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平成23年度沖縄県医師会感染症・予防接種講演会
〜発症機構から解き明かすマイコプラズマ感染症・診断と治療の諸問題〜

宮里善次

常任理事 宮里 善次

去る平成24 年3 月19 日、沖縄県医師会館 において「平成23 年度沖縄県医師会感染症・ 予防接種講演会」を行った。

当日は、日本マイコプラズマ学会の理事でマ イコプラズマ研究と治療の第一人者である札幌 徳洲会病院の成田光先生より「発症機構から解 き明かすマイコプラズマ感染症・診断と治療の 諸問題」と題してご講演いただいた。

マイコプラズマ感染症は日常診療では Common disease としてよく見られる疾患である。

しかしながら、その臨床像は多岐に渡り、気 管支肺炎に至っては特異的経過をたどる症例が多い。

第一選択役のマクロライド系の薬剤も効いて いるのか、効いていないのか判然としない場合が多い。

また、ほとんどは元気で軽症な経過をたどる が、ステロイド投与が適応となるような重症化 するケースも珍しくない。

ここ数年全国的な流行がみられ、皇室の方々 も気管支肺炎を発症して入院される事態となら れたことはご承知の通りである。

講演はマイコプラズマの特徴の解説から始ま り、肺炎の臨床経過を詳しく説明して頂いた。

肺炎以外のいわゆる肺外発症についても、直 接型発症、間接型発症、血管閉塞型発症のパタ ーンと、それぞれに分類される具体的な病名の 提示があった。

肺炎と肺外における感染発症機序の予測を詳 しく説明されたが、マイコプラズマに関する理 解が整理されたように思う。内容についてはス ライドを参照して頂きたい。

マイコプラズマ感染症の診断にはいくつかの 方法があるが、それらの利点と限界についても 詳しく述べられた。

臨床の場面でよく使われるPA 法について は、ペア血清で4 倍以上の変動か、単一血清で 640 倍以上なら可能性が高いと説明があった。

薬剤耐性菌は全てリボソ ーム変異菌であるが、繁殖 力が極めて弱いだけではな く、直接的な細胞傷害性も 弱いので菌自体の耐性化が 臨床的に重症になることは ない。その場合の肺炎と肺 外発症はいずれも免疫発症 である。

マイコプラズマ感染時の 喘息発作の重症化は耐性菌 が絡んでいる可能性がある と示唆された。

治療はクラリシッドの場 合、体重1kg あたり15mg を使うことが肝心であると 強調されたことが強く印象に残った。

また、重症化症例はサイトカイン・ストームの状態にあるので、ステロイド投与の適応であると説明があった。

臨床像や検査、治療に至るまで曖昧模糊とした印象のマイコプラズマ感染症であったが、今回の講演で明確になったように思う。