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琉球大学でいご会について

石田肇

琉球大学大学院医学研究科 人体解剖学講座 教授 石田 肇

琉球大学医学部は、国立大学最後の医学部と して、昭和54 年に設置されました。解剖学実 習を円滑に行うため、解剖体の確保が必要とな り、医学部設置前に、献体団体としての琉球大 学でいご会が発足します。まず、その歩みを紹 介します。昭和52 年12 月19 日 琉球大学医学 部設置に必要な解剖体の円滑な確保をはかるた め、沖縄県解剖体確保推進協議会が発足しまし た。昭和54 年2 月20 日、 献体組織の結成に向 けて取り組んできた結果、篤志家13 名を発起 人として琉球大学でいご会が設立されました。 初代会長に白石武八郎氏、副会長に田頭政三郎 氏、伊差川栄子氏が就任し、会員数はわずか 13 名でした。

昭和57 年 11 月、第1 期生の人体解剖実習 が開始されました。昭和58 年には、琉球大学 でいご会機関誌「でいご」創刊号を発行します。 その11 月、第1 回解剖体慰霊祭が、執り行わ れました。その後、平成2 年6 月 教育用の解 剖体が足りない状況の中、献体の確保を図る ため、平田幸男教授(当時)と、東京医科大学 内野滋雄教授(当時)の御尽力により、東京医 科大学献体組織「東寿会」の深いご理解・ご配 慮の下、協力に賛同された東寿会会員「でいご 会協力会員」が新たに登録されました。平成2 年〜平成11 年の9 年間に亘り、ご協力頂いた 協力会員数は115 名です(うち献体者15 名)。 さらに平成17 年 第27 回でいご会総会で、献 体者顕彰刻銘礎石(仮称)建立に関する決議書 (案)が、承認されました。そこで、建立委員 会が設置され、砂川恵伸委員長の基、検討が続 けられました。この「献体者の碑」の除幕式が、 10 月31 日に伊地会長を始め、琉球大学でいご 会および東京医科大学東寿会関係者、御遺族、 医学部長、附属病院長、教員や学生など100 余 名が参列して、医学部納骨堂敷地内で執り行わ れました。

献体者の碑竣工写真

これらの活動の結果、会員数は、ここ5 年ほ どは順調に増加し、平成24 年7 月1 日現在で、 会員総数2,343 名、現存会員数1,670 名となっ ています。また、これまでに献体なさった方は、 441 名にのぼります。

つぎに、琉球大学でいご会と琉球大学医学部 での解剖関係の行事を紹介します。

琉球大学でいご会総会は、毎年、5 月の第3 土曜に開催されます。開会の挨拶、黙祷のあと、 会長の挨拶、医学部長の挨拶、篤志解剖全国連 合会の報告、学生、卒業生が感謝の言葉を述べ ます。そのあと、医学講演をいただき、質疑応 答のあと、昼食をいただきながら、室川子供エ イサーや合唱などを楽しみます。

解剖体慰霊祭は、毎年、11 月の第3 水曜日 に医学部体育館で、開催されます。多数のご遺 族、でいご会役員、医学部関係者が参列します。 式は、医学部式歌の斉唱で始まり、黙祷の後、 ご精霊の尊名が奉読されます。追悼のことば を、琉球大学でいご会会長、琉球大学長、琉球 大学医学部長が述べ、そのあと医学部学生代表 が感謝の言葉を捧げます。最後に参列者全員に よる白菊の献花をおこないますが、長い列が続 きます。

解剖学実習としては、2 年次で系統解剖学実 習、4 年次には、局所解剖学実習を行っていま す。系統解剖学実習では、医学科の2 年生の4 人にご献体1 体の割合で実習を担当させていた だいています。現在の実習期間は、10 月から 2 月までの5 ヶ月で、午後の3 時間あまりを使 い、35 回の実習を行います。これには、臨床 の医師も参加しています。さらに、医療関係養 成学校生の見学もこの間をぬって実施していま す。具体的には琉球大学医学部保健学科学生、 医学研究科修士課程学生、そして県内の医療関 係養成学校生、とくに、看護師、理学療法士、 作業療法士、言語聴覚士養成課程の学生を対象 としています。別の機会にも、4 年生の臨床解 剖学実習を行っています。このように、解剖学 実習は、2 年生にとっては、数年後の未来の医 師を目指して基本を学ぶこと、4 年生にとって は、臨床医学の基本を学んだあと、人体解剖学 の知識を再確認することに役立っています。ま た、外科、脳神経外科、耳鼻咽喉科や整形外科 など臨床の医師にとっては、まさに明日の医療 のためということになります。このように、解 剖学教授自ら指導のもと、沖縄県全体の医療水 準向上のため、しっかりとした実習と見学を行 っています。

琉球大学医学部では、実習が終わると、医学 部火葬祭を実施します。場所は、いなんせ斎苑 (浦添市いなんせ在)で催され、献体が火葬に 付され、ご遺骨がそれぞれのご遺族のもとに手 渡されます。琉球大学医学部では、毎年度、解 剖体の1 柱ごとに、ご遺族、解剖学実習に携わ った学生および大学関係者、でいご会役員の参 加のもとで壮重な火葬祭を行っています。文部 科学大臣の感謝状の贈呈、でいご会会長の弔辞、 解剖学実習をした学生の謝辞、献花などを行い、 火葬に付します。収骨にも参加し、ご遺族をお 見送りして、解散となります。

今後の方向としては、外科系などの医療手技 修練を、献体を用いて行うことが始まると思い ます。2012 年に、日本外科学会と日本解剖学 会とで、「臨床医学の教育及び研究における死 体解剖のガイドライン」が発表されています。 これに基づき、琉球大学でいご会の皆さまのご 理解を得て、琉球大学医学部でも医療界に貢献 できればと思っている次第です。