南部徳洲会病院 泌尿器科 部長 向山 秀樹
小生は昭和 40 年、丙午の前年に生まれまし た。幼いころ、従姉弟達とは干支について話題 に出ることがよくありました。そのときは自分 の干支があまり好きではありませんでした。な ぜならば、十二支のなかで「へび」だけが唯一、 爬虫類、その他は龍を除きすべて哺乳類で、可 愛いとかかっこいいとかの代名詞がつきそうで すが、ちなみに龍もかっこいい部類でしたが、 「へび」はどうもイメージが良くない。家でペ ットとして飼いたいとも思わない(一部の爬虫 類が好きな方申し訳ありません)し、毒蛇とか になれば更に嫌われます(余談ですが哺乳類は 毒を持たないって知っていますか?)。ただし、 学校に通うようになれば、早生まれ以外の同級 生はすべて巳年生まれなわけで、まあ気にはし なくなったのです。
これが巳年も良いかなと思ったのは大学に入 ってから、医学部はみなさんご存知のとおり生 まれ年は高校生に比べれば明らかにばらばら。 必ずしも同級生は巳年とは限らない。そんなな かで自分は海外、特にアジアに行っていたので す。アジアの医学生と交流を持ったときに中国 の影響を受けた国々は Zodiac この場合は星座 ではなく、各年毎のシンボルつまり干支を持っ ているわけです。猫年なんかもいた記憶があり ます。その際に、巳年は医学生としては話題に しやすかったのです。ギリシャ・ローマ神話で 医学の神様であるアスクレピオスが持っていた ことにより「杖と蛇」は医学の象徴ですから。 医学の知識もなく、経済や政治、社会問題を話 題にする英語力もない小生には丁度良いネタで あったのです。
ただ、それ以来、特に「へび」とは縁がなか ったのですが、一昨年とつい先日「へび」に悩 まされました。まずは先日。腹腔鏡下左腎摘出 に際して、腎門部が展開しにくかったわけです。 それで一言「スネーク(蛇)リトラクターをだし てくれ!!」(スネークリトラクターとは腹腔鏡 手術において先端がへびのようにくねくね曲が り手術野を確保する器具です)。手術とは如何 に良い手術野を確保できるかが大事です。「A big incision is a good incision」
そしてもうひとつ、一昨年 学会でインドに 行ったときのことです(小生は医師になっても 性懲りもなくアジアの国に出掛けているので す)。タクシーでの移動の最中です。道の真ん 中で蛇使いが、蛇(多分コブラ)をかごに入れて、 客寄せをしていたわけです。その蛇使いと目が 合ってしまったのです。当然こちらに近づいて きました。コブラと思われるへびを人の目の前 に突き出して、チップを要求してくるわけです。 こんなときに限って小銭を持っていないのです (インドルピー)。インドの喧噪の中、貴重な思 い出になりました。その後の顛末は、同僚にお 金を借りてチップをあげました。命が惜しかっ たから…。
「へび」にまつわる雑多な追想にお付き合い いただきありがとうございました。本年も宜し くお願いいたします。