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第9回男女共同参画フォーラムに参加して
みんなちがって、みんないい 〜伝えたい、豊かな医療人をめざすあなたへ〜

仁井田りち

沖縄県医師会女性医師部会委員
仁井田 りち

第9 回男女共同参画フォーラム

日 時:平成25 年7 月27 日(土)
        午後1 時〜 4 時45 分 フォーラム
        午後6 時〜 7 時30 分 懇談会

場 所:
  フォーラム 山口県総合保健会館 多目的ホール
    懇親会 ホテルニュータナカ 平安の間

主 催:日本医師会

担 当:山口県医師会

メインテーマ
みんなちがって、みんないい
〜伝えたい、豊かな医療人をめざすあなたへ〜

次 第

開 会

挨 拶          日本医師会 横倉 義武
           山口県医師会長 小田 悦郎

基調講演
「より良い医療のために、より良いキャリアのために」
講師 国際医療福祉大学副学長 桃井 眞里子

報 告
1. 日本医師会男女共同参画委員会
2. 日本医師会女性医師支援センター事業

シンポジウム
「みんなちがって、みんないい
〜伝えたい、豊かな医療人をめざすあなたへ〜」

コメンテーター
      国際医療福祉大学副学長 桃井 眞理子
        日本医師会常任理事 小森 貴

シンポジスト
             医事評論家 行天 良雄
         山口大学医学部教授 谷 景子
        いしいケアクリニック 原田 唯成
   山口県医師会男女共同参画部会長 松田 昌子

第9 回男女共同参画フォーラム宣言採択

閉 会

日本医師会主催第9 回男女共同参画フォーラ ムは、山口県にて7 月27 日開催されました。 今年のテーマは「みんなちがって、みんないい 〜伝えたい、豊かな医療人を目指すあなたへ〜」 をテーマに、1 基調講演、2 男女参画企画委員 からの報告、3 テーマにそったシンポジウムが 行われました。(プログラム参照)

1. 基調講演

「より良い医療のために、より良いキャリアのために」

演者の桃井眞理子先生は自治医科大学の小児 科教授退官後、現在は国際医療福祉大学副学長 を務めています。

「今後日本は生き延びていけるのだろうか?」 の一声から始まった講演は100 年後に日本の人 口が4,260 万台となる急激な人口減少の衝撃的 なスライドから始まり聴衆を惹きつけた。(図1) 「男女参画企画は、つまるところ人材育成のこの 国のあり方である」「若い人たちにどのような問 いかけをして育成をしたらよいのか」「少子高齢 化社会にむけて男女問わず人材を育てよう」と いうグローバルな視点での問いかけのあと、女性労働力率と合計特殊出生率の表(図2)から 特に「女性の労働率を増やしながら、出生率も 増やす国の政策をしてきたフランス」との違い 「フランスは3 歳未満の認定保育所利用が42%、 日本は20%以下である」「突出した長時間労働 は日本の特徴であり、長時間労働を変えないと 日本の出生率は伸びない。」と述べ、超少子高齢 社会の設計改革として「良質の労働力の確保」「ワ ークファミリーバランスの改善」「戦力的育児・ 家事支援」の3 つを提案(図3)。

図1

図1

図2

図2

図3

図3

また、日本の医療提供体制の現状のスライド (図4)を示し、「医師の献身的な努力で日本の 医療を支えてきたが、もはや限界に来ている。 意識改革は絶対に先行しないので、まずは強力 に体制を変えた後から意識を変えていくのが急 務である」と述べた。

その後「女性医師支援から医師のキャリア支 援へ」に関して「何をすべきか」具体的な提案をした。

図4

図4

「国、地方自治体、医療界は何をすべきか」

  • 1. 医師の地域格差の是正(後期研修医の配置定数の是正)
  • 2. 宿直という名の救急医療の是正、
  • 3. 診療科別医師の定数是正、
  • 4. 医師以外の職種の育成と業務分担(多様の療法士、医療秘書、看護士の専門化)

「医療機関は何をすべきか」

  • 1. キャリア支援センター設置(カウンセリング、ボスとの交渉、離職対策)
  • 2. 主治医制からチーム医療体制へ(24 時間主治医制はもはや非現実的贅沢)
  • 3. 給与体系を多様化
  • 4. 男女ともにリーダー育成
  • 5. 医長、部長、管理職への女性の登用

「医育機関は何をすべきか」

  • 1. プロフェッショナル教育の徹底、
  • 2. 教育の結果の社会還元意識の徹底、
  • 3. キャリア教育

「男性管理職へメッセージ」

  • 1. 男性も女性も同様に期待して育成を。
  • 2. 何を期待しているか明確に言語化して伝えてあげて下さい。
  • 3. 本人が気づかない能力を指摘してあげて下さい。

「女性医師達へのメッセージ」

貴方には人を育てる力と義務があります。貴 方は組織の活性化に必要です。「困難は解決出 来る人の前に来る」を念頭に、新たな働き方、 新たな価値観、新たな家庭のありかたで共に働 き共に育てる社会を作りましょう。社会貢献性が高い職業人、医師であるということが自分の 中に据えられるかどうか。これが継続の礎とな ります。女性がキャリアを継続するために、「既 成観念に振り回されず、自分で行動のプライオ リティーを作ること」

桃井氏の講演は国際的な視点で日本の将来の グランドデザインを描き、かつ医療機関へ、管 理者へ、女性医師自身へと具体案の盛り込んだ 大変興味深く女性医師だけでなく、全ての医師 へ、職業人へ発せられたメッセージでした。

2. 報告

日本医師会男女参画委員会ならびに女性医 師支援センター事業の活動報告

日本医師会男女共同参画企画委員会活動報告

男女共同参画のさらなる推進のために

1. 男女共同参画に対する男性医師の意識調査 を行い、今後の委員会の取り組み日医の試 策に反映させていく。(調査時期25 年8 月。
全国の臨床研修病院に勤務する男性医師)

2. 女性医師の勤務環境整備に関する病院長、 病院関係者、管理者等への講習会用スライ ドの作成が検討され、現在作業に取り組んでいる。

3. 委員会が実施した具体的な取り組みの一つ として、会長選挙制度に関する検討委員会 に「日本医師会理事に女性医師枠」の要望書を提出する。

日本医師会女性医師支援センター事業

1. 女性医師バンク運用状況

2.H25 年度女性医師支援センター事業 事業計画

3.「女性医師の勤務環境の整備に対する病院 長、病院関係者、管理者等への講習会」の 実施。(H21 年度以降一旦休止していた講習会を再開する)

4. 大学医学部女性医師支援担当者連絡会の開催(新たな試み)

3. シンポジウム

1. 医事評論家 行天良雄(ぎょうてんよしお)

1949 年千葉大医学部を卒業してNHK に入社 し以来一貫して保健医療福祉に関する放送の企 画制作に従事してした行天氏。凛とした姿勢で アナウンサーのように明朗闊達に話す行天氏本 人が「大正生まれの年齢87 才」と述べると会 場から驚嘆のどよめきがあった。

「女医は今、日本で最も期待される職業であ る。これから数十年希少種化し続けるこども と、増加し続ける高齢集団特に健康長寿の中心 となる女性の存在とそれへの対応は喫緊の事実 である。しかもその後には、空前の大量死亡が 待っている。医療は急激なパラダイムシフトを 迎えざるを得ない。最先端を競う生命科学の分 野はすでに女性研究者とその卵達が育ちだして いる。そして日本国民だけでなく、世界から求 められている「寄り添う医療」の理想型はなぜ か女医さんに期待されている。企業も厚労省も 女性幹部の起用が進み、焦点は期待にどのよう に応えられるかに集約されている。皆保険に支 えられ、長生きを当然視しているこの国での女 医さんは既に希望の星である」

2. 山口大学大学院医学系研究科放射線治療 学分野教授 澁谷(しぶや)景子

山口大学医学部付属病院医療人材育成センタ ー男女共同参画支援部門を兼任している澁谷氏 は、立ち上がった山口大学医学部男女参画企画 のこの1 年の活動内容について報告した。育児、 介護休暇について1,800 名中1,247 名の職員から の回答があり、関心の高さがあり、調査で明ら かになった問題点として、育児休暇を取得でき ないだけでなく。3 割が休業制度について周知さ れていない事実がわかり、制度の周知から始ま り支援体制強化に向けての基盤作りを行った。

また「What do you want to do ?」(あなた は何をしたいのか)という明確な目標を持つこ とを教えられたご自身のアメリカ留学の話をされた。

3. ジェネレーションギャップを乗り越えて
いしいケア・クリニック 原田唯成

山口大学病院の総合診療部で医療人育成セン ター時代の研修医や学生を育てた経験より、ワ ークシェアリングを提案、その後学生、研修医 にインタビューした「どういう人を配偶者にし たいと考えているか?職業や価値観は?」「結 婚後の家庭像?」「子育てで夫婦以外で助けて もらえる人はいますか?」録音した実際の生の 声を流した。多くは明確な目標を持たない(持 てない)若い世代の声であった。

4. 地域で取り組む男女共同参画企画〜山口 県医師会の取り組み
山口県医師会男女共同参画部会長 松田昌子

山口県はH18 年に「女性が働きやすい環境 を作る」という目標を掲げて男女共同参画企画 を設立していて全国でも先進県の取り組みをしている。

女性医師対策として、医師会と行政を担う山 口県との協力体制の下、まずは女医自身の意識 改革のための講演会、交流会を開催、育児支援 としての保育サポーターのバンクを立ち上げ、 その後地元山口大学医学部の女性医学生との交 流を行ってきた。特に各地区医師会ごとに女性 医師部会を立ち上げて地域での顔の見える連携 をしてきたことが評価されている。

まとめ

フォーラムの講演を聴きながら私自身は沖縄 の女医会のこれまでの歩みと重ね合わせていま した。全国フォーラムに遅れること2 年、沖 縄の女性医師部会の立ち上げはH19 年でした。 女医会立ち上げのため、まずは一人ひとりの先 生方に足を運び、目を見て会話をして立ち上げ の協力願いに廻りました。立ち上げの議案書の 細かい作業を一つ一つクリアして、第1 回の沖 縄女医フォーラムは90 人近い女医さんが集ま り、現在メーリングリスト件数も250 人を超し、 全国からみても沖縄県女性医師部会はモデルケ ースとなり九州代表として選ばれるほどに評価 されました。しかし、松田先生のいわれる「小 手先でない真の男女共同参画」「医師としての 情熱と志をもって社会に貢献し、かつ個人の生 きがいも感じることができる環境づくり」は今 後の大きな課題です。夢を描いて実現すること が可能であった高度成長期時代を知っている現 在の40 代後半以上の世代と、不安定で価値観 の見いだせない社会の中で育ってきた若い医学 生、研修医との価値観が違うのは当然です。と もすれば「頑張れば夢は叶う、出来る」と励ま すだけの管理者・先輩の価値観で縛らずに若い 世代が活き活きと個々のスキルを磨き、一人一 人の役割とやり甲斐をもって医師としての喜び を保ち仕事ができるにはどうしたらよいのか、 改めて「女性医師支援」から「全ての医師のキ ャリア支援」へとシフトしていく過渡期に今後 の活動のヒントを頂いた会でした。

印象記

真栄田篤彦

常任理事 真栄田 篤彦

今回、第9 回の男女共同参画フォーラムに参加した。タイトルにある「みんなちがって、みん ないい 〜伝えたい、豊かな医療人をめざすあなたへ」は、山口県出身の女流詩人金子みすず氏 の『私と小鳥と鈴と』詩集からの引用で、実にすばらしいタイトルだと感心し、帰沖後に同詩集 をウエブで調べて拝読した。

さて、当日会場内で、フォーラム開催前に、県医師会女性部会委員の仁井田りち先生にこれま での当会同部会の経過並びに今後の運営方針について話を聞いた。現在県内の女性部会のメール リスト数は250 名を超えるほど多くの女性医師が参加しているとのこと。九州ブロックでも、県 医師会女性部会は発展しているとのことです。

基調講演の桃井眞理子先生の報告では、男女共同参画は新しい社会設計への挑戦であり、生物 学的多様性・社会学的多様性の観点からこれら多様性を包含する社会では変革を促すとのこと。 また、医療社会のおける男女共同参画の利点は何か?等興味ある御講演を頂いた。なお、プレゼ ンの準備で手間取り15 分間短かったので残念であった。

次に日本医師会男女共同参画委員会報告があった。平成24 〜 25 年度の会長諮問「男女共同参 画のさらなる推進のために」に関しての報告で、これまでの検証、今後へ向けての1)男女共同参 画の視点に立った意識の改革、2)雇用に関する男女の機会均等と待遇の確保3)方針決定過程にお ける女性医師の参画拡大を掲げ、意識の改革に関しては、男性医師の意識調査、女性医師の勤務 環境整備に関する病院長、病院開設者・管理者等への講習会用スライドの整備等と実施するとのこと。

雇用に関する女性の機会均等と待遇の確保については、1)働き方の多様性の実現、2)地域医 療現場における男女共同参画、3)女性医師のキャリアアップに必要な評価基準についての提言、 以上3 項目に関して検討するとのことであった。

続いて、日本医師会女性医師支援センター事業の報告があった。

女性医師バンク運用状況の報告では、順調に経過しているとのことであったが、費用対効果を 考慮するとまだまだの感であった。

平成24 年度同会事業の報告では、1. 女性医師バンクによる事業継続、復帰支援(再研修を含 む)2.「医学生、研修医等をサポートするための会」の実施。3. 各都道府県医師会での女性医師 相談窓口の設置促進」。4.「女性医師支援センターブロック別会議」の実施(沖縄県医師会同部会 は九州ブロックで発表したとのこと)。5. 医師会主催の講習会等への託児サービス併設促進と補助。 6.「『2020.30』推進懇話会」の開催。7.「女性医師支援事業連絡協議会」の開催。8. 冊子「女性 医師の多様な働き方を支援する」の作成。

事業報告があり、当県医師会でも該当する項目を実施していたこともあり、当県部会の頑張り もあり、今後も同会の発展を期待し、沖縄でいずれ全国フォーラムが開催できるよう頑張って頂 きたいと思う。

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