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九州医師会連合会 平成24年度
第2回各種協議会

3. 地域医療対策協議会

常任理事 宮里 善次
理  事 本竹 秀光
理  事 照屋  勉
理  事 玉井  修

協 議

(1)基準病床数の算定について(沖縄県)

【提案要旨】

現在、基準病床数の算定については、医療 法第30 条の4 第2 項第11 号の規定に基づき、 一般病床と療養病床それぞれの種別に応じ算定 した数の合計数を二次保健医療圏ごとに定める こととされている。

これにより、沖縄県の二次保健医療圏によっ ては、一般病床の既存病床数が基準病床数を極 端に下回る場合であっても、療養病床の既存病 床数が基準病床数を上回ることで、総数として 基準病床数が過剰となる医療圏が存在してい る。具体的には、中部保健医療圏において、一 般病床の基準病床数は3,056 であるのに対し既 存病床数は2,486 と570 床の不足となってい るが、療養病床の基準病床数は73 であるのに 対し既存病床数は1,298 と1,225 床の過剰とな り、総数として中部保健医療圏の基準病床数は 640 床の過剰となってしまう現状にある。

本県は、人口10 万人当たりの救急告示病 院数が全国平均(3.1)よりも低く(2.0)、また救急病院の病床数も全国(680.5)より低い (535.6)状況にあり、特に中部保健医療圏にお いては、人口10 万人当たりの救急病院数1.0、 救急病院の一般病床数336.2(県内医療圏の 63%)と、本県の医療圏においても最も低い状 況となっている。このような状況において、中 部保健医療圏の救急病院の病床利用率は94 〜 104%(平均100%)を超えるとともに、平均 在院日数も9 〜 14 日(平均12.9 日)と非常に 短く、中部保健医療圏における救急医療の体制 は限界の状況にあり、喫緊かつ適切な対策が求 められているところである。

県行政においては、救急医療に係る特例病床 を一定程度増やすことで救急医療の現状をわず かながらでも緩和したいとする方針を示してい るところであるが、本来は医療計画の中で地域 のニーズに応じた病床数を確保することが緊要 であり、そのためにも基準病床の算定について は、一般病床と療養病床を合わせた形ではなく、 それぞれの必要数に応じた数を算定すべきであ ると考える。また、基準病床数の算定に老人保 健施設や特別養護老人ホームが加味されていることも大きな問題であると考える。

以上について、日本医師会並びに九州各県のご意見をお伺いしたい。

【九州各県回答】

九州各県ともに、既存病床が基準病床を上回 る過剰病床となっている。また、基準病床数に ついては、多くの県で一般病床と療養病床を分 けて算定すべきであり、特に療養病床の算定に 問題意識を抱えている。

一方、佐賀県では、現行制度化で一般病床と 療養病床を区分して算出し、運用する場合には、 医療機関の地域のニーズを反映した柔軟な病床 転換を阻害することが懸念されるとし、基準病 床数のシステムも含めて慎重に検討する必要が あるとの意見があった。

さらに、大分県からは、「医療圏によっては 救急やリハビリに問題があるなど個別の指摘が あり、現行制度では医療圏で足りない種別のベ ッドを作ることはできず、既存病床の病床転用 しかない。病床増で医師・看護師確保を求める 方が、より困難という問題もあり、ベッド規制 がなくなれば解決する問題ではないか。」との 意見があった。

【主な意見】

○大分県:先進国では基準病床制度を撤廃して いることから、厚労省のワーキンググループで は基準病床制度の見直しが行われている。今後、 基準病床撤廃の可能性も考えられる。ただし、 仮に撤廃となって自由競争した場合、7 対1 看 護の問題等もあるので、与えられた病床を有効 に使えるかどうかについては分からない。流れ としては、新規参入や医療圏で足りない病床の 増床が不可能なため、既存病床の転換やM&A 等で種別を変えることしか出来ないので、将来 的には数回改正が行われて基準病床撤廃の動き が出てくるのではないかと考えられる。

○熊本県:熊本県でも全ての二次医療圏が病床 過剰となっているが、病床利用率は約70%とな っている。また、二次医療圏内の法人合併や有床診療所が一般病院へ吸収される動きが見られる。

○長崎県:長崎県でもM&A が行われ、一般病 院が有床診療所の病床を吸い上げ、結果的に有 床診療所が廃止になる傾向がみられる。高齢化 が進む中で有床診療所の役割は高くなると考え るので、本来あってはならないことで、それな りの規制は必要であると考える。

【三上常任理事コメント】

沖縄県からの一般病床と療養病床を分けて算 定した方がいいとの提案があるが、逆に言うと、 地域の医療ニーズや患者特性が変わった場合を 考えると、それぞれの基準病床数に縛られて一 般から療養、療養から一般といった移行が出来 ない事が考えられるので、別に分けるより、ト ータルの方が良いのではないかと考える。

基準病床の算定方法には問題があり、一つは 平均在院日数を短縮して病床数を削減しようと いうことで、実測地に0.9 を乗じて10%を削 減していく形がとられている。また、ブロック 別に分けた基準値を設定しており、地域ニーズ に合わないことが起こっている。さらに、在院 日数についてはDPC の関係から、これ以上減 らすことが出来ないにもかかわらず、0.9 を乗 じていることが問題である。

もう一つは、療養病床の算定についても、 介護施設などで対応可能な数が差し引かれて いるため、本来必要な数よりも少なく算定さ れている可能性があり、今後、見直していく必要がある。

さらに、有床診療所の病床を一般病院の病床 に吸収されている傾向が見られるが、本来、有 床診療所の病床数を基準病床数に盛り込められ ることになっているものの、本来、有床診療所 と病院の病床の役割は違うと考えているので、 問題意識として持っており、現在調整中の段階である。

(2)地域医療計画の見直しについて(福岡県)

【提案要旨】

地域医療計画の見直しについては、平成24年9 月29 日の同協議会にて各県での対応につ いてお伺いした。

本県では、この見直しについて、地域の医療 を担っている医師会としての意見を積極的に提 言するため、県医師会に地域医療計画見直し プロジェクト委員会を発足させ、平成24 年10 月の第6 回委員会で取り纏めを行い、「福岡県 保健医療計画見直しの提言」として福岡県医療 審議会医療計画部会に提出した。

現在、行政では保健所を中心に5 疾病・5 事 業および在宅医療の現状と課題について取り纏 められており、やや遅れているものの、今後、 ヒアリングやパブリックコメントを経て医療審 議会での答申、保健医療計画の公示となる予定 となっているので、今回の提言が計画の内容に 反映されることを期待している。

ついては、各県における保健医療計画の見直しの進捗状況についてお伺いしたい。

【九州各県回答】

九州各県ともに、会内委員会もしくは県行政 が設置する医療審議会や医療計画策定に関する 協議会等へ会長や担当役員が参画し、医師会の 意見を反映している。

また、今後のスケジュールに関しても、協議 会等での意見を踏まえ、パブリックコメント等 を経て医療審議会での答申、当該計画の公示の 予定となっている。

前回の地域医療対策協議会の回答と同様に、 福岡県と熊本県、宮崎県においては既存の委員 会ではなく、医療計画見直しのためのプロジェ クト委員会や意見交換会等を開催し、県行政へ の提言を行っている。

【主な意見】

○大分県:福岡県のようにプロジェクト委員会 を設置し、行政に提言することは理想的な事で ある。本県では、二次医療圏の見直しや基準病 床等に関して、前回と変わらないのが現状であ る。結局は、厚労省が描いたシナリオに乗っか って、一部、二次医療圏の見直しについては反 映したという結果になった。現実的には変わっていないが、内容的にはかなり深い議論が展開 でき、自県の地域格差が明瞭に出たのではない かと思う。

【三上常任理事コメント】

地域医療の再興は横倉会長のキャッチコピー でもある。

平成23 年に日本医師会は、4 疾病5 事業に 関する調査を行ったが、医師会が主導的あるい は関与し、医療計画を策定した方が地域の実状 を確認できるという結果になっている。

地域医療対策協議会や医療審議会が形式的な 傾向にみられるので、是非、医師会の積極的な 関与をお願いしたい。

厚労省の病床機能情報の報告・提供の具体的 なあり方に関する検討会では、平成30 年度に 都道府県地域医療ビジョンを策定するための議 論を展開している。

当検討会の制度設計の中で、都道府県医師会 の関与を強調し、連携を密度の濃いものにしなけ れば地域差が生じるという提言をしていきたい。

※(3)(4)一括協議

(3)第6 次保健医療計画における在宅医療圏の設定等について(熊本県)

【提案要旨】

計画(案)では、各市町村の医療資源の状況 には大きな差があることから、一般的な保健医 療が概ね完結できる二次医療圏をもってひとま ず在宅医療圏とし、その上で、在宅医療に関す る医療と福祉の連携体制や在宅医療圏のあり方 などについて、引き続き、十分な検討を行うこ とになっている。

在宅医療圏の設定について、各県の状況をご教示いただきたい。

また、本県では、平成24 年度内の計画として、 二次医療圏単位とした各郡市医師会をはじめ各 職種の代表者に「地域リーダー研修会」を開催 する予定であり、県医師会、郡市医師会の役割 が重要となるが、各県においてどの様な取り組 みとなっているかご教示いただきたい。

(4)在宅医療における郡市医師会、県医師会の関わりについて(宮崎県)

【提案要旨】

今後の高齢者の増加と若年者の減少という人 口構造が変化する中で、現状の急性期入院医療 を中心とした医療提供体制のままでは、患者ニ ーズに応えられないだけでなく、医療機関経営 にも機器をもたらすことが危惧される。

在宅医療の充実が必要になることは明白であ るが、現状は、在宅医療へ積極的に関わる医師 が少なく、在宅患者の病状変化に対応する後方 病床の確保が困難、訪問看護や介護施設との連 携不足、また情報不足など、解決すべき課題は 多岐にわたる。これらに対して郡市医師会、県 医師会が積極的に働きかけていくことが必要と 考えている。当県では、本年5 月に宮崎県医師 会在宅医療協議会を立ち上げ、郡市医師会ごと に医療・介護資源のマップ化と、多職種連携を 図るための定期的な協議会や交流会を行う方向 で動き始めた段階である。

各県における医師会としての在宅医療の関わ りの考え方、また有用な取り組みがあればご教 示いただきたい。

【九州各県回答】

在宅医療圏の設定は、二次医療圏を単位と した設定が多くみられるが、大分県、長崎県 においては、郡市医師会を単位に設定してい る。沖縄県では現時点で検討は行われていな い現状である。

「地域リーダー研修会」の今後の予定につい ては、九州各県ともに事業主体や具体的な方法 が定まってはいないものの、県医師会や各郡市 医師会の役割について重要視している。

今後の医師会としての関わりについては、九 州各県ともに、地域リーダー研修会の実施や多 職種による協議会の設置、実態調査、人材育成、 普及啓発活動等々、体制整備に向けた取り組み を展開していくことが重要であるとしている。

【主な意見】

○大分県:在宅医療圏については、小さすぎると纏まらないので郡市医師会単位としている。 10 のモデルがある中で、まずは別府市医師会立 の訪問看護ステーションを連携拠点とし、開業 医と訪問看護、その他の施設を連携して実施し ている。問題は地域包括ケアの都市部と郡部で は状況が違うので、県医師会の役割としては都 市部や郡部などの地方であっても、どう支援し ていくかというアイディアを考える必要がある。

○長崎県:長崎県では、長崎在宅Dr. ネットを 立ち上げて活動している。県の役割は在宅、救 急医療体制が整っていないところの支援を考え ていくべき。リーダー研修等を通じて県医師会 として関わりを持っていきたいと考えている。

○鹿児島県:在宅医療は多くの関係機関等との 連携が必要である。そのためには、二次医療圏 単位で設定し、郡市医師会等の意見を踏まえる べきである。連携の中心になるのは医師会であ ると考える。

○佐賀県:拠点は医師会が良いと県に調整して いる。在宅医療圏を中学校区にするにしても郡 市医師会と調整が必要になる。後方支援も医師 会がないと出来ない。二次医療圏に郡市医師会 と訪問看護ステーションがあるところは、拠点 として成り立つが、ないところをどうするか問 題が残っている。

○熊本県:ペイがなければ進まないと思う。診 療報酬の関わりについても研修の中に盛り込ん でいきたい。

○宮崎県:市内は体制が整っているところもあ るが、少し離れると有床診療所の無床化や高齢 化等により厳しい状況にある。地域包括ケアを 郡市医師会が中心となって調整役となれば、上 手くいくのではないかと考える。

○長崎県:2 年前に在宅医療に係る地域の医療 資源調査を実施したところ、へき地に関して在 宅医療を実施するところが少なく、訪問看護師も少ない状況にあった。介護施設での在宅死が 現実なのではないかと考える。そのためには在 宅医療に対する意識を持っていただく事や在宅 医療に関する技術的指導を行うような研修会が 必要ではないかと考える。

【三上常任理事コメント】

基本的に在宅医療は介護をベースにしなけれ ば出来ない。従って、医療圏ではなく在宅(介 護)医療圏で設定する必要があり、2 次医療圏 での設定は難しいと考える。ただ、地域包括ケ アシステムは中学校区が基本となっているもの の、都市部と郡部でも明らかに違う。地域ケア 研究会のタナカ先生が作っているモデルは都市 部の高齢化を見据えたモデルで作られている。

リーダー研修は、九州ブロックで齟齬があり、 国立長寿医療センターの説明会が行われたが、 医師会を通さず行われた経緯がある。先方には 申し入れをして謝罪を受けている。

また、医政局を中心とする在宅医療連携拠点 事業と老健局が主導している地域包括ケア支援 センター事業等、二本で走っていることから齟 齬が生じている。今回は、在宅医療連携拠点事 業の中で市町村を中心に実施していくというこ ともあり、郡市医師会に委託できる形となって いるので、郡市医師会が計画を立てていくこと が重要となってくる。

さらに、今回、地域医療再生基金の積み増し として500 億円が補正され、在宅医療が盛り 込まれることになった。その中で、災害対応と 急変時対応の部分で、郡市医師会が関与できる ものとされている。在宅医療連携拠点事業には 薬局の部分と小児対応の2 つしか残っていない ので、既に市町村と郡市医師会と話し合いをし て、最終的に県医師会が関与していく形を取り、 地域医療再生基金に組み替えていく形を取った 方が良いと考える。

在宅死の届出が少しずつ増えてきている。し かし、自宅ではなく介護施設での増加である。 医療において在宅とは特養までで、介護におい ては特養は施設で、グループホームや高専賃、 サ高住は在宅となる。本来の自宅と集合住宅のような居住系施設と24 時間看護師等が配置さ れている介護老健施設や病院等、様々な形で分 ける必要があるが、それぞれ地域の実状に応じ て展開していく必要がある。

今後、自宅あるいは居住系施設等での看取り も考えていく必要があるが、これら診療報酬や 介護報酬を同じように扱っては効率的でないと考える。

(5)がん地域連携パス利用の普及にむけて(長崎県)

【提案要旨】

長崎県においては、がん地域連携パスの普及 に向けてワーキンググループを立ち上げ、活動 を行っているところであるが、登録数が増えな いのが現状である。

そこで、九州各県における、がん地域連携パ ス利用の現状と、普及に向けた取り組みをお教 え願いたい。

ちなみに、本県においては、8 拠点病院(6 がん診療連携拠点病院と、それに準ずる2 県指 定がん診療連携推進病院)と209 の連携医療 機関が登録。連携医療機関は全拠点病院と連携 する事にしているが、県下統一のパスは作って おらず、その作成にむけて提案中である。連携 医療機関数は、24 年度の登録患者数は次のとおり。

【九州各県回答】

九州各県ともに、連携医療機関数は多くの医 療機関が参加しているものの、登録患者などパ スの適用が低い状況となっている。

熊本県から、拠点病院間や診療科において、 パスに対する意思の偏りがあり、如何に熱心な スタッフを養成するかが重要との意見があった。

佐賀県から、年1 回の報告会より、パス本体 の精度が高すぎること、拠点病院あるいは連携 する地域の医療機関等において、パスの理解や 自覚が不十分であること等の意見があった。

福岡県から、パスを使用する医療機関のアン ケートより、記入が大変であることや費用の問 題、拠点病院が自己完結型で地域医療連携の意 義がない等の結果が紹介された。

大分県から、行政主導で実施している為、趣 旨が伝わらない。拠点病院のコーディネータの 役割が重要で、横のつながりに重点を置くべき であるとの意見があった。

鹿児島県から、自己完結やコーディネータの 役割が連携パスに繋がる運用になっていないと の意見があった。

【三上常任理事コメント】

平成22 年の診療報酬改定において、がんの 地域連携推進やがん医療水準の均てん化の目的 で、がん診療連携拠点病院と診療計画策定の連 携病院や診療所で算定が可能となった。

がん地域連携クリティカルパスを普及させる ことで、診療所と病院間の一層の連携推進に繋 げることとしている。

日本医師会の公衆衛生がん対策推進委員会に おいて、都道府県医師会を対象とした、がん地 域連携クリティカルパスの調査を行った。

調査結果では、70%で5 大がんのパスが実 施されており、90%のがん診療連携拠点病院が パスに参加している状況である。

また、がん診療連携拠点病院より、医師会や 地域医療対策委員会に協力・支援を求める声や 地方厚生局への届出の件について協力を求める 声があった。

パスの全県下統一については、必要性は認め るが、既に独自で成功しているところもあるの で、全て統一するのは難しく、必ずしも推進す るものではない。しかし、患者の囲い込みが行 われることが無いよう、医師会が参加して適切な 医療提供体制の整備を図るべきであると考える。

日医のがん対策推進委員会では、会長諮問を「我が国におけるがん対策の諸問題とその解決のための模索」としている。

当委員会の議論の中で、パスについて措置が 進んでないとの意見やパスを利用して報われて いないとの意見があがっている。

また、医師会を中心に医師のみならず市民向 けの啓発活動も重要であるとし、委員会におい て対策を検討し、作業の煩雑においても統一パ ス作成やインセンティブの面で国に要望してい きたいと考えている。

(6)1)へき地医療についての各県の取組みについて
   2)社会医療法人とへき地医療について(熊本県)

【提案要旨】

1)少子・高齢化、地域の医師不足は深刻であ る。本県は県立病院がなく、義務年限を終了し た自治医大出身者の地元定着率も低く、特にへ き地医療も厳しい状況にある。県民の医療に関 する問題であるので、政策医療とは言え県医師 会としても協力・支援する必要があると思うが、 各県の状況は如何か。

2)今後「1 年間のへき地医療支援の実績を経 て社会医療法人になれば非課税」ということを 主目的とした社会医療法人も増えてくる(行政 側は増やしたいと考えている)と思われるが、 医療の質・継続性、住民の希望への対応など少 なからず懸念が残る。へき地医療支援と社会医 療法人に関してどの様なスタンスで対応してい くか、各県のご意見等をご教示いただきたい。

【九州各県回答】

九州各県ともに、へき地医療の取り組みにつ いては、直接的な関与はないものの、行政が設 置する協議会等への参画や自治医大卒業生の義 務年限等を活用している。

なかでも、福岡県では、福岡市医師会が福岡 市より運営委託を受けて、玄界島診療所の運営 を行っている。

鹿児島県では、鹿児島赤十字病院が実施して いる離島での特定診療科(眼科・耳鼻咽喉科・ 皮膚科)巡回診療において、眼科医会や耳鼻咽喉科医会と連携して協力している。

宮崎県では、県・市町村、宮崎大学及び県医 師会で構成する県地域医療支援機構を設置し、 医師のへき地医療機関への派遣について協議を 行うなど、へき地医療の充実に向けた積極的な 取り組みが進められている。

社会医療法人とへき地医療については、九州 各県ともに、社会医療法人が地域の実状に応じ た公益性の高い役割を担うことは望ましいとす るものの、質や継続性、サービスの向上等は必 須要件であるとし、認定審査の書類上の基準を 満たすだけでなく、非営利性を徹底し、年度ご との活動実績を審議・評価する場が必要である とされた。

なお、へき地医療で認定されているのは、鹿 児島県(4 か所)と長崎県(1 か所)のみとなっている。

【主な意見】

○鹿児島県:医師不足の背景には研修制度が あげられる。出身大学で研修を行うという事 に戻さないと根本的な解決は図れないのでは ないか。

○三上常任理事:地域に残ってもらう方策とし て医師養成のグランドデザイン第3 版を作成中 である。卒業大学に研修センターを作り、そこ に登録後、マッチングするという仕組みになっ ている。出身大学で全て研修することは難しい ので、出身大学を中心に研修をしていくという システムになる。医師偏在対策として、地域医 療支援センター構想と地域医療対策協議会の活 性化、大学病院の研修センターと都道府県研修 機構を設置し、都道府県単位で医師の配置を考 える仕組みを構想として考えている。

○大分県:社会医療法人は公的意味合いが強い 医療法人であるが、実状はそうでもない気がす る。ある程度、透明性の担保や評価・検証等が 行える仕組みづくりが必要と考える。

【三上常任理事コメント】

基本的にへき地で簡単に社会医療法人が取得 できるかというと、ほとんどが救急医療での認 定になっていると思う。いわゆる優遇税制があ るので法人経営は楽になる。

本来は、公立病院の指定管理者になってもら おうと考えていた。日医の立場としては医師会 が主導でやってもらうという考えであった。

現在、社会医療法人の要件は4 疾病5 事業の うちの5 事業と公益性が高い事業を実施するこ とが認定要件となっている。また、非営利徹底 という事で特定医療法人と同様な要件を満たし ていることになる。5 事業の問題に関しては逆 に、人口が増えればへき地要件がなくなること や橋が架かれば離島でなくなること、近場に大 きな救急病院が出来て救急患者が激減するなど の外的要因が基準に入っていることが大きな問 題で、要件を満たさない場合、内部留保を無限 に遡り、それに対し課税する制度となっている ので見直す必要がある。

(7)高齢者の救急搬送と高次救急医療施設の後方支援について(佐賀県)

【提案要旨】

救急搬送の中で高齢者、特に75 歳以上の割 合は今後急速に増加するものと考えられてい る。特に居宅系の介護施設や介護老人保健施設 などからも搬送が増加傾向にある。さらに、高 齢者は合併症も多く、急性期病院から退院が可 能となっても、元の施設あるいは在宅では受け 入れられないケースも多く、後方支援の入院施 設を探すことに労力を費やすことも多い。

このまま推移すれば高次救急機能の低下が懸 念されるが、これらの問題に対し各県で何らか の取り組みをされているのか伺いたい。

【各県回答】

1)各県の対応策について

高齢者の救急搬送については、各県とも救急 搬送の増加傾向が見られ、具体的な対応策を講 じているのは大分県のみであった。大分県は、 国が実施する「在宅医療連携拠点事業」を通じて、3 地域で医師会を中心に取り組みを開始し ていると報告した。

また、長崎県、熊本県、福岡県、沖縄県の4 県では、行政や各々専門部会等での検討段階に あるとの回答であった。

この他、長崎県から日医へ、在宅医療の推進 にあたり、後方支援の手段として、有床診療所 の必要性と入院基本料の増額を訴えて欲しいと の要請があった。また、福岡県では、救急告示 病院の医師やコ・メディカル等で構成された「福 岡救急医学会」で「予防救急」という概念が提 唱され、今後、救急搬送を減少させるための方 策を検討することを説明した。また、沖縄県か らDNAR の意思表示について統一したフォー マットでの運用が望ましいとの意見があった。

【三上日医常任理事からのコメント】

高度・急性期病院へ終末期の方々が搬送され ることは避ける必要がある。基本的には、慢性 期病院や有床診療所等で引き受けて貰えるよう な連携システムを各地域において構築していく 必要がある。地域の実情に応じて勧めていただきたい。

(8)県医師会医療紛争処理委員会の今後について(長崎県)

【提案要旨】

長崎県医師会医療紛争処理委員会は昭和40 年4 月1 日に設置され、会員の物心両面の負担 軽減を図るため、付託された当該医療紛争事件 について、相手方との交渉、紛争処理並びに解 決にあたっている。

委員構成は、医師16 名、顧問弁護士3 名で、 加入者はA 会員全員加入、B・C 会員任意加入 で平成24 年11 月現在A 会員1,236 名、B・C 会員667 名(1,979 名中)で、現在、加入者か ら月額200 円の負担金を徴収している。新法人 移行にあわせて平成25 年4 月から負担金徴収 を廃止することになったが、医療紛争処理委員 会はこれまで通り継続し、その事業に要する費 用はこれまでの積立金を充当することとした。

昨年、日本医師会は医療事故調査に関する検討委員会答申において「すべての医療機関に院 内医療事故調査委員会を設置」、「ADR の活用 を推進する」などの目標を掲げた。診療所にお いては院内医療事故調査委員会を設置するこ とは難しく、県医師会又は郡市医師会の中に設 置し各診療所での事故発生時に指導・活用でき るよう考えているが長崎県ではまだ手つかずの 状態である。またADR についても中立処理の 場を提供できるよう設置が望まれるができてい ない。県の医療紛争処理委員会は今後進化して ADR の役割、医療事故調査委員会の役割を果 たせるのか、または別組織を作っていくのか各 県の動向を教えて欲しい。

【九州各県回答】

九州各県ともに、「医療事故調査委員会」、 「ADR の活用」については、中小病院や診療所 に設置が困難な事や日医の方向性がはっきりし た段階で検討することとしている。

熊本県では、平成24 年8 月に「医療安全会議」 を設置し、その下に「医療安全委員会」、「医療 事故調査委員会」、「医事紛争処理委員会」の3 委員会を設置し、組織強化を図った。

福岡県では、既存の「福岡県医師会医事調停 委員会」が最善のADR と考えており、郡市医 師会長宛に医療ADR に乗らないよう会員にお 願いしている。また、院内医療事故調査委員会 については、診療行為に関連した福岡県医師会 調査分析事業を立ち上げ、医師会が院内医療事 故調査委員会の設置を支援する「福岡方式」を 構築している。

沖縄県では、既存の医事紛争処理委員会が「医 療事故調査委員会」や「ADR」的な役割を担 うことを検討するとともに、既に委員会に医療 側だけではなく患者側からの意見聴取の場(顧 問弁護士同席)も設定する等、ADR 的な取り 組みを行っている。

【三上常任理事コメント】

昨年の12 月26 日に第2 期目の医療事故調 査に関するプロジェクト委員会で検討が行わ れ、各ブロックの医師会、全国医学部長病院長会議の代表を中心に議論が展開されている。

日医の基本的な考えとしては、善意で患者の 命を救おうとする医師が、結果が悪かったこと で刑事責任を問われることのない仕組みを構築 することである。

原因が明らかにならない場合は、まず医療提 供者自身により医学的な原因究明を院内調査と いう仕組みで決定し、それでも納得が得られな い場合に第三者機関を活用する。

これは医療提供者の原因究明と患者遺族への 説明、再発防止を徹底するための仕組みであり、 遺族への説明や理解を得るためのADR 活用や 最終的に救済制度の活用を提言している。

各医師会で実質的にADR 的な機能として実 績である医事紛争処理委員会というものを活か しつつ、患者遺族側にも開かれた仕組みを目指 すということも重要である。

しかし、今後具体的な制度設計をしていく中 で、地域の実状や経験から学ばせていただくと いう認識をもっている。

(9)(10)については、関連議題につき一括協議が行われた。

(9)大規模災害における九州ブロックのJMAT 活動を認識した災害医療救護協定の各県における進捗状況について(大分)
(10)第6 次保健医療計画(災害医療)における県医師会の位置付け並びに県防災計画におけるJMAT の位置付けについて(熊本県)

【提案要旨】

「災害医療救護協定」「第6 次保健医療計画」「県防災計画」における各種位置づけについて、各県の状況を伺いたい。

【各県回答】

1)「JMAT」活動を認識した「災害医療救護協定」への位置づけについて

JMAT を認識した救護協定の締結は長崎県が 先行しており、ほぼ完成に近い状態にあると回 答した。協定では、県医師会が派遣する医療救 護班を「JMAT 長崎」として位置づけられ、活動内容は、トリアージ、応急処置、搬送支援、 死亡確認他を、原則として避難場所、避難所、 及び災害現場等の救護所において実施する。さ らに、県行政が必要と認めた場合には、県外で の活動要請もあるとのことである。

熊本県、佐賀県、宮崎県の3 県は、今年度中 に「JMAT」の文言が盛り込まれる見込みであ るとした一方、福岡県、沖縄県の2 県は、現時 点で行政と調整段階にあると述べた。

また、鹿児島県では、既に保健医療計画(案) に「災害時医療救護協定に基づき県医師会と連 携し、医療救護班やJMAT の適切な配置に務 める」と明記されているが、役割等明確な位置 づけがないと説明した。

この他、沖縄県が関係団体へのJMAT の意 識付けを図るため、県防災訓練に「JMAT 沖縄」 として参加したとの報告があった。福岡県は、 郡市区医師会にも行政との協定の締結を図るよ う促していると報告があった。

また、大分県から作業が思うように進んでい ない要因として、JMAT が日医からの要請に 基づく派遣であるのに対し、現行の救護協定は 「県から県医師会に派遣要請を行う」点である と説明し、この問題を解決しないことには、「事 後追認や補償の問題などの具体的な検討が難し い」と指摘があった。

各県とも先駆的に進められている長崎県の協定を参考にしたいとの意見があった。

2)「第6 次保健医療計画」における「県医師会」の位置づけについて

大分県、鹿児島県、宮崎県の3 県で県医師会 救護班あるいはJMAT の文言が明記されてい るとの回答があった。なかでも宮崎県は「県外 派遣」を想定した災害時における医療救護に関 する協定の見直しについても記載されていると の報告があった。また、佐賀県や沖縄県では、 県行政と調整段階にあるとの回答があった。

提案県の熊本県は、古くからの特性もあり行 政の理解が乏しく、目標達成には程遠い状況に あることを報告した。

3)「県防災計画」における「JMAT」の位置づけについて

現在のところ、大分県が「県医師会医療救護 班」、長崎県が「JMAT」として、それぞれ明 記されていると回答した。熊本県、福岡県、鹿 児島県、沖縄県の4 県は、それぞれ行政等と調 整段階にあると回答した一方、宮崎県は、次期 改定時にJMAT も医療救護班の1 つとして記 載される見通しであると報告があった。

また、佐賀県では、現行の災害時医療救護マ ニュアルで、県医師会理事が県行政の災害対策 本部における医療救護部門へ、非公式アドバイ ザー的位置付けで出動することになっていると 説明があった。

4)その他意見要望

大分県から日医に対して、JMAT が自画自賛 的にならないよう、日医の積極的な研修会の企 画開催を求める意見があった。

また、鹿児島県から日医救急災害対策委員会 の報告書を3 月を目途に取り纏めることになっ ているとの説明があった。報告書ではJMAT の役割や衛星ステーションのコラボ、ブロック 単位での対応、薬の選別など「医師会による救 急・災害医療体制の整備」について提示する予 定とのことである。

宮崎県からJMAT の位置づけについては、 県行政も理解しだしているものの、日医や国の スタンスを明確にして貰わなければ、前進しな い問題であるとの意見があった。

【三上日医常任理事からのコメント】

JMAT については、防災計画や医療計画の中 にしっかり位置づけることが肝要である。その 為には、県と行政との間で、災害時の医療救護 協定の締結をお願いしたい。

医療救護協定の締結に関しては、震災直後に 日医が調査したところ44 県で既に県との締結 がされていたと伺っている。

その後、県行政との見直しについては、1)費用負担、 2)二次災害時の補償責任、3)緊急時の 事後承諾等、定期的に見直す必要がある。日医としても各県で前に進むようにバックアップしていきたい。

各県においては、協定の締結が済み次第、内 容について日医へお知らせいただきたい。この 協定が出来た段階でJMAT の派遣先もある程 度決まってくるものと考えている。各県から協 定書が出てこれば国も位置付けし易くなると考えている。

(11)大規模災害時の医科歯科連携の取り組みについて(鹿児島県) 

【提案要旨】

災害時における歯科医師会との連携について各県の状況をお伺いしたい。

本会では、本年11 月、歯科医師会からの呼 びかけにより、災害時の医療連携体制の整備に 向けて意見交換会を開催した。

今後は、災害時の「医療救護業務」「死体の 検案、身元確認業務」の2 点について、顔の見 える関係を構築し、年1 回程度協議の場を設け ることになった。また、本会警察協力医会と警 察歯科医会が連携の上、研修会を催すことなど が確認されている。

ついては、大規模災害時における歯科医師会 との連携の取り組みや、警察協力医会と警察歯 科医会との連携の取り組みなどあればご教示い ただきたい。また、併せて、救護所での活動に は不可欠な薬剤師会との連携についてもご教示 いただきたい。

【各県回答】

1)歯科医師会との連携について

鹿児島県を除く全ての県で、災害時における 医科歯科連携は出来ていないとの回答があっ た。大分県、佐賀県、宮崎県、沖縄県の4 県は、 行政主体の取り組み(県防災訓練、救急医療協 議会、国民保護共同実動訓練等)を通じて、歯 科との連携はあると回答があった。

この様な中、沖縄県が策定中の「沖縄県医師 会災害医療計画」において、歯科医師会や薬剤 師会、看護協会等と協力協定を結ぶ予定との説 明があった。

次いで、熊本県が既存の熊本県救急医療連絡協 議会(警察・消防・歯科医師会・薬剤師会・看 護師協会・警察医会・熊本空港・自衛隊・海上 保安局・県医療政策総室など)で歯科連携も視 野に入れているとの説明があった。また、佐賀 県では「科学捜査研究会」において、警察医・ 検案嘱託医(医師、歯科医師、警察関係者)の 交流が行われており、また、県内外災害時の検 案班派遣体制については、県警と医師会間で協 議を行っているとの説明があった。

長崎県は、従来の関係団体としての枠組みで連携は図っていると述べた。

2)薬剤師会との連携について

現状、全ての県で薬剤師会との連携は無いと 回答したが、沖縄県で協力協定を結ぶ動きや福 岡県で協議の場の検討も考えるとの説明があ り、各県とも連携の重要性は認識しているとの ことであった。

印象記

宮里善次

常任理事 宮里 善次

平成25 年1 月26 日に宮崎観光ホテルにおいて、九州医師会連合会が開催された。『平成24 年 度第2 回各種協議会』は1)医療保険対策、2)介護保険対策、3)地域医療対策の三部門が協議され たが、筆者は地域医療対策部門に参加させて頂いた。

今後在宅医療の推進を考えている厚労省は「平成24 年度多職種協働による在宅チーム医療を 担う人材育成事業委託費実地要綱」を定めた。

当県から「地域リーダー研修」の状況を伺ったところ、医師会立の訪問看護・ヘルパーステー ションや在宅医療連携事業者の代表等を中心に受講したり、熊本県のように医療、福祉、介護、 行政からなる在宅医療連携体制検討協議会を発足させて活動している現状が報告された。

福岡県においては国立長寿医療研修センターから提供されたテキストを使って、グループワー クを展開する予定である。

佐賀県では、在宅医療連携拠点事業を県行政が受託し、保健福祉事務所、郡市区医師会、県医 師会が連携して県下全域で実施している。

報告では各県とも取り組み方が若干異なるが、地方医師会が主導し県医師会が応援する形で本 事業を推進すると云う点は共通であった。

その中で大分県から「特定の医療機関や事業所が主導すると囲い込みの懸念から他の医療機関 や事業所の参加が停滞する恐れがある」と云う指摘は印象的であった。

さて、当県において在宅医療連携拠点事業として中部地区医師会と浦添市医師会の事業が採択 され取り組みが行われているが、他県における在宅医療の普及への取り組み状況については医療 圏の範囲をどう設定するかで議論がなされた。二次医療圏を範囲と考えている県が多かったが、 在宅医療を積極的に行う医師が不足していることや、在宅から入院となった場合の受け入れや退 院調整の困難さが指摘された。

日医の担当理事からは、在宅医療は東京や大阪、愛知、福岡などの大都市を念頭にいれた計画 であり、30 分以内の連携を考えていることが示された。

地方においては地方にあったやり方を工夫する必要があると述べられたが、少子高齢化で共稼 ぎをしないと生活できない時代に、逆行する制度ではないのかと云う意見も印象に残った協議会であった。

印象記

本竹秀光

理事 本竹 秀光

平成25 年1 月26 日(土曜日)に宮崎県で開催された九州医師会連合会平成24 年度第2 回各 種協議会における地域医療対策協議会に宮里常任理事、照屋理事、玉井理事とともに参加した。 その中で私の担当は医事紛争処理に対する長崎県からの提案事項「県医師会医療紛争処理委員会 の今後について」の協議への参加であった。提案の内容は、長崎県は昭和40 年に長崎県医師会 医療紛争処理委員会を設置、会員の物心両面の負担軽減を図るべく、医療紛争処理並びに解決に あたってきた。昨年、日本医師会は医療事故調査に関する検討委員会答申において「すべての医 療機関に院内医療事故委員会を設置」、「ADR の活用を推進する」などの目標を掲げている。しか し、現実問題として診療所においては院内事故調査委員会の設置は困難であり、代わりに県医師 会や郡市医師会の中に設置し、診療所での事故発生等に関して対処できるよう考えているが、実 行には至っていない。そこで各県の現状はいかがかの提案であった。沖縄県は院内医療事故調査 委員会を設置していないが、既存の医事紛争処理委員会がその任に当たっている。内容は医療側 だけでなく患者側からの意見聴収(顧問弁護士同席)も設定し、できる限り公平性を保ち、ADR (裁判外紛争解決手続き)的機能も合わせて行っている旨回答した。印象に残ったのは熊本県から の回答であった。平成24 年8 月に医療安全会議を設置、その下部組織として「医療安全委員会」、 「医療事故調査委員会」、「医事紛争委員会」を設置し、それぞれの問題に対処しているようであっ た。また、福岡県は昭和38 年に「福岡県医師会医事調停委員会」を設置し、医師11 名、弁護士 3 名で構成し、毎月1 回の委員会を開催しており、3,953 件の事案に対処してきたと報告していた。 この委員会は極力中立の立場をとっており、改めてADR の必要性はなく、むしろ会員には安易 にADR に乗らないよう通知しているとのことであった。結論として多くの県では医事紛争処理 委員会が依然中心であり、現段階で新たに院内医療事故委員会を設置することは人的、物的な面 で困難であるとの意見が多かった。また、ADR の活用については否定的であった。

印象記

照屋勉

理事 照屋  勉

「九州医師会連合会:平成24 年度 第2 回各種協議会」に初めて参加させて頂きました。小生が 参加したのは、「地域医療対策協議会」…。とても内容の濃い“11 題”もある協議事項の中の、(1)「基 準病床数の算定について」、(2)「地域医療計画の見直しについて」、(5)「がん地域連携パス利用 の普及に向けて」、(6)1)「へき地医療に関する各県の取り組みについて」、2)「社会医療法人と へき地医療について」…という“4 題” の担当ということで協議を拝聴いたしました。沖縄県が 提案いたしました協議事項(1)に関しましては、【日本医師会:三上常任理事】からの、1)「地 域の医療ニーズや患者特性が変わった場合、一般から療養・療養から一般という移行が出来ない 事態が想定できるので一般病床・療養病床を分けて算定するより、トータルで考えた方が良いの ではないか?」、2)「基準病床・療養病床の算定方法には問題があるので、今後見直していく必要 がある!」、3)「有床診療所の病床を一般病院の病床に吸収する傾向が見られるが、“有床診療所 と病院の病床の役割は違う!” と考えているので、現在、問題意識を持って調整中の段階である!」 …というコメントがとても印象的でした。また、協議事項(2)・(5)・(6)に関しましては、「各 県医師会・地区医師会が積極的に関与して欲しい!」というのが最終結論のようです。ところで、 沖縄県においても、平成元年に「沖縄県保健医療計画」が策定され、ほぼ5 年毎に見直しを行っ ておりますが、平成24 年度まさに今年度が、その見直しの年です。ご周知の通り、平成24 年3 月に、国の「医療提供体制の確保に関する基本方針」が一部改正されました。「4 疾病(がん・脳 卒中・急性心筋梗塞・糖尿病)」に「精神疾患」を加え、「5 事業(小児医療・周産期医療・救急医療・ 災害医療・へき地医療)」に「在宅医療」を加え、「5 疾病5 事業及び在宅医療」となり、今後も各々 の医療提供体制の構築が重要課題であるとされております。新しく追加された「精神疾患」に関 しては、「うつ病対策」・「自殺対策」・「認知症対策」など早期に精神科医療が提供され、再び社会 復帰することができる体制創りが求められております。また、少子高齢化社会において、慢性期 及び回復期患者の受け皿として、“看取り” を含む「在宅医療」の提供体制の整備も求められてお ります。そして、「沖縄21 世紀ビジョン基本計画及び実施計画」の個別計画として位置付けられ ている「沖縄県保健医療計画」の基本的な方向性のポイントとして、1)保健医療サービスの推進、 2)主要な疾病ごとの医療連携体制の整備、3)離島・へき地医療の向上、4)保健医療従事者の養成・ 確保と資質の向上、5)医療機能情報提供の推進…などが挙げられます。今後も、県民・医療機関・ 医師会・教育関係者・保健関係者・行政がさらなる連携の強化を図り、 “肥満解消”を目的とした「メ タボ・ロコモ対策、禁煙・節酒、ストレスマネジメント・歯周病対策」を推進させ、「健康長寿復活」 を願い、「安心・安全に暮らせる島」を目指し、一丸となって奮闘努力することが最重要課題と考 えます。それにいたしましても、「九州医師会連合会:各種協議会」の多岐にわたる問題点・膨大 な情報量・限られた時間etc…。「同協議会」の必要性・重要性・奥の深さを痛感し、かなり勉強 させて頂きました。本当にありがとうございました。

印象記

玉井修

理事 玉井  修

平成25 年1 月26 日(土曜日)午後4 時より開催される九州医師会連合会に参加するために鹿 児島空港経由で陸路宮崎に入った。午前の外来をギリギリまで診てからの移動なので慌ただしい が、飛行機でも移動中のチャータータクシーでも今回は照屋勉先生とご一緒なので何だかビール でも飲みたい気分である。会議会場である宮崎観光ホテルには会議開始30 分前の15:30pm に到 着し、身支度を整えて会議へと臨んだ。

地域医療対策協議会は基準病床の算定、地域医療計画の見直し、在宅医療圏の設定、在宅医療 における郡市医師会、県医師会のかかわり、がん地域連携パス、へき地医療について、社会医療 法人とへき地医療について、高齢者の救急搬送と高次救急医療施設の後方支援について、医療紛 争処理委員会、災害医療救護協定について、県防災計画におけるJMAT の位置づけ、災害時の医 科歯科連携についてなど、広範囲で内容的に深い問題を扱っていた。この様なボリュームのある 内容を僅か2 時間で協議するのは大変な事だろうと思っていたが、予想通り会の進行は困難を極 め、日医の三上裕司常任理事からの発言をもっとじっくり聞きたいと思ってしまう事も多かった。

私の担当する救急災害医療に関しては後半の協議だったのでほとんど議論の時間もなく、少々 物足りない感じがした。もう少し協議項目を絞り込んでも良いのではないかと感じた。来年度は 沖縄県で同協議会が開催される予定となっており、今回の経験は来年度の運営方法を考える上で も非常に参考になった。コンテンツを絞る事、そして闊達な議論を盛り上げる工夫をイメージす る必要があると思った。

協議会のあとは懇親会が開催され、宮崎の美味しいお酒と食事を楽しんだ。一次会会場から流 れて四次会の会場では偶然三上常任理事とご一緒させて頂いた。私は促されるままに、何曲も絶 唱してしまい時間を忘れてしまった。いったい何時に帰ってきたのか解らない。奇跡的に翌朝し っかりと朝ご飯を食べてホテルのロビーでくつろいでいると、四次会までご一緒だった本竹理事 は朝風呂を浴びて悠々と歩いているし、同じく四次会までご一緒だった照屋理事も平然とチェッ クアウトをしていた。凄い体力である。人間の身体の60%は水分らしいが、理事の身体の60% は肝臓で出来ているのかも知れない。