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日本最大、最新鋭の「おきなわクリニカルシミュレーションセンター」始動

阿部幸恵

おきなわクリニカルシミュレーションセンター 副センター長
阿部 幸恵

【おきなわクリニカルシミュレーションセンター開設】

沖縄県では厚生労働省からの医療再生基金に 基づき、シミュレーション教育を導入するべく 沖縄県・県医師会・琉球大学が一丸となってお きなわクリニカルシミュレーションセンターの 設立へと歩みを進めてきました。

そして、去る3 月25 日、沖縄中東部西原に ある琉球大学医学部附属病院の敷地内に「おき なわクリニカルシミュレーションセンター(愛 称ちゅらSim)」が完成し、県内の医療関係者 が集う中、仲井眞県知事をお迎えし、盛況にオ ープニングセレモニーが催されました。

オープンセレモニー当日は、約150 名の方々 をお招きすることができ、沖縄県知事、厚生労 働省医政局指導課長、文部科学省医学教育課企 画官のご祝辞を賜りました。そして、昨年度の 度重なる台風の影響にもかかわらず、工期どお りの完成を目指して労を尽くして下さった建設 関係の方々へ感謝状の贈呈、最後に関係者らに よるテープカットへと粛々と進み、その後の祝 賀会・内覧会へと移っていきました。

祝賀会では、センターを設立するまでの経緯や今後の展望を紹介させていただきました。セ ンターは、県内すべての医療従事者が利用でき る教育・研修施設であり、医療現場を再現する 多様なシミュレーションプログラムを提供し、 県内医療従事者の実践力向上の支援をしていき ます。館内各階のトレーニングルームは、救急・ 集中治療室から一般病棟・外来まで再現できる ような工夫を凝らし、基礎から生涯教育まで、 利用者のレベルに応じたトレーニングが可能で す。内覧会では、約2,250 uの広さを有するセ ンターの各トレーニングルームでシミュレータ に触れながら、センターに施された様々な工夫 を実感していただきました。

さらに、センター設立については、「ALL 沖 縄」での取り組みを何より大切にし、県内の医 療関係者が一丸となってハード面のみならず、 「人を育むこと」を大切に「指導者養成」や「教 育プログラムの作成」といったソフト面につ いても知恵を出し合いながら準備を進めてき たことも説明させていただきました。このよう な、「ALL 沖縄」での取り組みこそが、「日本 最大、最新鋭のセンター」であると言われ、全 国の医療関係者、医学教育者から大きな注目を集めている所以なのです。今後の展望について は、これまでもハワイ大学との連携で進めてき た医学教育でのグローバルな視野をさらに広 げ、県外やアジア各国からの研修生等の受け入 れなどを行い、日本一・アジア一のシミュレー ションセンターを目指すことをお話させてい ただきました。祝賀会は、沖縄県医師会長、日 本医学教育学会理事長、ハワイ大学シミュレー ションセンターディレクター、沖縄県福祉保健 部長、東京電機大学 未来科学部長、日本貿易 振興機構 展示事業部 日本政府代表の多方面 からの皆様からのご祝辞を賜り、関係者による 鏡割り、そして、沖縄県立南部医療センター・ こども医療センターの地域救命救急科部長、八 重山芸能研究会(琉球大学学生)による余興が 披露され、ご参集の皆様との交流を深めて閉会 となりました。

オープニングセレモニー・祝賀会・内覧会を 通して、センター設立までには県内の多くの 方々のご支援を賜り、この日を迎えられたとい う喜びと感謝の気持ちを実感するとともに、こ れからのセンターへの使命の重さを痛感し、沖 縄の皆様の期待に真摯に向きあう誠実さと謙虚 さ・感謝の念を忘れずに、歩むことの大切さを 胸に刻んだ1 日となりました。

テープカットの様子

シミュレーターの説明を受ける仲井眞知事

シミュレーターに触れながらの見学

【平成24 年度新採用初期研修医対象シミュレーショントレーニング開催】

去る4 月15 日にセンターを利用して、県内 に採用されたすべての1 年目研修医(約130 名)を対象にシミュレーショントレーニングが 開催されました。センターは、県内のすべての医療者を対象としていますが、中でも若手医師 (特に研修医)対象のトレーニングの充実は沖 縄県の地域医療充実・医師確保という点から重 要な課題です。センター設立前から「ALL 沖 縄」のコンセプトの基、県内の指導医らが集い、 若手医師対象のトレーニングについて議論を重 ね、「新採用初期研修医対象のトレーニングプ ログラム」を作成、その準備を行ってきました。 このトレーニングは、センターの3 つの教育ゾ ーンである、基本的な医療技術を学ぶゾーン、 救命・救急医療を学ぶゾーン、専門的な手技を 学ぶゾーンの考え方を土台に企画されました。

1)基本的な医療技術として、シリンジの使用 方法、ラインの作成、静脈穿刺、2)救命・救急 医療として、7 つの症例による救急シミュレーション、3)専門的手技としてCV 挿入、気管挿 管、腰椎穿刺、胸腔ドレーン挿入に加えて、経 食道心エコー・内視鏡・冠動脈造影などの高度なシミュレータで体験するという内容です。

当日は、朝8 時半に全研修医と指導者らが集 まり、トレーニング開催の趣旨やセンターの説 明などのオリエンテーションの後、約130 名の 研修医たちは、15 グループ(8 〜 9 名/1 グル ープ)に分かれて、設営されたトレーニングル ームを周りシミュレーションを体験しました。 各トレーニングルームでは、数人の指導者が学 習支援にあたりました。

指導者は県内の15 箇所の施設から医師48 名、看護師14 名、作業療法士1 名の計63 名が、 日々の多忙な勤務にもかかわらず、終日、本ト レーニングのために指導して下さいました。15 グループの研修医たちが次から次へとトレーニングルームに回ってくるため、指導者らは、準 備や復元などで休憩時間も取れないほどの忙し さにもかかわらず、終止指導の手を緩めること なく情熱をもって対応して下さいました。その 姿に本当に敬服し、言葉にできないくらいの感 謝の念でいっぱいです。沖縄の指導者らの一丸 となれる力を感じました。参加した研修医から は、この採用時に今回のようなトレーニングが できた事の喜びや、今後もシミュレーショント レーニングをしたいという肯定的な意見が多く 聞かれました。この1 日のトレーニングは、研 修医一人一人の技術の向上のみならず、医師と しての自覚や誇りを強め、また沖縄で臨床研修 を行うことの連帯感を強く感じさせたものであ ったと思います。今後も皆様のご指導・ご鞭撻 を賜りながら、沖縄独自のトレーニングを企画 し提供していきたいと思っております。

【当日ご指導いただいた方々の所属先】

沖縄県立中部病院、沖縄県立南部医療センタ ー・こども医療センター、大浜第一病院、お もと会教育研修センター、大浜第一病院 訪問 リハビリセンターあめくの杜、浦添総合病院、 中頭病院、名嘉村クリニック、豊見城中央病院、 中部徳洲会病院、南部徳洲会病院、沖縄協同 病院、ハートライフ病院、那覇市立病院、琉 球大学医学部附属病院

シミュレーターを体験する参加者

祝賀会の鏡割りの様子

八重山芸能研究会による余興