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都道府県別平均寿命陥落にかかる
緊急アピール

玉井修

理事 玉井  修

年末には発表される予定の都道府県別平均寿 命が年が明けても発表されず、いつまでも発表 されない平均寿命の統計発表に私は少々いらつ いておりました。しかし、2 月26 日のお昼頃 になって、どうやら平均寿命の発表が2 月27 日から3 月1 日の間に行われそうだという情報 が県医師会に伝わり、急遽2 月26 日(火)の 理事会に県医師会として何らかの緊急アピール を行う必要性があるのではないかという事で議 論されました。やるならば、県庁の記者クラブ で緊急記者会見を行い、広くマスコミに訴える ために緊急アピール文を作成しようという話に なりました。理事会では緊急アピール文のたた き台を示して議論し、各理事者からご意見を頂 き、2 月26 日深夜から緊急アピール文の練り 直しを行いました。翌2 月27 日の夜、私が特 定健診の説明会のため名護会場に入ると、突然 私の携帯に電話が入り、男性30 位女性3 位と いう情報が入ったこと、これに対応した緊急記者会見を2 月28 日午後7 時から県庁記者クラ ブで宮城会長と私とで行う事となりました。
ついに、2 月28 日当日となりました。正式な 厚生労働省からの発表は午後4 時でありました が、記者会見に臨むには事前に出来るだけの情 報を収集する必要があります。私は日本医師会 にお願いして出来るだけ早急に情報の提供を頂 きたいとお願いしましたところ、午後には詳細 なデータが手に入りました。これを元に記者会 見に臨むためにデータを頭に詰め込みました。

午後7 時前に県庁記者クラブに到着すると、 そこには4 〜 5 台のテレビカメラと10 本はあ ろうかと思うマイクが机に並べられ、20 人ほ どの記者が我々の到着を待っておりました。緊 急アピール文を配布し(別に掲載)早速記者会 見が行われました。地元新聞社、朝日、読売、 毎日新聞社、共同通信社、沖縄テレビ、NHK、 地元ラジオ局も駆けつけ、非常に鋭い質問と答 弁が行われました。

今回の都道府県別平均寿命において男性30 位と更に順位を下げ、女性は長年堅持してきた 首位の座から陥落するという事態は長寿県沖縄 において象徴的な出来事であり、これを機に健 康長寿を取り戻す県民運動を真剣に取り組まな くてはならない事をマスコミに訴えました。ま た、厚生労働省のデータ表2 には平均寿命の 伸び率が男性32 位、女性46 位となっており、 今後更に順位を下げる事が容易に予想される状 況であり、早世率全国1 位の事態を改善するた めに壮年期、青年期、あるいはもっと若い世代 である子供達に対する生活習慣改善の取り組み が急がれている事をマスコミにお話しました。 マスコミ側からは具体的な対策をどのようにや っていくのかという質問が多かった様に思いま す。啓発事業だけでは事態が改善しない事はこれまでの歴史が教えてくれています。県民に積 極的に介入する事業を具体策として検討する必 要があります。現在沖縄県医師会が進めている 特定健診事業とそれにリンクさせた特定保健指 導支援事業などが頭に浮かびました。生活習慣 改善の為に積極的に介入するシステム作りを 様々な立場の方達と協働して行っていく具体的 な行動が求められています。また、未だに危機 感の薄い県民に対して、しっかりとした問題意 識を持ち続けて貰うためにもマスコミと今後一 層の協力体制作りが大事であると記者会見でお 話しました。

あれほど多くの記者に囲まれ、雨のように浴 びせられる質問に答えるという得難い経験をさ せて頂きました。日頃緊張する事は滅多にない 私ですが、今回はかなり緊張しました。

都道府県別平均寿命陥落にかかる緊急アピール

このたび、都道府県別平均寿命の順位が発表され、沖縄県の女性の平均寿命が首位から陥落し、 男性の平均寿命も30 位に転落という事態を踏まえ、沖縄県医師会は長寿県沖縄の復活を目指し、 ここに緊急アピールを行います。

我が沖縄県は去る大戦の後、食糧難を生き抜き、懸命に働いた先人達が多くのものを我々に遺 してくれました。その最たるものは健康長寿という素晴らしい遺産であり、この事により沖縄県 は対外的に多くのブランドイメージを発信する事が出来、これは現在、沖縄県の重要な産業基盤 の一つとなっている事は論を俟ちません。

しかし今、先人達が遺したこのブランドイメージは大きく傷つこうとしています。10 年前に男 性の平均寿命が26 位に転落、メタボリック症候群に代表される生活習慣病の増大、健診受診率の 伸び悩み、65 歳未満の死亡率(早世率)の悪化など、既に多くの危機的状況が明らかになり、沖 縄県医師会も保健医療活動、広報活動等を通じて様々な取り組みを行って参りましたが、今般、 特に女性の平均寿命順位が首位から陥落したことは遺憾とするところであります。

ここに沖縄県医師会は沖縄県の健康長寿復活を期して県民の皆様にお願い申し上げます。ご自 身とご家族、そして社会全体を救えるのは県民一人一人の意志の力です。誰かが何とかしてくれ る事ではありません。県民一人一人の意志の力で、沖縄県の健康長寿を復活させるため、以下の 提言を致します。

1)肥満解消のため、食事や運動など生活習慣の改善に取り組みましょう。
2)特定健診など各種健診(検診)を受けて、病気を未然に防ぎましょう。
3)治療中の方は、医師の指示に従って治療を継続しましょう。

沖縄県医師会は県民と共にあります。これから健康長寿を取り戻すため、一緒に努力してまい りましょう。この素晴らしいふるさと、沖縄の健康長寿を取り戻すため、一緒に頑張ってまいりましょう。

都道府県別にみた平均寿命

平均寿命

平均寿命(0歳の平均余命)は、全国の男で79.59年、女で86.35年となっているが、これを都道府県別 にみると、男では、長野が80.88年で最も高く、次いで滋賀(80.58年)、福井(80.47年)の順となっている。 女では、長野が87.18年で最も高く、次いで島根(87.07年)、沖縄(87.02年)の順となっている。

平均寿命の最も高い都道府県と最も低い都道府県との差は、男3.60年、女1.84年となっている。(表1)

表1 平均寿命

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表2 平均寿命の延び(平成22年−17年)

表2
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沖縄タイムス提供 沖縄タイムス3 月1 日(金)掲載

表2

琉球新報社提供 琉球新報3 月1 日(金)掲載