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沖縄県福祉保健部長 崎山 八郎 先生

崎山八郎先生

保健医療体制の確保。福祉の充実。健康長寿の実現のために微力ながら頑張りたいと思います。

Q1.この度は、福祉保健部長ご就任おめでと うございます。部長に就任されてのご感想と 今後の抱負をお聞かせいただけますでしょ うか。

このたび4 月1 日付けで福祉保健部長を拝命 することになりました。私は、大学を卒業後、 2 年間の臨床研修を経て、県の衛生行政へ進む ことになり、大半の期間は保健所での勤務です が、平成12 年度から16 年度まで5 年間本庁 での勤務を経験いたしました。

本庁勤務5 年間で、健康おきなわ2010 の策 定、平良市産業廃棄物処分場の火災に伴う健康 問題、SARS 騒動、基地内ハンバーグによる食 中毒の発生等への対応など貴重な経験をしまし た。その後、しばらく福祉保健所にいましたが、 このたび、久しぶりの本庁勤務となり、今回は 福祉保健部長ということで、福祉分野も含めて、 保健、医療と幅広い分野を担当することになり、 緊張の日々が続いています。

特に、今年度は新たな振興計画が策定され、 この計画を推進する最初の年に当たり、大変重 要な時期であります。職員一丸となり、関係機 関・団体と連携しながら計画の実現に向けて頑 張っていきたいと思っています。ご協力よろし くお願いいたします。

Q2.生活習慣病問題、医師・看護師不足問題等、 本県が抱える様々な問題に対して、保健所長 を経験され、福祉保健部長になられたお立場 から、解決策、対応策等どのようにお考えか お聞かせください。

生活習慣病対策は、全国的な問題であります が、沖縄県においても健康長寿の復活が最重要 課題のひとつとなっており、その実現のために は、健康おきなわ21 計画に基づき健康づくり 対策を始めとした生活習慣病対策を強力に推進 していくことが必要です。特に、働き盛り世代 の健康状態をいかにして改善するかが課題であ ると思います。

県民一体となった健康づくりの推進、健診受 診、医療受診等重症化予防の啓発など進めてい きたいと考えています。特に、健康づくりの核 となる食生活改善推進員について、市町村と調 整を図りながら、大幅に増員するよう働きかけ をしていきたいと思います。長野県では、推進 員の地道な活動が、男女ともに長寿な地域の実 現に寄与していると考えられており、沖縄県に おいても推進員の育成や活動支援が重要ではな いかと考えています。

働き盛りの健康問題において、飲酒の影響を 忘れてはならないと思います。沖縄県は全国に 比べ多量飲酒者の割合が高く、特に、若年層の 慢性肝疾患、脳出血、自殺等は飲酒が関連していると思われ、適正飲酒の啓発を強力に推進す ることにより、これらの疾患を減らすことが重 要ではないかと考えます。

次に、医師確保については全国的な課題であ り、沖縄県においても初期臨床研修医は多いも のの、この問題については例外ではありません。 特に、沖縄県は離島県であり、医師の確保、定 着には大変苦労しているところであります。

県としても、自治医大への医学生送り出し、 琉球大学等との連携による医師就学資金貸与事 業、後期臨床研修医確保事業、離島・へき地ド クターバンク等支援事業などによる県内外から の医師確保など様々な医師確保対策を進めてい ます。

今年4 月には、琉球大学医学部敷地内に、お きなわクリニカルシミュレーションセンターが 開所、スタートいたしました。センターでの取 り組みが軌道に乗り、県内の学生や医療従事者 はもとより、県外の医学生や医師などの受け入 れが可能になってくれば、沖縄県の医師確保に 大きな期待ができるものと思います。

次に、看護師確保対策について、平成23 年 1 月に公表した「第七次看護職員需給見通し」 は、医療機関のみならず介護保険関係や社会福 祉施設等を含めたものとなっていますが、同需 給見通しでは、需要に対する供給の不足数は平 成23 年が約500 人、最終年の平成27 年が約 200 人になると見込んでおります。その内容と しては、7 対1 の看護体制等による需要の増加 見込みがある一方、名桜大学、ぐしかわ看護専 門学校、那覇看護専門学校、県立浦添看護学校 (現在は民間移譲)からの新規卒業者による供 給の増加が見込まれ、需給のバランスは、年々 改善する見通しとなっております。県としては 看護師確保対策として、修学資金貸与、院内保 育所の整備、潜在看護師の再就職支援事業や ナースプール事業等に取り組む等、対策を強化 していきたいと考えております。

県立病院の経営のあり方については、県議会 等や医師会を始め県民の皆さんも高い関心を 持っておられると思います。県立病院の経営形態については、「県立病院のあり方に関する基 本構想」に基づき、今年度、経営再建検証委員 会による検証結果報告も参考にして、独法化に するか現状の経営形態を維持するのか知事が最 終的に判断することになっています。県立病院 の役割である、地域において必要とされる医療 の持続的・安定的な提供が求められているとこ ろです。

福祉分野においても様々な課題があります が、特に沖縄県において特徴的な待機児童の問 題について触れたいと思います。本県では、本 土復帰前に義務教育という位置づけのもと、小 学校に併設する形で1 年保育のみ行う公立幼 稚園が整備される一方、2 〜 3 年保育を行う幼 稚園や保育所の整備が遅れ、その結果保育所入 所待機児童数が他県より多い状況となっていま す。この待機児童の解消のために、これまで基 金事業等を活用して保育所の創設等を市町村に 働きかけることにより、保育所数も増えてきま したが、まだ待機児童解消とはなっていません。 今年度からは、一括交付金も活用し待機児童解 消を図っていきたいと考えています。

その他、様々な保健医療福祉の課題について、 その解決のために精一杯取り組んでいきたいと 考えています。

Q3.この度、新沖縄振興計画が決定されまし たが、福祉保健部として当該計画の中で、ど のような事業展開を計画されておりますでし ょうか。

改正「沖縄振興特別措置法」の制定によって、 沖縄振興計画の策定主体が国から県へ移行する とともに、自由度の高い一括交付金として「沖 縄振興交付金」の創設が実現しました。

県においては、新たな振興計画としての「沖 縄21 世紀ビジョン基本計画」を去った5 月に 策定し、今後、一括交付金も活用してこの計画 を推進していくことになります。

今年度の福祉保健部の予算として一括交付金 を活用した事業は20 の事業で、約20 億円の 予算を計上しています。医師確保のための事業、離島等患者搬送関連事業、専門医や代診医等の 派遣事業、その他待機児童対策等沖縄に特有な 課題解決のための事業を展開していきます。

新たな振興計画において、目指すべき将来像 の一つとして「心豊かで、安全・安心に暮らせ る島」が掲げられており、福祉保健部としては この将来像の実現を目指して健康・長寿おきな わの推進、子育てセーフティネットの充実、健 康福祉セーフティネットの充実等様々な施策を 展開していきたいと考えています。

Q4.本会や日本医師会に対するご意見・ご要 望がございましたら、お聞かせください。

沖縄県の本土復帰前の保健医療体制は、非常 に立ち遅れた状況にありましたが、医師会の皆 さんをはじめ、関係者のご尽力により今日の体 制が築かれ、県民や県外からの方々にも安心し て過ごしていただけるようになっています。

県医師会の皆さんには、今後とも、沖縄県の 保健医療体制の確保、そして、沖縄県の新たな 振興計画である「沖縄21 世紀ビジョン基本計 画」の実現のために、ご支援、ご協力をお願い いたします。特に、健康長寿の実現、医療体制 の確保など大きな課題がありますので、よろし くお願いいたします。

Q5.最後に日頃の健康法、趣味、座右の銘等 がございましたら、是非お聞かせください。

日ごろの健康法としては、できるだけ歩くこ とを心がけています。建物の5 階までは階段を 利用して歩いて上り下りするよう心がけていま す。現在、通勤にはバスを利用していますが、 わざわざ遠いバス停まで行って乗るようにし、 帰宅の際も、少し遠回りをして帰ったりしてい ます。初めての土地など、まだ、歩いたことの ない場所で新しい発見をしながら歩くのも楽し みのひとつです。

趣味は、スポーツをすることも観ることも好 きです。特に、野球、ゴルフなどをしてきまし たが、最近は、野球は激しすぎてできなくなり ました。

座右の銘はありませんが、日ごろ心がけるこ とは、何ごとも現状より少しでも良くなるよう にしたいという気持ちで行動するようにしてい ます。その積み重ねが大きな成果につながるこ ともあります。思うようにいかないことも多い ですが…。

この度はお忙しい中、インタビューにご回答 頂き、誠に有難うございました。

インタビューアー:広報担当理事 本竹 秀光