北部福祉保健所所長 宮里 達也
WHO は、「人々がみな健康に過ごすことは、 人類普遍の人権の一つ」の理念の下、あまね く世界中でそのことが達成されることを目標 に、1948 年4 月7 日、国連の専門機関のひと つとして設立されました。その日を記念して 「世界保健デー」とし、毎年その年に特に力を 入れる課題を提示し、保健活動の活性化に努 めています。
ちなみに今年のテーマは「高血圧」です。高 血圧は、少なくとも先進国においては成人の3 人に1 人に見られる、最も普通の病気でしょう。 一方、それ自身では普通は特段の体の変調を感 じさせるものではないため、健康に関心を持つ 人でなければ、病的状態となかなか認識できな い。そういった人もすくなくありません。しか しながら、心臓発作や脳卒中、腎不全などのリ スクを高めることは間違いなく、高血圧を引き 起こさない生活改善や、高血圧となった場合の、 治療の重要性を住民に啓発することがきわめて 重要であります。
私事で申し訳ないが、実は私も30 歳代から 高血圧の治療薬を2 種類飲んでいます。きっか けは、臨床現場で働いていた時、気分不良にな って休んでいると(おそらく高血圧が原因で気 分不良になったのではないでしょうが)同僚の 医師が診察してくれました。その時、測定不能 なほど血圧が上昇しており、「このままじゃ10 年生きることができませんよ!」そう警告され ました。
そんな事もあり、1 週間ほど県立中部病院に 入院し、いろいろ調べていただきました。蓄尿 とトイレ以外はベッド安静を指示されましたが、1 週間も何もしないでベッドに寝転がって いるという事が、大変苦痛であることを実感し ました。しかしながら、それ以来、内服治療で 血圧は安定しており、命も同僚医師の予想の3 倍以上長生きしてしまい、皆様にいろいろご迷 惑をおかけする機会は増えて申し訳ありません が、自分自身にとっては大変ありがたい事だと 思っています。
さて、厚生労働省の調査等の各種報告によれ ば、日本人の40 歳から74 歳の年齢層の男性 は約6 割、女性は約4 割が高血圧(140/90mmHg) とのことです。ただ、収縮血圧の平均値が一番 高かったのは1960 年代前半で、その後男女と も血圧は下がっています。1955 年には治療を 受けていた人は10 万人対61 人であったのに、 2005 年には513 人と増加しており、治療薬の 進歩とあいまって、状況の改善が見られている のは間違いないでしょう。
その一方、高血圧者のうち適切な治療を受け ている人は、約2 割に止まっているようであり ます。国民の血圧が平均2mmHg 下がれば、脳 卒中による死亡者は約1 万人減り、新たに日常 生活活動が低下する人の発生も3,500 人減るこ とが見込まれています。また、循環器疾患全体 では2 万人の死亡が防げるとの予測もあるよう で、私たち医療の専門化には、血圧コントロー ルの重要性を、住民に伝える責任があると考え ます。
世界保健デーのテーマが「高血圧」であると いった絶好の機会を活用し、住民の皆様方に高 血圧治療の重要性への啓発活動をさらに強化し ていきましょう。