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妻の実家での夏休み

長嶺 義哲

浦添総合病院外科  長嶺 義哲

子どもたちも大学生〜中学生になると部活や ら夏期講習やらで、昔のように一家そろって旅 行になんてことがなかなか計画出来なくなって きた。そこで手っ取り早い夏季休暇の過ごし方 として妻の実家(福島県只見町)で過ごした夏休 みをご紹介させていただくことにする。妻(元 看護師)との成り染めは、小生が大学病院勤務か ら、福島県会津若松市の病院へ転職した時から 始まり彼女はここの看護師をしていた。

これと言った歓楽街もなく冬になるとスキー 場がオープン、レジャーの中心がスキーとなる。 同僚や看護師さん MR さんたちとナイタースキ ーに行くのが定番で、入職当初スキーなんて経 験したこともなく、何とかなるからと同僚の甘 い言葉に誘われて行ってはみたものの、一通り 教えてくれて自分に付き合ってはくれたが、し ばらくするといなくなり困っていたところ、救 いの神はいるもので、個人レッスンで教えてく れる MR さんがいた。彼はスキーの選手だった とのことで、小生のすべりを見ながら後ろ向き で滑ることが出来るほどの技術を持っていて、 親身になって根気強くよく教えてくれた。

おかげでナイタースキーも人並みに楽しめる ようになり、乗り損ねてリフトを止めることも 激減。さてその行き帰りの車への分乗割り振り の偶然が妻と出会いの始まりとなった彼女は他 病棟の看護師で顔は知ってても話したことはあ まりなかったのだが、グループ交際をつづける うちにそういうことになっていった。

彼女には兄、姉がおり二人はすでに東京で家 庭を持っている。彼女が地元に残ってくれるも のと両親はたぶん期待していたと思うが東京よ りもさらに遠い沖縄に嫁ぐと知って複雑な心境 だったと思う。

それは「ブラジルに行くわけでもなくまだ沖 縄だからね」と言う義父の一言からも複雑な胸 のうちを伺い知ることが出来る。

そういった負い目もあり妻と子どもたちは出 来るだけ毎年帰省させ、小生も数年に一回では あるが休みを取って一緒に帰省するようにして いる。

羽田から京急電車で乗り換えなしで都営浅草 駅下車。東武浅草駅から鬼怒川温泉駅へ、そこ で野岩鉄道に乗り換え会津田島駅下車、そこで レンタカーを借り妻の実家まで一時間半でやっ と到着。那覇空港からなんと 9 時間の長旅だ。

浅草からのる東武鉄道は景色もよく快適で子 どもたちもトランプをしたり写真を撮ったりで 気に入っている様子。車窓からは浅草の町並み が次第に広大な田畑へと変わっていき、山に入 るとのんびり森林鉄道の雰囲気が味わえなかな かの癒しを味わえる。

会津田島駅周囲は大きなショッピングセンタ ーもあり、そこで買い物をしてからレンタカー で帰る。途中は田舎の一本道で山と川と田畑で 農家が散在。のんびりドライブを楽しめドライ ブ好きの自分としては、いつもは通勤での運転 がほとんどで、もっと走りたいとの欲求不満が あったが、この欲求も十分満足させてくれる。

やっとのことで妻の実家へたどり着くころ は、日も暮れて(山間部で日没が早い)まず旅 の疲れを取るため近くの村民温泉「むら湯」へ 行く。

そこは泥色をした温泉で泥臭いのだが、肌が キュキュっとすべすべになり身体もあったまり ここに来るときの楽しみの一つとなっている。

待ちに待った夕食は裏の畑で取れたてのきゅ うり、トマト、漬物などでこの環境のせいか新 鮮な野菜のためかもしれないが、とてもおいし く感じられ食も進む。

沖縄では肉なしの食事なんて考えられない が、ここではなぜか満足感がある。

夜は早く 9 時過ぎには車もほとんど通らなく なり、虫の音や蛙の大合唱が聞こえてくる。

さすがにこの時間には寝られないため、子ど もたちと真っ暗な田んぼ道を懐中電灯の明かり を頼りに散歩に出る。蛍が淡い緑色の光を放っ て飛びまわっている。以前に比べれば激減して いるらしい。空を見上げると満天の星がみえ、 目が慣れてくるに従ってさらに小さな星も天の 川もはっきり見えるようになる。ipad で Star Walk というアプリが優れもので、ipad を天空 にかざすと位置情報や季節、時間帯を自動で認 識し星座名を図示してくれる。大自然と情報機 器との癒合は意外と風情があり心地よいものに 感じられた。

朝は 6 時に大音響の村内放送があり苦情はな さそうなので皆さん、この時間には起きてるの だろう。

朝は散歩がてら近くの山から流れる清水を汲 みに行く。口当たりのまろやかな水でお茶など 飲み水に使う。時には近くの農家へ生みたて卵 をもらいに行く。生みたての卵の黄身は箸でも てるほどの弾力性があり濃厚な味で、贅沢な朝 食となる。

早起きなので一日が長く10 時ごろにはお腹が すいてくるので、とうもろこしやスイカをとっ てきて食べる。

車で 1 時間半ほど走らせると尾瀬国立公園の 桧枝岐(ひのえまた)入園口があり、尾瀬の自 然も満喫してきた。きれいに整備され観光地化 した自然とは違い、遊歩道を 2 本引いただけの 出来るだけ手付かずの自然を残すように工夫さ れている。

高原のきれいな空気とどこをとっても絵にな る景色、唱歌「夏の思い出」そのものだ。

日帰りハイキングが出来るところで折り返す のだが、なんせ道のりが長く(比地大滝遊歩道 の 3 倍くらいの距離)行きは写真撮ったり横道 を散策したりで元気に歩けるが、帰りは疲れに 加え、熊出没注意報まで出て奴と出会ったとき の対処法など想像もつかないままとりあえず鈴 を鳴らし出会わないことを願いながらバス乗り 場までたどり着いた。

また、別の日には亡き義父のお墓参りに仙台 郊外の墓地まで行き、蔵王温泉で一泊して帰っ てきた。その他、恩師である元上司や元同僚を 尋ねて近況報告をしに行ったりもした。

そして長いようで短かかった妻の実家での夏 休みも終わり帰路に着いた。

仕事の日常を離れ、頭をリセットすることで 回りもよく見えるようになったような気がし、 このような休暇は心のビタミンとして大事なん だなと感じた。

今回 4 人の娘のうち 2 人しか一緒に行けなか ったが、もう難しいかもしれないが家族 6 人で 又一緒に旅行する機会があればいいなと願って いる。