琉球大学医学部附属病院 新垣 和也
新年明けましておめでとうございます。本年 は巳年ということで、巳年生まれの自分は、広 報委員をされておられます、金谷文則先生の御 推挙があり、寄稿を仰せつかりました。乱文で はありますが、どうか御容赦下さい。
蛇にちなんだ内容をと考えてみますと、思い つくのが,中国古代の民間伝承に出てくる蛇の 話、「白蛇伝」です。蛇の精が、人間に化けて、 人間の男と恋仲になるという話です。同じよう な怪異な物語が多く収録されている中国の小説 として、「聊斎志異(りょうさいしい)」がありま す。チャイニーズ ゴースト ストーリーの元とな った「聶小倩(じょうしょうせい)」が含まれる 短編小説集で、中国の清代に書かれたものです。 郷挙里選、九品中正法に続く、官僚登用法とし て、隋の時代に始まったとされる科挙は、清代 になっても、継続して行われていたとのことで す。科挙の制度は時代と共に変遷が見られます が、地方で行われる「郷試」、中央で行われる「会試」、 皇帝隣席の元で行われる「殿試」、の 3 つが重要 な試験とされており、3 年ごとに行われていたと のことです(因みに、巳年に試験は行われていな かったようです)。全ての試験に合格すると、官 僚としての将来が約束され、一族は栄華を極め たとされています。そのため、地方試験である 郷試に受かった「挙人」と呼ばれる人々は、会試 を受けるべく、期待を胸に中央へと向かい、道 中様々な事態に遭遇し、ドラマが生まれること となります。小説に出てくる物語には、綺麗な 幽霊のお姉さんにたぶらかされる挙人の話とい う何ともうらやましい(?)ものや、道教の仙人 が試験についてのアドバイスをくれるというも のなど、荒唐無稽な話が多く含まれます。この 本を纏めた蒲松齢自身も、科挙の試験を長年受 け続けるも夢が叶わなかったこともあり、全て は夢物語です。科挙の競争倍率は、酷い時には 約 3,000 倍にも及んだとのことであり、熾烈さを 極めます。それからしますと、2012年の琉球大 学医学部医学科の入学試験の競争倍率は、全入 試を合計しても約 6.9 倍と、まだまだ常識の範囲 内であり、平和な時代、平和な国に生まれて良 かったと思う次第です。「聊斎志異」は岩波文庫 から上下巻の2冊が出版されており、内容は 1 話 完結型の短編集であり読み易く、疲れた頭を休 ませるには良いかもしれません。科挙について は、宮ア市定の書いた「科挙」が中公文庫およ び新書で出版されていますが、こちらは記載が 詳述であり、やや心構えが要ります。当時の制 度や学生(?)の様子を知ることができます。最 近、この手の本を読む機会がほとんどなく、学 生の頃に読んだ本の紹介となってしまい恐縮で す。新しい年に更なる飛躍を希望しますが、何 分蛇ゆえに、飛ぶのは苦手であり、そろそろと 地面を這うがごとく進んでまいります。掴みど ころがないとお思いでしょうが、最近減少傾向 の著しい鰻と違い、鱗はありますので掴みどこ ろはあります。最後は蛇足となってしまいまし た。お後がよろしいようで…。