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沖縄県福祉保健部保健衛生統括監
国吉 広典 氏

国吉広典氏

役職は変わっても自分とい う人間は同じ、時代に流され ず、環境に流されず、人に流 されず、ふるさとを想い、公平・ 平等な地方自治の発展に努め たい。

Q1.福祉保健部でこれまで経験された部署を含めて、自己紹介をお願いします。

また、保健衛生統括監に就任されて2 年目を 迎えられましたが、これまでを振り返ってのご 感想と今後の抱負をお聞かせください。

宜野湾市普天間の米兵相手のバー街で高校卒 業まで生活、当時、米軍人の事件事故、地元暴 力団の抗争は頻発、売春、薬物(乱用)は当た り前の時代だったような記憶があります。私 の実家も当時はA サインバーを経営しており、 復帰40 年を迎える今日では想像できない環境 で育った地元を愛する中部の一般的(変な)な 人間です。

昭和55 年に八重山保健所に技師として採用、 名護、石川、コザと13 年間の保健所勤務を経 て本庁医務課に異動、その後、薬務課、環境保 全室、環境整備課、医務課、薬務衛生課と17 年間、役職も変わりながら本庁内の色々な部署 を異動してきました。その間、医療施設の許認 可、医師確保対策、救急医療対策、血液確保対策、 ハブ対策、航空機騒音問題、原子力潜水艦(放 射能)関係、地球環境(温暖化)問題、産業廃 棄物関係、墓地問題、生活衛生関係、水道行政 等々の仕事を経験してきました。

保健衛生統括監(旧:次長)のポストは自分 の記憶するところ医師以外は就いたことがありません。行政職の中でも医療職としての専門性 も求められるポストでもありますが、保健所の 医師を含め行政部門での医師の絶対数の確保が 厳しいのが現状であります。

統括監になって振り返っての感想ですが、特 に医療の分野の状況をみると、自分が医務係長 をしていた10 年ほど前に比べると、医師等の 確保、救急医療体制の整備、医療施設設備整備 等、医療供給体制の充実・確保のための県の事 業が大幅に拡大していることです。また、平成 22 年度に創設された地域医療再生臨時特例基 金により、相当な規模の予算が医療分野に投入 され、医師会等関係者のご尽力もあり、着実に 医療体制の整備が進められてきていると感じて います。

もうひとつは、医師会等関係団体と県行政と の協力体制の構築が進んでいることです。私も 過去に医師会館の建設に関係する土地の等価交 換の問題等、医師会と色々な調整をさせていた だき、多くのご協力をいただいた経験がありま すが、当時に比べ様々な課題について情報の共 有、協力関係がよりよい形に進んできていると 思います。このことについては、医師会の役員 の方々をはじめ会員そして事務局職員の皆様の ご理解とご協力のお陰であり、心から感謝を申 し上げます。

このように関係者の協働により沖縄県の保健 医療体制の整備が進む一方、サービスを供給す る側、受ける側にかかわらず、県行政への要望 はまだまだ多く、ノイズィー・マイノリティー、 サイレント・マジョリティーなのかにかかわら ず、時代の変化を踏まえ、かつ時代に流されず、 限られた人・金・物の中で、優先して対応すべ き課題をきちんと見据えて職務にあたっていき たいと考えています。

Q2.生活習慣病の問題、医師・看護師不足、 超高齢社会への対応等、様々な問題が山積み している中、県民が、安心・安全に暮らせる 社会を実現するため、福祉保健部が一体とな って取り組むことが重要かと思われますが、 それを牽引されるお立場から、現状と今後の 課題、展望をお聞かせください。

振り返ると戦後あらゆる社会基盤が荒廃した 時代から、日本本土はもちろんのこと、沖縄県 も急激な復興・発展を遂げてきたことは異論の ないことと思います。

医療の分野においても、復帰前に比べ医療 機関の数は急激に増加し、量だけでなく医療 の質も向上してきたと思います。全国平均を上 回るようになった医師等の数、ヘリ急患搬送体 制や救命救急センターの整備等救急医療体制の 充実、医師臨床研修事業や看護師研修事業の拡 充、医療安全相談体制の整備、離島医療機関の 整備、最近ではシミュレーションセンターの整 備等々、多くの予算が投入され、関係者の使命 感に基づく不断の努力(犠牲?)により沖縄県 の医療事情は大きく改善されてきていると思い ます。

また、道路、水道等様々な社会基盤も着実に 整備が進み、急患搬送体制など医療供給体制に もいい面で影響し、その恩恵を県民は確実に享 受していると考えます。

一方、核家族化、少子高齢化の進行等社会構 造の変化とともに、子育て支援、高齢者福祉、 社会保障制度の問題等、様々な課題が山積して いるのも事実であります。さらに近代医療の進展もあり医師等の過剰労働の改善には程遠く、 国民も様々な社会サービスの向上が図られてい る反面その恩恵を実感できていない状況にある ことも現実ではないかと思います。

行政に対する様々な要望も、変化進展する社 会構造との矛盾の中で複雑化しています。居酒 屋、外食産業が繁栄し、飽食の時代となった今 日、生活習慣病(肥満)対策はどうするのか。 持ち家率、家屋面積が低く核家族化し共働きの 多い沖縄県で在宅医療の推進はどうするのか等 など。県民の求める「安心・安全」のレベルに ついても、個々の価値観、職業、組織上のそれ ぞれの立場によって異なり、また社会の変化に よっても変わってくるものと思います。

県ではこれらのことを踏まえ、沖縄の「ある べき姿」、「ありたい姿」示した「沖縄21 世紀 ビジョン」を平成22 年に策定しています。今 後はこのビジョンをひとつの道しるべとして、 各種施策を進めていくこととなります。

昔に比べ業務量も大幅に増加する中で、福祉 保健部職員も使命感を持って毎日頑張っています。

無責任な「どうする、どうする」の声に過剰 に反応せず、将来あるべき姿をきちんと描き、 向かうべき方向性を共有(組織化)し、それに 近づけるための方策、手段を効果的に実践する ため、職員のモチベーションを維持しさらに高 めつつ業務を進めていくことが大切であると思います。

次世代(後輩)に責任を預けず、結果を急ぎ 求めすぎず、着実な進歩として沖縄県の発展に 繋げていきたいと思います。

Q3.県医師会に対するご意見、ご要望がありましたらお聞かせください。

地方自治としての医療分野も、行政の担当、 医療人、議会等々それぞれの立場において、そ の責任の度合いと役割の違いはあるにせよ、や はり主役は地域住民(県民)であり、サービス を提供する側が主役ではないと思います。

県民が、自らの意思と責任で地方自治としての社会のシステムの構築に関わり、それを育て 前進させていくことが、医療を含めた様々な社 会サービスの恩恵を感じることとなり、医療供 給体制の整備、医療の発展にも繋がるものと考 えます。

そのためにも、県民が誤った選択をしないよ う、今後の正しい方向性を示すことが私たち医 療に関係する者の役割であると思います。

今年度は第6 次の保健医療計画の見直し時期 となっています。保健医療に関する総合的・基 本的な計画として、沖縄県の目指すべき県民 ニーズを満たす保健・医療の総合的なサービス 体制の確立に向け改定作業を行います。県医師 会の多面的なご支援とご協力をよろしくお願いします。

Q4.国吉統括監の座右の銘、日頃の健康法やご趣味などをお聞かせ下さい。

特に座右の銘というのはありませんが、「見 て、聞いて、触れて、嗅いで、舐めてみるほど に人(部下)を愛せよ」という昔研修で聞いた言葉が今でも頭の中に残っています。公務員年 数も長くなると、相手の表情を見ず、話を途中 でさえぎり、相手の想いに触れず、発する訴え に気づかず、隠れた長所に気づこうとしない自 分を今でも戒める言葉です。

健康法についてですが、日頃、健康行動とは 相反することばかりをしてきたので特に申し上 げるものはありませんが、あえて言うならば食 べ物に好き嫌いがないことと中、高、大学と部 活動として野球をやっていたこともあり、社会 人になってからも身体を動かすことがあまり苦 ではなく、様々なスポーツを楽しみ適正体重を 維持してきたことです。

結果として仲間も増え、飲み会も増え、財布 と肝臓の健康状態が悪化してきたこともあり、 40 歳途中からは種目を絞込み、主にテニスを 趣味として運動不足の解消に努めています。

この度は、インタビューへご回答頂き、誠に有難うございました。

インタビューアー:広報担当理事 本竹 秀光