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沖縄プライマリ・ケア研究会 会長 仲本 昌一 先生

仲本昌一先生

「健康とは身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病のない状態ではない。健康は基本的人権の一つである。」

(アルマ・マタ宣言から)、共に生きる。

質問1. 沖縄プライマリ・ケア研究会会長に就 任されてからこれまでを振り返ってみてどのよ うな感想をお持ちでしょうか。

我々沖縄プライマリ・ケア研究会は2009 年8 月8 日に日本プライマリ・ケア学会九州支部地 方会を開催するにあたり発足しました。初代会 長を稲福全三先生に引き受けていただき、礎を 築いていただきました。稲福全三先生は我々研 究会の母体である日本プライマリ・ケア学会の さらにその生み親である「実地医家のための会」 のメンバーであり、2000 年の全国大会の際も「社 会と共に歩むプライマリ・ヘルス・ケア」と題 して沖縄県医師会が担当することにご尽力され ました。その後のバトンを2012 年3 月31 日か ら引き継いでおります。我々の目指している目 標は1978 年9 月の第一回プライマリ・ヘルス・ ケアに関する国際会議(WHO、UNICEF)で採 択されたアルマ・アタ宣言に明確に示されおり、 「すべての人々に健康を」(Health For All)がス ローガンになっています。その中で当研究会の 私の役割は、これまでに大先輩が地道に守り築 き上げた地域医療を敬意をもって若い医師に伝 え・深め、更に若い医師にこれからの地域医療 を担うプロフェショナルとなる質の高い研修が できるようにすることだと思っています。

質問2. 沖縄プライマリ・ケア研究会における 最近の話題などをお聞かせ頂ければとおもいま す。また今後の展望、課題などについてどのよ うにお考えでしょうか。

何といっても最近の注目される話題を言えば、今年2 月に厚生労働省の「専門医の在り方 に関する検討会」でこれまでのような学会が独 自に制度を作って認定する制度を改め、プログ ラム認定および専門医の認定を中立的な第三者 機関が行い、併せて総合診療専門医が19 番目 の新しい基本領域の専門医となる報告書(素案) がまとまったことでしょうか。医師の偏在、医 療崩壊が叫ばれる中、超高齢化社会を向かえ、 在宅医療、介護の充実が望まれる今日、受け皿 となる「総合医」の育成は国民が望むものでも あります。幸い世間と医療界、我々の親学会(日 本プライマリ・ケア連合学会)の方向性が合致 したものだと思っています。

以前より当学会は研修後のアウトカムとして 僻地や離島の診療所でも活躍できる医師を養成 するプログラムを提示しており、更に今回の第 三者機関内の「ボード」で内科、小児科、外科、 救急といった学会や医師会と一緒に連携し、オー ルジャパンとして実効性のある総合診療専門医 制度を作れると良い機会ではないかと思います。

一方では、総合医のマインドを持った医師集 団を経過措置的に増やしていかないと、総合診 療専門医は発展しないのではないでしょうか? 過渡的措置として他の学会とともに得意分野を 持ち寄って、いまの医師にgeneralに対応でき るような学習の場所を提供することも重要であ り、当学会が先頭になって旗振り役をしなけれ ばならないと思います。

質問3. 定期的な勉強会・講演会等の関催等、 活発に活動されておりますが、会の運営にあた ってご苦労があればお聞かせ下さい。また会の 構成、会員数を教えて頂けますでしょうか。

プライマリ・ヘルス・ケアの推進には多職種 連携、チーム医療を無くしてはありえず、当然構 成は多職種にわたり、医師90、薬剤師8、看護 職7、保健師1、検査技師1、その他医療関連職 種(医療事務を含む)4 名の計110 人です。2 〜 3 ヶ月に1 回勉強会・講演会、ワークショップを 開催しています。これまで取り上げたテーマに は石飛幸三先生の提唱している高齢者の「平穏 死」、山里将進先生の在宅医療、変形性膝関節症 に対する「CB ブレースと筋トレアプローチ」、「医 師と薬剤師の連携について」、基本的なコミュニ ケーションスキルでは「臨床倫理」「ナラティヴ アプローチ」「ポライトネス・ストラテジー」など、 他の会と重ならないような、当会ならでは(=「地 域医療、健康」を意識した)のものを、来る5 月31 日には当会総会終了後に大阪からNPO 法 人ささえあい医療人権センターCOML(コムル) 理事長の山口育子氏をお招きし、講演会を企画 しています。医師会員の皆様、オープンな会で ありますので興味のある方はぜひご参加下さい。

会の運営にあったて苦労することは、何処も そうだと思いますが、会員が皆多忙であり、当 会は特に多職種でもあり、皆が一同に揃うこと はなかなか難しい状況です。しかし、十分な連 絡とコミュニケーションが重要であり、IT をフ ル活用しています。メーリングリストで会員間 の情報交換から講演会の準備、スケジュール調 整などあらゆることをメールで行っています。 もちろんホームページ(http://naika.nakamotoplan.com/~opcken/)も公開しております。

質問4. 県医師会に対するご要望等がございましたらお聞かせ下さい。

まず、沖縄県医師会医学会に感謝申し上げた いことがあります。それは2010 年6 月15 日に分科会への加入についてご承認いただいたこ とです。その後県医学会総会等で一つの医療 領域として認められるように研鑽することがで き、活動の場も広がり、他分科会とも連携でき ますし、大きな刺激を受け励みになっています。

分科会承認に際しては当会が多職種の構成で あることが審議され、「これからの医療を担う には多職種である団体もあり得る」とのご英断 をされたと聞いております。九州支部ブロック の中で沖縄県だけであり、他県の地域支部・研 究会も見習って同様な働きかけをする気運にあ ります。医師会活動のひとつに地域医療の充実 があると思いますので、我々の活動と同じくす るところが多いと思います。

要望としては、新医師臨床研修プログラムで は必修科目として1 カ月の「地域保健・医療」 の研修がありますが、最も「地域医療」の第一 線で活躍している多くの開業、離島・僻地の医 師が指導できる環境づくりを県医師会として バックアップして欲しいと思います。

質問5. 大変ご多忙の身でありますが、日頃の 健康法、ご趣味、座右の銘等がございましたら お聞かせください。

この質問には答え難いものがあります。日頃 から健康によくないことばかりしているもので すから。特に酒が大好きで、毎日と言っていい ほど晩酌をしています。居間にカウンター・バー をつくり、小さなワインセラーや製氷機も置き、 酒の肴にもこだわり、いろいろと楽しむことが 私の心の健康法です。最近は、旅先や催事で 愛用のNikonD200 でスナップ写真を撮り、PC で加工してスライドショーを作ることに嵌まっ ています。

この度はお忙しい中、ご回答頂きまして、誠に有難うございました。

インタビューアー 広報委員 本竹 秀光