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「世界保健デー(4/7)によせて」

国吉秀樹

沖縄県健康増進課長 国吉 秀樹

WHO は、その設立記念日に当たる4 月7 日を 世界保健デーとし、その年に重点的に取り組む べき課題を、世界保健デーのテーマとしてきま した。2012 年については、Ageing and Health 「高齢化と健康」に焦点を当てることが発表され ました。高齢化というと日本や先進国だけの問 題と考えがちですが、今や世界全体でも子供よ りお年寄りの方が多くなろうとしており、とりわ け後進国で急速な高齢化が進行している現実が あり、このことに危機感を持つべきとして、テー マに採り上げられることになったものです。

いわゆる高齢者の特徴としては、身体的には 循環器系、呼吸器系、腎機能に予備力が無くな るので、ちょっとした体調の変化で救急・重症 に至るような危険があります。日常的には筋力の 低下や認知機能の低下で生活動作にかかる負荷 が大きい一方、様々な理由で日常生活の活動性 が低下することで生活不活発病を引き起こすと いう点が挙げられます。精神的には、色々なタイ ミングで起こる環境要因によって容易に変化す ることが特徴で、喪失体験・人間関係の変化に よる気分の落ち込み、そして抑うつと言うのが、 頻度が高くなっています。沖縄県男性の年齢調 整死亡率では「自殺」の項目が特に男性で全国 を常に上回っていますが、これは高齢者ではなく 主に壮年期の問題です。とは言え、身体的、精 神的どちらにせよ、高齢者(あるいは年を重ねる こと)には一定の理解と配慮が必要なようです。

そのうえで申し上げるのですが、高齢化、エ イジングというのは極めて個人差が大きく、身 の回りの同じような年頃でも元気な人、驚くほ ど若々しく見える人もいれば、見るからにお年 寄りといった人もいらっしゃいます。これは、 エイジングが誰にでも避けられないと同時に、 日ごろの運動やライフスタイルによって病気の 予防や生活機能の維持ができるわけで、どうも この辺が私にはイヤな感じです。最近太ったり 顔のしわが目立ったり、尚且つ性格も丸くなっ て口数が少なくなった私としては、何だか負け たような気になります。その人ができる範囲で はありますが、健康的な高齢化を推進すること は大切です。

20 年ほど前、いわゆる老人大学校といった 研修会で話をさせてもらったことがあります。 自分で話したことではありますが、一番受けた のが「集合写真をとるとき、年を取るごとに前 列に、中寄りになってきますよ」という話だっ たのを覚えています。年初に撮った課の集合写 真では、課長なので当然ではありますが、私が 前列真ん中に写りました。これは生涯初であり ます。やれひざが痛い、やれ目が見えないとい うのもそうですが、人に話すのと自分で感じる のはやはり違うもので、何か医学・生理学の知 識と言うより「思い」の領域で実感できるのか もしれません。結婚式に出るのが多いか、お葬 式に出るのが多いかと言うのもこれにあたりま す。さらに結婚式では友人・同級生のか、その 子女のかという話までいくと気にしすぎかもし れませんが。

ときに昨年3 月の大震災から約1 年、一日も 早い復興を願うばかりですが、タイミングとし て、震災後からはわが国ぜんたいで、より厳し い現実を見つめるようになったと感じていま す。社会保障や税の改革、そして若者の未来の 心配(仕事が無い、出生率が上がらない)とい った課題が連日メディアを賑わせ、まじめで必 要な議論であることはわかりますが、なんだか 「ついに来たか」というくじを引いてしまった感 もあります。まるで、日本という国自体が人生 を折り返し、年を取ってしまったと多くの人が 感じているのではないでしょうか。必要な手当 て、対応は先送ることなくなされるべきです。

一方、最近発表された平成22 年度都道府県 別年齢調整死亡率でも、全国、沖縄とも三大死 因と全死因はそれぞれ下がっていることから、 おそらく今年のうちにも発表される生命表では、 平均寿命ももう少し延びることが予想されま す。女性のランキング1 位を守れるかどうかは 危ういところですが、健康長寿県の復活へ向 け、いい方向の結果であることを願っています。