。

 前年度の集計結果は、各県医師会がまとめ て翌年6 月までに集計担当の腎臓専門委員に 送る。集計担当の腎臓専門委員は、九州全体 の集計結果を8 月の九州学校検診協議会の腎 臓専門委員会にて発表する。

4)学校検尿の毎年の集計結果の管理、保存 は福岡メディカルセンターが行う。

5)学校検尿システムやマニュアルの利用に 関するアンケート調査を、適宜各郡市医師会 に対して行う。

なお、マニュアルは必要に応じて改訂するとの申し合わせがあった。

提案3)九州学校腎臓病検診マニュアル(九州マニュアル)の次改訂について(鹿児島県)

<提案理由>

日本学校保健会は昨年の「学校検尿のすべて 平成23 年度版」に次いで、 「学校検尿のしおり」も本年3 月に改訂した。両者ともに全国の 学や、腎臓検診の中で、最もよく使用される出 版物である。九州マニュアルの次なる改訂はこ れらとの整合性も検討すべきかと考えるが、い かがか。各県の意見をお伺いしたい。

<協議内容>

「学校検尿のすべて」及び「学校検尿のしおり」 と九州学校腎臓病検診マニュアルの診断名と判 定基準について整合性は必要であるとされ、九 州学校腎臓病検診マニュアルの次改訂の次期に ついては、11 月開催の第2 回専門委員会で決 めることとする。

提案4)九州での学校検尿における判定基準の統一化並びに学校検尿の開示について(熊本県)

<提案理由>

昨年、8 月に福岡市で開催された平成24 年 度第2 回専門委員会において、本事項について 九州学校検診協議会より九州各県医師会へ要望 書を提出するよう要望していた。腎臓専門委員 から九州学校検診協議会宛の文書(案)を作成 したので、ご確認いただきたい。

<協議内容>

提案された文書(案)について承認されたの で、九州学校検診協議会会長より九州各県医師 会に対して、県教育委員会等にマニュアルに沿 った判定基準の採用および検査成績の開示につ いてご要望いただく内容の文書を上位の幹事会 に提出することとなった。

提案5)九州学校腎臓病検診マニュアルの学校への配布について(福岡県)

<提案理由>

九州学校腎臓病検診マニュアルは第3 版まで に改訂された。医療関係者には普及がすすんで いるが、学校現場での養護教諭への認知は進ん でいない。そこで、テキスト版を学校に配布し、 普及をはかる方法を考えた方がよいと思うが、 各県の現状と、配布の必要性、配布するならい つがよいか等お伺いしたい。

<協議内容>

九州学校腎臓病検診マニュアルが学校現場ま で行き渡っていない等の各県の現状をもとに、 紙媒体で配布することとした。

提案6)収集データの今後の活用と存続について(福岡県)

<協議内容>

平成16 年度から九州の検査結果を行ってい るが、暫定診断名が変わると各県の差がでるた め、九州学校腎臓病検診マニュアル第4 版の診 断区分が確立されるまでは、現状の暫定診断名 で集計することが確認された。また、次期集計 担当委員の選任について、次回以降検討するこ ととなった。

3)小児生活習慣病部門

座長:田崎 考(佐賀県)

提案1)一次検診のチェック内容について(佐賀県)

<提案理由>

各学校で行われている学校検診の身体測定結 果を利用して、肥満度でプラス30%以上、マ イナス20%以下の子どもたちを二次検診対象 者としたい。

<協議内容>

肥満度でプラス30%以上、マイナス20%以 下の子どもたちを二次検診対象者とすることに ついて承認された。

提案2)二次検診について(佐賀県)

<提案理由>

養護教諭により二次検診対象者の保護者に対 し、かかりつけ医または校医へ受診するよう勧 奨してもらう。その際、九州地区として統一し た検査依頼書を作成する。検査項目については、 前回決定した項目で統一する。その結果を収集 して、九州全体としてまとめる。

<協議内容>

検査依頼書は、今年度から実施されている福 岡メディカルセンターと来年度から実施予定の 北九州市を参考にする等の意見があった。

提案3)小児生活習慣病予防健診の標準化と普及のための教育委員会への働きかけについて(佐賀県)

<提案理由>

地域によりばらつきある小児生活習慣病予防 健診の標準化や普及を図るには、教育委員会及 び学校現場の理解と協力が不可欠である。先ず は、各県の教育委員会の理解を得るため、九州 各県医師会より各県教育委員会へ働きかけ(要 望)を行ってもらいたい。内容は、前回の専門 委員会で協議いただいたものをまとめたもので すが、この後に開かれる幹事会へ提案していま すのでご了承いただきたい。

<協議内容>

教育委員会への働きを九州全体で実施することについて承認された。

提案4)平成24 年度九州地区尿糖陽性者群集計結果の纏めについて(佐賀県)

<提案理由>

平成24 年度の尿糖陽性者群調査結果につい て、例年の小・中学校と併せて追加集計した高 校の集計について報告する。

<協議内容>

腎臓部門との調整の必要があるが、検査セン ターへの調査を行い11 月に最終的にまとめる こととする。

糖尿病の発生率は、T型が女子に多く、U型 では80%以上が肥満の男子に多いため、今後 の学校生活を考えなければならない等の意見があった。

提案5)学校検診における生活習慣病のスクリーニングにおける採血の重要性について(大分)

<提案理由>

大分市は、小学校5 年生に生活習慣病のス クリーニングの血液検査を実施しており、平 成3 年〜 21 年(18 年間)対象児童94,268 人、 受診者84,924 人の検討において、生活習慣病 検診では、肥満に関わらず、治療を要する高 Chol 血症、高TG 血症が発見されている。こ れらの体質により高脂血症は、採血せねば発見 できないため、肥満度をもとにしたスクリーニ ングには限界があると考える。

<協議内容>

肥満度に関わらず脂質異常が発見されている ことから、肥満度だけで対象者を決めることに ついて危惧する等の意見があった。

U. 平成25 年度九州学校検診協議会幹事会

九州医師会連合会の宮城信雄会長、九州学校 検診協議会の松田峻一良会長より挨拶があった 後、福岡県医師会の原口宏之常任理事より、「平 成24 年度九州学校検診協議会の事業報告並び に決算」、「平成25 年度九州学校検診協議会の 事業計画並びに予算(案)について」の報告があり、特に異議なく承認された。

その後、平成25 年度(第30 回)九州学校 検診協議会第1 回専門委員会について、各専門 委員会における座長より報告があった。

また、小児生活習慣病専門委員会座長の田崎 考委員より、「小児生活習慣病予防健診に対す る九州全体としての取り組み」として、九州各 県医師会より各県教育委員会へ要望活動を行っ て欲しいとの提案があり、まずは、本協議会の 総論を作成し、九州各県医師会に対して県教育 委員会等への働きかけを依頼することとした。

その他の提案としては、腎臓専門委員会座長 の服部新三郎委員より「九州での学校検尿にお ける判定基準の「+」での統一化並びに学校検 尿成績の開示」について、九州各県医師会より 各県教育委員会等の関連機関へ働きかけを行う よう提案があり、提案どおり、本協議会名にて 九州各県医師会へ働きかけを行うこととなった。

V . 九州各県医師会学校保健担当理事
(日本医師会学校保健担当理事との懇談会)

開催県である沖縄県医師会の宮城信雄会長、 日本医師会の道永麻里常任理事より挨拶があっ た後、(1)文部科学省委託事業の「学校保健課 題解決支援事業」(都道府県教育委員会等へ委 託)を活用した、九州各県医師会の取り組みに ついて、(2)学校現場におけるエピペン注射の 実施について協議が行われた。概要は以下のとおり。

(1)文部科学省委託事業の「学校保健課題解決 支援事業」(都道府県教育委員会等へ委託)を活用した、九州各県医師会の取り組みについて(鹿児島県)

<提案理由>

文部科学省では、平成25 年度概算要求主要 事項で、「学校保健課題解決支援事業」を都道 府県教育委員会等の委託事業として取り上げている。

この事業内容は、児童生徒の現代的健康課題 に対応するため、地域の実情を踏まえた医療機 関等の連携など課題解決に向けた計画の策定、それに基づく具体的な取り組みに対する支援を 行うとともに、その結果等について全国的な発 信を行うとなっている。

「新型インフルエンザや麻しん・風しん等の 各種感染症や、ぜん息、アトピー性皮膚炎等の アレルギー疾患、メンタルヘルスなどの児童生 徒の現代的健康課題が多様化・深刻化の傾向に あり、これらに適切に対応するため学校保健の 取り組みを推進する。」と明記されている。

例えば、群馬県教育委員会と群馬県医師会で は、この事業を活用し、アレルギー疾患対策を 行っているところであり、鹿児島県においても この事業を活用し、アレルギー対策等に取り組 みたいと考えている。

ついては、九州各県における本事業の取り組 みについて、お聞かせいただきたい。また、日 本医師会においては、全国の取り組みの状況を 把握していればご教示いただきたい。

<各県回答>

九州各県において、本事業を活用したアレル ギー対策等の取り組みについては、長崎県と大 分県において本年度の検討が行われている旨の 回答があった。

<日本医師会 道永麻里常任理事>

文部科学省では、「学校保健課題解決支援事 業」は、都道府県医師会の協力がなければ効果 のある事業は実施できないとされている、今年 度の事業実施にあたっては、都道府県教育委員 会と都道府県医師会との連携を強化したうえで 実施いただくよう、日本医師会より、先日申し 入れを行ったところである。都道府県医師会に おいては、都道府県教育委員会への本事業実施 について確認を行っていただき、学校現場にあ った事業実施のため、医師会が協力できること については、積極的にご対応いただくようお願いしたい。

(2)学校現場におけるエピペン注射の実施について(沖縄県)

「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガ イドライン」において、アナフィラキシーショ ックを起こし自らエピペン注射をできない児童に対し、本人に代わって現場の学校教諭が注射 することが認められている。しかしながら、学 校現場における教職員からは「注射をするのは 怖い」、「どう使っていいのかわからない」、「負 担になる」等の戸惑う声も多く挙がっている。

このような現状を鑑み、沖縄県においては、 来る11 月22 日(金)日本学校保健会及びフ ァイザー株式会社が主催となり、学校関係者等 を対象とし、食物アレルギーの基礎知識及び緊 急時の対応、エピペンの取り扱い等についての 研修会を開催することが決定している。

ついは、九州各県におけるエピペンの取り扱 い等に係る状況についてご教示いただきたい。

<各県回答>

各県より研修会の実施状況等について回答があった。

<日本医師会 道永麻里常任理事>

今年5 月に文部科学省が設置した「学校給食 における食物アレルギー対応に関する調査研究 協力者会議」の中間報告によると、「学校のア レルギー疾患に対する取り組みガイドライン」 が策定され、5 年が経過していることを踏まえ、 学校現場での対応指針に、エピペンの投与基準 や、新たな医学的知見を加えた内容の改訂が求 められている。このほか、医療・消防などの関 係機関との連携強化が求められており、この件 については、事前に文部科学省より日本医師会 へ要望をいただいており、アレルギーを持つ子 どもの全国的な増加を踏まえ、今後、先生方と ご相談しながら協力・連携を図りたい。

また、相継ぐ給食での食物アレルギー事故発 生の原因においては、給食の提供者あるいは教 職員の責任部分が多く占めており、早急なアレ ルギー対策が求められている。地域の実情に応 じた研修会や、マニュアルの改訂を行う場合に は、「学校保健課題解決支援事業」を用いるこ とも有効であるので、検討いただきたい。

<中央情勢について>

日本医師会の道永麻里常任理事より、中央情 勢について以下のとおり報告があった。

日本医師会からも委員として参画している文部科学省の「今後の健康診断の在り方等に関す る検討会」では、3 月までに、健康診断の目的、 事後措置の位置づけ、健康教育、PDCA サイ クルの考え方等の学校検診の基盤に関わる事柄 について考え方の整理を行い、4 月以降、具体 的な検討に着手していると述べられた。

日本医師会の学校保健委員会では、横倉会長 より、「これからの学校検診と健康教育」との 諮問を受け、アレルギーやメンタルヘルスなど 重要事項についても検討を加え、5 月には中間 答申をまとめ提出していると報告された。

< 2 日目:平成25 年8 月4 日(日)>

W . 第57 回九州ブロック学校保健・学校医
大会並びに平成25 年度九州学校検診協議会

1. 平成25 年度九州学校検診協議会(年次大会)(09:00 〜 11:30)

午前9 時より「平成25 年度九州学校検診協議会」が開催された。

平成25 年度九州学校検診協議会では、心臓 部門、腎臓部門、小児生活習慣病部門の3 部門 による教育講演が行われた。

<心臓部門>

沖縄県立南部医療センター・こども医療セン ター小児循環器科副部長の高橋一浩先生より 「学校検診におけるQT 延長症候群」と題した 講演が行われた。

学校検診のなかで、主に心電図所見のなか のQT 時間により診断されることが多いことか ら、学校検診に関するQT 延長の心電図診断に 絞って解説された。

<腎臓部門>

琉球大学大学院医学研究科循環器・腎臓・神 経内科学講座講師の古波蔵健太郎先生より「検 尿のみかた・考え方―CKD ビジュアルシンキ ング―」と題した講演が行われた。

腎疾患の診療において知っておくべき重要な 点は、一般的に腎機能が低下してからでは、治療介入の余地に乏しく手遅れであることが多い とし、原則的に無自覚、無症状の学童や学生を 対象とする学校検診は、腎障害が進行し透析導 入に至る可能性がある疾患の早期発見において 最も重要な役割を果たしえると講演された。

<小児生活習慣病部門>

信州大学医学部保健学科教授の本郷実先生よ り「“信州発” 青少年の健康教育プログラムの 開発について」と題し講演が行われた。

1992 〜 2002 年に長野県内で発症した若年者 (20 〜 40 歳)の急性心筋梗塞、狭心症患者に ついて解析した結果、若年発症の最も重要な因 子は肥満、特に18 歳未満の小児期肥満で、夏 季の発症頻度が高率かつ日常運動習慣の欠如や 喫煙との関連が強いことを明らかにし、これを 受け2005 年4 月より信州大学医学部を拠点に 長野県内で「青少年の生活習慣病予防医療の新 たな地域連携型研究・教育システムの構築、研 究拠点形成」研究プロジェクトを展開している ことについて講演された。また、生活習慣病を 「世代を超えた現代の国民病」として捉え、特に、 次世代を担う青少年の生活習慣病予防に対する 学校・家族・地域社会・医療機関・行政・研究 機関が一体化した取り組みが、今こそ望まれる と述べられた。

2. 第57 回九州ブロック学校保健・学校医大会分科会 (09:00 〜 11:30)

平成25 年度九州学校検診協議会と並行して 「第57 回九州ブロック学校保健・学校医大会分 科会」が開催された。

分科会では、眼科部門、耳鼻咽喉科部門、運 動器部門による講演が行われた。

<眼科部門>

「日本人の失明の原因・沖縄の失明の原因」 及び「緑内障疫学調査」をテーマに、琉球大学 医学部高次機能医科学講座視覚機能制御学分野 教授の澤口昭一先生より講演が行われた。

<耳鼻咽喉科部門>

「検診からみた耳鼻咽喉科疾患の変遷」をテ ーマに琉球大学大学院医学研究科耳鼻咽喉・頭 頸部外科学講座教授の鈴木幹男先生より、「きこえと遺伝子」をテーマに琉球大学大学院医学 研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座助教の我那 覇章先生により、それぞれ講演が行われた。

<運動器部門>

「学校での骨折をどう防ぐか」をテーマに沖 縄赤十字病院整形外科第一部長の大湾一郎先生 より、「学校運動器検診について〜発育期のス ポーツ傷害予防〜」をテーマに沖縄リハビリテ ーションセンター病院整形外科部長の大嶺啓先 生より、それぞれ講演が行われた。

3. 九州医師会連合会学校医会評議委員会 (11:30 〜 12:30)

○報告

福岡県医師会より以下の1)、2)の事項につい て、沖縄県医師会より3)の事項について、それ ぞれ報告があった。

  • 1)平成24 年度九州医師会連合会学校医会事業について
  • 2)平成24 年度九州医師会連合会学校医会歳入歳出決算について
  • 3)平成25 年度九州医師会連合会学校医会事業経過について

○議事

沖縄県医師会より以下の議事について説明が あり協議が行われた。

  • 1)第1 号議案:平成25 年度九州医師会連合 会学校医会事業計画に関する件
  • 2)第2 号議案:平成25 年度九州医師会連合 会学校医会負担金並びに歳入歳出予算に関 する件
  • 3)第3 号議案:第58 回・第59 回九州ブロ ック学校保健・学校医大会開催担当県に関する件

協議の結果、特に異議なく承認された。また、 次年度担当県の宮崎県医師会の稲倉正孝会長よ り挨拶があり、来る平成26 年8 月2(土)及 び3 日(日)に宮崎市の宮崎観光ホテルにおい て開催予定であることが報告された。

4. 九州医師会連合会学校医会総会 (12:30 〜 13:00)

「九州医師会連合会学校医会総会」が開催され、 沖縄県医師会の宮城信雄会長の開催県挨拶の後、 日本医師会の横倉義武会長、沖縄県知事の仲井間 弘多知事(川上好久副知事代読)より、来賓祝辞 が述べられ、宮崎県医師会の稲倉正孝会長より次 回担当県としての挨拶が述べられた。

5. 九州ブロック学校保健・学校医大会 (13:10 〜 15:10)

「健やかな子どもの未来―子どもたちとの絆 を求めて―」をメインテーマに基調講演2 題が 行われた。

「防煙・喫煙教育〜何をどこまで伝えるか〜」

光潤会平間病院院長の平間敬文先生より「防 煙・喫煙教育〜何をどこまで伝えるか〜」と題 した講演が行われた。

タバコとの戦いは「タバコビジネスから得られる莫大な収入とこれに関わる人々の堪えられ ない旨み」による政治・経済的圧力と、薬物ニ コチンの持つ「一たんモノにした顧客は二度と 逃がさない」という迫力のある優秀な依存性の 基本的に二点あると述べ、教職医療職が喫煙習 慣をデノーマライズすべく職人として社会的責 任のもとに行動すべきと講演された。

「学校健診と発達障害への対応」

鳥取大学地域学部地域教育学科准教授の関あ ゆみ先生より「学校健診と発達障害への対応」 と題した講演が行われた。

平成20 年度6 月改正の学校保健安全法の準則 として保健指導に従事することが義務付けれた ことに触れ、おもな発達障害の頻度と特徴から 学校健診においても発達障害の児童生徒を意識 して関わる必要が高じてきていると述べられた。

また、学校体制のなかでどのように関わり方 について、かかりつけ医や学校医の積極的な参 加が求められていると講演された。

印象記

理事 宮里 善次

平成25 年8 月4 日、沖縄県医師会主催で第57 回九州ブロック学校保健・学校医大会、平成25 年度九州学校検診協議会(年次大会)がANA クラウンプラザホテル沖縄ハーバービューに於い て開催された。

九州学校検診協議会(年次大会)では、午前中に1)心臓部門、2)腎臓部門、3)小児生活習慣病 部門の三つの教育講演が行われ、九州ブロック学校保健・学校医大会では同時間帯に1)眼科部門、 2)耳鼻咽喉科、3)運動器部門が行われたが、筆者は九州学校検診協議会(年次大会)を拝聴した。

心臓部門では『学校検診におけるQT 延長症候群』と題して、沖縄県立南部医療センター・こ ども医療センター小児循環器化副部長の高橋一浩先生による講演が行われた。

心筋イオンチャンネルをコードする遺伝子変異による家族性疾患で、心筋再分極異常からQT 延長をきたし、心室性不整脈を生じて失神や突然死を起こすことが知られている。

診断は臨床症状や既往歴、家族歴と心電図に加えて、必要があれば遺伝情報で診断される。演 者は日本小児循環器学会のガイドラインを紹介しながら、心電図上におけるQT 測定を拡大コピ ー上で行う事の重要性を述べられていた。

また計測時の問題点を多々述べられたが、詳細は本文を参考にして頂きたい。

QT 時間が長い方がリスクが高く、沖縄県ではLQT3 が多いと指摘された。

本県本島における症例の多くが演者の施設に集まっていることもあり、近い将来沖縄県からま とまった症例数の画期的な論文が発表される予感を感じた講演会であった。

腎臓部門では『検尿のみかた、考え方 -CKD ビジュアルシンキングー』のタイトルで、琉球 大学大学院医学研究科循環器・腎臓・神経内科学講座の古波蔵健太郎先生による講演が行われた。

最初に腎疾患の治療では腎機能低下が起きると治療介入の余地は少なくなる。腎機能低下の前 だからこそ治療効果メリットを最大にできるが、多くの場合尿検査異常を指摘されても、無症状 の場合経過観察される場合が多い。

演者は無症状期の腎機能低下を来してない時点こそ、治療介入すべきであると強調された。

進行性腎機能低下を経年的な視覚的なイメージにした「腎障害進展予測のための2 ステップメ ソッド 目の前の- 患者の腎不全リスクをビジュアル化するー」を用い、聴衆に分かりやすく解 説して頂いた。筆者はこのような経時的な内容の講演を初めて聞いたが、患者さんにとっても理 解しやすくメリットのある方法論であると感じた。実際に講演終了後に称賛の声が多く聞かれた のが印象的であった。詳細は本文を参照にして頂きたい。

最後に小児生活習慣病部門では『“信州発” 青少年の健康教育プログラムの開発について』と題 して、信州大学医学部保健学科の本郷実教授にご講演をして頂いた。

青少年の健康教育プログラムを作るきっかけになったのは、真夏の長野県で合宿を行っていた プロサッカー選手が練習中に急性心筋梗塞で急死した事であった。そこで1992 年〜 2002 年に長 野県内で発症した若年性急性心筋梗塞や狭心症を洗いなおしてみると、18 歳未満での肥満と夏季 の発症頻度が効率かつ日常運動の欠如と喫煙との関連が強い事が分かった。

その結果を受けて、県内で「青少年の生活習慣病予防医療の新たな地域連携型研究・教育シス テムの構築、研究拠点形成」研究プロジェクトを展開、3 つのモデル校でデータ収集と解析を行った。

それによると約1/3 が脂質代謝異常、空腹時高血糖、肥満、高尿酸血症、高血圧を呈しており、 それらは不規則な食生活と運動習慣欠如と強い関連が見られた。

演者らは2006 年から多職種による医療チームを形成し、モデル校で保護者を交えた運動と食 生活の個別指導を展開している。さらに2010 年からは小学生と保護者を対象に食育講座を行い、 それまでの結果をまとめる形で「“信州発” 青少年の健康教育プログラム:生活習慣予防を目指し て」を発刊するに至っている。

運動は松本市や安曇野市の政策にも反映され大きな運動成果をあげている。

いち早く次世代の子供たちの生活習慣病に目を向けた情熱的な取り組みであり、男女とも長寿 日本一の長野県にふさわしい印象的な講演であった。

午後基調講演は最初に『防煙・禁煙教育〜何をどこまで伝えるか』と題して、光潤会平間病院 の平間敬文院長の講演が行われた。

昭和59 年から学校現場で禁煙教育を行い、延べ50 万人を教育してきた先生をしても、防煙・ 禁煙教育の困難さを痛感する内容であった。

演者のあくなき戦いは子供をターゲットとしたタバコ被害への『憤り』であり、その戦いは二 つあると述べられた。

すなわち第一の相手は「タバコから得られる莫大な収入とこれに関わる人々の堪えられない旨 み」による政治・経済的圧力であり、第二はニコチンの持つ「一旦ものにした顧客は二度と逃が さない」と云う迫力のある依存性である。

演者の憤りは医師や教師、政治や社会、メディアにまで及んでいたが、その迫力を再現するこ とは不可能である。是非本文を参考にして頂きたい。

次に行われた基調講演は『学校健診と発達障害への対応』と題して、鳥取大学地域学部地域教 育科の関あゆみ准教授の講演が開催された。

演者は小児神経科領域を専門とする小児科医である。

平成20 年6 月に施行された学校保健安全法では学校医が下記の保健指導に従事することが義 務付けられている。

1)子どものメンタルヘルスについて医療的な見地から学校を支援する。
2)学校と地域の医療機関等へのつなぎ役になる。
3)健康診断等から児童虐待の早期発見に努める。
4)専門的な立場から健康相談、保健指導を行う。
5)学校保健委員会に参加し、専門的な立場から指導助言を行う。

特に通常学級に在籍している発達障害のある子に対して、細心の注意が必要であると力説された。

「教職員のための子どもの健康観察の方法と問題への対応」と云う冊子には学校体制の中でどの ように関わるかと云った進め方が例示してあるので、学校医は参考にして頂きたいと提言があった。

発達障害の医療は一部の専門家が診れば良いと云う時代は終わり、かかりつけ医や学校医の積 極的な参加が求められている。特につなぎ役としての学校医に対する期待は大きいと結ばれたこ とが印象的であった。




お知らせ

文書映像データ管理システムについて(ご案内)

さて、沖縄県医師会では、会員へ各種通知、事業案内、講演会映像等の配信を行う「文書映像データ管理システム」事業を平成23 年4 月から開始しております。

また、各種通知等につきましては、希望する会員へ郵送等に併せてメール配信を行っております。

なお、「文書映像データ管理システム」(下記URL 参照)をご利用いただくにはアカウントとパスワードが必要となっており、また、メール配信を希望する場合は、当システムからお申し込みいただくことにしております。

アカウント・パスワードのご照会並びにご不明な点につきましては、沖縄県医師会事務局(TEL098-888-0087 担当:平良・池田)までお電話いただくか、氏名、医療機関名を明記の上omajimusyo@okinawa.med.or.jp までお問い合わせ下さいますようお願い申し上げます。

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