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第54回地区医師会連絡協議会

白井和美

那覇市医師会理事 白井 和美

地区医師会が抱える諸問題・課題について県 内7 地区医師会が共通の認識を持てるように協 議する本連絡協議会が、1 月20 日(日)、那覇 市医師会担当の下、パームヒルズゴルフリゾー ト会議場にて開催された。総勢67 名の参加者 が一堂に会する中、本会真栄田篤彦会長から、 短い時間ではあるが、活発な協議を期待する旨 の挨拶があり、早速協議に移った。

協 議

1. 予防接種の広域化について
那覇市医師会 理事 宮城政剛

〔提案要旨〕予防接種の接種機会の拡大を図る ための最大の課題は、那覇市の接種委託料金の 低さであることは十分承知しており、行政とも 今後も協議を続けていく予定ですが、これと並 行して予防接種の相互乗り入れを御願いしたい。

〔各地区医師会の回答〕

○北部地区医師会 接種率向上のために相互乗り入れは効果がある。現在はほとんどの地区医師 会と契約を締結しており、今後はミスを少なく するための予診用紙の統一等にも取り組みたい。

○中部地区医師会 相互乗り入れは、「かかり つけ医の下での接種が望ましい」との観点から は賛同できるが、委託料金に差がある場合、自 治体が低い料金設定の処と合わせるように働き かけるのは必至であり、那覇市医師会側の更な る努力が無ければ難しい。

○浦添市医師会 定期接種に関しては、料金に かかわらず相互乗り入れを行っていくべきと考 えている。全国的には県単位での広域化が行わ れている例もあるので、検討すべきである。

○南部地区医師会 BCG 以外の予防接種につ いて、那覇市医師会が代表者となり自治体と集 合契約を締結すれば相互乗り入れは可能だ。た だ、この場合も接種料金が他地区医師会と差が 無くなるような努力をお願いしたい。

○宮古地区医師会 集団接種を中心に実施しているため、全県統一料金の設定は困難と考える。

○八重山地区医師会 地理的に考えて住民サイ ドの利便性はないと考える。しかし、委託料金 が担保されるのであれば広域化に反対はしない。

○沖縄県医師会 佐賀県と長崎県の2 県で県下 統一料金を実現することなく相互乗り入れに成 功している。これは、各地区の異なった委託料 金を承知の上で、手挙げ方式で相互乗り入れを 行っているものだ。参考にできる部分があれば、 当県でも相互乗り入れが実現できるよう工夫し ていきたい。

○中部地区医師会 この例は、失敗ではないか。 行政から一本釣りされて協力を行う医療機関が 出ると、いずれ料金への懸念も出てくる。中部 地区医師会は、確固たる算定根拠に基づき予防 接種委託料を設定し、行政と交渉している。こ の姿勢を見習って欲しい。

○那覇市医師会 他地区医師会にご迷惑をお掛 けしていることは、大変心苦しく思っている。 新規の委託料金は、中部地区医師会が設定され た料金算定根拠を提示し交渉した結果、おおよ そ同程度の委託料金で契約することが出来た。 今後も積極的に行政に働きかけていきたいの で、ご理解のほどよろしく申し上げます。

○那覇市医師会 (真栄田会長)MR の個別接種 化を県内でいち早く実施したのは那覇市であっ たが、委託料金に関してはなかなか進展が見ら れなかった。しかし、今後は適正な委託料金設 定に近づけるべくさらに努力したい。また、消 費税に関して、増税時にきっちりと上積分を請 求できるように注意していく必要があると考えている。

2. 地区医師会の認知症への関わり方について
那覇市医師会 理事 喜納美津夫

〔提案要旨〕沖縄県では平成23 年3 月末現在、 30,000 人を超える認知症患者がいる。今後増 加の一途をたどる認知症患者対策として、那覇 市では講演会の開催、多職種との連携を図る「認 知症連携の会」などを行っているが不十分であ る。来年度からは12 か所の地域包括支援セン ターが稼働し、認知症対応の主要な窓口となる 予定だが、市全体の連携に関しては未知数だ。各地区での認知症対策の現状、課題、展望など について伺いたい。

〔各地区医師会の回答〕

○北部地区医師会 今後は認知機能低下の早期 発見に取り組んでいく必要があり、対策を講じ たい。リスクファクターの把握、地域での多職 種連携による情報共有、認知症疾患医療センタ ーの設置、社会全体へ向けた取り組みなども行 っていきたい。

○中部地区医師会 厚労省の補助事業、「在宅 医療連携拠点事業」を行っており、この中で認 知機能の低下した患者の掘り起こしと対策につ いて考えている。地域包括支援センター、ケア マネともに、介護認定された高齢者、認知症患 者への対応で手一杯である。しかし、これは重 要な課題であり、多業種と連携して活動したい。 また、グループホームも待機患者が多く不足は 明白なため行政への働きかけも必要である。

○浦添市医師会 2007 年から「認知症地域支 援体制構築等推進事業」に取り組んでいる。広 報誌による市民への啓発、市のHP で「地域資 源マップ」の作成、3,400 名超の認知症サポー ターも養成した。市の高齢者プラン策定委員に 医師会から委員が参加し、意見の反映を図っている。

○南部地区医師会 「東風の里」を運営し、高 齢者の入所、通所、リハビリを行っている。ま た、認知症疾患医療センターは2 か所で設置予 定がある。しかしそれ以外の取り組みは遅れて いる。日精協高齢者医療・介護保険委員会作成 の「オレンジ手帳」は、地域連携に役立つもの と考え提示した。

○宮古地区医師会 地域特性を考えた支援体制 の構築が不可欠で、宮古島独自のプランを医師 会が全面的に支援して構築すべく計画実行委員 会を発足させる予定。

○沖縄県医師会 県医師会として主体的に取り 組んでいる事はないが、各地域で特性を生かし た取り組みのバックアップを行って行く。平成 25 年度に基幹型と地域型の2 ヵ所の認知症疾 患医療センターの設置を目標にしており、今後は各地区の問題を集約してサポートしたい。

3. 複数の医療機関(病院または診療所)が同一の患者に睡眠薬、抗不安薬等の過量処方をしないための対応策について
那覇市医師会 副会長 友利 博朗

〔提案要旨〕宮古地区において今回、ハルシオン(0.25 r× 2T)が2 つの院外薬局と2 つの 院内薬局で2 年以上も処方されていたケースが 見つかった。当会では、今後お薬手帳の活用の 徹底、1 年以上同一の睡眠薬、抗不安薬を処方 されている、用量が短期間に増加しているケー スに関しては病院・診療所でのリストアップや 確認指導を行っていくこととした。各医師会で の対応と、支払基金との連携の可能性などについて知りたい。

〔各地区医師会の回答〕

○北部地区医師会 お薬手帳の有効な活用で故 意による薬の乱用は防止できると考えている。他 県では、院外処方箋の不正コピーに対し、複写 であることが表示される用紙が使用されている。

○中部地区医師会 患者の意図的とおもわれる 過剰な薬剤の要求に対して現在のところ、医師 会でも薬剤師会でも抜本的な対策はない。疑わ しい場合は、支払基金からの情報提供もお願いしたい。

○浦添市医師会 現状チェック体制はない。意 図的に過量投与を要求する患者は、お薬手帳を 提示することもないであろう。個人情報保護法 の関連で、どの程度のことができるかわからな いので、今後検討したい。

○那覇市医師会 以前過量投与に関する注意喚 起を文書で行ったが、特別な取り組みは行っていない。ただ、薬効が不十分のケースも否定で きず、専門医との連携も重要と考える。

○南部地区医師会 特に対策を講じていなかっ たが、宮古地区の示された防止策は有効だと考 える。支払基金での審査システム改正により、 問題となるケースの特定が可能なら、基金サイ ドに要請しても良い。

○八重山地区医師会 こういう問題は、患者側 に何らかの問題がある場合が多い。問題がある 患者には、主治医以外決して処方しないように する以外対策はない。

○沖縄県医師会 基金からの情報提供は有効で はあるが、一方で、その患者に関する全ての医 療機関での処方への裁量権を基金が持ちかねな いと云う両刃の剣でもあるため、十分慎重に考 える必要性を感じている。

活発な討論が行われたが、紙面の関係でごく一部のみの掲載となった。

次いで、県医師会から、「特定保健指導の支 援ツールのデモンストレーション」、「重粒子 線治療施設導入に係る検討基礎調査事業につい て」の報告が行われた。

最後に、本協議会を締めくくるに当たり、沖 縄県医師会 宮城信雄会長よりご挨拶を頂いた 後、次期開催地区医師会を代表して、北部地区 医師会の大西弘之副会長より、「自然豊かな北 部の地での開催に是非ご期待ください。」と力 強いご挨拶があり、協議会は無事終了した。

また、午後には有志の方々によるゴルフコン ペも引き続き開催された。午前中のくもり空と 打って変わった晴天の中、良いストレス解消に なっただろうか。