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「骨と関節の日」(10/8)に因んで
〜ロコモティブシンドローム〜

永山盛隆

豊見城中央病院 整形外科 永山 盛隆

【はじめに】

日本の人口は2006 年をピークに減少して おり、同時に高齢化が急速に進行しています。 総人口が減少する中で2013 年には高齢化率 25.1%で4 人に1 人、2025 年には33.4%で3 人に1 人が65 歳以上の高齢者となる予測値が 出ています。

さらに自立した生活を送れる期間である「健 康寿命」は男性70.42 歳、女性73.62 歳であり、 人生最後に男性は9 年余、女性は12 年余に渡 り何らかの介護を受ける現状があります。高齢 化の進行で介護保険サービスを受ける国民の数 は年々増加しています。2011 年に要介護およ び要支援者数は525 万人を超えて、今後さら に増加すると予想されています。2010 年の国 民生活基礎調査によれば要介護・要支援の原因 の第1 位は脳卒中(21.5%)、第2 位は認知症 (15.3%)、第3 位は高齢による衰弱(13.7%) となっていますが、一方で4 位以下の関節疾 患(10.9%)、骨折・転倒(10.2%)、脊髄損傷 (1.8%)を運動器疾患としてひとまとめにする と、実に全体の22.9%を占めることになります。 これは運動器疾患(整形外科疾患)が要介護・ 要支援の主要な原因であることを裏付けるものです。

【骨と関節の日】

「骨と関節の日」とは整形外科の医療内容を よく知ってもらうため1994 年に日本整形外科 学会が制定し、その日を「10 月8 日」と定め ました。その日の由来は、「骨」→「ホネ」の ホを分解→「ホ=十+八」から十月八日となっ た訳で、さらに10 月8 日は「体育の日」に近 く運動器の健康にふさわしい秋の時期でもあるため記念日をその日にしました。

毎年テーマを決めてポスターを作成し、講演 会はじめ医療電話相談や新聞対談などを行って います。整形外科領域の医療内容を一般の方々 に理解して頂き、骨と関節を主体とした体の運 動器が健康維持に如何に関わっているかを啓発 することが目的となっています。

各年毎にテーマを変えて活動し、1995 年度 から2012 年度まで「骨粗鬆症」、「スポーツと 整形外科」、「リウマチ」、「腰痛」、「肩凝り」、「骨 折」、「関節の痛み」、「骨粗鬆症」、「関節リウ マチ」、「腰痛」、「スポーツと整形外科」、「肩関 節の痛み」、「運動器不安定症」、「骨粗鬆症:運 動器不安定症の要因として」、「腰部脊柱管狭窄 症」、「ロコモティブシンドロームと腰痛」、「ロ コモティブシンドロームと変形性膝関節症」、 「ロコモティブシンドロームの要因としての骨 折の予防と治療」と移り変わり、ロコモティブ シンドロームという言葉が目立って使われるよ うになってきました。

2013 年度のテーマは正に「ロコモティブシ ンドローム」そのものとなっております。

【ロコモティブシンドローム】

ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ、 和名:運動器症候群)とは2007 年に日本整形 外科学会が提唱した症候群で、加齢に伴う筋力 低下や関節・脊椎疾患、骨粗鬆症などにより運 動器の機能が低下し、要介護や寝たきりなどリ スクの高い状態を表す言葉です。今回は、注目 されているロコモについて少しでも多くの方々 の理解が深まればと願っております。

ロコモを自分で気づくためのツールがあります。

2009 年に改訂された自己チェック「7 つのロコチェック」は

  • 片脚立ちで靴下がはけない。
  • 家の中でつまずいたり滑ったりする。
  • 階段を上がるのに手すりが必要である。
  • 横断歩道を青信号で渡りきれない。
  • 15 分くらい続けて歩けない。
  • 2kg程度の買い物(1 リットルの牛乳パック2 個程度)をして持ち帰るのが困難である。
  • 家の中のやや重い仕事(掃除機の使用、布 団の上げ下ろしなど)が困難である。

で、その内1 つでも該当すればロコモが疑われます。

しかし、上記のロコチェックは主に高齢者向 けの判定法でした。

そこで20 〜 70 歳代の幅広い年齢層で、年 代相応の移動能力があるかどうかを判定するこ とで、ロコモになる可能性を判断する「ロコモ 度テスト」を2013 年に同学会は新たに策定し ました。

「ロコモ度テスト」は

1)下肢筋力(立ち上がりテスト):高さがそれ ぞれ10,20,30,40 センチと異なる椅子から片 脚か両脚で立ち上がれるかをみる下肢筋力試 験です。(図1)

2)歩幅(ステップテスト):できる限り大きく 2 歩進んだ歩幅を身長で割った値です。(図2)

3)身体状態・生活状況(ロコモ指数25):自記 式質問票で25 問の問に回答し、1 問が0 〜4 点で合計が障害のない0 点〜最重症100 点 とします。(図3)

の3つのテストで各項目を年齢相応に判定します。

「ロコモ度テスト」を前記の「7 つのロコチ ェック」に併せて広く普及させることで、早期 にロコモをチェックし、ロコモ対策としての予 防(ロコトレ:開眼片脚立ち、スクワット、そ の他)につなげたいものです。

厚生労働省は2013 年から始まる国民の健康 づくり運動「健康21(第2 次)」において、ロ コモの国民への認知度を2012 年の17.3%から 10 年後に80%まで上昇させるという数値目標 を設定しました。実はロコモを知っている人の 割合を示す認知度は、昨年の17%から27%に 上がっていることが2013 年2 月に全国約2 千 人を対象とした同学会のネット調査で判明して いるとのことです。

今後も「骨と関節の日」を通してロコモにつ いての啓発を継続することは、国民の健康寿命 を伸ばす重要な整形外科領域の活動内容と位置 づけています。

今年も例年通りに「骨と関節に日」について の新聞紙面座談会は沖縄タイムス、琉球新報両 社で紙面掲載予定となっております。

また、市民公開講座は10 月6 日(日)14: 00 〜 16:00 に県立博物館で催され、ロコモに ついて理解を深める良い機会ととらえています。

数多くのご参加を希望致します。

図1

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図2

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図3

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