琉球大学医学部附属病院
久田 友治
国試史上の最高傑作
医師なら誰でも医師国家試験(国試)に合格 しているが、その後の試験問題に目を通すこと は少ないと思われる。一方、医学生への教育は 大学教員の務めであり、その結果の一つが国試 の合格率であるが、残念ながら九州地区の国試 合格率は全体的に高くない。私も国試の問題に 目を通すことは少なかったが、現状の合格率で は教員の一人として手を拱いている訳にはいか ず、講義の方法を最近一部変えることにした。 第106 回の国試は2012 年に実施され、「国試 106」(医学評論社)の執筆者は“国試史上の最 高傑作” と評価している。その国試問題の一部 を紹介したいのだが、その前にご説明すること がある。
3e アナライザー
医学生への教育内容は変化し、また膨大であ る。更に、教員(医師)の多忙そして教員が教 育法を充分には習得していない等の問題があ る。最近3e(スリーイー)アナライザーのこ とを知ったので、1 年後に国試を受けるM5 学 生の講義で使ってみた。メーカーは3e アナラ イザーを、「今まで一方通行になりがちであっ た講義に双方向性を持たせ、効果的なプレゼン テーションを行う為のツールで、聴衆の意見 を集約し結果を瞬時にグラフ化することがで きる」と説明している(http://www.k-idea.jp/3e/analyzer/)
3e アナライザーの使い方は比較的簡単であ る。先ず、3e アナライザーのCD(図1)をパ ソコンにインストールする。これによりパワーポイント(スライド作成ソフト)の機能が拡張 される(アドインと呼ばれる)。あとは通常通 りスライドを作って、例えば図2 から図4 のス ライドを映写しながら講義を進める。学生がテ レビのリモコンのような装置(図1)を使って 回答すると、その場ですぐ回答者全員の結果が スライド上で表示される(図5)。テレビの「笑 っていいとも」でやっている光景に似ている。
図1
第1 問(図2 〜 5)
腸閉塞の病歴、理学所見そして腹部単純レン トゲン写真の見方はM5 の殆どが理解している ようだ。1 名だけ間違った回答をしているが、 この学生は無用な羞恥心を抱かずにすんだと思 われる。これを機会に基礎的な病態を学習すれば良い。
図2 第1問(1)
図3 第1問(2)
図4 第1問(3)
図5 第1問の回答と集計結果
第2 問(図6、7)
周術期の管理についての問題である。合併症 を予防する為の危機管理の問題ともいえる。答 は1 と5 であり、学生の正答率は約90%であった。
図6 第2問
図7 第2問の回答
第3 問(図8 〜 10)
禁忌問題とされる問題かもしれない。地雷を 踏んだ学生が1 名いるが、未だ国試まで間があ り、緊張性気胸についてよく学ぶ必要がある。
図8 第3問(1)
図9 第3問(2)
図10 第3問の回答と集計結果
おわりに
学生が講義にクイズ番組のようなワクワク感 を持ち、集中力が継続することを期待したが、 寝ている輩がいなかったのにはホッとした。ま た、今回はプライマリーケアに関する問題を選 び、その正答率が高かったことは嬉しいことで あった。例えば、心電図を取る際の電極の位置 の問題があった。救急室で研修する際に必須と なる知識であり、基本であり良問と思われ、学 生の正答率は約85%であった。学生が国試に 受かる為には未だまだ勉強が必要だが、全員が 合格して医療人としての良いスタートをきって 欲しいものだ。
医師会員の皆様も、医療系学生の講義や院内 の研修会等に応用できると思われる。なお、3e アナライザーは当院の専門研修センターから借 用した。また、本稿の国試問題の図は著作権に 関して厚生労働省に問い合わせた後に使用した。