ペリー内科小児科医院 内原 栄輝
私の好きな言葉の一つとして孔子の「吾 十 有五にして学に志し、三十にして立ち、四十に して惑わず、五十にして天命を知る、六十にし て耳従う、七十にして心の欲する所に従えども 矩(のり)を踰(こえ)ず」があります。この 原稿が読まれる頃は私も七十歳、いわゆる古希 になっていることと思います。
昭和50 年頃、泉崎病院に勤務医として働い ていた頃毎週行われるカンファランスの後に城 間院長が『内原君、この年になると耳学問は大 変助かるよ』と言われたのを思い出します。私 も開業して36 年目を迎えますが、もの忘れ、 身体機能の低下など、いわゆる高齢者の一人に なって、老いて時の速さを感じています。近 年、臓器移植医療、生殖医療などの高度医療が マスコミを賑わせている今日であります。日進 月歩する医療界においては医師といえども医師 免許証の更新を数年ごとにすべきではないかと 囁かれた一時期があり、これに対し日本医師会 は25 年前から生涯教育の自己申告という対応 策をうち出して今日まで続いているのです。こ の制度は専門以外の分野の知識が得られること で、大いに助かっております。NHKテレビの 朝ドラ「梅ちゃん先生」は市井で活躍する町医 者の姿を生き生きと放映して好評のようです。 その中で坂田医院の医者役の世良公則の言う 『医者はそこにいるだけで良いのだ』のセリフ は医師不足に悩んでいた30 年前の沖縄の状況 を彷彿させるシーンでした。私も老体に鞭うっ てしばらくは従来の診療体制を継続し、長男に バトンを渡そうと思っております。
さて生涯教育として出された論文は小児脳性 麻痺に対するA型ボツリヌス毒素療法(大城聡 先生)、肺炎診療ガイドライン(比嘉太先生)、 人格障害について(前田浩先生)、脳脊髄液減 少症(末吉健次先生)、心房細動のカテーテル アブレーション(大城力先生)、代表的な皮膚 悪性腫瘍(眞島繁隆先生)が印象的で、いずれ も解りやすく纏めてあり、造詣の深さが感じら れました。
また表紙を飾る写真も色彩豊かで、ヒメノウ ゼンカズラ(藤川栄吉先生)は新鮮でした。那 覇ハーリー2010―挑戦(玉井修先生)の写真 は迫力感あふれる力作だと思いました。生涯教 育のコーナーを依頼された先生方にとっては、 論文を完成させるための時間と労力は大変だっ たことと思われます。心から敬意を表します。 また原稿の依頼、校正の依頼、最終の仕上げま でに関わる皆様方にも深く感謝申し上げます。 これまでの多数の執筆者に感謝するとともに、 沖縄県医師会がこのコーナーを継続して頂きた いと思います。