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くも膜下出血に対する脳動脈瘤コイル塞栓術
ー膨潤型コイルHydrocoil の使用経験ー

沖縄赤十字病院 脳神経外科
與那覇 博克

【要旨】

1991 年に電気離脱式コイルが開発され、脳動脈瘤コイル塞栓術は急速に普及し た。しかし比較的大きな動脈瘤やwide neck の動脈瘤では、高い塞栓率を得ること が困難で再開通を生じやすいという限界も明らかとなってきた。そのため治療困 難例に対しコイル塞栓術をアシストするバルーンやステントなどが開発されてお り、良好な結果が得られてきている。さらに近年、従来のプラチナ製コイル(bare platinum coil)に対し、留置された動脈瘤内で膨潤するハイドロゲル(hydrogel) を付与したHydro Gel coils が開発された。このコイルにより、従来のbare platinum coil では密な塞栓が困難あった症例においても、高い塞栓率が得られ再開 通を生じにくくなってきている。当院では破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血例に、 積極的にHydro Gel coils を使用し良好な成績を得ている。今後、高い塞栓率と迅 速な止血が破裂脳動脈瘤例の予後改善に結び付く事が明らかとなれば、Hydro Gel coils の適応は拡大していくと思われる。

【はじめに】

1991 年のプラチナ製電気離脱式コイルの 開発により、脳動脈瘤の塞栓術は急速に普及 した。さらに2002 年Lancet にInternational Subarachnoid Aneurysm Trial(ISAT) 1) が発 表された。この論文は開頭クリッピング術と脳 動脈瘤コイル塞栓術の予後を比較したもので、 これによりコイル塞栓術の優位性が初めて証明 された。これ以降コイル塞栓術は飛躍的に増加 していった。しかしその反面、コイル塞栓術の 限界も明らかとなってきた。近年、これまでの プラチナ製コイル(bare platinum coil)に対し、 ハイドロゲル(hydrogel) を付与したHydro Gel coils が開発された。このコイルにより、 従来のbare platinum coil では治療困難であっ た症例においても、高い体積塞栓率が得られ良 好な成績が得られてきている。当院でのHydro Gel coils での治療例を提示し、その有用性を 報告する。

【脳動脈瘤コイル塞栓術】

(歴史)

1991 年のプラチナ製電気離脱式コイルの開発 により、脳動脈瘤の塞栓術は急速に普及した。 それ以前のカテーテルから単純に押し出す様 式の塞栓物質やコイルと異なり、電気離脱式コ イルは通電しなければ離脱されないため繰り返 し手技を行う事ができ、より安全・確実に塞栓 術が行えるようになったためである。さらに 2002 年Lancet にInternational Subarachnoid Aneurysm Trial(ISAT)1)が発表された。こ れは破裂脳動脈瘤症例で開頭クリッピング術と 脳動脈瘤コイル塞栓術の予後を比較したもの で、この論文により初めてコイル塞栓術の優位 性が証明された。これ以前は開頭クリッピング 術困難例に対し選択的に行われていたが、この 報告以後は困難例に限らず、開頭クリッピング 術可能例でも行われるようになった。そのため コイル塞栓術は飛躍的に増加していった。しかし比較的大きな動脈瘤や入口の広いwide neck の動脈瘤では、密な塞栓を得ることが困難で再 開通を生じやすいという限界も明らかとなって きた。それに対しコイル塞栓術をアシストする バルーンやステントなどが開発されており、治 療困難例でも良好な結果が得られてきている。

(適応)

脳動脈瘤の手術法には、開頭クリッピング術と コイル塞栓術がある。手術法は原則として動脈 瘤の形状と部位で決定される。開頭クリッピン グ術では、どのような形状の動脈瘤でもクリッ ピングが可能である。しかし脳深部の到達困 難な動脈瘤(椎骨脳底動脈瘤や内頚動脈の近 位側動脈瘤)では、侵襲が大きく合併症の危 険性が高くなるため高度な技術が必要である。 これに対しコイル塞栓術では、比較的サイズが 小さく(最大径が10mm 以下)かつ入口の狭 い形状(いわゆるsmall neck で4mm 以下)の 動脈瘤が良い適応である2)。サイズが大きい、 またはwide neck 動脈瘤では、再開通をきたし 易いためである。さらに奥行きが浅くかつ比較 的入口の広い動脈瘤では、コイルが容易に瘤外 に逸脱するため留置自体が困難である。このよ うな困難例に対しては、コイルの瘤外への逸脱 を防止するアシストバルーンやステントが使 用される。また開頭クリッピング術が苦手とす る脳深部の動脈瘤は、コイル塞栓術の良い適応 である。脳深部とは脳動脈の近位側を意味し、 コイル塞栓術においてはカテーテルの操作が 容易であるためである。以上のように、開頭ク リッピング術とコイル塞栓術の適応は、互いに 相補的な関係にある。そのため現在では、どち らかの手術法に固執するのではなく、それぞれ の長所・短所を考慮した選択が一般的である。 しかし近年においては、コイル塞栓術の器具の 発展が目覚ましく、これまでは開頭クリッピ ング術が一般的であった浅い部位の動脈瘤(中 大脳動脈瘤や前大脳動脈末梢部の動脈瘤)に対 しても、コイル塞栓術が行われるようになってきている。

【一般的方法】

(術前処置)

未破裂例では、手術の数日〜 1 週間前より脳塞 栓症防止の目的で1 〜 2 種の抗血小板薬の内服 を開始する。破裂例では原則投与は行わない。

(術中手技)

マイクロカテーテルをマイクロガイドワイヤ ーを用いて動脈瘤内に誘導する。必要に応じ て、コイルが瘤外に逸脱しないようにアシス トバルーンやアシストステントを併用する。 (図1)動脈瘤のサイズ・形状を考慮し、コイルのサイズ(太さ・長さ)・形状(2D コイル・種々 の3D コイル)を決定する。まず始めに、比較 的固いコイルで動脈瘤内壁に密着する立体的 なコイルの籠を作成する(framing)。この段階 でコイルと動脈瘤内壁との間に間隙ができる と、塞栓術の終了時まで残存してしまい密な 塞栓ができない。また2 番目以降のコイルが 瘤外に逸脱しないように、ネックを覆うよう にframe を作成する事が大切である。次いで 比較的柔らかいコイルで、徐々にサイズを小 さくしていきながらframe 内を充填していく (filling)。最後に柔らかいコイルでネック近傍 を密に塞栓する(finishing)。(図2)framing coil、filling coil そしてfinishing coil として多 くの種類のコイルがある。塞栓術の要点は可 能な限り密な塞栓を行い、瘤内への血液の流 入を防ぐことである。理想的に密な塞栓がで きれば、血栓が器質化してネック部を覆い、 動脈瘤は親動脈の血流より完全に隔絶され根 治が期待できる。

図1

図1 バルーンアシストによる   塞栓術後
塞栓術(右椎骨動脈瘤)

図2

図2 コイル塞栓術(左内頚動脈瘤)
左上:術前 右上:framing
左下:filling 右下:finishing

(術後処置)

術後は1 か月から数年間、もしくは永久的に抗血小板薬の内服を継続する。

【破裂脳動脈瘤におけるコイル塞栓術】

(未破裂例との違い)

破裂脳動脈瘤例での治療の最も大切な点は、再 破裂の防止である。再破裂を生ずれば、多くの 例が重篤な転帰となるためである。破裂脳動脈 瘤では、ブレブと呼ばれる最も脆弱な部位に穿 孔を生じくも膜下出血をきたす。くも膜下腔に 広がった血腫と頭蓋内圧上昇で、穿孔部が圧迫 され一時的に止血されるが、多くの例が24 時 間以内に再破裂を生ずる。くも膜下出血例での 開頭クリッピング術は、血腫が充満したくも膜 下腔を開放しながら進めていく事になる。通常 血腫は固まっており、動脈に強く付着している。 これに生理食塩水を噴射し軟化させ、吸引管で こそぐように吸引する手技を繰り返し行い動脈 瘤に到達する。この手技は顕微鏡下で行われ、 通常は数時間を要する非常に時間のかかる手技 である。また血腫がより強固に付着している場 合、細い動脈の損傷や動脈瘤破裂の危険もある。 他方コイル塞栓術においては、破裂例でも未破 裂例と原則的に同じ手技であり、出血の有無は 手技には影響しないという大きな利点がある。 ただしコイルによるブレブへの圧迫で容易に再 破裂を生ずるため、可能な限りブレブにコイル による圧がかからない塞栓が必要である。しか し破裂例であるため、未破裂例以上に密な塞栓が同時に求められる。この相反する条件を同時 に満たす塞栓が必須である。そのためには動脈 瘤壁に圧がかかりにくく、ブレブに迷入しにく いコイルの選択が必要となる。その他に術前よ り抗血小板薬投与が必要な、バルーンアシスト やステントアシストが困難であるという不利な 条件もある。以上の如く、未破裂脳動脈瘤例と は異なる方針でのコイル塞栓術が必要である。 また重篤な状態の症例では、たとえ不向きな動 脈瘤であっても敢えてコイル塞栓術を行う事が ある。手術侵襲を小さくし、脳機能の回復を期 待するためである。可及的な塞栓を行って急性 期を乗り切り、脳機能の回復を待って、慢性期 に追加の塞栓術や開頭クリッピング術を行う。

(スパスム治療における塞栓術の意義)

破裂脳動脈瘤例において、治療の最重要点は 再破裂の防止である。さらにくも膜下出血で は、くも膜下腔に広がった出血により脳動脈が 収縮する脳血管攣縮(スパスム)が生ずる。こ れが悪化すれば脳梗塞へと至り、重篤な後遺障 害を残す事も多い。このスパスムに対する治 療としては、脳血流を維持する目的で高血圧 (hypertension)・輸液負荷(hypervolemia)・血 液希釈(hemodilution)のTriple H 療法に加え、 抗血小板薬と血管拡張薬の投与が行われる。不 完全な塞栓ではスパスム治療により再破裂をき たす危険性が高い。そのためスパスム治療の減 弱や延期、さらには断念を考慮しなければなら なくなる。密な塞栓は再破裂防止のためだけで はなく、その後引き続き行われるスパスム治療 のためにも必須である。破裂脳動脈瘤例では、 迅速かつ確実な止血が得られる塞栓術が求められている。

【Hydro Gel coils によるコイル塞栓術】

上述のような観点から、当院では迅速かつより 確実な止血が得られるHydro Gel coils による 塞栓術を積極的に行っている。

(Hydro Gel coils とは)

脳動脈瘤コイル塞栓術では、コイルで瘤内を 密に詰めることにより血行力学的作用機序で 血栓が生じ、これが器質化して最終的に動脈瘤を閉塞する。動脈瘤体積に対し、留置した コイルの体積を比率で表したものを体積塞栓 率(volume embolization rate:VER) と呼 び、密な塞栓の指標としている。従来のbare platinum coil による塞栓術では、VER は通常 25 〜 30%以上が望ましいとされる3) 4)。これ は見方を変えれば、密な塞栓術の終了時点でも 70 〜 75%の間隙が存在する事を意味する。こ の間隙が、上述の如く血栓で徐々に埋められて いくのである。そしてこの期間中は動脈瘤の 再開通や、破裂例においては再破裂の危険性 が持続している事になる。近年、従来のbare platinum coil に留置された動脈瘤内で膨潤す るhydrogel を付与したHydroCoil が開発され た。(図3)HydroCoil はbare platinum coil に 比較し最大5 倍から7 倍の体積増が得られ、主 にfilling coil として使用される。(図4)膨潤が強い反面、取扱いに制約があり、またマイク ロカテーテルの中を通過する時に抵抗感がある という難点があった。この難点を改良し、さら に従来のbare platinum coil とほぼ同等の操作 性を持つHydroFrame およびHydroSoft が開 発された。このコイルではbare platinum coil と比較し70%の体積増が得られる。(図5)こ れによりfaming からfinishing まで、一貫し てHydro Gel coils (HydroCoil、HydroFrame、 HydroSoft)が使用できるようになった。この Hydro Gel coils により、従来のbare platinum coil では困難あった症例においても高い塞栓率 が得られ、再開通を生じにくい事が報告されて いる5)。(図6)

図3

図3 HydroCoil(R) Embolic System(HES)
(出展:Micro Ventio(R)TERUMO)

図4

図4 HydroCoil(R) (Gel) の膨潤径比較
(出展:Micro Vention(R)TERUMO)

図5

図5 HydroSoft/HydroFrame
HydroGel が内部に配置されているため
挿入時の抵抗がなく、取扱いの制限が無くなった
Bare coil 10 と比較して70% Volume up
(出展:Micro Vention(R)TERUMO)

(当院のくも膜下出血治療)

当院では破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血に対 し、コイル塞栓術を第一選択とし治療を行っ ている。また可能な限りHydro Gel coils を使 用している。2010 年12 月から2013 年7 月ま での期間に、49 例のくも膜下出血例に対しコ イル塞栓術を行った。そのうち27 例でHydro Gel coils を使用した。代表例を提示する。

図6

図6 HydroGel Coil (HELPS)
再開通率が8.6% 減少した。
HydroCoil : Bare plutinum coi 27.2% : 35.8%
文献5) より引用

症例)

87 才 女性

現病歴)

食事中に突然の意識障害が出現し当院救急外 来に搬入された。搬入時意識レベルはJCS V -300 であったが、その後徐々に回復し JCS U群となった。しかし再度JCS V -200 に悪化した。入院時頭部CT で高度のくも膜 下出血を認めた。(図7)

図7

図7 入院時CT

経 過)

緊急脳血管撮影を施行し、左内頚動脈- 後 交通動脈分岐部動脈瘤を認めた。動脈瘤は ワイドネックでかつネックより後交通動脈 が分岐しており、密な塞栓を得ることは非 常に困難であると予想された。(図8)しか し高齢かつ意識昏睡の状態であるため、よ り侵襲の少ないコイル塞栓術を全身麻酔下に行った。

図8

図8 治療前左内頚動脈撮影
上段左:正面像 上段右:側画像
下段:3D-DSA

コイル塞栓術)

2 個のbare platinum coil を使用しframing を作成した。その中をHydroCoil 10 を5 個 使用し密に塞栓した。(図9)最終の体積 塞栓率はbare platinum coil 換算で24.7%、Hydro Gel coils 換算で54.9%で十分に密な 塞栓であった。(図10)

図9

図9 コイル塞栓術
上段左:塞栓前 上段右:Framing
下段左:HydroCoil でfilling 下段右:塞栓終了後

図10

図10 コイル塞栓術
上段左:塞栓術前 上段右:塞栓術後
下段:塞栓術後3D-DSA 密な塞栓が得られ、
かつ後交通動脈が温存されている。

術後経過)

十分な塞栓が得られたため、術後早期より抗スパスム治療を開始できた。そのためスパス ム悪化による脳梗塞の出現は認めなかった。 その後の経過は良好で、意識レベルはJCS T群まで回復し、明らかな運動麻痺は認めな かった。発症約2 か月後に回復期リハビリテ ーション目的で転院となった。

治療成績)

2010/12/1 から2013/7/18 までに133 例の コイル塞栓を行った。破裂脳動脈瘤例は49 例であった。その中でHydro Gel coils を使 用したのは27 例であった。

結 果)

  • 1)死亡例2 例:術中破裂1 例、入院時より重篤な状態であった1 例
  • 2)現時点まで再破裂例なし
  • 3)再開通1 例:1 年後に再塞栓術を施行し、その後現在まで再開通なし。
  • 4)入院時と比較し、退院時に状態の悪化したのは上述の死亡例の2 例のみであった。

結 語)

破裂脳動脈瘤例におけるHydro Gel coils に よるコイル塞栓術は、従来のbare platinum coil では治療困難な症例においても、高い塞 栓率と迅速な止血が得ることができ非常に有 用であった。今後、症例数を積み重ね、高い 塞栓率と迅速な止血が破裂脳動脈瘤例の予後 改善に結び付く事が明らかとなれば、Hydro Gel coils の適応は拡大していくと思われる。

【引用文献】

1) International Subarachnoid Aneurysm Trial(ISAT) Collalborative Group:International Subarachnoid Aneurysm Trial(ISAT) of neurosurgical clipping versus endovascular coiling in 2143 patients with ruptured intracranial aneurysms:a randomized trial . Lancet 360:1267-1274, 2002
2) Hayakawa M, et al:Natural history of the neck remnant of a cerebral aneurysm treated with the Guglielmi detachable coil system. J Neurosurg 93: 561-568 , 2000
3) Satoh K, et al:Measurement of volume ratio to predict coil compaction on aneurysmal embolization . Interventional Neuroradiology 4 (suppl 1 ):179- 182,1998
4) Kai Y, et al:Evaluation of the stability of small ruptured aneurysms with a small neck after embolization with Guglielmi detachable coil: correlation between coil packing ratio and coil compaction.Neurosurgery 56:785-792, 2005
5) White PM et al:Hydrogel-coated coils versus bare platinum coils for the endovascular treatment of intracranial aneurysms (HELPS):a randomized controlled trial . Lancet 377:1655-1662, 2011



Q U E S T I O N !

次の問題に対し、ハガキ(本巻末綴じ)でご回答いただいた方で6割(5問中3問)以上正解した方に、 日医生涯教育講座0.5単位、1カリキュラムコード(84.その他)を付与いたします。

問題

次の設問1 〜 5 に対して、○か×でお答え下さい。

  • 問1.脳動脈瘤コイル塞栓術は、開頭クリッピング術と比較し予後が悪い。
  • 問2.脳深部にある動脈瘤は、コイル塞栓術の良い適応である。
  • 問3.破裂脳動脈瘤例には、コイル塞栓術の適応はない。
  • 問4.破裂脳動脈瘤例では、密なコイル塞栓は再破裂の危険があるため禁忌である。
  • 問5.Hydro Gel coils を用いた塞栓術では、迅速な止血と密な塞栓が得られる。


CORRECT ANSWER! 7月号(Vol.49)の正解

B型肝炎の再活性化とde novo 肝炎

問題

次の設問1 〜 5 に対して、○か×でお答え下さい。

  • 問1.HBs 抗体陽性者は感染既往であり、体内にHBV は存在しない。
  • 問2.免疫抑制・化学療法に際し、患者がHBs抗原陰性であれば、特に注意はいらない。
  • 問3.固形癌の化学療法では、HBV キャリアからの再活性化は起こらない。
  • 問4.HBc 抗体陽性者の免疫抑制療法中、HBV-DNA が陽性になった。肝酵素(AST/ALT)は正常であったが、エンテカビルの投与を開始した。
  • 問5.HBV キャリアの化学療法に際し、エンテカビルを予防投与していたが、化学療法の終了と同時に抗ウイルス治療(エンテカビル)も終了した。

正解 1.× 2.× 3.× 4.○ 5.×

解説

問1.HBs 抗体陽性であっても、HBV は完全二本鎖DNA(cccDNA)として肝臓内に存在する。

問2.既感染者からも再活性化(de novo 肝炎)は起こる。HBs 抗原陰性だけでは既感染の否定は出来ないので、HBc 抗体、HBs抗体まで測定する必要がある。

問3.固形癌に使用される抗癌剤でも再活性化は起こる。

問4.肝炎を発症してしまうと重症化、劇症化するリスクが高いので、モニタリング中HBV-DNA 陽性になった時点で直ちに抗ウイルス薬を開始する。

問5.化学療法終了後、免疫が回復し肝炎を発症することもある。化学療法終了後12月間は抗ウイルス薬の投与を継続すべきとされている。