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平成23年度日本医師会学校保健講習会
及び母子保健講習会

宮里善次

常任理事 宮里 善次

○学校保健講習会

平成23年度学校保健講習会プログラム・目次

平成24 年2 月18 日、日本医師会館におい て「平成23 年度学校保健講習会」が行われた。

午前に講演2 題、午後からは学校における感染症に関するシンポジウムが2 つ開催された(プログラム参照)。

「最近の学校健康教育行政の課題について」 と題した講演では、5 歳児の教育について報告 があった。

現在、日本の5 歳児は午前中教育の幼稚園と、 午前及び午後の預かりを主体とした保育園があ るが、午前及び午後の預かりの教育制度に一本 化する法案を3 月の国会に提出し、成功した暁 には「こども園」と称することが報告された。

根底には、共稼ぎをしないと生活できなくな った日本の現状と、少子化への配慮があると思 われる。

また、昨年の大震災を受けて、自治体そのも のが崩壊した時、学校現場の再開にあたっては どんな配慮が必要なのか、例えば学校のハード 並びにソフトの部分、特に子供達や教師への PTSD 対応、学校医や教師の応援派遣はどう あるべきか、水質汚染や低栄養からくる感染蔓 延の恐れ、放射能教育の必要性等が必要課題と して提案された。

また、放射線研究者からチェルノブイリ事故 に基づいた悪性疾患の発生率等が報告された が、小児においては甲状腺がんが指摘された。

午後は、学校における感染症についてのシン ポジウムが行われたが、発表するだけの時間の みで、討論までは至らなかった。

平成23 年度に流行った学校における感染症 の主なものは、マイコプラズマ感染症、手足口 病、インフルエンザが最たるもので、インフル エンザはサーベイランス調査が始まって以来、 定点報告あたり2 度目の40 超えで、過去最大 の流行となった。

また、今回の手足口病の特徴は水泡が大きく、 大腿から臀部、上腕部に及んだのが特徴で、原 因菌は従来のCA16 やEV71 ではなく、CA6 によるものであり、大人にも感染したことが特 徴である。

マイコプラズマ感染症も調査開始以来の最多報告数を現在も更新中である。

麻疹は、一歳児の接種率が95%を超えたこ とが報告された。現在、日本における感染報告 は外国からの持ち込み株であり、未接種者や一 回接種者に限定されているので、二回接種法の 必要性が強調された。

今回、特に興味深かったのは耳鼻科からの報告である。

流行性耳下腺炎による難聴は一側性がほとん どで、教科書的には1 万5 千人当たりに1 人 の発生率と記されているが、千葉県立保健医療 大学の工藤典代教授の印象としては、クラスに 1 人はいると述べられていた。

流行性耳下腺炎による難聴の特徴は、1)高度 感音難聴、2)治療しても治らない、3)一側性高 度感音難聴で稀に両側性、4)乳幼児期発症では、 気付かず平行機能障害を伴うことがある等とい うシビアーなものである。

ワクチンで予防可能な唯一の感音性難聴な ので、積極的にワクチン接種を勧めていただきたい。

相談を受けた時に自然感染しても軽いのであ えてワクチンを受けなくても良いですよという アドバイスでワクチンを受けず、両側性難聴に なって裁判となったケースの紹介があり、少な くとも相談を受けた時に、そういったアドバイ スはしないようにと強調された。

また、眼科からコンタクトレンズによる角膜 潰瘍から失明に至るケースが報告され、思春期 におけるコンタクトレンズは使用しないよう に、特に強く指導すべきとの報告があった。

皮膚科からは、学校における感染症の議論の 場において、皮膚科が呼ばれることはなかった が今後多いに参加させていただきたい旨の発言 があった。

○母子保健講習会

平成23年度母子保健講習会プログラム

平成24 年2 月19 日、日本医師会館において「平成23 年度母子保健講習会」が行われた。

午前の講演では、まず始めに日本産婦人科医 会会長の寺尾俊彦先生より児童虐待防止法が施 行されて12 年が経過したが、その件数は増加 の一途である事が報告された。

特に死亡例のほとんどは0 歳児、日齢0 日が 約20%を占めており、その対策が急務の課題である。

症例のほとんどは望まない妊娠で生まれる症 例が多いので、産婦人科で早期発見に努め、小 児科や行政、特に養子縁組に繋げる事が、虐待 防止と子供の幸せに繋がると強調された。

次に、慶應義塾大学医学部産婦人科教授の吉村泰典先生により、「災害と周産期医療について」講演があった。

日本産婦人科学会と日本産婦人科医会が合同 で、東日本大震災時に、いち早く単科チームを 立ち上げて、被災地の周産期医療支援を行った ことが報告された。

課題としては、被災初期において、情報不足、 陸路から被災地へ入ることの困難さ、薬剤や器 材の不足、指揮命令系統の脆弱性等が改めて指 摘された。

午後は、「産科医療補償制度の現状と課題」をテーマにシンポジウムが行われた。

産科における無過失補償制度がスタートして 3 年経ったが、運営主体の日本医療機能評価機 構側から、本制度は補償機能に加えて原因分析 と再発防止機能の二面性を有している説明があ った。

原因分析については、過去責任を追及するためではなく、あくまでも再発防止の観点から行われている事が強調された。

課題としては、日本における脳性麻痺児の出 生比率と生存率等の実態の調査が過去に行われ ておらず、データが存在していない点等がある とのことであった。

また、沖縄県において、未熟性による脳性麻 痺の症例数が把握されており、尚且つ小児発達 センターにおいて20 年後の生存率が90%を超 えており、それに関する当山センター長ご夫妻 の研究データ(現在、英語論文として投稿中)が、 我が国唯一のデータであり、補償制度の将来運 用に多いに役立つだろうと紹介があった。

当制度は、日本外科学会がかなり以前から研 究してきたものの、途中挫折した経緯があるが、 産科における運用開始は他科へ大きく影響する だろうという見解が示された。




文書映像データ管理システム開設(ご案内)

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