沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 6月号

ワークライフバランスについて

  • 日 時 平成24 年11 月5 日(月)19:00 〜
  • 場 所 沖縄県医師会館 会議室

出席者

広報担当理事:本竹 秀光

司 会:玉井  修 (沖縄県医師会理事、広報委員)

○玉城 信光(沖縄県医師会副会長、女性医師部会担当理事)

○依光たみ枝(沖縄県医師会女性医師部会会長)

○知花なおみ(沖縄県医師会女性医師部会副部会長)

○外間 雪野(沖縄県医師会女性部会委員)

○白井 和美(沖縄県医師会広報委員、女性医師部会委員)

○屋良さとみ(琉球大学医学部医学教育企画室准教授)

沖縄県医師会理事 玉井修

今後の医療を考える上で、女性医師 の就労環境を整備し、臨床現場へ女性 医師が参加しやすい環境を整えること は非常に重要な課題であります。今回 の座談会は女性医師として現役で活躍 する先生方をお招きして歯に衣着せぬ 座談会となりました。様々な立場でご 活躍中の先生方がそれぞれの切り口で 女性医師について熱く語って頂きまし た。あまり熱くなりすぎて時間が経つ のも忘れてしまい、大変長くなってし まいました。女性医師の皆さんの勢い に押されて、司会の役割がうまく果た せず大変申し訳ありません。しかし、 つい本音が口から出てしまうのが座談 会の良いところです。結構言いたい放 題でしたから面白いですよ。

座談会「ワークライフバランス」

○司会(玉井)

玉井

本日は沖縄県医師会 会報の座談会にご参加 いただき、大変ありが とうございます。

まず、沖縄県医師会の副会長の玉城先生からご挨拶をお願いします。




○玉城

玉城

女性医師部会とここ 数年間一緒に仕事をさ せていただいて、この 数年間でかなり流れが よくなってきたなとい う感じがあります。今 後どうしていくかとい う次の展望が座談会の中で出てくればよいと思 います。勤務医部会の担当でもあるので、全国 の勤務医部会にもいくのですが、そこで必ず女 性医師部会の話が出てきます。今年の全国勤務 医部会の特徴は、あちこちの大学の病院長や教 授がたくさん来ていたことです。女性はまだ少 ないのですが、大学の中も変わろうとしている なということがわかります。勤務医部会の中で 女性医師部会の占める意味が相当高くなってい る気がしました。

今回、この座談会では数年間ずっと一緒に仕 事をしてもらっている先生方から、新しい企画 や展望まで出ればいいなと思います。どうぞよ ろしくお願いします。

○司会(玉井)  それでは、今日の出席の皆 さんの自己紹介をよろしくお願いします。では 依光先生から。

○依光

依光

皆さん、こんばんは。 去年の4 月に中部病院 から八重山病院に赴任 した依光です。

たくさんの女性医師 がいた中部病院から離 島にくると、見えてき た部分がいろいろありますし、離島は離島で いろいろな支援が必要だなということも感じ ました。

女性医師部会の誕生は2007 年で、最初から 関わっている私のほうにも声がかかったと思い ます。医師として三十年余、女性医師を取りま く環境は大きく変化してます。それについての コメントはできるかと思うので、よろしくお願 いします。

○白井

白井

沖縄県医師会広報委 員の白井です。今年か ら女性医師部会の役員 を務めています。かね てから女性医師部会の 先生方のご意見を座談 会という形で会報にぜ ひ掲載したいと思っており、本日それが実現さ れてうれしいです。




○屋良

屋良

琉大の屋良さとみと 申します。もともと呼 吸器内科( 第一内科) 所属ですが今年の2 月 から琉大で新しく医学 教育企画室の専任とな りました。今までは兼 任でいろいろな先生がやっていらっしゃったの ですが、医学教育は全国的、世界的にもどんどん進めていかなければいけないということで、 専任を置かねばならないという話になり、私が 一内から異動し配属になりました。よろしくお 願い致します。



○外間

外間

外間雪野と申します。 女性医師部会に3 年前 から参加させていただ いています。

今日は皆さんのいろ いろな話を聞いて考え を深められればいいな と思っております。よろしくお願いいたします。




○知花

知花

那覇市立病院内科の 知花なおみです。よろ しくお願いします。

私が研修医の頃、依 光先生が中部病院で 「ジョイナーズ」という 女性医師団体をたちあ げました(笑)

私は女性医師の立場から、医師の働き方は ちょっとおかしいと思っていて、ワークライフ バランスがちゃんととれないと、高齢者が増え て若年者が減るこれからの時代を乗り切るのは 難しいと思います。

今からいろいろなことを考えることができる といいなと思います。どうぞよろしくお願いします。

○本竹

本竹

広報担当理事の本竹 です。中部病院です。 当院でも女性医師の働 く環境整備はこれから と言ったところです。 今日はぜひ皆さんの意 見を聞いて勉強をする つもりできました。よろしくお願いします。

1. 女性医師を取り巻く環境は変わったか?

○司会(玉井)  まず最初に、女性医師を取り巻く環境は変わったか、というところからは いっていきます。依光先生、いかがですか。

○依光  変わりました。(笑)

○玉城  大きな声でしたね。

○依光  本当に、変わりました。昭和52 年 に卒業し研修医16 人中、女性医師が1 人しか いませんでした。女性医師専用の当直室はありません。

○司会(玉井)  同じところでですか。

○依光  いえ、院内にそれぞれの部屋はあり ました。男性用当直室はありましたが、女性専 用当直室はなく更衣室もありませんでした。研 修2 年目は麻酔科を専攻しました。手術室ナー スの控え室で更衣をして、手術室でシャワーも 入って、手術室のソファーで仮眠を取りました。 2 つ下に後輩ができたもので、彼女と2 人で当 直室確保運動をしました。2 人で交互に毎日当直 するので、ほとんど寝られない。寝るとしても 1 時間くらい。仮眠の非常に大切な時間に、当 直室で熟睡できるので、それは大助かりでした。

○司会(玉井)  特別扱いはまったくなかったのですね。

○依光  まったくなかったです。途中、研修 医の部屋を改修するということで、観光ホテル に引っ越しました。その時は院内の大広間に、 当直用ベッドを並べて当直医が寝ました。男女 みんな関係なしに。自分が男とか女とか考える 余裕がなかったですね。

○司会(玉井)  追い回されて。

○依光  ということですね。その時の女性研修医は私一人だったからですね。

○司会(玉井)  大変でしたね。

○依光  まあ、そうですね。やはりおかしい と思い始めたのは、後輩ができてからでした。 「先生、どうして当直室がないの」と言われて 「あ、そうか」という形で、逆に気づかされた ところがありました。

○司会(玉井)  まわりが何かをしてあげよ うということは、なかったんですね。

○依光  まずないですよ。

○司会(玉井)  自分たちで何かをするしか なかったわけですね。

○依光  そうです。それも1 人じゃ思いつか なかった。それが当たり前と思っていたからだ と思います。

○司会(玉井)  ある程度女医さんがいない と。先生一人だったら変わらなかったかも。

○依光  いや、思いつかなかったと思います。

○司会(玉井)  実際、知花先生、どうでしたか。

○依光  その時はまだ良かったでしょう?

○知花  まだましでしたけど、レジデント 部屋は男女混合でしたし、当直部屋もなくて、 私の研修医時代は普通にソファーで寝ていました。

今はハードの面でいうと、女性医師の数が増 えてきたので改善しています。昔は、私たちは 数的マイノリティだったので、自分たちのため の部屋などがまったくなかったのですが、今は 市立病院でも、女性の当直部屋や更衣室はもち ろん、休憩室もあります。

今の市立病院はそれくらい改善しています が、私が入職した11 年前は、「更衣室はどこで すか」と聞いたら「トイレ」という世界で、そ こから、まず更衣室をつくろう運動の始まりで す。これから女性医師さんはもっと増えてくる ので、今後はたとえば病児保育とか、保育所が ほしいとか、今、私たちが更衣室とか、休憩室 とかいっていたのが10 年後には、もっと違う 形の要求が出てくるのではないかと思います。

○司会(玉井)  ハード面で。

○知花  はい、そうです。ソフトの面ではナー スとのやりとりとか、患者さんとの対応の仕方 だとか、夜の診療に関してもうちの病院は女性 医師が多いので、救急室をぱっとみたら、外科 当直、内科当直、小児科担当がすべて女性医師 と女ばっかりの日もあって、そういう時には危 ない患者さんがきたときには、男性看護師がい ないとちょっと危険なときもあります。そうい う面では、セキュリティのことも今後、考えて いかないといけないのではと思います。

○司会(玉井)  知花先生、今、当直の話が 出ましたけれど、当直の組み方というのは、女 性医師に対してはある程度配慮がありますか。

○知花  何もないですね。

○司会(玉井)  みんな同じですか。

○知花  はい。割ります。割り算で。

○司会(玉井)  なるほど。

○知花  もちろん子育てしている人たちとい うのは、ちょっと配慮されますけれども。そう でなければ、割る6 とか、割る7 とか。

○司会(玉井)  ああなるほど。

屋良先生、先生は琉大で仕事をしている時 間が長いと思うのですけれども琉大での研修 時代から今までの状況でやはり環境は変わりましたか。

○屋良  だいぶ変わってきているとは思いま す。琉大では出産されて子育てに入ったら大学 でずっと仕事しづらくなるので、そこらへんで 引いていかれます。仮眠をとる場所とかはいま だにまだなくて、看護師さんは昔からわりとい いスペースを確保されているけれど、女医のた めの仮眠スペースはまだまだ場所がなくて作れ ていない状況です。変わってきたかなと思うの は、外科の医局でも女医さんが増えてきたので、 医局に着替え室とか休憩室をつくってあげたと のことです。医局の上の先生方の意識も変わっ てきていると思います。

○司会(玉井)  そうですね。大学もやっぱ り変わってきている。外間先生、たとえば周り の男性が扱い方を変えたとか、そういうことは あまり感じないですかね。やさしくなったとか。

○外間  私は、琉大で研修医をやって、あとは一般病院を回りました。

研修医時代はまったく雑魚寝で同じような感 じですし、一般病院もやっぱり女医室がないと ころが多いですよね。独身の時は日直・当直の 割りは男性と同じですし担当患者の数を割ると いうこともないですし、ただこれが結婚という よりも、妊娠・出産したというのを境にちょっ と優遇されるというのは最近でてきていると思います。

○司会(玉井)  ハードの面というのももち ろん大事なのですが、それを周りで見ている上 司とか、同僚の感覚っていうか。

○外間  女医さんだから少し手加減っていう意味ですか。

○司会(玉井)  女性医師に対して上司がやさしく対応するってことがまずないわけですね。

○外間  まずないんじゃないですかね。(笑)されたことがない。

○玉城  女性医師の皆様は例えば子育てとか 条件が変わると変化があった方がよいと思いま すが、最初の研修の時には、男性と差があった 方がいいと思うか、そのままでもかまわないと 思う、如何でしょうか。基本的なところなんですよね。

○外間  いや、多分されるほうが逆差別に思 うんです。医者になりたいと思ってやってきて いるんだから。

○玉城  多分そうでしょう。子育てなど、条 件が重い、荷物が重なってきたときには、なん とかしてほしいと思うけれど、そうでないとき は男性も女性も自分の能力、キャリアアップそ の他、勉強しないといけないし、何で私だけ外 してくれるのという気持ちがあると思ったので すから質問しました。

○外間  多分、ただ、昔は体力もあって、精 神的にも強かった。今の研修医を見ていると ちょっと違うかなと思う。いろんな病院にいっ て話を聞いたりすると、結構息切れしている女 医さんが何人かちらほらいますね。

○司会(玉井)  それは男性のお医者さんもそうです。

○知花  うちは草食男子の方が多い。女子の方が全然元気ですよ。

○外間  メンタル的にちょっと弱い人もいますよね。

○知花  そういう子もいますよね。

○司会(玉井)  それは男性・女性関係なくありますよね。

○依光  社会の構造がそういうふうになっているのかもしれませんね。

○屋良  大学の臨床研修を見ていてもそうです ね。3 カ月ごとにクールを変えて次々に移ってい くのですが、男性も女性もちょっと鬱っぽくなっ ていく方は増えているように思います。昔と違っ て、厳しいことを言いづらいと皆言っています。

○依光  我々の場合は、怒られながら育てら れたというのがあるし、逆に今は親からも叱ら れたことがないという人もいたりします。

○屋良  打たれ弱い感じがちょっとあるかなと思います。

○玉城  僕もそうだろうなという気はしま す。戦争などで人口が減ると、子供が増えてい くというのは動物的本能だと思うのですね。だ から雄は雄らしく、雌は雌らしくといったら叱 られそうだけれど、それがこういう成熟社会に なると、男も女も中性に寄っているのではない かという気がします。前にもこの女性医師部会 が始まった頃だったか、某病院で、研修医では ないですけれど、産婦人科の先生が本当に脱落 していきそうだという話を聞いたことがありま した。もっと早く聞けば、琉大と相談して、何 とかなったのではないかなという感じがしてい ました。そういうことは上司が観察しながら、 男性も女性も部下のいろんなことに気をつけな ければならない。僕だったら、「おい、飲みに 行こう」とかいうのが昔のやり方だったですけ れどね。少し変わってきた。

○知花  でも、男性の上司は、女性医師を飲みに誘いにくいというのは、皆いいますね。

○司会(玉井)  それはよく聞くな。

○知花  そういう意味では、女性医師は ちょっと損しているかもしれないと思います ね。男性は飲みニケーションがあるじゃないで すか。でも女性はなかなか誘いにくいみたいなところが。

○玉城  必ずしもそうではないみたい。

○依光  男性から女性をですか。

○知花  男性上司からですね。(笑)

○玉城  まあ、個別的に誘うことはないのだ けれども。東北大学の医局では、女性が増えた ので、いわゆる居酒屋ではなく、洒落たワイン バーにいくようになってしまって、お金がだん だんかかるようになったという話をしていましたよ。(笑)

○知花  ああ、いいですね。

○司会(玉井)  白井先生は開業されて、女 性医師としてやられているのですけれども、開業されている女性医師の環境は今と比べて変 わっている点は感じますか。

○白井  開業して十数年ですので、開業当初 と今とで、どう変わっているかはまだあまりわ からないです。ただ少なくとも、自分の住居と 開業している場所が一緒なので通勤がなくなり ました。子育てと、すべて両立ができるという 意味で、開業を選びました。勤務医であれば、 病院の配慮が必要となる、それがなければ子育 てが大変、医師の自分のやりたいこと(人生)と、 女性としての人生の両立というのは難しかっ た。開業という選択肢でそれがよりやりやすく なったということです。

○司会(玉井)  なるほど。女性で開業する ということに関しては、不安はなかったですか。

○白井  そのために必ず1 人どこかに男性を 入れるというのを私の医院ではやっています。 今は、主人が事務局としていますし、その前は 男性の事務職の人がいました。それは、クレー ム対応だったり、どういう患者さんがお見えに なるかわかりませんから、そのあたりの危機と いうものに関しては意識してやっております。

○司会(玉井)  開業するというのもひとつ のセレクションとしてあり得るということですよね。

○白井  あり得ると思います。

○司会(玉井)  何か先生方から環境が変わっ たということでご発言はないですか。

○依光  私の同期も熊本の大学から東京に嫁 いでしばらくは勤務医をしていたのですが、子 供をみる人がいないということで、それを機に、 開業しました。子育てを契機に開業する人は結 構いると思います。

○司会(玉井)  でも開業されたら開業され たで、また別の苦労がありますでしょう。運営 の問題とか。けして楽な選択肢ではないような 気もするのですが、いかがですか。

○白井  特にうちは、私が地元での開業でも なくて、内地からきて開業していますので、経 営とかの面では苦労しています。ただ、自分が やりたい医療を自分の手でできる。そして地域 で患者さんと密着して、その方たちの信頼を得ながら診療できるという意味では、恵まれた環 境だと思います。最先端の医療を突き進む先生 方も、もちろんいらっしゃると思いますけれ ども、それはそれぞれの医者の選択ではないでしょうか。

○司会(玉井)  白井先生、例えば、今、女 性医師が非常に増えています。先生が開業され ていていろんな病院にコンサルトするときに、 女性医師が病院にいて、頑張っているところが あると、紹介しやすかったりすることはありま すか。女性医師がいらっしゃるということで話 がしやすいとか。

○白井  患者さんのほうで、女性主治医とい うご希望が強い場合女性の先生がいらっしゃる ほうを紹介します。たとえば呼吸器でも、知花 先生のいらっしゃる市立病院だったら紹介して 欲しいという、患者さんのご希望が最近は強く なってきています。産科領域、婦人科領域では 特別にそうです。

○本竹  ところで本日のテーマの女医のワー クライフバランスを考える上で最も重要な問題 の一つは結婚相手の職業だと思います。現実的 にはドクターが多いと思いますが、医者同士の 場合、仕事や家の事をどれくらい割振りできる かは大きな問題と思います。結婚相手は医師ですか。

○白井  違います。

○知花  この座談会に参加されている先生方 の旦那は医者じゃない。

○本竹  全部違う。でも基本的には医者どう しで結婚するのは多分多いと思うんだよね。

○依光  アンケートの7 割。

2. 女性医師が求める職場環境の整備とは?

○本竹  中部病院の出身で、ご主人が主夫を しているカップルがいて、非常にバランスが取 れているようです。逆に医師同士のカップルで 奥さんが「自分も医者をするためにやってきた のに、あなたもちゃんと家の仕事を分担してほ しい」と言って、うちの病院を辞めざるを得な かった男性医師もいます。

そういう意味で、バランスのことを考えたと きに、やっぱりパートナーも非常に重要かなと 思います。皆さんの結婚相手は医者じゃないよ うですが仕事の分担なんかに関してはどういう ふうに思いますか。

○司会(玉井)  よく理解して、例えばそう いうふうな割り振りとか、家庭内での役割とか というのは、いろいろと話し合いとかやるので すか。それとも何となくできちゃっているもの なのでしょうか。

○司会(玉井)  外間先生はいかがですか。

○外間  うちは主人が医者ではないので、比 較的理解していただいて、私が話し合いをしよ うということで家事と子育ての分担をきっちり 話をして、例えば週に何回夕食はどっちが作る とか。細かいことまで一応話し合いをして、そ ういうふうに決めています。

○司会(玉井)  そういうものを話しすると きに、もめたりはしないですか。

○外間  もめたりはしないですね。最初に自 分が全部やろうとしてパンクしたんですよ。私 が100%家事をして、病棟はそのときはなかっ たんですけれども、オンコールもやって、当直 もやって、家に帰ってきたら家の家事もやって、 子供も自分で保育園に迎えたり、全部やる。も う、これ身体もたないということがわかったの で、半分半分やりましょうということで、そこ で1 回話をしました。

○司会(玉井)  それは大事ね。

○外間  体力がまずもたないので。

○司会(玉井)  もたないですよね。

○外間  そうなんです。時間も体力も子供が できたら子供に時間とか体力は残しておかない といけない。それは現実問題ですから。

アンケートなどでは、さっき依光先生が言っ ていましたけれども、女性医師の結婚相手は7 割は男性医師なんです。それ以外の職業の人と 結婚した女性医師は、ほとんどいないですね。

相手が男性医師の場合は、大体、女性医師が 主導を握り、家事と子育てはメインでやるんです よね。男性側がやるということはないようです。

○本竹  そう予想されるものだから、どうな のかなと質問したわけです。

○外間  女性がほとんど非常勤になりますよ ね、男性医師は仕事を縮小することは、まずな いですね。いろいろなアンケートとかを見ていたら。

○司会(玉井)  どちらかと言うと、女医さ んのほうが家庭に入り、ウエイトを家庭側にシ フトしていっているというのがほとんど。

○外間  ほとんどですね。

○司会(玉井)  でも、そうやって整備をし ていくときに、やはり女医さん自身がどれだけ のモチベーションをもって現場に帰って来てく れているのかというのが、また、大きい問題か なと思って。

例えば今お話があったみたいに、やはり家庭 が第1、職場は第3 か第4 ぐらいというふうに なってしまうと、いくら環境を整えても、なか なか先生の能力を無理に引き出せないという気 もするものですから。

○外間  女医さんも気持ちが2 つに分かれる 気持ちを味わうと思うんですよ。普通、子供は 3 歳までは母親が家庭で育てるべきだとか。子 育ては母親が中心になってやるべきだというの が、世間の常識になっているし。たとえ女性医 師であったとしても、やっぱり女性ですから、 そういう常識にとらわれている部分が多分にあ ると思います。だから、仕事に打ち込むことに 対するうしろめたさを感じながら仕事をしてい る先生も多分いると思います。だけど仕事は全 うしたいと。

子育てをしないで仕事をメインにすると、そ れは子供に対してうしろめたく感じるというの もあると思うし、環境が許さないというのもあ ると思うんですよね。だからどのあたりの配分をするかというのは、多分、個々人の。

○司会(玉井)  バランスだね。

○外間  気持ちのバランスと体力のバランス と、時間のバランスをどこでつけるかというの が、やっぱり個々人で違うんじゃないですかね。 24 時間保育や病児保育もきっちり揃えている というのは、沖縄にはまだないんですけれども、 本土ではあります。しかし24 時間保育をやっ たとしても、例えば子供は夜間保育に預けなが ら当直までやるような女医さんが何人出てくる かだと思うんですよ。そういうモチベーション が上げられるかどうかですね。子供が可哀相と まわりに言われた事もありますから。

○玉城  現在と将来では働き方が少しずつ変 わってくる。過去になかったのが今の働き方に なっているでしょう。環境整備をしながら、い わゆるロールモデルじゃないけれど、だれかが 一歩踏み出してこういう形で仕事をしていく。 男性医師も新しい形で仕事をする。

僕のところは専業主婦と言ったら叱られそう だけど、完全にコントロールしているのは女房 ですよ。はい。(笑)

ですから、このような話の中でまわりが変わっ てくると女性が働く分野というのが増えてくる と思う。それで男性も少しは手伝おうかと思う。 今はまだ過渡期にあるのじゃないかと思う。

女性医師部会でこの5 年ぐらいずっとこの話 をしてきて、病院長も少し考え方が変わってき たし、これからの5 年はまた変わると思うので、 どういうモデルが一番いいかということを考え る。女性医師たちが、若い人たちの事を考えて いく必要があると思います。医師同士が結婚す るにしても、お互いの仕事をどうしていくかも 含めて、おそらく新しいモデルが登場するので はないかという気がするのです。

○知花  今も妊娠している女性医師が2 人、 育休が1 人いて、出産明けの人が1 人いるんで すけれども今、勤務としては非常勤ですが、月 曜日から金曜日まで月水金は午前中、火木はフ ルで働いてもらっていて、非常に助かっていま す。こういう働き方をする女性医師というのは、 うちの病院で初めてなのですが、新患外来の手伝いとか、内視鏡など、非常にフレキシブルに 働いてくれています。私たちは彼女に絶対に辞 めるなと言っています。彼女たちにはとにかく できる範囲でいいから仕事を続けてほしい。彼 女を見て、今の研修医たちはあのような働き 方ができるんだなということは、多分インプッ トしていると思います。それはそれでいいなと 思っているんです。

しかし彼女の旦那の研修先の都合などで転勤 という話が出てくるかもしれない。本当は彼女 を短時間雇用の常勤にしたいのですが、旦那の 都合で動く可能性があるとなると、常勤にもし にくいという事があったりして、女性医師の場 合は自分だけではなくて家族もいますし、それ によって職場が変わったりキャリアが変わると か未確定なところがある。でも、こういう人が 院内に1 人、2 人いて、そこでの問題点とかメリッ トがわかってくると、病院としてもこういう人 たちと一緒に上手に働くことができるというこ とを学習できるんじゃないかなと思っています。

○司会(玉井)  フレックスタイムみたいな 働き方というのは、いくつかの病院でトライされていますよね。

○知花  とってもいいです。とっても役立っています。

○司会(玉井)  今から広がっていくかもしれませんね。

○知花  彼女が一生懸命働いてくれているの で男性医師も喜んでいます。とてもいいですね。

○司会(玉井)  その彼女は当直もされますか?

○知花  いや、当直はしていないです。ただ、 土曜日とか急に日直がいなくなったとかいうと きは、やってくれるときがあるんですよね。だ からとても私たちは本当に助かっているんです よ。本当に有り難く思っています。

○司会(玉井)  知花先生、例えば病児保育 とか、院内保育所というのは女医さんの側から すれば、助かるものなのですか。

○知花  助かると思います。まわりの話を聞く と、みんな本当に助かっていると言っています。

○玉城  病児保育は助かるという話は前からありますね。

○外間  今度の琉大卒業生の同窓会にご参加 いただいてとったアンケートでは、普通の保育 よりも病児保育のほうがニーズは高かったんで すよ。普通の保育は保育所とか、認可保育園で も医療関係者って割と優遇して預ってもらえる みたい。それよりは何か熱を出したときに預る 人のほうがまだ大事みたいです。

○司会(玉井)  依光先生の頃は、病児保育というのは。

○依光  まずないですよ。実は県のほうで動 いていて、中部病院と医療センターで院内保育 所の場所も決めてあるようです。

八重山病院新築はあと何年になるかはわかり ませんがぜひ八重山病院にも保育所をつくりた いなと思っています。県もようやく動いてくれ そうです。これが一番うれしい出来事かなと今 思っています。

最初から完全にするのではなくて、まず、週 1、夜間保育とか、病児保育は小児科のドクター と相談してとかというふうな話を今詰めている ようです。

○司会(玉井)  いっぺんに始めるのは難し いとしても、ほんのちょっとずつやれるところ からしようということはできますよね。

○玉城  夜勤の夜の保育を週に2 回ぐらいに すれば、みんなナースでも調整がついてくるの ですね。ドクターもそうだけど。おそらく毎日 夜やると大変だろうけれども、それにあわせた 勤務のシフトをつくることができるのと、病児 保育もある意味で同じです。病院の中にひと部 屋がもしあれば、そこにナースのOB にお願い をして、子供が病気になったときに来てくださ いとお願いする。毎日病気をしているわけでは ないので、畳の間に仕切りをつけるか、ベッド にするかは別にしても、やろうと思ったらすぐ できるのではないかと思います。ナースのOB にお願いをして、小児科の先生が診療するとい う形にすれば、いつでもできるのではないかと いう話がありました。

○司会(玉井)  先ほど外間先生がお話した、 普通の院内保育所よりも病児保育のほうがニーズは高いということですね。

例えば、院内保育所というと、普通の保育所と何が違うんですか。

○外間  私は浦添総合病院の院内保育所を利 用したんですけれども、乳児の場合は非常に助 かるのは、あいた時間におっぱいをあげに行っ たり子供の様子を見に行ったりとかもすぐでき るので、距離的に近いから院内保育所というの は非常に乳児の場合はいいんですね。

ただ1 歳を超えてくると、だんだん手が離れ てくるので、あとは院外でも保育園でも別に構 わないと、私は思っています。

○司会(玉井)  保育園ってそれぞれの保育 園によって特色があって、やっぱりここが教育 にいいかしらという感じで、移すこともあるの ではないですか。

○外間  あると思いますよ。教育面とか衛生 面とかで全然、保育園によって違うので。ただ、 そこまで細かく考える余裕はないと思います。 とにかく預ってくれるところじゃないと。あと、 ちょっとした違いですけど認可保育園は4 月か らしかとらないんですよ。間、間でとってくれ るところは少ないので、途中で6 月から復帰と か、8 月から復帰とかという女医さんは探すの が大変だと思います。

院内保育所があるところは、いつからでも 預ってくれるので。それは楽ではありましたけ れども。時期が来たときに認可保育園があいた ら移ることができた。

○知花  うちの男性研修医の奥さんが入院し て、だれも子供の面倒を見ることができなく なって、急遽うちの院内保育所に上のお姉ちゃ んが入園して、本当に助かりました。そういう 意味では、院内保育所があると不測の事態に対応できる。

○司会(玉井)  まわりにおじいちゃん、お ばあちゃんがいればいいんだけれど、そうじゃ ない場合は非常に困りますよね。

○外間  沖縄は割と内地から来る方が多いので、それはやっぱり考えたほうがいいと思います。

○司会(玉井)  研修医は結構、内地の方が多いですよね。

○外間  多いですから。ただ、院内保育所を つくると、大体赤字になるんですよね。経営面 の問題なので、サポートをするか、もしくは複 数の病院で1 つの保育所をつくるか、やったほ うがいいんじゃないかなと思います。経営面で 問題があるとしたら。

○司会(玉井)  体力のある病院だったら別なのだけど。

○外間  できると思いますけれども、小さい ところはなかなかそれができないと思いますね。

○司会(玉井)  そういう意味でも今後の課 題というのは、あるかもしれませんね。

○外間  病児保育も地域でつくったほうがい いと思います。那覇地区でつくるとか、中部地 区で何カ所か。

○依光  女性医師部会で保育園の話が出たと きに、病児保育は国の補助、南部と中部と北部 3 カ所でしたか。

○外間  あります。県内何カ所かありますけ れども、まだ数が少ないんです。補助も。

浦添総合病院も1 つ持っています。

○依光  それは国の補助が入ってますか。

○外間  あれは浦添市の補助です。

○依光  市の補助。国の補助ではなくて。

○外間  はい。だから市内の人と市外の人と 料金が変わるんです。

○司会(玉井)  話を保育園から少し変えて いきましょうね。今後、このようなものがほし いとか、ハードでもいいし、ソフトでもいいし。

○本竹  その前に質問していいですか。先ほ ど知花先生の、いわゆる産休明けに来たときに、 あいているところでいろいろ助かっていると。 いわゆる隙間をやっている、実際はね。おそら く外来業務しか基本的にできないと思う。当直 もできないし、その時間だったら病棟で主治医 にもなれない可能性が高い。そうするとそれで 皆さん満足されますか。

○知花  一応レクチャーとかには全部参加し てもらうようにしています。だから7 時半から の朝のレクチャーには来ています。

○本竹  レクチャーって、レクチャラーとい うことですか。それともレクチャーを受けるほうですか。

○知花  レクチャーを受けるという。今のこ の子は5 年目なので、後期研修医の扱いになる んですね。もちろん病院内で診療に携わっていますが。

○本竹  この先生は出産して戻ってきてしば らく1 年とか1 年半子育てをしながら、今みた いな業務となると、どちらかと言えばリハビリ のための期間と考えるのか。

○知花  いや、外来業務に専念していただく という見方だと思います。

○本竹  それで皆さん満足されますか。

○知花  いや、結構喜んでもらってはいますけれど。

○外間  働いている側からですよね。それ以外の先生。

○本竹  働いている側、先生本人がね。いわ ゆる出産前にやっていて、多分その前には主治 医をやったりとかいろいろなことを、例えば呼 吸内科医だと呼吸器科でも構わないんだけれど も、ある時期になるとやっぱり専科に戻りたい という気持ちはあると思うんですけれども。

○知花  はい、そのときには戻ってもらう予 定です。さっきも言ったように、彼女は消化器 の専門医をとるのが今の目標なので、内視鏡を 一生懸命やっています。外来のない日は朝から ずっと上部から下部まで入ってやっているので。

○本竹  僕は外科医ですが、一般外科や心臓 外科などはかなり特殊で、一人前になるのに時 間がかかるし、女医さんがワークライフバラン スと考える専科として選択するには非常に難し い面があると考えます。

○知花  それはもうしょうがないんじゃないですか。

○本竹  その辺に関しては仕方がないというふうに。

○知花  もう選んだ科の特殊性によりけりだと思います。

○司会(玉井)  ある程度のところで自分の 中で妥協と言ったら失礼かもしれないけど、今 できる自分の最大限の研修というものの中で納 得するところを、彼女自身がバランスを取っているのかもしれないですけどね。

○知花  制限とか妥協とか私たちはそういう 感覚は全然ないのですが。

○玉城  例えば産婦人科の女医さんは多くな るんだけど、産科はきついから、自然に婦人科 のほうに流れていく方が多い。婦人科になれば 開業するのも楽だと思う。

病棟で重症な入院を見るというのが好きな人 もいるし、いろいろなことがあって良いと思います。

○依光  私の後輩は一般外科から眼科、皮膚 科、形成外科、病理に転科する。やはり出産、 子育てを境に結構いますよ。

○玉城  東北大に4 人の子供を抱えながら仕 事している病理の先生がいるそうですよ。

○依光  病理だったら可能かもしれませんね。

○玉城  家に持って帰ってもできるから。 やっぱり自分で選択していくことです。

○依光  やっぱり外科系は非常に厳しい。1 人いますが、彼女は旦那さんが主夫をしている 状況です。

特殊と言ったら変ですが、サポートがないと 外科系をずっと続けていくことは非常に難しい と思います。私が知っているだけで8 割、9 割 は転科ですね。

○玉城  麻酔科は開業することもできる。病 院勤めだと縛られるから、自分の好きな時間に 行って麻酔をかけるようにしている女性の先生 もいます。

○司会(玉井)  こういう自分の生き方の軌 道を少し変えてみるとか、いろいろな働き方も あるよとか、これはそれぞれの個人的な情報網 でやっているんですか、女性医師は。

○玉城  今は女性医師部会にも、こういう情 報を発信する場所はないです。

○知花  院内だったら復帰してくる女医医師 たちと、どんな働き方をしたいか、何を勉強し たいか、どういうことに重きを置きたいかとい うのを聞いて、それから大体の勤務体制という のをつくるので。また、子供が大きくなってき たら、では次どうするみたいな感じで。それはその科と、そのまわりの女性医師で、「どう?」 みたいな感じで聞いています。

院内ではこのような微調整はできると思いま すけれども、これをコーディネートしているよ うなところは、多分ないでしょうし、それぞれ の病院とそれぞれの科によって、また違ってく ると思います。

○司会(玉井)  こういう情報がいろいろと スムーズに行き交うと、いろいろな病院で広 がっていくかも知れませんね。先ほど、フレッ クスタイムみたいなやり方を。

○玉城  知花先生は市立病院の中でも声が大 きそうだから、男性医師も聞くと思うんだけど、 屋良先生、琉大ではどうですか。

女性の集団が力を持ってくると調整がやりや すくなってくると思われますか。

○屋良  琉大は今はまだ各科管理なので、各 科長の考え方とかもあると思います。まだ正式 に女性医師部会を立ち上げて全体的なコーディ ネート、というところまではいってないですね。 少しずつできるといいのですが、各科で対応の 仕方とか、働き方、外来の仕方とか、少しずつ 違っていると思うので、いつ、どうしていける のか、まだわからない状況です。

○知花  これからいかに女性医師を味方につ けるか、そして女性医師の働き方をうまく運用 できたら、これは男性医師にも絶対使えるの で、各科とか各病院も越えて、これはいかに早 くやっていくかだと思うんです。

○本竹  それをまだ理解していない人がほと んどだから。

○知花  本当にもったいないというか、これからどういう時代になるかということを考える と、働き方の多様性をもっと広げなければいけ ないし、それを受け入れられる土壌をつくって おかないと。これから画一的な雇用の仕方では、 絶対うまくやっていけないと思うんです。

3. 女性医師支援の今後の展開と問題点は?

○司会(玉井)  外科医などはどんどん人が 減っているのですよね。入る人がいない。こう いう状況にあって、女医さんも外科でも働ける ような環境整備をするということも、とても大 きな課題だと思います。それはどこの病院も苦 労しているところだと思います。僕らの時代は、 ドクターというのは朝から晩まで病棟にいるの が当たり前だったけど、そういうふうなやり方 ではなくて、もうちょっと別のやり方で外科医 もフレックスタイムではないけど、そういう選 択肢もあったらいいかなと思います。

○白井  依光先生は女性医師のスターです ね。県立病院の副院長にまでなられて、管理職 としてばりばりやっていらっしゃる。

知花先生も市立病院で呼吸器と内科の部長を やっていらっしゃる。

○知花  部長がいっぱいいるんですよ。

○玉城  いいですよ、たくさんいても。

○白井  勤務医での管理職をいかにこれから 増やしていくかだと思います。後に続く人が少 ないのではないか。女性医師の数の割には、あ まりに管理職上の立場に立っている人が少ない んじゃないかと。ある程度の人数が意思決定に かかわるようなポジションに入ってくると、女 性の視点からいろいろな問題点、違ったアプ ローチの仕方とかが出てくると思うんです。今 はそういうところに女性医師が入ってこないと いうことが、1 つの問題点ではないかと思いま す。女性医師の側にも確かに問題はあります。

ちなみに、私も長い間、那覇市医師会の理事に なりませんかと言われ続けたのをずっと断り続 けました。3 年前にお受けしましたけれども、ま わりに男性ばっかりのところに1 人で女性が入っ ていきますから、入って行きづらいのは確かな んです。けれども、やるとやりがいが出てくるし、それがほかの女性の医師に何かいい影響を与え ることができるということで、これからそういっ た立場に立つ女性医師をどんどんつくっていけ たらと。思います。それにはやはり男性の今の管 理職の先生方にご理解をいただきたい。

○司会(玉井)  さあ管理職の知花先生。

○知花  私は上の人から煙たがられてばっかり。(笑)

○司会(玉井)  管理職になっていかがです か。今、中間管理職ですか、先生。もう少し上ですか。

○知花  そこまでいってないと思うんですけど。

本当に白井先生がおっしゃったように、女性 医師が自分から手を挙げてあれをやるとか、こ れをやるとか、そういう立場に立ちたいとかと いう人は多分だれもいないし、ここにいる先生 方も自分からやろうと思った人は1 人もいない と思います。そこがちょっと女性医師の今まで の弱いところだったかもしれないと思います。 先ほど意思決定の場に女性がいないということ は本当に問題で、先進的な病院ではクオータ制 といって、働いている男女の比で管理職をちゃ んと決める。男女が7 対3 だったら、管理職の 数も男性7、女性3 というふうに。このように 本当は意思決定の場に女性が必要だと思います けれども、実際に自分がやるかと言われたら、 多分、答えはノーですよね。

○司会(玉井)  知花先生ともあろう方が、 ノーとおっしゃるとは。

○知花  私はまだちょっと若いですし。

○玉城  おそらく上のほうの環境整備だと思います。

○知花  そうですよ。上も絶対。

○玉城  島根の大学は女性医師がものすごく 多いです。ですから教育職、教授などにも少し ずつ女性が増えてきています。日本医師会の女 性医師部会がパワフルだから、あちこちで地位 が上がってきている。要は数とその中でどんな 議論をしているかということになってくると思います。

例えば女性医師で自分たちのメリット、デメリットばかりを言うのではなくて、病院全体の中 で女性医師の役割はこうという形がよい論理的に 展開できるようになれば、女性医師の力は自然と 出てくると思うし、とにかく数が一番の力です。

大学の半分近く女性がいるところは、女性を 大事にしないと絶対にうまくいかないとわかっ ていて、管理職も増えてきているような気がします。

○司会(玉井)  沖縄県医師会にも女性理事 が誕生したほうがいいという話が、だいぶ前か らあるのですけどね。

○本竹  手を挙げてこない。

○知花  男性医師はみんな自分たちで手を挙 げているのですか?

○玉城  地区医師会の推薦です。

○司会(玉井)  自分で手を挙げている人は あまり多くはないかもしれない。

○玉城  白井先生を推薦して何年かしたか ら、今度は県医師会でも第1 号があるかも。

○玉城  県医師会の理事の仕事は結構大変な んです。仕事休んで昼間の会議に出ないといけ ないとか、いろいろなことが絡んできます。そ れを何とか、しないといけない。

○司会(玉井)  でも確かに理事会で男ばっ かりというのは、異様な気もしますね。(笑)

○玉城  今はもうそんなこと言ってもしょう がないし。まあ、あまり異様とは言えない。(笑) 病院でもナースが副院長になるというのが、当 たり前になってきましたからね。

○知花  うちも副院長は看護部長です。

○玉城  だからそういう形で出てくるだろう とは思いますけどね。

○司会(玉井)  今後の課題ですね。

○玉城  依光先生がトップになって苦労して いるじゃないですか。

○依光  私は逆に女性という特権があるかも しれません。中部病院では歴代の院長は看護部 の「大奥には口を出すな」と言っていました。(笑)

八重山病院では、看護師長の集まりが11 時か ら1 時間程あります。そのときに必ず出るよう にしています。井戸端会議のように、いろいろ な情報が逆に入ってきます。非常にいい情報源。師長達も女性ばかりだから気軽に、相談にくる し。副院長が委員長という委員会が多数あるし。

医局の出入り口に副院長室があります。ずっ とオープンにしているので、今日は誰が何時に 来た、遅刻したとちゃんと見えますね。

他の人が聞いたらまずいなと思ったらドアを 閉めて相談が始まったりとか。ある意味ではよ かったかなと思いますね。すぐに院長には言え ないけど、ワンクッション置いて私に先に話し を切り出すとかはあります。女性だから話しや すいのはどうか分かりませんが…。

○玉城  おそらく考え方だと思います。

僕は県立病院の外科部長のとき、看護部長室 に入って、ああしよう、こうしようとコーヒー をごちそうになりながら話をしていた。今度は 南部医療センターでは、副院長たちが「看護部 長の部屋に入りにくい」というから、「何で、入っ ていってディスカッションしたらいいじゃない か」と。「その中からコミュニケーションが生 まれて、どうしようかという大きい話が出るん だろうに」と言っています。

○司会(玉井)  でも、依光先生がそうやっ て管理職として関わっていらっしゃったという のは、非常によかったですね。

○依光  そうですね。看護部だけではなく て、経営のことも私も勉強しなければいけない ので、レセチェックも一緒にやったりしますね。 「わからないところは相談に来てよ」と声かけ したり、逆に自分からこれは再審査請求を出そ うとか、あちこちで連絡網ができたのがこの1 年の成果なのかなと思っております。

4. 今後の医学生教育に必要なものは?
(特に女子学生のキャリア継続に必要な情報・周りが理解すべき情報など)

○司会(玉井)   屋良先生、若い学生さん、今の半分ぐらいが女性学生さんですね。

○屋良  最近では、多分、平均3 〜 4 割。多い学年で5 割。

○司会(玉井)  僕らの医学部の時代って、10 人いたかな。

○依光  私のときにも10%ぐらいでしたね。40 年ぐらい前は。

○司会(玉井)  今はもう、その3 倍から4 倍ということですよね。

○依光  もう3 割は超していますからね。

○屋良  3 割は確実に超しているみたいです。

○司会(玉井)  女子学生さんの意識が変わったとは感じますか。

○屋良  この間も私の部屋に来られ「今、妊 娠中なんですけれども、そのままRyumic に初 期研修の願書出したいのですが受け入れられま すかね」という悩み相談とか、意外にそういう 例は多くなっていると思っていたら、どなたか もそういうことをおっしゃっていたので、早い うちから出産する方というのも、もしかしたら 以前よりは増えているかなと。自分たちの頃は、 研修を終わって普通に数年経ってから出産され ていた方のほうが多いと思うので。最近は、学 生出産とかも。

○司会(玉井)  学生出産ですか。

○屋良  学生のときに出産して、国家試験を 受け、今2 年目になる女医さんもいます。

○本竹  当院にも学生時代に2 人出産した先 生もいます。だから大学を卒業したのは時間がか かっていますけれど、ちゃんと卒業している。う ちの男性研修医で最近結婚しているのは多いね。

○司会(玉井)  学生結婚ではなくて。

○本竹  結婚してきているのも最近増えていますね。

○依光  女性では?

○本竹  女性はそうでもない。だけど、研修 医のときに結婚して子供ができて、それで研修 をいったん中断して、また、戻ってきて研修を 続けるということはあります。うちは研修委員 会が結構しっかりしているので、その辺はちゃ んとルールを決めてあります。

○屋良  早い方は早くて、毎年毎年、初期研 修の期間にどう休んで、いつ産まれて、いつか ら復帰されるかという話はあります。

○司会(玉井)  プランみたいな。

○屋良  プランがきれいに立っているのかは わからないのですけれども。

今回、私のところに来た方は、こちらもどう答えてあげていいか少々迷いました。ご主人に なる人は学生さんで。

○司会(玉井)  大学生。

○屋良  はい。彼女が今から卒業し5 月に 出産する。お2 人とも本土の方で、地元に親 御さんがいないのだけど、どうしましょうとい うパターンでした。完全に計画されているのか ちょっとわかりません。研修センターでは、女 医さんの妊娠中とこの期間は休ませてあげてと かいう話は、割とどの学年でもあるようなので、 以前よりはそういう傾向があるのかなと感じて います。

○玉城  学生さんにこういうシステムがある よとアピールしていますか。

実はこの前、レジナビで研修医募集に九州へ 行ったとき、子供が産まれて、2 人とも今度か ら研修だけど、「子供を連れて、2 人とも研修 できる病院は沖縄にはないか」と問われて調べ てみると、約束してきました。

いろいろな状況に応じて対応しないといけな いけれども、そのときに窓口をしっかりしてア ピールしているかどうか、いかがでしょう。

○屋良  初期研修は卒業研修センターがあり ます。今回、琉大マッチングは多かったです。 女子学生さんが割と申し込んできているみたい なので、出産して働くのであれば大学のほうが 融通きくのではないか、という話はだんだん学 生に浸透し始めていると思います。

外の病院でお忙しい中、1 人の主治医が10 人〜 15 人の患者を診るところでは、やっぱり お母さんになっては働きづらいので、医局でみ んなで手伝いながらとか、大学のようなマンパ ワーのあるところでやっていくほうが女医さん には良いのではないかという話は増えていて、 そのおかげでRyumic 申込みが多かったのか。 女性が多いという話にはなっています。

○玉城  琉大のマッチングが多いおかげで、 オールジャパンでマッチング率2 番目ですよ。

○外間  女子学生のほうで心配なのが、医者 になってどの時期で結婚したらいいかとか、出 産したらいいか、子育てしたらいいかというラ イフプランニングをほとんど立てずに医者になるということしか考えずに医者になる女の子が 多いという事です。例えば研修医は非常勤なの で、非常勤の間では産休も育休もないとか、収 入のあてはどうするのかと、そういうことも全 く社会人としての基礎知識を持っていないまま 医者になっている子が多いものだから、いざ子 供ができて慌てるというパターンが多いので、 ある程度の福利厚生的な話を学生にやったほう がいいんじゃないかと私は思うんですけれども。

どういうタイミングで子供を産んだらまわり に迷惑をかけるじゃないけど、サポート体制は どうなっているとか、今現在研修はどういうふ うなことしかできないとか、ここまでしか勉強 はできないんだよとかいう話は、具体的に彼女 たちの中にイメージングさせてあげないと、無 計画なままやると、多分、研修先の病院でも疎 んじられるのではないかと、とても心配なんで すけれども。各病院で研修医と話をしていても、 そういうことを何も考えてない子も多いので。

○屋良  確かに初期の2 年間ぐらいは、もし かしてばりばりやれば、3 年目にはちょっと自信 がついて、その頃妊娠・出産というと、心理的 にも落ち着くかもしれないけれども、意外にそ の前からというパターンが増えています。例え ば外間先生とか、私の後輩でだいぶ呼吸器内科 をやって、その後に2、3 人産んだ方などは、全 然自分のキャリアには動揺もなく、その後一生 懸命何か勉強しないといけないという動揺や焦 りもなく、子育ても両立しながら安定した形で いける。キャリアが短い間に数人産まれてしまっ て、自分の専門はどうなっていくのかとか、子 育てしながらも不安を抱えながら、だれかに相 談しながらやっている場面は時々見るので、も しかすると本当に学生時代にこういう説明をあ る程度大学でして、その上で考えてもらい、パー トナーの方と計画してもらって、両立して女医 として心に余裕を持ったまま一生暮らしていけ るというパターン、道をつくってあげても確か にいいかもしれない。必要かもしれないですね。

○知花  ハワイ大でエクスターンで行ったと きに、いつ子供を産むかというレクチャーが学 生相手に開催されました。そのときの講師は女性教授などで男子学生もいっぱい来ていて、レ ジデンシーのプログラムはこうだから、ここの ときは絶対、妊娠・出産は無理ねとか言って、 ここだったらオーケーとか。あのときの収入が どうとかね。学生から、ここはどうですかとか 質問がいっぱい出て、あれはいいなと思います。 日本ではそういう教育はないじゃないですか。

○屋良  一応、本土でやっているところもあ るみたいですよ。だけど琉大はやってないです。

○知花  琉大もやったほうがいいじゃないですか。

○屋良  そうですね。

○司会(玉井)  屋良先生、今、早めに妊娠 される方が多いという話がありましたが、そう いう方たちは、あまり計画性がなく妊娠されて いるのですか。それとも意図的そういう時期に。

○屋良  多分そうではないと思います。

○玉城  早いほうがいいと思ったかどうかという意味でしょう。

○司会(玉井)  そう、要は、女性としていろいろと。

○本竹  できてしまったのは仕方がないとい う。それが多くないですか。

○知花  ケース・バイ・ケースじゃないです か。計画している人はいるかもしれないけど。

○司会(玉井)  若いうちのほうが妊娠とか出産とかやりやすいとか。

○依光  それは高齢出産35 歳になったら大変というか。

○司会(玉井)  ある程度キャリアを積んで からそういう時期がやってくると、例えば3 年 とか4 年とか先になるわけですよね。それより は早めに妊娠・出産はやっておいてという。

○屋良  きちっと聞いたわけではないのでわ からないのですが、先日の土曜日にも琉大で秋 田大学の女医さんをお招きして、「いつ結婚し て、出産するか」という様な内容のワークショッ プがありました。そこで琉大のご夫婦で外科医 がいて後輩なんですが、奥さんが発言されてい たのは、奥さんは今4 年目ぐらいになるのです が、2 人子供を産んでいますが、やはり毎日悩 んでいたみたいで、ご主人が「細く長くでいい から」とみんなの前で言っていました。多分そ れは奥さんのほうがいつも悩んで、もう自分は 外科医としてどうしようと、毎日悩みをご主人 に言っていたから、みんなの前でも「いいから、 少しずつでも長く続けなさい」というふうにコ メントしていた感じだったのです。彼女も初期 研修医という早いうちに出産されたのですが、 やっぱり悩んでいるということは、計画の上と いうよりはできたから赤ちゃんを大事にまずは 産みましょうということで、計画していた感じ ではないと思います。はっきり聞いたわけでは ないので正確には分からないのですが。

○司会(玉井)  どの時期で妊娠・出産を迎 えるかによって、女性医師のキャリアの中では 非常に大きな影響を受けるのでしょうね。

○知花  確かに初期研修の2 年間で出産が入 ると、不安定になりますね。2 年間初期研修が 終わって、後期研修で産んでいる先生の、キャ リア作りは安定している感じがします。

この2 年の間に産んでしまうと、何が専門か がちょっとわからなくなったままのドクターに なってしまう人がいるので、やっぱりこの初期 研修というのは非常に大切な2 年間。産むのは そのときしかないのだったら産むしかないんだ けれども、そこで上手に安定的にキャリアを積 むためのシステムをちゃんとつくらないといけ ないですね。

○玉城  女性医師部会でハワイ大学の講義も 参考にしながら、情報を集めてプログラムをつ くってみませんか。

○知花  琉大でやっていたのも面白そうでし たよね。私は都合がつかなくて行かなかったの ですが。

○玉城  いくつかパターン化しながら提示す る。もし、それができれば女性医師部会の新し い取り組みで、若い学生さんに参考になると思 います。

○司会(玉井)  初期研修という時期は医師と して歩み始める時期で、この時期に妊娠・出産 という非常に大きなイベントが入ったりすると、 医者として困惑を感じるのかもしれないですね。

○屋良  子供さんいらっしゃいますしね。

○司会(玉井)  なかなか入りにくいというところがね。

初期研修をしっかりやっていると、医者とし ての礎がしっかりできていて、例えば妊娠・出 産というのがあったとしても、そこからもう一 度また、いつでも自分としてのキャリアという のを積み上げ始める事ができるのかもしれない ですね。

○屋良  2 年間をうんとハードに過ごして、 そこからだとちょっと安心して。

○玉城  そのつもりであれば、一生懸命勉強 するでしょうから。

○白井  私は30 数年前に京都府立医大に 入ったんです。入学してすぐ女子の学生だけに 学生部長がそういう話をしてくれたんですね。 先進的なところは昔から、例えば研修医のとき に子供を産むとかということを考えたらだめだ よと。それはやめなさいと。そうでなくて、どっ ちかにずらすとかというような話をしてくれ た、それはものすごく役に立っているので、ぜ ひ琉大などでもそういうお話をするのだったら 早いときがいいと思います。

○屋良  そうですね、国立も私立も。

○外間  それもそうですね。やっぱり男性医 師も一緒に、この場合はやらないと。

○知花  男性医師にもこのレクチャーは聞かせないといけないですよ。

○外間  両方一緒にやって。

さっき出たように医者同士が結婚することも 多いわけですから、そのときに家事の分担、子 育ての分担とか、女性だけに負担させて女医さ んが辞めていくという現状をどうすればいいか ということを考えさせるのも必要ではないかと思います。

○依光  男性も女性も両方の意識の改革がま ず第一歩だと思いますよ。

私の中でもやはり子育ては女性の仕事、私は あまりしてないので、言える立場ではないが、 でもそういう意識がまだある世の中でしょう。

最近は男性も率先して育児休暇を取るように と言ってきているし、社会全体としての意識改 革がとても大切ではないかなと思いますよ。

○本竹  最近の若い先生方を見ると、みんな そういう意識じゃないかと思うけど。マイホー ム型が多いもの。僕らの時代の感覚とは違って いますね。

○司会(玉井)  確かに。昔は仕事が終わっ たら酒を飲みに行って、朝まで飲んで翌日また 病院で仕事をすると。こういうのが本当に外科 医としては普通だったね。でも、今はそういう 時代ではないですね。

昔は入局を誘うときには、飲みに誘えばいいと。

○依光  そうですよね。何かでつかまると。

○司会(玉井)  飲みに連れて行って、それで 入局勧誘するというのが普通だったですね。それ で何とか入局者が入ってきた時代です。今はだ れも飲みに行かない。「飲みに行こう」と誘って も飲みに行かない。酒がすべではないけれども、 だけどそういう時代というのはありましたよね。

さっきの話も女子学生だけではなくて、男子 学生にもやってワークライフバランスという話 をしないといけないということは、これは時代 のニーズなのかもしれないなと思います。

しかし、そんな個人的なところまで干渉され たくないと思う人も中にはいると思うよ。「そ んな個人的なところまで、何で言われなければ いけないのよ」なんて思う学生さん、今の若い 人の気質としてあると思う。我々がワークライ フバランスということについて、いろいろ情報 を発信したり、いろいろな若い先生に話をする ときに、どう言えばいいのか、酒飲んで言って もなかなか通じないと思います。我々の真意と いうのか、そういうところが伝わらないと、せっ かくこんなに一生懸命話をしても意味がなく なってしまう。

○屋良  今のお話、妊娠してからいろいろ考 えたら、もしかしたらあれも大変、これも大変 と気づいて私のところに来た学生さんがいたの で、やはり前から話してあげれば、将来のこと が予測がついてない状態ではいろいろなことが 起きる事が多々あるかもしれないので、いった んはこういうレクチャーみたいなものをやって あげて、その上で自分の考えも交え、それで選 んでいく。まずは先を示してあげないといけな いかもしれないですね。

○司会(玉井)  それを選択するのはあなたよということで。

○屋良  はい。将来こうなったら、ここでは こんなことが起きてしまうよというのは、先輩 しか教えてあげられないかもしれず、学生では 想像つかないかもしれないので、レクチャーは 必要あると思います。

○玉城  3 分の1 ぐらいが聞いてくれれば十 分です。世の中100%が同じ方向を向くことは 絶対ないから。今、話したことをどこかに残し ておく。学生さんたちはコンピュータが好きだ から、そこを開ければ必ず書いてあるからもう1 回確認してという、言いっぱなしではなくて記 録として残しておくということがあれば、必ず 耳で聞いた人、自分で聞いてない人ももう1 回 開けてみるということが起こると思うので一番 忙しいときにやっぱり出産は大変だと思います。

結婚して初期研修を終わって、後で出産する というつもりだったら、この2 年間はものすご くばりばりと勉強して、後に悔いを残さないよ うなキャリアアップをしていくのではないかな という気もすます。

○司会(玉井)  これは1 回だけではなくて、 あるいは何回か顔つなぎをして、「でも、こう なのよ現実は」みたいな現実味のある話をして あげると、すんなり入ってくると思います。

○屋良  だんだん学年が上がるにしたがって 現実味を帯びてくるかもしれないから。

○司会(玉井)  もちろん情報というのは提示すべきだと思います。

○玉城  いろいろな話を聞きながらこのパターン、あのパターンといろいろなパターンが提示できるようになるかもしれないです。

○司会(玉井)  それはまわりにいる学生さんも含めてね。女性医師だけではなくてね。

○本竹  最近、看護師の分野でワークライフバランスが進んでいますね。

今回の座談会は女医のワークライフバランス ですけれど、男性医師を含めた医師のワークラ イフバランスという形で、県医師会、医学会の 中でシンポジウムを組んでもいいのではないか と僕は思いますけれども。

○司会(玉井)  勤務医で一度やったことが あるのです。

○玉城  若い人はだれも集まらなくて、年配 者しかいない。聞いてほしい人がだれも来ない のです。医師会や、医学会でやるシンポジウム に研修医は来ないのです。

○本竹  シンポジウムの内容にもよりませんか。

○玉城  過去に何度もやりました。大学の学 生さんの自治会でやらせてもらったほうがいいかもしれない。

○外間  ワークライフバランスをとる働き方 というのは、1 人当たりの労働時間を短くした りとか、例えば具体的には当直回数を減らすと か、1 日の勤務時間を残業をしないようにする とか、具体的な話というのもある程度かたまっ ているというか、出てはいるんですけれども、 それをどう実行していくかというところがない と思うんですけど、どうですか。

○本竹  それはやっぱりそれぞれの病院で違 うと思うんだけれども、医師の数がまず足りな いということがあるでしょう。でも、それぞれ の病院で悩みというか、問題点が多分違うと思 います。だからその中に女医も入ってくると思うし。

さっきから言っているように、女医の数が増 えてくると、ますますそれが足りないという話 になってくるじゃないですか。

○玉城  病院単位でやるのが本当は一番ですね。

管理者に今の矛盾点を認識してもらって、解 決策をみんなで協議するというのは一番いいかもしれない。

○外間  先ほど言ったように、女医さんが増 えてくると、ひとり一人に合わせた勤務は、女 医さんはフレキシブルに働いているけれども、 それ以外の男性はもうフルに昔と同じような働 き方をしているという、職場内の格差が出てく るとものすごい不満が溜まってきて、さらに医 師不足に拍車がかかってくるのではないかとい う話をこの前フォーラムでやったんですよね。

○知花  アンケートの結果もそうだったし。

○依光  これは意見として出たのですか。

○外間  はい、最後のほうに。

○白井  国立療養所琉球病院での経験として 院長先生が紹介してくださったんですけれど も、あちらでは男性も同じように期間は短くて も育児休暇なり、そういう休暇を女性と同じよ うに、性別関係なく取らせることによって、不 公平感をまずなくすと。そして、女性をフレッ クスにして、男性は働きたかったらフルで働け ばいいし、働きたくない人はフレックスにもす る。そういうふうにしていくと医者が集まって くる。融通がきく病院で理解がある病院だとい うことで、医者が集まってきて、結局、医者が 当初の倍以上になった。そうなってくるとコマ が増えるので、その中できれいに勤務を回すと 不公平感が減って、今とてもうまく回っている というふうにおっしゃったんです。最初は難し いかもしれないけれども、成功例が県内にも出 てき始めている。それの一番成功した例が大阪 の厚生年金病院ではあるんですけれども、県内 でも出てき始めたということです。

○本竹  先生がおっしゃるのはよく分かりま すけれども、厚生年金病院の例もそうなんだけ れども、慢性期病院では可能と思います。しか し、急性期病院が非常に難しいと思います。だ から急性期病院というのは、女医さんがやっぱ り集まりにくい環境ですよね、間違いなく。当 直しないといけないわけですからね。

それは2 つ分けて考えないと、なかなか難しいかなと思います。

○玉城  急性期病院は何が忙しいかという分 析をして欲しい、忙しいのは救急だけなのではないかと考える。

○本竹  急性期病院というのは病棟の中で の急性期の患者さんがたくさんいるので、これ からは高齢者が増えるからもっと大変になり ます。

○玉城  ですから救急なんですよ。救急部門 をどのように解決するかによって、一般の内科、 一般の外科というのは紹介患者が主になります から、その救急の部門をいつもどのように解決 するかが急性期の病院の一番大きな問題だと僕 は思っています。

○本竹  うちの病院では入院患者の6 割は 救急室から入院します。退院するまで急性期で 従って、そこで働く女医さんはフレックスな働 きができないのが現状だと思います。

○司会(玉井)  その病院によってシステム が違ってくるし、扱っていらっしゃる患者さん も違ってくるし、その地域によってもまた地域 差があるでしょうね。

○司会(玉井)   この間、病院長を集めて いろいろ話し合いをしたという話がありました よね、病院長はとても協力的?

○知花  前よりだいぶ協力的になっていますよね。

○外間  女医さんが増えないと大変なので。

○玉城  この5、6 年、ものすごく協力的になったのと。

○依光  病院長会議も少なかったですよね。

○玉城  ああいう会議をする一番のメリット は、よそで何をしているかを聞くことによって、 自分のところの足りない部分をどうしようかと いう考えが出てくるのですよ。先進事例を聞い て、自分たちもどうにかせんといかんなという ことを考える。それで沖縄県内の全体の底上げ ができてきたと思います。

浦添で夜間病児保育をやっていると聞くと、 自分のところでできる可能性はないか。県内の 民間病院がいっぱいやり始めたから、県立病院 もついに保育所をつくるぞという話まできまし た。運営の仕方も上手にしないといけない。昔、 民間でつくったが利用する人がいなくなって潰 れていったところもあるという現実もあります。

○司会(玉井)  そういう意味でも沖縄県医 師会の女性医師部会というのは、重要な役割を 担っているような気がするのですけれども、どうでしょう。

○玉城  勤務医全体を救うのは、女性医師部 会の発言からです。全国勤務医部会に出て本当 にそう思います。

○知花  女性医師は本当に勤務医を救うと思います。

○本竹  元に戻りますけれども、白井先生の 女性医師の管理職という話をしたときに、実は 女性医師だけではなくて管理職になるのを男性 も嫌がるから、県立病院で今非常に悩んでいる。 それはいろいろな要因があるけれども、男性医 師ですらそうだから、女性医師はますますそう だと思います。

○司会(玉井)  女性医師が増えてきている ということで、いろいろな考えを持っている女 性医師が増えてきています。中にはすごくリー ダーシップをとるような女医さんも含まれてい るかもしれないし。前の女医さんの数の3 倍強 いるわけですから、人材というのはどんどん増 えていますよね。若い女医さんはどうですか。

○玉城  何をしたいかということだと思う。 例えば1 つの病院が去年よりは今年よくなっ て、来年もよくなって、5 年後にはこんなによ くなるだろうというシステムがうまく回るとこ ろだったら、女性医師でも手を挙げて一緒にや ろうという気になる。それを動かしているのは 実はトップではなくて中間管理職なのですよ。 その歯車を回している女性が増えてくると、自 ずから管理職になる。だが、こんな苦労を私は やれないよという病院では絶対やらない。その ためには病院をうまく回転させるという方法を どう考えるかということなんですよね。苦労ば かりでは大変です。

そういう意味では、勤務医の働きやすい環境、 そしてナースも、メディカルスタッフもみんな 一緒になって、去年より今年は頑張ったねとか 言い、来年はこうしてみようかという夢が語れ るような病院になったときに、女性の管理職も 増えてくるし、男も俺もやってみたいなという気になるのじゃないでしょうか。大変難しい話 ではあります。

5. 女性医師が生涯を通して実現していくワークライフバランスとは?

○司会(玉井)  最後に、ワークライフバラ ンスということで、一言ずつコメントをいただ きたいと思います。依光先生から。

○依光  結婚するまでは全然変わらないです。 どこを境目にして変わるかといったら、やはり 妊娠・出産・育児ですよ。そこでどういうふう に自分の生き方を変えるのか、専門科によって 違うと思います。

ただ、私は結婚して子供を産んで母親になり たかったので家庭まで仕事を引きずらない科は どこかという事を考えて麻酔科を選びました。 麻酔科を選んでよかったと思っていますよ。オ ン・オフがはっきりしているから。だから自分 がどこを目指すか、生き方というか、バランス の取り方とですかね。家庭には一切、医学書を 持って帰ったことはないです。子供が「お母さ ん、本当にいつ勉強するの。勉強、勉強と言い ながら…」と言うぐらいに、オン・オフをはっきりさせる。

○司会(玉井)  1 つの考え方かもしれませ んね。どっちつかずにならずに。

○依光  本当に仕事も子育てもスーパーウー マンになろうと思ったら、潰れてしまう。だけ ど仕事のときには、もう仕事だけ。お家に帰っ たら家事はあまりしなくて、子育て優先という ような形で切り換えができたから、私は今まで 続けられたのかなと。それも麻酔科を選んだか らだと思います。

○司会(玉井)  白井先生、何かコメントございませんか。

○白井  医者になりたくて医学部に入ったわ けですから、いかに一生医者を続けるかという ことがワークライフバランスだと思います。

女性の場合は特に子供ができてしまう、妊娠 して出産、子育てというところでワークライフ バランスにはものすごく影響が出てくるという ところが男性と違うところです。

私の場合は続けたかった、けれども、元のと おりには続けられない。外間先生がおっしゃっ たように、100%は何もかも全部自分ではでき ない。そうなったときに依光先生は子供さんに 見せないとおっしゃいました。私は逆に全部見 せたんです。

○司会(玉井)  生活の一部にしてしまった。

○白井  こんなに仕事をしているんだと。だ からそのほかのことはできなくてもしょうがな いでしょうというのを、もうすべて見せたんで すね。そしたらある部分でお母さんが手抜きを しても、子供は文句を言わなくて、そういうや り方で私はきました。今後もそれで続けていき たいというふうには思っています。

○司会(玉井)  それぞれのやり方ですよね。

屋良先生、どうぞ。

○屋良  今日はこの会がどういう会かもはっ きりわからず来たのですが、大学に在籍してい るがために、大きい課題を抱えて帰ることにな るなと思いました。

確かに医学生は大学にしかいないので、そこ でしかできないことはやって、先生方がおっ しゃったように、医者になりたくてなったはず の女医さんたちが一生続けていけないというの も本当にもったいないし、国家的にも問題だし、 どうにかそこら辺を考える女子学生さんたち、 男子学生さんも増やしていかないといけないか なと大きな課題をいただきましたので、今後検 討します。

○司会(玉井)  大学での課題があるよね。

外間先生、どうぞ。

○外間  今日はどうもありがとうございまし た。女性医師として、子育てというのは仕事を 続けていくのモチベーションの一助にもなると 思います、そのバランスをうまくとる手伝いを、 ほかの女医さんに対して助言をするなり、考え ていく場を今後たくさん持っていければいいの ではないかと考えています。仕事一本やりとか、 家庭一本やりではなくて、両方ともバランスを とりながら医者としての人生を全うしていくよ うな医師としての働き方というのが、男性医師 もできるようになっていけば、一番いい医療界になっていくのではないかと考えております。

○司会(玉井)  ワークとライフというのは 対極にあるわけではないということね。

○外間  そうですね。両方あるからバランス がとれているんだと思います。

○司会(玉井)  知花先生、どうぞ。

○知花  ありがとうございました。私が考え ているワークライフバランスとは、楽しく定年 までみんなで仲良く働けることです。定年を迎 えたら次の人生で何をするか、楽しみに今から 計画を立てているんのですが、何となく今の流 れを見ると、高齢者はどんどん増えてくるし、 若い子たちは減ってくるし、私は自分の世代に は定年という言葉がなくなっているんじゃない かと、本当に心配しているんですよ。

○本竹  いや、それは現実問題になるよ。

○知花  本当にそうなんですよ。だから今か ら楽しく定年まで働けるように、定年を迎えて その後の人生を楽しく働くためにも、今から働 き方をいろいろ考えていきたいと思っていま す。本当にきょうはとても勉強になりました。 ありがとうございました。

○司会(玉井)  最後に玉城先生。

○玉城  この女性医師部会ができて、話を聞 いている間に、この5、6 年で非常にいい話に なってきた。今日は屋良先生に大きな宿題みたいなものを与えたけど、医学部の学生さんはそ れをどう考えていくかが大切です。医者を辞め たら、本竹先生も言ったように、非常にもった いないですね。せっかくあれだけ勉強して国家 試験も通っているのに。仕事のやりやすさはお そらくこれから改善されてくるだろうと思う。 今、県立病院や救急病院はものすごく忙しいけ れども、その中でも何とか夢のある病院、夢の ある仕事をみんなでつくりきれたら女性も楽し く働ける。勤務医の男性も無気力ではなくて、 またやる気のある男性も増えてくるのではない かと思います。

同じことの繰り返しですが、全国の勤務医 部会に出ると女性がたくさん来ていて、女性 医師部会というのは勤務医全体を救う、相当 なエネルギーになっているのだなと思います。 今後とも先生方、そしてきょうは座談会に来 られなかった先生、一生懸命やっていらっしゃ る先生方みんなで力を合わせて前に進めたら なと思います。

○司会(玉井)  きょうはオピニオンリーダー でいらっしゃる皆さんとワークライフバランス について、いろいろ話し合ってまいりました。

皆さん、本当に長い時間ありがとうございました。