三原内科クリニック 喜久村 徳清
あこがれのイタリア旅行が平成24 年5 月に実 現した。成田空港発のANA 機でミュンヘン空港 へ直行し、そこからヴェネツア、フィレンチェ を経由してローマへ向け高速バスで移動しなが ら、ガイドが時間をみつけては懇切に説明する イタリアの話に耳を傾けながら私の旅は続いた。
『イタリアは国家が共和制で、単一民族ではな い。ミラノは商業の街、産業革命後に盛えて、ス マートである。南はのんびり、中心部はどっちつ かず、我が道を行く。ギリシャ、ムーア、イスラム、 オーストリア、スロベニア人、混ざっている。
三千年の歴史があって大陸的、のんびりして いて、イタリア商人がいる。ナポリはゴテゴテ、 陽気で感性があり明るい元気なイタリア人とい う風。フィレンチェはゆったり、のんびりして いる。ローマは都会人的、急いでいる。しきた りやルールがあり、北のミラノといつも争いあ っている。口には出さないが、ローマには三千 年の歴史の自負があり、フィレンチェはたかが 産業革命以後ではないかという思いがある。イ タリアには日本の様な標準や平均的なものはな い。イタリア人は要領がよい。フランス人は冷 たい感じで、スペイン人は歩くのが面白い。
イタリア人が要領いいのは子供の頃からの躾 がある。問題をトコトン議論する。相手の話に はいい返す。反論してもやり返す。絶対負けな いでやり返してくる。根気のいることも馴れて いて、そして世界にとび出すイタリア商人がで きあがる(さらに映画「ゴッドファーザー」の マフィアの世界が現実のものとなるのであろう か)。東洋でいえば中国の華僑で、世界中に中 国人街を造っている。イタリアで今、一番対抗 心をもっているのはスペインのバルセロナ。経済的にも華やかになってきた。
女の児にはかわいそうなほどシツケが厳し い。思春期になる前から自己責任を鍛えられる。 日本人からみれば親にも甘えさせたい年頃でし ょうのに、一人部屋を与えられ、自分で判断す るよう教育される。悪い男にだまされないよう に強い女ができる。結婚して、半年も別居生活 になると離婚する。女性が言いだし、日本の単 身赴任はここでは理解できないし通用しない。
イタリア人はvacation を楽しむのがうまい。 週末の休日もしっかり楽しむ。月曜日は週末の 疲れがたまり、仕事にならず、火曜、水曜日に 仕事をする。木曜日にはもう次の週末をどう過 ごすか考え、仕事が手につかない。イタリアで ビジネスをする時に、心得ておかねばならない。 ガイドの仕事も彼らのことも考えながらしてい る。それでも例外はある。』
天候に恵まれ、トラブルもなく順調にローマ に着いた(写真1)。バチカン市国、サンピエ トロ大聖堂、広場に案内され(写真2)、現地の名ガイドの案内を聞きながらゆったり時間を とって観光した。
写真1. ローマ、テルミニ駅。宿泊ホテルの近くから撮る。
写真2. バチカン市国、サンピエトロ大聖堂前広場にて。
それから大型バスでテヴェレ川に架かる橋を 渡り、フォーリ・インペリアーリ通りからフォ ロ・ロマーノを観ながらガイドは効率的な切符 の買い方等を話していたが、何故見降ろせる位 置に道路が走っているのかなどと思いながら聞 いていた。コロッセオの観光スポットで下車す ると、圧倒的な存在感(写真3)。さらに近づ いて見たくなる程だが、撮影スポットへさえも 離れてはいけない急ぎの団体行動。そのためガ イドに勧められた『DVD video 付き、重ねて見 るローマ。昨日と今日』、『ローマ 過去と現在』 の2 冊を買って後で見ることにし、コンスタン ティヌスの凱旋門を右手に見ながらバスに乗り 込んだ。
写真3. 観光スポットより真近かに見るコロッセオ。写真左側にはコンスタンティヌス帝凱旋門、フォロ・ロマーノがある。
小休憩の後に、クイリナーレ宮殿大統領官 邸、トレヴィの泉に行きイタリア議会下院の建 物(写真4)を横切った。警備の守衛は1 人、近くには警官もいたが日本では考えられないほ どのオープンな雰囲気である。
写真4. イタリア議会下院。国旗が掲げられている。警備員は1 人、門前に立つ。
トレヴィの泉、スペイン階段観光で楽しい旅 は続き、午後は自由行動となり、私は一人、シ スティーナ礼拝堂、ラファエロの間のあるバチ カン博物館に行き(写真5)、そして、映画「ロ ーマの休日」で有名な「真実の口」のあるサンタ・ マリア・イン・コスメディン教会、その裏手に あるチルコ・マッシモを訪ねた。そこは名優チャ ールトン・ヘストン、ユル・ブリンナーが熾烈 な戦車競争を演じた映画「ベン・ハー」の舞台 であったが、今ではその面影は全くなく、芝生 で埋めつくされた市民の憩いの場となっていた。
写真5. バチカン博物館 (MUSEI VATICANI)入口。
意外に小さな、質素な入口が印象的。
帰国後、旅の余韻が残っているなか、「ローマ。 昨日と今日」を読み進めていると、大変大きな ショックを受ける事になる。
(次号へ続く)