沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 6月号

平成23年度 都道府県医師会
生涯教育担当理事連絡協議会

村山 貞之

理事 村山 貞之

去る3 月1 日(木)、日本医師会館において 標記協議会が開催されたので、その概要につい て報告する。

開 会

定刻となり、三上裕司日本医師会常任理事より開会が宣言された。

挨 拶

原中勝征日本医師会長より、概ね次のとおり挨拶があった。

生涯教育というのは、日本医師会の会員であ り続けるうえで重要な部分であると考える。日 本医師会に入る意義がどこにあるのかという質 問を若い方々からよく受ける。生涯教育は、仲 間同士が自分たちの医師としての使命感、ある いはステータスを共有するとともに、新しい医 学に対して、遅れないように勉強していくうえ で大切なことだと考える。

また、今まで健康診断では、治療が難しい疾 患は検査をしなくていいのではないかという考 えがあった。しかし、今や化学療法などで治療 できる可能性が高い時代になった。このような 変化によって、医療に関することの進歩という ものを私たちは共有して、それに追いつきなが ら患者さんに医療サービス、医療の義務を果た すということが、非常に大切である。それがこ の日本医師会あるいは、地域医師会での非常に 大切な仕事の一つであると考えている。

今回、生涯教育の円滑な推進及び、生涯教育 を受けることの楽しみが見つけられるかを諮問 した。e- ラーニングや地域での勉強を通して、 教育を受けた、勉強をした先生方には、患者さ んが認定を受けたとわかるように制度化に向け て検討中である。

卒業と同時に、学問、教育から離れている。 開業した際には、進歩から遅れてしまいがちに なっている。それを補うのが生涯教育の大切な役目であると考える。先生方のご協力により、 日本の医療が評価されるようにご協力、ご指導 をお願いしたい。

報 告

(1)生涯教育制度関連事項報告

日本医師会三上裕司常任理事より、概ね次のとおり報告があった。

平成22 年度生涯教育制度集計結果は、単位 取得者総数107,826 人(うち日医会員96,786 人)、日医会員単位取得者率58.8%(診療所: 64.4%、病院他:51.5%)、平均取得単位16.3 単位、平均取得カリキュラムコード15.0 カリ キュラムコード、取得単位+カリキュラムコー ド合計平均31.3 であった。

単位取得方法別平均単位数は、講習会等で 13.12 単位(全体の80.4%)、体験学習2.35 単 位(全体の14.4%)、日医雑誌0.56 単位(全体 の3.4%)であった。その他ではe- ラーニング 0.14 単位、研修指導0.09 単位、論文指導0.04 単位となっている。e- ラーニングは、昨年度 と比較すると利用者が約4 倍となっている(平 成21 年度利用者:7,816 人⇒平成22 年度利用 者:31,665 人)。

取得者の多かったカリキュラムコードは順 に【13: 地域医療】の58,337 人( 取得者率 54.1%)、【2:継続的な学習と臨床能力の保持】 の58,023 人(取得者率53.8%)、【3:予防活 動】の52,993 人(取得者率49.1%)、【1:専 門職としての使命感】の52,412 人(取得者率 48.6%)、【73:慢性疾患・複合疾患の管理】の 51,073 人(取得者率47.7%)となっている。

また、取得者の少なかったカリキュラムコ ードは順に【64:肉眼的血尿】の4,827 人(取 得者率4.5%)、【41:嗄声】の4,722 人(取得 者率4.4%)、【56:熱傷】の3,247 人(取得者 率3.0%)、【40:鼻出血】の3,151 人(取得者 率2.9%)、【48:誤飲】の2,662 人(取得者率 2.5%)となっている。

単位+ カリキュラムコードの取得分布は、0.5 〜 9.5 の範囲で26,538 人( 全体の24.6%)、10 〜 19.5 の範囲で23,013 人(全体の21.3%)、20 〜 29.5 の範囲で17,479 人(全体の16.2 %)、30 〜 39.5 の範囲で12,389 人 (全体の11.4%)、40 〜 49.5 の範囲で8,909 人(全体の8.2%)、50 〜 59.5 の範囲で5,965 人 (全体の5.53%)、60 〜 69.5 の範囲で4,238 人(全体の3.9%)、70 〜 79.5 の範囲で2,588 人 (全体の2.4%)、80 以上は6,706 人(全体の6.2%)であった。

指導医のための教育ワークショップについて は、平成21 年4 月より、研修医5 人に対して、 指導医1 人が必置となっている。日医開催のワ ークショップは定員をはるかに超える応募があ り、今後ますます受講者が増加されると見込ま れる。都道府県医師会においても積極的に開催 していただきたい。平成23 年度はこれまで12 都道府県医師会で開催され、これまで開催した 11 都府県で268 名が参加した。

日医生涯教育協力講座については、今年度は、 1.「感染症の予防と治療〜呼吸器感染症を中心 として〜」、2.「女性のがん〜最新の治療から ワクチンによるがん予防まで〜」、3.「地域医 療と予防接種〜ワクチンがもたらす恩恵〜」を 開催した。なお、来年度は、1.「てんかんの診 断から最新の治療まで」グラクソ・スミスクラ イン株式会社との共催、2.「心房細動と脳梗塞」 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社との 共催、3.「テーマ未定(仮面高血圧をテーマに 調整中)」第一三共株式会社との共催による開 催を予定している。

e- ラーニングについては、生涯教育on-line において、e- ラーニング教材を提供しており、 日本医師会雑誌読後回答等で単位を取得でき る。また、カリキュラム、日本医師会雑誌も PDF 形式で全文掲載している。さらに、ビデ オライブラリーやセミナー開催状況等も情報提 供している。< http://www.med.or.jp/cme/ >

(2)生涯教育推進委員会報告

日本医師会生涯教育推進委員会橋本信也委員長より、概ね次のとおり報告があった。

今期生涯教育委員会が検討した三つの課題について報告と提言を行った。

1.「総合医」、「総合診療医」に関する本委員会の共通理解について

これまで定義づけが曖昧なため混乱していた 「総合医」、「総合診療医」という用語について その概念を明確にした。

「総合診療医」とは多くの医学辞典によると、 プライマリ・ケアという概念から生まれた一つ の診療科の名称であり、1)患者の症状や臓器に よる選択をせず、全身臓器を広く診る。従来の 「一般内科」に類似する。2)時機を誤らずに専 門医に紹介する。3)日常遭遇する頻度の高い疾 患(common disease)に精通する、と定義される。

これに対して「総合医(科)」という名称は、 わが国の医学関係の辞書には記載がない。従っ てその概念は曖昧である。この名称が有名にな り、かつ混乱を起こす元となったのは、やはり 厚労省医道審議会医道分科会・診療科名標榜部 会で、「総合科」という名称の診療科を医療法 上新設し、その科の医師の資格を国が認定する と提唱したことによる。医師という資格は国家 試験によって付与されており、そのあと特定の 診療科医の標榜資格を国が個別に審査するとい うことがあってはならない。

本委員会としてはこのような混乱を招く「総 合科(医)」という名称を避け、あえて社会一 般が安易に使用するなら、それは日医が従来か ら言う「かかりつけ医」と同じ概念であると結論づけた。

2.「日医生涯教育カリキュラム<2009>再考」

2009 年に改定された生涯教育カリキュラム は「総合診療医」に偏した傾向が強い。それは 前項まとめ1)で述べた、いわゆるプライマリ・ ケアあるいは一般内科のためのカリキュラムに 適している。日医会員は広い範囲に亘って「総 合的な診療能力」を持つことが必要であるが、 全員が一般内科を行っているのではない。

カリキュラムにおける学習すべき目標として、多くのカリキュラムコード(CC)を設定 したことは評価されるが、CC の範囲とレベル を十分検討することが望まれる。

その意味において本委員会は、どの診療科に 属する日医会員にとっても必要な生涯教育のカ リキュラムとして、「基本的医療課題」にも重 点を置くよう検討することを提案する。

3.日医生涯教育の「評価」について

「評価」については長い間、歴代の生涯教育 推進委員会でも検討を重ねてきているが、そう した過去の議論を参考にした上で、時代の変化 に対応して、「形成的評価」から「総括的評価」 に転換すべき時が来たのではないかと考える。 こうしたことを勘案して現時点で具体化できる 喫緊の課題を検討するよう提言する。それは次 の4 項目である。1)日医生涯教育の必修化、2) 日医生涯教育の学会認定専門医更新の要件、3)日医生涯教育認定医の設置、4)現行の「認定証」発行要件の変更。

講 演

日本の国情・2 次医療圏の実情からみた地域医療再生のための大学と
地域医療機関による1 年生からの卒前・卒後シームレスな医師育成体制構築
−すべての医師に総合力を−
秋田大学総合地域医療推進学講座 長谷川仁志教授

1.最近の医学教育改革のエッセンスと課題

1968 年のインターン制度により、各分野細 分化が進むとともにダイレクトな専門研修がほ とんどとなった。これにより、1)医学生・研修 医・生涯教育において専門性に主眼が置かれす ぎてきた。2)国民が期待するすべての科の医師 として当然の個々の総合力・実践力・コミュニ ケーション力を育成する医学教育・研修体制が不十分となった。

平成12 年の医学教育の目指すべき目標は、 1)患者中心の医療を実践できる医療人の育成、 2)コミュニケーション能力の優れた医療人の育成、 3)論理的問題を真摯に受け止め、適切に対処できる医療人の育成、 4)幅広く質の高い臨床能力を身につけた医療人の育成、 5)問題発見・解決型の人材の育成、 6)生涯にわたって学ぶ習慣を身につけ、根拠に立脚した医療を実践できる医療人の育成、 7)世界をリードする生命科学研究者となりうる人材の育成、 8)個人と地域・国際社会の健康の増進と疾病の予防・根絶に寄与し、 国際的な活動ができる人材の育成であった。

平成13 年には、知識を詰め込む教育から能 力を育てる教育へモデル・コア・カリキュラム が策定された。また、医師としての必要な自己 学習・自己開発能力、問題解決能力、チーム ワーク、人間力を養う、PBL(problem based learning)導入による自己決定型学習(selfdirected learning)能力の開発及び、TBL(team based learning):TBL チーム基盤型学習が開発された。

低学年からのPBL、TBL で、自己学習・自 己開発能力、問題解決能力、コミュニケーショ ンカ、チームワークカをトレーニングすること により5、6 年生の診療参加型実習が充実し、 総合力育成の重要要素となる。

各科横断的な卒業時の医師育成像をさらに明 確にするために、1)「将来、何科に進んでも国 民が期待する医師として大切な各科(分野)の 基本診療・総合力、実践力をつけるべき教育」、 2)必修科目は、各科・各施設の臨床医、基礎医 学者、医学教育の共同責任において策定し、な るべく医療現場の症例・事例・実践ペースで、 統合した教育(トレーニング)を同じ理念で行 う必要が高い等目的を明確にし、すべての医師 に総合力を養うため、生涯教育への意識改革、 充実化が必要である。

2.『総合力・教育の連鎖』が必要な日本の国情・2次医療圏の実情

西日本に比べ、東日本には、人口当たりの医 師が少ない(人口当たり病院・診療所・病床数 も同様)。また、人口当たり医師数のみならず、2 次医療圏間の距離・面積を加味して対策を検 討する必要がある。また、日本では、ほとんど が当初、専門医となり、その後、多くが50 歳 前後までに総合的役割に転じている。日本の国 情では、専門医がこれまでの認識では成り立た ない。将来の総合医充実のために総合力のある 専門医育成も必要である。すべての医学生から 医師として当然の総合力重視必須である。

3.日本全体の医療再生には

日本全体の医療再生には、各地区の2 次医 療圏の実情、2 極化した医師の偏在の実態、医 師の役割の変化を把握して対策する必要があ る。秋田県における地域枠学生医師育成教育・ キャリア形成のコンセプトは、1)長期間医療を 支えるキャリアアップ体制、2)2次医療圏(5 〜 12 万人医療圏)の維持、3)地域医療再生は、 専門医(特に内科系)が、今までどおりの認識(臨 床・教育)では成り立たない。4)後期研修医数 における「地域枠医師数/ 一般枠医師数」比が 高くなる県では、地域枠学生以外が、県内医療 と無関係という意識が生じては、医療の維持が できない。地域は、地域枠が行えばよいではな く、医師全体が、いずれは携わる医師として当 然の医療連携(地域医療)マインド、総合力・ 教育力を持つべきである。

4.大学と地域医療機関による1 年生からの卒前・卒後シームレスな医師育成体制構築

これからの日本に求められる医師像は、個々 の医師の経年的勤務状況や役割の変化、若手医 師への十分な医学教育体制など、日本の実情を 考慮した総合力ある専門医と総合医育成の2 本 柱のバランスが重要であり、さらに、大学・県 内の各地域医療機関に、熱意に満ちた指導医が 増え、教育の連鎖で医学教育・キャリア形教育 が強力に推進されていくことが医療再生の必要 条件であると考える。

協 議

三上裕司日本医師会常任理事進行のもと、予め佐賀県医師会より寄せられた質問・要望について、概ね下記のとおり回答があった。

佐賀県医師会

学生が卒業する時まで身につけておくべき、人間的教育と実践的診察能力、処置能力の習得。

又、卒後研修はそれらを再認識する期間とし て再検討を要する。医学教育、卒後研修(研修 医教育)に関し、日医として、積極的に提言す べきと思うが、具体的な案はあるのかお伺いしたい。

また、医学教育、卒後研修を通して、科別で はなく全科的に疾患を把握し対処、トリアージ が出来るようにする教育が第一である。

研修が終わり、生涯進むべき科に専従した後、 本来の勉強が始まり、専門分野に専念すべきである。

現実的に例えば、“腹痛” を訴える患者さんが、 耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科、整形外科等にはま ず受診しない。かかりつけ医か救急告示医療機 関である。昼間の診療時間帯であれば何の問題 もないが、要は時間外診療において全科的にト リアージの出来る医師の育成が不十分なところ に問題がある。

医学教育、卒後研修の内容を考え直すべきと思われる。

日本医師会

ご指摘のように医学教育・臨床研修制度につ いては、4 月20 日付で、「医師養成についての 日本医師会の提案〜医学部教育と臨床研修制 度の見直し〜」を公表し積極的に働きかけをお こなっている。また、本日、長谷川先生から講 演があったように、大学と地域医療機関による 1 年生からの卒前・卒後のシームレスな医師育 成体制をふまえ、引き続き会内においても検討 するとともに、国等に対しても働きかけをしていく。

「専門医の在り方に関する検討会」

日本医師会三上裕司常任理事より「専門医の在り方に関する検討会」について概ね次のとおり報告があった。

医師の質の一層の向上及び医師の偏在是正を 図ることを目的として、専門医に関して幅広く 検討を行うため、有識者の検討会が開催された。 主な検討項目は、1)求められる専門医像について、2)医師の質の一層の向上について、3)地域 医療の安定的確保についてであった。

当検討会で、第Y次日本医師会生涯教育推進 委員会答申について意見を述べさせていただい た。主な内容は下記のとおりである。

○かかりつけの医師とは

なんでも相談できるうえ、最新の医療情報を 熟知して、必要なときには専門医、専門医療機 関を紹介でき、身近で頼りになる「地域、保健、 福祉を担う幅広い能力を有する医師」

○総合医とかかりつけ医

就業形態や診療科を問わず、「医療的機能」 以外に、「社会的機能」すなわち「かかりつけ 医機能」を有する医師である。

主に地域医療を担う地域の診療所や中小病院 の医師であることが多いが、病院勤務医等もこ うした役割を担っており、どの医師であっても 該当する。

なお、国民皆保険下のフリーアクセスにおい て、既に患者から選ばれ、地域医療を担ってい る医師も、「かかりつけ医」であり、「総合医」 である。

○総合診療医

「総合診療医」は内科、外科、精神科、皮膚科、 眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、小児科、産婦人 科など、広い領域にわたって行う診療について、 「医療的機能」の面のみから評価された医師で ある。

○現在認められていない「総合科」「総合診療科」の標榜について

「総合科」の標榜診療科名の新設には、フリ ーアクセスの阻害や、人頭払いなど次の医療費 抑制への布石につながることから、反対である。

日本の公的医療保険制度のすぐれた特徴であ る「国民皆保険」、「現物給付」、「フリーアクセス」 の堅持については絶対に担保する必要がある。

一方「総合診療科」の標榜について、今後引き続き議論が必要である。

専門医制度に関する日本医師会の考え方つ いては、1)専門医制度の設計にあたっては、プ ロフェッショナルオートノミーを重視するこ と、2)現行の医療制度のなかで整合性のとれた 専門医制度とすること、3)専門医の認定・更新 にあたっては、日医生涯教育制度をそのベース 要件とすることについて議論すること、4)専門 医のインセンティブについて議論することとしている。

また、今後の専門医制度についての議論につ いては、1)日本医師会生涯教育制度の生涯教育 認定証を専門医認定・更新のベースの要件とす ることについて議論する。2)日医生涯教育制度 は、昭和62 年に発足して、24 年間継続してい るもので、全医師が参加可能な教育制度(今年 の単位取得者数は108,507 人)。3)生涯教育の 制度の設計は、日本医師会生涯教育推進委員会 で、常時、見直しを行っているので、さまざま な要望に対応できる余地がある。4)また、専門 医のインセンティブについては、昨今の国家財 政・医療保険財政はきわめて緊縮の状況にある ため、慎重に議論を進めることとする。

質疑応答

佐賀県医師会:時間外診療の時間帯に、診療は専門医の先生にお願いしたいとの要望が多くある。

長谷川仁志(秋田大学総合地域医療推進学講座

教授):このようなことは今後長く続くと考え られる。だからこそ、一つ専門をもって、今ま でのながれを反省して生涯教育等で総合力をつ けながら対応していただきたい。

群馬県医師会:カリキュラムコードの変更はいつごろか。

日本医師会:この件については生涯教育推進委 員会で検討を行い、要望があれば随時変更でき ることに決定した。

兵庫県医師会:カリキュラムコードを見直していただきたい。

橋本信也(日本医師会生涯教育推進委員長): 2009 年に改定された生涯教育カリキュラムは 「総合診療医」に偏した傾向が強い。カリキュ ラムにおける学習すべき目標として、多くのカ リキュラムコード(CC)を設定したことは評 価されるが、CC の範囲とレベルを十分検討す ることが望まれる。本委員会では、どの診療科 に属する日医会員にとっても必要な生涯教育の カリキュラムとして、「基本的医療課題」にも 重点を置くよう検討することを提案する。

香川県医師会:日本医師会生涯教育制度の生涯 教育認定証を専門医認定・更新のベースの要件 としていただきたい。

橋本信也(日本医師会生涯教育推進委員長): 理想ではあるが、日本医学会の専門医制度の基 礎研修のようなものとある程度コラボレーシ ョンしていくことが大事ではないかと考えている。



印象記

学術担当理事 村山 貞之

去る3 月1 日、東京駒込の日医会館にて平成23 年度都道府県医師会生涯教育連絡協議会が行 われ、担当理事として出席した。日医の生涯教育については、朧気ながら知っていたが、大学病 院に所属するものとしては、あまり興味を持って見ていなかったため、現在どのように進行して おり、どういう問題点があるのかを勉強するつもりで参加した。

冒頭、原中勝征前医師会長の挨拶があった。その中で「今まで健康診断では、治療が難しい疾 患は検査をしなくていいのではないかという考えがあった。しかし、今や化学療法などで治療で きる可能性が高い時代になった。このような変化によって、医療に関することの進歩というもの を私たちは共有して、それに追いつきながら患者さんに医療サービス、医療の義務を果たすとい うことが、非常に大切である。それがこの日本医師会あるいは、地域医師会での非常に大切な仕 事の一つであると考えている。」との言葉があった。確かに、個人的にも卒後30 年の中での医療 の進歩はめざましく、特に専門でない、あるいは、今さら人には聞けないようなものは、独自に 雑誌、専門書で勉強している。日医が組織として行っている、この生涯教育の大切さは、よく理 解できる。

三上裕司常任理事の生涯教育制度関連事項報告のあと、生涯教育推進委員会報告として、橋本 信也同委員会委員長が、会長諮問「生涯教育制度の円滑な運用と環境整備」を受け、(1)「総合医」 「総合診療医」に関する本委員会の共通理解、(2)「日医生涯教育カリキュラム〈2009〉」再考、(3) 日医生涯教育の「評価」―を柱に答申を取りまとめられたことの紹介があった。厚労省が、最近 唐突に政策的に推進している総合医認定制度の可否についての議論が沸騰しているが、総合医は、 従来通りの「かかりつけ医」と認識しているとの日医としての解釈が再確認されていた。また、 昨年、この会でも議論があった、専門医には縁遠い84 項目に列挙された新「カリキュラムコード」 の内容が含まれている「日医生涯教育カリキュラム〈2009〉」については、倫理、法律、社会保障、 介護などの「医療的課題」を増やす必要があることが指摘された。日医生涯教育の「評価」につ いては、履修を必修とし、インセンティブを設けることや、履修の認定を学会認定専門医更新の 要件とすることなどが提言された。日本の医療の今後の方向性として「医師は専門医であるだけ でなく、総合医でもあらねばならない」という方針があると思う。橋本委員長が、報告された内 容は、まさにこのことを推進するための現状把握と今後の方策であると思うが、学会認定専門医 更新の要件とすることなどは、ハードルが高い目標と思われた。

引き続いて、長谷川仁志秋田大学総合地域医療推進学講座教授による「日本の国情・二次医療 圏の実情からみた地域医療再生のための大学と地域医療機関による一年生からの卒前・卒後シー ムレスな医師育成体制構築−すべての医師に総合力を−」と題した講演が行われたが、この内容 も「医師は専門医であるだけでなく、総合医でもあらねばならない」ということを、大学での卒 前教育から行う必要が説かれていた。震災被害を受けた東北地区の現状を踏まえた話であり、説 得力のある講演であった。

次いで協議が行われた。佐賀県医師会から寄せられた、医学教育・臨床研修制度に関する具体 案を問う質問に対しては、三上裕司常任理事から、「医師養成についての日本医師会の提案―医学 部教育と臨床研修制度の見直し―(第二版)」を公表し、国に対して積極的に働き掛けていると回 答があり、またフロアからの、既に臨床現場で働いている医師の総合力養成に関する質問には、 同常任理事から、地域によって求められる能力が違うことから、地域の実情に応じたカリキュラ ムコードを選択するよう要請があった。生涯教育をいかに行っていくかは、現状から近い将来に 向けての日本の医療を鑑みて、迅速な対応が必要であり、日医は多方面にわたり努力しており、 政策提言も積極的におこなっている姿が垣間見れた協議会であった。短い時間ではあったが、非 常に勉強になった。