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九州各県保健医療福祉主管部長・九州各県
医師会長合同会議

宮城信雄

会長 宮城 信雄

去る6 月7 日(金)、城山観光ホテルにおいて、 九州各県保健医療福祉主管部長・九州各県医師 会長合同会議が開催された。

本会議では、はじめに、今回担当の鹿児島県 行政より開会が宣言され、開催地の鹿児島県伊 藤祐一郎知事(代読:布袋嘉之副知事)、九州 医師会連合会宮城信雄会長からの挨拶、九州厚 生局中澤一隆局長より来賓挨拶が述べられた。 その後、「県境における医療体制(救急医療を 含む)」「九州・山口9 県の災害時医療救護支援 体制整備の進捗状況」についての2 題について 協議が行われたので、その概要を報告する。な お、当協議会には、沖縄県行政から崎山八郎福 祉保健部長が出席された。

挨 拶

鹿児島県知事

伊藤祐一郎(代読:布袋嘉之副知事)

さて、国においては、1)復興・防災対策、 2)成長による富の創出、3)暮らしの安心・地域活性化に重点を置いた平成25 年度予算が成立し、 日本経済の再生に向けて、大胆な金融政策、機 動的な財政政策、民間投資を歓喜する成長戦略 に取り組んでいるところである。

私としては、速やかに実効のある施策展開が なされることを強く望むと共に、国民の不安を 払拭し、国民生活の安定につながるように、東 日本大震災からの復興や経済の再生、外交安全 保障等、山積する諸課題に国の総力を挙げて取 組み、わが国に漂っている閉塞感からの脱却が 図られることを期待する。また、昨年、社会保障・ 税一体改革関連法案が成立し、新たに設置され た社会保障制度改革国民会議において医療や介 護年金、少子化対策の分野を中心に、審議が進 められている。社会保障制度については、国民 全体に関わる極めて重要な問題であり、国民の 関心の高い分野である。

本日出席の皆様は、正しくこの分野の中核的 な役割を担われている方々であり、その皆さま が一堂に会し、九州は一つという理念の下、各種課題等について検討されることは、今後の九 州地域全体の保健・医療・福祉分野の政策を推 進していく上で、大きな成果につながるものと 期待している。

九州医師会連合会長 宮城信雄

九州医師会連合会を代表して挨拶を申し上げる。

当合同会議は、九州各県の保健・医療・福祉 に関わる種々の問題・課題について、行政側と 医師会側が協議し、より良い解決・推進を行う ことを目的に毎年開催されているものである。

本日は、今日的課題である「県境における医 療体制(救急医療を含む)」、「九州・山口9 県 の災害時医療援護支援体制整備の進捗状況」の 2 点について協議をお願いしている。

県境における医療体制について、各県共に 様々な地理的特殊性があり、ドクターヘリを含 めた他県との連携による諸課題の解決が求めら れている。また、災害時医療援護支援体制整備 の進捗状況については、一昨年の東日本大震災 の発災を受けて、広域災害における他県への医 療救護支援体制の早急な整備対応が求められて おり、各県が互いに被災地の医療を支援すると いう共通認識のもと、その調整が行われている ものである。

いずれの課題も、県民、国民の生命を第一に 考え、いかなる地域でも同様に最良の医療が受 けられる体制づくりを構築していかなければな らない。その為には、行政と医師会が連携し、 諸問題の解決に当たらなければならない。

そのようなことからも、毎年開催される本会 議は誠に意義あるものであり、本日も実りある 会議となるよう切に願っている。

来賓挨拶

厚生労働省九州厚生局長 中澤一隆

昨年9 月に赴任し、当会議への参加は初めて である。全国に厚生局のブロックは8 つあるが、 この様な形式で会が行われているのは九州ブロ ックだけの取り組みではないだろうか。国民の 生活を支えていく主要プレイヤーである県の民生衛生部局や健康局と、医師会長が一堂に会す る会合は誠に意義深い。九州のユニークさの現 れであると同時に、厚生局長として、非常に心 強い思いを抱いている。また、常日頃より、政 厚生行政の推進にご尽力賜り感謝申し上げる。

現在、国においては、社会保障と税の一体改 革で種々議論がなされている。議論の中核は、 社会保障制度改革国民会議が総理のもとに置か れ、議論が進められている。この会議は8 月 21 日までしか設置されないと法律で決まって いるため、それ以前には何らかの報告が出てく ると思う。現在、総論の部分で止まっており、 具体策に踏み込めていない状況である。何れに しても8 月末までには何らかの報告書が出てく る。また、年内の検討を経て、12 月の恐らく 政府予算案の決定時にはある程度の骨格が分か り、かつ法律改正が必要なものは、来春の通常 国会に法案が出てくる展開になるかと思う。如 何せん何とも概要が分からない状況であり、本 来なら私からある程度説明が出来ればと思って いたが、申し訳なく思っている。皆様と同様、 どういう形なのか関心を持ち注意していきた い。本日の会合が実り豊かなものにあることを祈念する。

座長選出

慣例により、鹿児島県(担当県)の松田典久 保健福祉部長を座長に選出し、議事に入った。

議 事

(1)県境における医療体制(救急医療を含む)について(鹿児島県医師会)

【提案要旨】

本県は、宮崎、熊本、沖縄の3 県と隣接して おり、地域の実情に応じ県境における医療体制 を構築している。県境における医療体制の問題 は行政の理解なしには出来ない問題である。今 後、県境の医療問題は、ますます重要となる。 我々は隣接する県医師会と県行政間で協議する 場を設置することが急務と考えている。

本日この場で決定することは難しいと思う が、いつまでにという期限を決めていただきたい。具体的な開催方法については、年1 回、開 催地は隣県間で交互に行い、議題はその都度照 会する。議題に沿った関係部局や医師会役員等 が参加する形態で如何か。一定の方向性を示し ていただきたい。

【県医師会からの回答】

・ 協議の場の設置については、全ての県医師会が賛成・必要であるとの回答があった。

・ また、松田峻一良福岡県医師会長より、診療 報酬にかかる将来の問題として「医療費適正 化を推進するために必要があると認めるとき は、一つの都道府県の区域内における診療報 酬について、地域の実情を踏まえつつ、各都 道府県間において公平に提供する観点から合 理的であると認められる範囲内において、他 の都道府県の区域内における診療報酬と異な る定めをすることができる」との考えがあが っている。県境で懸命に医療提供体制を構築 しながらも、各県の事情で変えられることは、 今後大きな問題をはらむのではないかとの指摘があった。

【県行政からの回答】

・ 協議の場の設置については、宮崎・鹿児島・ 沖縄の3 県行政が賛成であるとの回答であった。

・ 佐賀県は隣県の意向も確認する必要があると しながらも、今年度運航予定のドクターヘリ 協定時に各県の意向を伺い対応を検討したい と回答した。

・ 大分県も重要なテーマであるとの認識を示 し、何らかの対応は必要だが、既に県域での 取り組みがある点や隣県の意向を踏まえる必 要があると述べた。

・ 福岡県や熊本県は、県境地域の状況に応じて、 既に圏域毎に取り組みがあり、今後も県境を 越えた取組は必要との認識を示した。

・ この他、長崎県では、地域や分野ごとに個別 の課題に応じて対応しているが、今後、関係 機関から要望があれば検討したいと回答があった。

【まとめ】

・ 松田典久議長から方向性については、大方賛 同いただけたものと考えている旨説明があっ た。今後、各県持帰り隣県同志で、今後の計 画について議論していくことについて提案が 出された。

・ 提案県の池田 哉鹿児島県医師会長から、各 県事情はあると思うが、最終目的は住民のた めであることを理解たいだき、来年この会議 の場で、その後の取り組み状況等について報 告いただきたいと提案があり、異議なく承認された。

(2)九州・山口9 県の災害時医療救護支援体制整備の進捗状況について
(長崎県医師会)

【提案要旨】

昨年6 月、福岡県で開催された本合同会議に おいて、九州ブロックにおける災害時協力体制 の構築については、長年「九州・山口9 県災害 時相互応援協定」、「同運営要領」、「同応援協定 に係る医療支援に関する細目」の整理・拡充を 求めてきたが、中々協議が進まない状況にあり、 今後、早急に課題を整理し、実効性のある協力 体制の確立を求める要望がなされ、平成18 年 当時、幹事県であった長崎県行政が中心となり、 検討を進めていくことが確認された。

これを受けて、長崎県医師会と長崎県行政は、 これまでの経緯を踏まえ、JMAT に関する協定 内容について整理を行い、去る3 月に協定の締 結を行った。JMAT に関する協定内容について は、長崎県行政と九州各県行政の間でも協議調 整を行っていると伺っているが、各県の取組状 況について伺いたい。

【県医師会からの回答】

・ 既に再締結を済ませた県は、提案県の長崎と 宮崎の2 県に留まり、現在、協議中が福岡、 佐賀、沖縄の3 県であった。

・ また、大分県は行政の都合により保留である と回答があった。

・ 熊本県は、平成16 年に交わした医療救護協定書以降、動きは無いとしながらも、県行政 に設置された「熊本県災害医療検討委員会」 に役員を派遣し、災害時の医療体制の充実に 向けた協議を行っていると説明があった。

・ 鹿児島県は、日医救急災害対策委員会の報告 書の取り纏めを受け、今後の対応を検討する との回答があった。

・ この他、3 県医師会(福岡、佐賀、宮崎)より、 事後承諾での県外派遣について、県レベルで の対応が難しいようであれば、国レベルでの 議論が必要との意見・要望があった。

・ また、池田秀夫佐賀県医師会長から、行政は DMAT とJMAT に差を付けて考えているが、 時期的な差はあっても同じ医療活動を行って いることに理解を求める意見があった。

【県行政からの回答】

・ 再締結・協議中は前述のとおりである。

・ 熊本県は、行政主催の検討委員会で県内災害 医療体制の充実強化に向けた検討に着手した として、今後、JMAT の体制の整備も検討し たいと述べた。

・ また、大分県は、見直しの必要性はあるとし ながらも、JMAT の位置づけの問題もあり、 具体的に協議に至っていないと回答した。

・ 鹿児島県は、今後、長崎県のモデルを参考に 検討を進めたいと回答した。

・ 熊本県より、追認事項については、佐賀県医 師会提案のとおり国レベルでの協議が必要と の認識を示し、県レベルでの答えは出し難い と述べた。

・ この他、福岡県より、県外派遣にかかる追認 は難しいが、最終的に九州の応援協定内で、 取扱いを揃えられれば良いのではとの意見が出された。

【九州厚生局からのコメント】

・ JMAT の問題は難しく、本省でも議論が煮詰 まっていない状況である。

・ DMAT は阪神・淡路大震災後、要綱や要領、 活動内容、指揮命令等、明確な位置付けがあ る。JMAT については、議論が進められているようであるが、明確なあり方については未 だ示されていない。

・ 私の立場で申し上げるならば、国レベルで、 明確な活動内容や指揮命令系統等を位置付 けることがスムースな展開に繋がると考えている。

・ また、県外派遣については2 つの側面がある と考えている。一つはブロック内の総合協定、 もう一つはブロックを超えての派遣である。 後者については、総論的なところが決まらな いと全国展開は難しい。前者であれば関係者 間でのコンセンサスが得られれば展開できると思う。

これを受けて、蒔本恭長崎県医師会長から、 九州ブロック統一での取扱いができれば県境で の災害時に効果を発揮するとの意見があった。 くわえて、松田峻一良福岡県医師会長から、九 州知事会にJMAT 九州をアピールすれば行政の 理解を得られるのではないかとの意見もあった。

【まとめ】

・ 松田典久議長より、JMAT については、その 位置づけや機能、分担、財政支援等について、 国レベルでの検討がなされれば、九州ブロッ ク統一の取扱いも進展するだろうとの見解が 示された。

・ 合同会議に先立ち開かれた県の部長会議にお いてもJMAT とDMAT の関係性やタイミン グの問題、対応業務等が明確化されていない との意見が相次いだことを報告した。

・ 各県においては、それぞれの事情を加味し、 引き続き、行政と医師会で協議を重ね前進さ せて頂きたいと述べた。

次期開催地当番について

松田典久議長より、次期開催地当番について は、宮崎県において、宮崎県医師会担当のもと 開催することについて提案があり、異議なく了承された。

その後、稲倉会長より次期担当県を代表して挨拶があった。