沖縄県赤十字血液センター所長 大久保 和明
沖縄県医師会会員の皆様には、日頃より血液 製剤の適正使用に関してご協力頂いております ことを感謝申し上げます。今回は「はたちの献 血キャンペーン」に因んでということで、現在 の血液事業、特に若年者の献血についてご報告 し、ご協力・ご指導を賜りたいと思います。
はたちの献血キャンペーン(主催:厚生労働 省・都道府県・日本赤十字社)は、献血者が減 少する冬期の輸血用血液を確保し、医療機関へ 安定的に供給するために、特に成人として社会 への第一歩を踏み出そうとしている方を含めた 若年層の方々を中心に、広く国民に献血への理 解と協力を求めることを目的としている献血推 進キャンペーンであり、1 月 1 日から 2 月末日 までの 2 ヵ月間、全国で展開するものです。
私共が担っている血液事業は国の重要な事業 の一つで、平成 15 年 7 月に施行された「安全 な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」 に基づいて、国、地方公共団体、採血事業者、 製造販売業者および医療関係者が、それぞれの 責務を果たしつつ、安全性の向上、国内自給の 原則、安定供給の確保、適正使用の推進、公正 の確保および透明性の向上といった法の基本理 念の実現に向けた取り組みを進めることとされ ています。
しかしながら、近年、少子高齢化が進み、医 療現場での血液需要が増加しているのにもかか わらず、献血者、特に 10 代、20 代の若年層に よる献血が減少傾向にあります。(図 1)
図 1
日本赤十字社が実施した血液需給将来推計シ ミュレーションでは、現在の献血率(献血可能 人口の献血率 5.9%)のまま少子高齢社会が進 展すると、血液需要がピークを迎える 15 年後 の平成 39 年(2027年)には、献血者約 101万人 分の血液が不足することが示されました。(図2)
日本赤十字社としても若年層に対する献血推 進対策を今年度の血液事業の大きな取り組みと しているところであります。
私共としては、医療機関へ安定的に血液製剤 を供給するためには、まずは、若者をはじめと した県民のみなさんに「献血」を知っていただ くことが大切だと考えております。
全くの善意で献血においでいただく方々から は、自分たちの血液がどのように使われている のかを知りたいというご意見もあります。私達 は、輸血を受けられた患者さんの感謝の気持ち を、献血者をはじめ県民の方々に伝えることも 必要だと感じております。そうすることによっ て「献血」の大切さを知っていただくことにな るのだと思っています。
しかしながら、病気や外傷で病院を受診し治 療を受けた患者さんやご家族は、治療の過程で 輸血を受けたことをあまり認識していないこと があります。特に手術中に受けた輸血について はほとんど記憶にありません。それがいかに重 要であったかということについてはなおさら主 治医からのお話がない限り分っていないことが 多いように思います。
先生方にご協力お願いしたいことは、輸血が 治療の大切な一部であったことを患者、家族に それとなくお伝えいただきたいということであ ります。今後、患者さんの声をお聞かせいただ くことが出来るようになるには必要なことだと 考えています。
日本赤十字社では「はたちの献血キャンペ ーン」サイトを設けております。多くの若者に このサイト(http://ken-love.jp/hatachi/)を ご覧いただき “なにかしたい” と感じていた だけたなら、ご家族、お友達に広めてください。 あなたのその行動が(血液を必要としている患 者さんの)命を繋ぎます。と、お願いしており ます。
沖縄県医師会の皆様には今後とも血液事業に 対するご指導、ご協力をお願い申し上げます。
図 2