沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 5月号

第3回 沖縄県医師会県民健康フォーラム
誰も教えてくれない“タバコの真実”

玉井修

理事 玉井 修

式 次 第

司会 玉井  修(沖縄県医師会理事)

1.挨拶     沖縄県医師会長 宮城 信雄
         沖縄県福祉保健部長 宮里 達也

2.講演 座長 沖縄県医師会理事 玉井  修
  「タバコの嘘をあばく」
    沖縄大学人文学部福祉文化学科禁煙学講座教授 山代  寛
  「無料でできる職場の受動喫煙対策」
    ちばなクリニック健康管理センター医長 清水 隆裕
  「教育関係者の立場から」
    沖縄大学大学院生(元養護教諭) 大城 弘子
  「行政に対する喫煙対策の働きかけについて」
    那覇市医師会禁煙推進委員会委員長 長嶺 信夫

3. 討論・質疑

4. 閉会

平成24 年2 月18 日(土曜日)パシフィック ホテル沖縄万座の間におきまして第3 回沖縄県 医師会県民健康フォーラムが開催されました。 喫煙に関する問題は喫煙者の発癌の問題や受動 喫煙の問題など非常に多岐にわたる事は多くの 人が理解しているところですが、今回の健康フ ォーラムでは更にたばこ産業が行う巧妙な販路 拡大戦略にも充分な時間を割いて頂きました。 すでに日本も批准しているWHO により制定さ れたタバコ規制枠組み条約(FCTC)の厳格な 適用を阻害するものは、巧妙に仕組まれたタバ コ産業の生き残り戦略である事が理解できまし た。今やタバコ産業の重要な販路として若い女 性がターゲットとされ、軽いタバコ、おしゃれ なパッケージなど、いかにも若い女性が手を出 しそうな戦略を巧妙に仕組んでいるのです。若い女性の喫煙率上昇は近い将来大きな社会問題 となるでしょう。健康に良い訳がないタバコが、 未だに社会から駆逐されていない理由はいった い何なのでしょうか。様々なメディアや、行政、 政治家を上手に取り込み、もっともそうな理由 をつけて、あの手この手で生き残りを必死に画 策しているタバコ産業のあり方をもっとシビア に見つめるべきではないでしょうか。タバコを 吸わないで欲しいと言うと、周囲に煙たがられ るような、何となく雰囲気を壊してしまうよう な気になってしまいます。結果的に、非喫煙者 が煙たい思いを我慢する事になるのです。周囲に煙たがられるよりも、煙たい思いを我慢する 方が大人の選択の様な気になってしまうので す。この様にお互いにつまらない気を遣わせて しまう様な社会のあり方そのものが問題だと思 います。そもそも、この世の中にタバコが無け ればこの様な事で悩む必要もないのです。フォ ーラムでは世界一幸せな国、ブータンは国家を 上げて喫煙をしない国だという事が紹介されま した。日本も社会全体として喫煙にNO を突き つける時期がもうすぐやってくると思います。 無関心が一番良くありません、今後もタバコの 問題は粘り強く取り上げていこうと思います。

講演の抄録

タバコの嘘をあばく
山代寛

沖縄大学人文学部福祉文化学科 禁煙学講座教授
山代 寛




喫煙の害について

タバコは喫煙者だけでなく受動喫煙にあう非 喫煙者にとっても、癌、心筋梗塞、脳梗塞、く も膜下出血、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や急 性肺炎などの死因となる疾患の主要な原因です が、タバコから遠ざかることによってこれら疾 患リスクを下げ、再発を予防したり、進行を遅 らせたり、症状を軽快させることが出来ます。 しかしタバコ産業は受動喫煙の害を未だに認め ず、喫煙で早く死ぬことを奨励さえしています。

日本のタバコ政策

本邦は「たばこ事業法」により税収を上げる ためタバコ販売を促進する立場にあります。こ れは100 年以上前に大日本帝国議会にて定めら れた生産・販売を国家が保護・管理する「煙草 専売法」を踏襲するもので、1985 年、専売公 社はJT「日本たばこ産業株式会杜」に変わっ てもなお、「日本たばこ産業株式会社法」により、 全株式のうち半分以上の株は国(財務省)が保 有することが規定されており、まさに「国策企 業」そのものです。また厚労省でなく財務省が タバコ事業の監督官庁であり、JT は財務官僚 の有望な天下り先で、さらに国会に多数の「た ばこ族議員」が存在しているため、残念ながら この「たばこ事業法」は改正、撤廃される見通 しはたっていません。

明治以来の「お国のためにタバコを吸って税 金を納め、年金、医療費をかけないうちに死ん でしまえばよい」という財務省、タバコ会社の 論理は、医師としてはもちろん国民として認め られるものではありません。実際は喫煙によっ て税収以上の医療費がかかることも明らかにさ れていますし、喫煙者は寿命が短いだけでなく、タバコ病によって闘病生活を送る年月も長いの で、喫煙者の健康寿命は健常者よりもずいぶん 短くなります。また、闘病生活が長いことで家 族にかかる精神的、肉体的、経済的負担も大き く、タバコは国民にとっていいことは一つもあ りません。

タバコの嘘に立ち向かうFCTC

タバコ産業が引き起こすタバコ病に対して効 果的な対策を促進するために生まれた条約が WHO FCTC(たばこ規制枠組条約)です。

我が国を含むFCTC 加盟国は、タバコ代の 大幅な値上げ、受動喫煙対策などの国際的な義 務を果たすことがもとめられていますが、タバ コ産業はこの条約を骨抜きにしようと必死で嘘 をついていきます。この嘘を供覧し、皆様とタ バコの真実に迫りたいと思います。

無料でできる職場の受動喫煙対策
清水隆裕

ちばなクリニック 健康管理センター医長
清水 隆裕




タバコの販売により利益を得ている人々(お よび彼らから広告料などを得ている人々)は頑 なにそれを認めようとはしませんが、医学的に は受動喫煙による健康被害はもはや論じる余地 のないほどに明らかとなっています。1960 年 代に始まった受動喫煙と健康に関する疫学研究 は、初期の研究こそ不備が指摘されるものも含 まれていますが、追試に追試を重ねた結果、世 界保健機関(WHO)が詳細な報告書を添えて「受 動喫煙は科学的根拠を持って健康障害を引き起 こすことが示されて論争に終止符が打たれたと いえる」と宣言しているのです。そのため日本 も批准しているタバコ規制枠組み条約(FCTC) 第8条(資料)では、締結国に「タバコの煙に さらされることが死亡、疾病及び障害を引き起 こすことが科学的証拠により明白に証明されて いることを認識する」ように求めています。無 論、職場における受動喫煙対策も、受動喫煙が 危険であるという認識のもとで進められていく 必要があります。

一般に行われている受動喫煙対策には「分 煙」があります。なかでも空気清浄機を使わ れている事例は多いのではないでしょうか。し かし、空気清浄機には「粒子成分は除去できる がガス状成分は除去できない」という欠点があ ります。臭気や目に見える煙が除去できたとし ても、臭気も色もない有毒ガス(例:一酸化炭 素、ガス化したニコチンなど)はほとんど素通 りすることが知られています。このことは日本語の媒体ではほとんど報道されませんでしたが Japan Times などはこれを「Air-cleaner maker just blowing smoke」というタイトルで報道し ました。素直に読めば「空気清浄機メーカーは 煙を撒き散らしているだけだ」という意味です が、blowing smoke には「ほらを吹く」という 意味もありますから「空気清浄機メーカーはほ らを吹いているだけ」とも読めます。したがっ て、皆様には空気清浄機による分煙は不可能と 理解していただく必要があります。タバコの煙 を除去するには強制換気をするよりほか、方法 はありません。すると、冷暖房の効率も落ちま すから、「従業員にタバコを吸わせるには莫大 な電気代が必要になる」ことも想像に難くない と思います。すなわち、事業所内では「タバコ の煙を発生させない」ことが最も安価な「受動 喫煙対策」となります。

そういうと、なかには「タバコを吸わないと ストレスがたまる」とおっしゃるかたがいるか もしれません。では、そういう方は、タバコで「何 のストレス」を解消しているのでしょうか。そ う、タバコを吸う人と、吸わない人の違い…… それは「ニコチン切れのストレスがあるか、な いか」の違いなのです。タバコを吸い続けるか らこそ、ニコチン切れの症状がイライラ、そわ そわの原因になる。すなわち喫煙者は「ニコチ ンが不足するストレス」を感じる分だけ損をし ているとも言えます。

本当の意味での分煙とは、喫煙者と非喫煙者 を分けることではありません。人類の生命・財 産(お金や時間)・心理的負担などを、タバコ の煙・タバコの害から守ることです。タバコ会 社の宣伝文句に惑わされないで、本当の意味で の「タバコの煙にさらされることのない安全な 環境」を守りましょう。

無料でできる職場の受動喫煙対策、それは「タバコのいらない職場」を作ることです。

教育関係者の立場から
〜高校生の禁煙支援を通して〜
大城弘子

沖縄大学大学院生 現代沖縄研究科
沖縄・東アジア地域研究専攻 大学院生
大城 弘子



現在沖縄の学校では敷地内全面禁煙を県教育 委員会保健体育課指導のもと推進されていま す。県立学校は100%達成されており、小学校、 中学校も残り数校で100%達成されます。また、 小学校、中学校、高等学校においては保健の授 業の中でタバコについて学習し、その他に外部 講師等を招いて薬物乱用防止教育とともに喫煙 防止教育の講話等を実施しています。

しかし児童生徒の喫煙問題は依然としてなく ならないのが現状です。高校においては喫煙に 関する指導は後を絶ちません。しかも喫煙で指 導を受けてもなかなか禁煙ができなくて、再度 指導を受ける生徒も多々見られます。また、沖 縄県警察の資料から喫煙で補導を受ける生徒が 平成22 年は5,457 人で、21 年に比べ増加して おり、女子の増加が目立っています。このよう に喫煙問題は、今なお子ども達にとって大きな 問題となっています。

私は喫煙経験のある高校生の面談を通し、ど のようにタバコを手に入れるかを聞いたとこ ろ、友人が持っているタスポで買う、普通にコ ンビニや商店で買う、歩いている人に頼むと答 えています。また、いつからタバコを吸い始め るのかという問いに対し、中学生からという回 答がもっとも多く全体の81% を占めています。

このような現状で、学校教育ではタバコにつ いて考える場合、喫煙防止教育と禁煙支援が重 要であると考えられます。そして、喫煙防止教育と禁煙支援の実施に当たっては、下記の取り 組みが必要だと思います。

1. 喫煙防止教育

・喫煙防止講話前後の、KTSND(社会的ニコチン依存度)の調査研究

・保健学習の効果的な時期、内容の研究 タバコについては知っているつもりでも知 らないことが多い。現在の保健体育の教科 書の内容ではタバコの真実を伝えるには不 十分である。

2. 児童生徒にタバコを吸わせない環境作り

未成年者にタバコを売らない、タバコの値 上げの推進、タバコ自動販売機の廃止、大人 が禁煙をするなど、子ども達にタバコを吸わ せない環境作り。

3. 禁煙支援体制作り

・未成年者の禁煙治療には医療保険適用の拡大が課題である。
  学校では懲罰だけでは解決できずニコチン依存症治療の必要なケースもある。

・禁煙支援面談の実施

タバコを吸っている生徒への禁煙支援は、 医療機関での治療だけでなく、本人がタバ コをやめたいと思えるような支援や禁煙実 行中の支援が必要。

・喫煙防止講話や禁煙支援面談が効果的である

ことから、学校や行政、医療機関等関係機 関の連携で児童生徒の禁煙支援を行うシス テムを作ることにより、児童生徒の禁煙実 行率(成功率)は上昇すると考えられる。 タバコをやめたいと思えるような支援や禁 煙実行中の支援が必要。

行政に対する喫煙対策の働きかけについて
長嶺信夫

那覇市医師会禁煙推進委員会 委員長
長嶺 信夫




「行政に対する喫煙対策の働きかけについて」経過を時系列で記載します。

1979 年〔昭和54 年〕1 月、国立療養所沖縄病 院外科医長就任。多くの肺がん患者に遭遇。

1983 年(昭和58 年)4 月、長嶺胃腸科内科外 科医院開設。看板に「今日も元気だ タバコ がうまい うまいタバコが死を招く」と表示。

1984 年(昭和59 年)6 月、那覇市内の小、中 学校教師、校長の喫煙率調査、男性教師の 34%が喫煙者。校長は24 校中7校、29%(中 学校は6 校中3 校)が喫煙者。「職員会議中 禁煙」は1 校もなかった。

1985 年(昭和60 年)2 月、那覇市小禄在の2 中学校2344 人に喫煙アンケート調査を実施。 中3男子の22%が時々または常時喫煙。中 3男子の46%が喫煙経験。4 割が小学校で 吸い始め、2 月14 日新聞発表。

1985 年(昭和60 年)10 月、沖縄県南部地区 の診療所の医師181 人の喫煙率、診療所内の喫煙環境を調査。医師の喫煙率33.7%、待 合室の全面禁煙17%、新聞発表。

1986 年〜 88 年(昭和61 年〜 63 年)、3 年間「市 長への手紙」で那覇市長へ「市役所ロビーの 禁煙」を要請。「喫煙コーナー」設置を実現。

1992 年(平成4 年)12 月、第2 回県内医療機 関喫煙環境調査実施、医師喫煙率22%。待 合室全面禁煙47.5%。12 月9 日新聞発表。

1999 年(平成11 年)12 月、県中央保健所防煙・ 喫煙対策推進連絡協議会(長嶺信夫会長)発足。

1999 年(平成11 年)12 月から2000 年(平成 12 年)1 月にかけ、中央保健所管内の小、中 学校58 校(20,413 人)で喫煙実態調査を実施。 「今もタバコを吸っている」と答えたのは那 覇で35.6%、浦添で28.1%。

2000 年(平成12 年)3 月、県中央保健所が上 記調査報告書を発行。

2001 年(平成13 年)11 月〜 12 月、「児童の 保護者の喫煙に関する意識調査」実施、調査 結果を県PTA 連合会、県教育長へ報告、教 育現場の禁煙を要請。

2002 年(平成14 年)那覇市医師会会員施設、 第3 回医師喫煙率調査、医師喫煙率11.9%、 待合室全面禁煙75.8%。

2002 年(平成14 年)11 月、県中央保健所防 煙・喫煙対策推進連絡協議会が那覇市内の3 銀行と中央郵便局などで喫煙問題について 出口調査。

2003 年(平成15 年)3 月、4 月、銀行、郵便局での調査結果を新聞発表。

2003 年(平成15 年)3 月25 日、那覇市医師会「禁煙宣言」。

2003 年(平成15 年)5 月1 日、県中央保健所 防煙・喫煙対策推進連絡協議会が、琉球銀行 と沖縄銀行、那覇郵政管理室に対し、待合室 の全面禁煙を要請。

2003 年(平成15 年)5 月23 日から琉球銀行、 沖縄銀行ロビーの全面禁煙を実施。

2003 年(平成15 年)9 月、那覇市長、市議会議長、 市教育委員会に対し、「市管理施設や学校敷 地内での全面禁煙、路上喫煙禁止条例の制定」などの5 項目を陳情。

2004 年(平成16 年)3 月30 日、県医師会「禁煙宣言」。

2004 年(平成16 年)4 月15 日、那覇市医師 会が那覇市長および市議会議長に対し、「那 覇市路上喫煙禁止条例」の早急な制定を陳情 し、独自に作成した条例案を提出。

2004 年(平成16 年)5 月13 日、沖縄県禁煙協議会発足。

2004 年(平成16 年)5 月31 日より県内郵便 局窓口全面禁煙実施。

2004 年(平成16 年)6 月、那覇市医師会から の要請をうけ、那覇市教育委員会「那覇市内 全小中校敷地内全面禁煙」を目指すよう通知。

2004 年(平成16 年)9 月13 日、那覇市医師 会と県中央保健所防煙・喫煙対策推進連絡協議会が県ホテル旅館衛生同業組合に対し、「ホ テル敷地内禁煙に向け、館内ロビーやレスト ランなどで全面禁煙」にするよう協力要請。

2004 年(平成16 年)9 月15 日、沖縄県ホテ ル旅館生活衛生同業組合が「ホテル旅館の『ロ ビーおよびレストラン』の全面禁煙を決議。 9 月16 日、全組合員に通知。

2005 年(平成17 年)3 月17 日、沖縄ハーバ ービューホテルに対し、『ロビーやレストラ ンでの全面禁煙』を要請。

2006 年(平成18 年)1 月12 日、那覇市議会 議員有志に「喫煙の弊害」について長嶺信夫が講話。

2006 年(平成18 年)3 月4 日、OCN テレビで「タ バコ(禁煙)について」放映、「路上喫煙や 受動喫煙の弊害」を強調。早急な「路上喫煙 禁止条例」制定を訴えた。

2006 年(平成18 年)9 月15 日、県教育庁が 2007 年4 月から「県立学校敷地内を全面禁煙にする」と発表。

2006 年(平成18 年)12 月25 日、那覇市議会 「路上喫煙防止条例」を可決。2007 年4 月施行。2009 年から罰金。

2007 年(平成19 年)8 月14 日、那覇市医師 会の提案で、県禁煙協議会が県ハイヤー・タクシー協会に対し、「タクシーの全面禁煙」を要請。

2011年8月、那覇市医師会従業員喫煙状況調査、医師喫煙率6.7%。

2011 年12 月、県医師会を通じて、「ニコチン 依存症管理料」算定条件である、「喫煙指数 200 以上」の規定廃止を厚生労働省関係部局に要請。

2003年 9月18日 那覇市へ喫煙対策要請
2004年 4月15日 那覇市長へ路上喫煙禁止条例の早期制定を要請
2007年 2月5日 那覇市へ路上喫煙防止条例の徹底を要請
2008年 1月31日 那覇市へ路上喫煙防止条例の徹底を要請

2003年 9月18日 那覇市教育委員会に学校敷地内禁煙を要請

2003年 9月18日 那覇市教育委員会に学校敷地内禁煙を要請

2004年 9月13日 沖縄県ホテル業組合へロビー・レストラン禁煙要請

2005年 3月17日 沖縄ハーバービューホテルにロビー・レストランの禁煙要請

2011年 11月27日 国際通り禁煙パレード

熱心に聞く参加者の方々

※フォーラム終了後、フォーラムの内容の検証と今後の対応に資するべく、講師間の意見交換会を行ったのでその概要を掲載する。

意見交換会

○玉井座長 皆様お疲れ様でした。今回のご感想を伺いたいと思います。

○山代先生 今日は結構人がいらっしゃっててよかったです。参加者人数が気になっていました。

○清水先生 タバコの話題では喫煙者はほ とんど集まりません。そして非喫煙者はこの問題に無関心です。本当の敵はその無関心なんですよ。

○玉井座長 質疑応答の段階で、本当は聞き たいことがあったのですが、喫煙者に面と向か って吸わないでくれというのは言いにくいとい うところもありますよね。例えば路上喫煙防止 の練り歩きしたときも言いにくかった。

よくあることは、飲み屋で対面に座っている 人が「吸っていいですか?」と聞くことがあり ますが「イヤだ」となかなか言えないですよね?

○山代先生 そうですね。嫌ですとはなかな か言えないものです。だけど僕の前では吸えな いとわかっているせいかそういう場面に合うこ とは無いですね。だいたい吸う場所に行かない ようにしていますし。

○玉井座長 長嶺先生みたいに鬼のようにガンガン言える人だと大丈夫かと思いますが。

○清水先生 まだ、社会が成熟していない証 拠です。逆に吸ってもいいですかと言えない環 境をつくらないといけない。居酒屋や飲み屋だ って本当は全面禁煙が当たり前です。

○長嶺先生 公的に吸えない環境をつくって いかないといけない。ここは吸ってはいけない ですよと。だから那覇や県もそうだけど、伊礼 先生が中心になって公共施設や飲食店等を対象 に「分煙禁煙施設認定制度」を行っています。 そういうふうに吸えない環境を増やしていかないといけない。

○玉井座長 もともと、我々の子供の頃は男 性は8 割が吸っていました。今は逆に半分以上 が吸わない。どちらかというと、今は社会的に は住み分けという感じでとらえられていて、テ レビ・ラジオでも見ていると常に思うのはマナ ーを守れば吸っていいという展開の仕方になっている。

○清水先生 結局あれは、喫煙者のマナー問 題へのすり替え、つまりは責任転換なんです。 本来は有害製品を販売しているタバコ会社が負 わなければならない責任を、喫煙者に押し付け るためなんですね。それがマナー広告の本当の姿です。

○玉井座長 本来はタバコは世の中にあって はいけないということ。ところが社会的に容認するために、個人的な嗜好という形にして自己 責任にすり替えているのですね。

○長嶺先生 私が前に禁煙運動をしていたと きは、喫煙者にはビニールを被って吸うなら構いませんよと訴えていました。

○山代先生 吸ってもいいけど、息を吐くなと。

○清水先生 厳密に受動喫煙を防止するな ら、喫煙者はタバコを吸った後少なくとも2 時 間は息を吐いてはいけない。だって、呼気から 検出される有毒ガスは喫煙後2 時間でようやく 環境基準を下回るか下回らないかぐらいのとこ ろに下がるので。

○玉井座長 そういえば、清水先生、今日放射性物質の話をしていなかったですね。

○清水先生 時間の関係もあって触れるか触 れないか迷っていたのですが、それも含めて忘 れていました。実は放射性物質、特にポロニウ ム210 の話をすると結構面倒になってくるん ですよ。ポロニウム210 自体は農薬とか肥料 由来なので、他の野菜類などにも入っているん です。それらの野菜類も火をつけて吸いこめば 肺がんになる可能性がある。どんな植物でも、 タバコみたいに干して、刻んで、巻いて吸い込 めばポロニウム210 が入ってくる可能性があ るんです。ただ、それらの野菜を吸いたいと思 うかどうかわかりませんが。

○山代先生 それから、ファイトレメディエ ーションといって植物が重金属などを根から吸 い取り葉に貯める性質を利用して放射性物質に 侵された土壌などを浄化する技術があるのです が、タバコはその性質が強いので鉛、ヒ素やカ ドミウム、ポロニウムなどが葉に濃縮されるの で葉野菜などの比ではなく人体に有害な物質が 入ってしまうのです。

○大城氏 今回の来場者から話があったので すが、孫が部活をしていているときに、その保 護者が学校のそばで談笑しながら、タバコを吸 っているのをみてタバコって楽しいよねと勘違 いする。だから教員も採用の時点でタバコを吸 わないことを条件に採用すればいいのにと話をしていました。社会の認知度が高まらないと、 反発も大きいので認知度を高めたいですね。

○清水先生 喫煙を理由に採用を制限するこ と自体は、法律的には問題ないはずですよ。英 語の先生になりたいっていう人に対して英語の 能力を求めるでしょ。就職機会の平等を与えて くれっていって、英語ができない人が俺を英語 の教師にしろっていうのはおかしい。それと一緒です。

○玉井座長 うちも職員採用の面接では、タバコを吸わないですよねと聞くのですよ。

○山代先生 那覇市医師会の看護学校も喫煙者はダメです。

○長嶺先生 タバコを吸うと退学すると念書 を出して入学する。基本的には入学の段階でそういう誓約を取っている。

○清水先生 経営者からの立場からすると、 解雇権が非常に制限されている。就職した人を 解雇することが非常に難しいというのが、今の 日本の法律なので、逆にその分だけ採用に際し ていえば、権利が幅広く認められている。ある 出版社で採用試験を受けるためには社員か、そ の本を出してしている著者のところから推薦状 をもってこいというのがあったんですね。これ は実は違法ではないと判断されています。採用 の機会自体は平等に与えられているわけだし、 その会社に行ってその受付の人に「あなた社員 ですよね?紹介状を書いてください」といえれ ば済むのですから。

○長嶺先生 そうですね。社会がすべてそう なってくれば。例えば、南部医療センターの医 師・研修医の採用ではタバコを吸うことがはっ きりわかっていると採用しない。社会がそのよ うになればいいですね。教育委員会の委員自体 が吸っているから困りますね。僕らの時代は男 子の喫煙率は80%でしたからね。

○大城氏 タバコを吸っている教員は是非治 療を受けて頂きたいですね。25 年ぐらい前に 視聴覚教室(閉め切っている教室)で職員会議 をするときでもタバコを吸う人がいて、私が先 に行って黒板に禁煙と書いていたら、怒って消しに行く人もいましたよ。

○長嶺先生 僕が調査したときでも、28 年 ぐらい前でも職員会議禁煙というところは那覇 市内の小中学校どこもなかったですよ。

○玉井座長 最近のテレビや映画ではタバコのシーンを見かけなくなっていますね?

○清水先生 日本製の番組のほうがまだよく 見ますよ。プロダクト・プレイスメントです。 お金を使ってやっています。韓国は7 年前ぐら いからダメになった。ダメなんだけどいま日本 で放送されている番組はその前に撮っている。 日本には法律がないから放映できるんですよ。 木村拓哉さん等がよくタバコ吸っているシーン があったでしょ。そういうのを「プロダクト・ プレイスメント」といって若くてかっこいい男 性がタバコを吸うシーンを演じることによって、 子供たちがかっこいいと思うようになっている。 だからジャニーズは喫煙率が高いんですよ。

○大城氏 でもね、最近木村拓哉さんって昔 はあんなに美男子だったのにちょっと落ちてい るという話をよく耳にしますよ。スモーカーズ フェイスなんですね。あの年代で出てきている なんてもったいないですね。

○清水先生 ほかにも、アメリカン・スピリ ットというオーガニック(無添加)タバコのプ ロダクト・プレイスメントとしては織田裕二さ んが有名です。オーガニックタバコを踊る大捜 査線で吸ったことによってブームになりまし た。あのタバコはインディアンのマークがつい ていて無添加、オーガニックという触れ込みで した。ナンセンスですよ。さらに彼らの悪どい ところは、売上の一部をネイティブ・アメリカ ンの教育支援に使っていると広告していること です。だから若干高いし、購入者も教育に役立 っていると錯覚している。タバコの原産地は南 米なので、北米に住むネイティブ・アメリカン は関係ないんです。ネイティブ・アメリカンに は元々喫煙の習慣はないはずなのですがイメー ジを誤解させて、古くから根付いたアメリカ文 化だと誤解させているんです。

○長嶺先生 新聞社も今回は少しはいいですね。タバコの広告が新聞に載らない時代になっ たから書きやすいですね。タバコ業界から反対されて新聞を買わないという時代も以前はあったんだから。

○山代先生 琉球新報はJT フォーラムの主 催とあって大変な立場だと思いますが、野口健 氏はいまも被災地にタバコを送っていることで 私たち喫煙対策に携わるものからは相当問題視 されている方ですが彼もJT の援助なしでは活 動ができない「社会的ニコチン依存症」の被害 者です。この欺瞞に満ちたJT のCSR 活動に 今後新聞社が加担することの無いようお願いい たします。大槌で3 月、4 月にタバコが全然な いときに喫煙所で吸ってましたよね?どうした のと聞いたら、送ってくれると言っていました。 その時はみなさんラッキーストライクとマルボ ロを吸っていらっしゃいましたが、タバコ産業 の恐ろしさを垣間見た思いがしました。

○清水先生 ニコチン摂取を止めてだいたい 2 〜 3 ヵ月もすると脳内から本来の神経伝達物 質であるアセチルコリンが出てくるので、ニコ チン自体いらなくなるんですよ。つまり、喫煙 を維持させるためには、3 ヵ月間タバコがない という環境をつくらないようにする必要があり ます。タバコ会社からすると、どれだけ早く被 災地にタバコを届けるかということが、そこの 地域の喫煙率を維持するため一番大切だった。 だからフィリップモリスやブリティッシュアメ リカンタバコは空輸をガンガンした。その結果、 去年の関空のタバコ輸入額は過去最高額だっ たんです。タバコ会社はインタビューでは「採 算度外視で愛煙家のために頑張りました」と言 っていましたが、それはとんでもない話です。 JT 製が足りないいまこそチャンスだというこ とでとにかくバラ撒いてシェアを奪いに来たと いうところが本当のところです。

○玉井座長 詭弁もここまできたかという感じですね。

新聞社のみなさんには耳の痛い話だったでしょう。ただ、目からウロコの話もいっぱいありましたよね。

○清水先生 言葉の使い方がうまいんですよ。 さっき放射線の話をしましたが、JT は葉タバコ について放射線性セシウムやヨウ素は含んでな いと発表している。それも環境基準ではなくて 「食品基準と照らし合わせて基準値を超えたもの はありませんでした。」と回答している。ところ が、中央のマスコミが「JT は葉タバコに放射線 物質が含まれていないことを確認したと発表し た」などと配信したんです。その配信を受けて 地方のマスコミは「JT 葉タバコ安全」などとい うニュースをバンとのっけてしまった。マスコ ミは「中学生ぐらいの方にも伝えることが使命」 などといいながら、語彙の変更をすることによ って元の意味を変えてしまっている。科学情報 を正確に伝えていないということがマスコミの 問題点です。そこを是非自覚してほしい。

今回のフォーラムに際してもCOPD につい て書いたのですが、新聞社の方から「これは解 りにくいから(閉塞性肺機能障害)と書いて良 いですか」とメールがきたんですよ。「では(閉 塞性肺機能障害)を書けば素人に伝わるのか」 と返事しました。単純に日本語にすれば読者に 通じるのか、ということです。たとえば、工事 現場で『立ち入り禁止』の看板あるじゃないで すか。あれを「たちいりきんし」と書いたら子 どもたちに通じますか?立ち入り禁止の語句の 意味がわからない子どもたちにとっては、ひら がなで書かれていても、漢字で書かれていても、 意味がわからないということに変わりはないん ですよ。だから、絵を入れるなどして、立ち入 り禁止がどういう意味なのか正確に伝える努力 が必要なのです。ところが、マスコミ自身が大 元の話題を正確に理解していないものだから、 自分の知っている言葉の中だけで言葉を組み替 えてしまうので、「放射線性セシウムやヨウ素 は自社が勝手に決めた基準値以下です」という 発表を、「放射性物質がない」と大きくしてし まって、発売元すら出していない安全宣言をマ スコミが勝手に出してしまっているんです。

○玉井座長 皆様長い間にわたりお疲れ様でした。