沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 4月号

透析医会の紹介

徳山清之

会長 徳山 清之

【はじめに】

2007 年度日本透析医学会統計調査委員会の 「わが国の慢性透析療法の現況」報告によると わが国の維持透析患者数は27 万人に達し、沖 縄県の年度末透析患者数は、3,886 名で人口 100 万人対3,000 人近くなっていて、全国の 2,153 人に比し極めて多い患者数である。1971 年、沖縄県で最初に透析医療が行われ、その 後、透析患者数の増加に伴い2008 年度末現在、 沖縄県の透析施設数は67 施設で透析患者数あ たりの施設数は全国でも多い県に属する。

現在、透析導入患者の基礎疾患は糖尿病性腎 症、慢性腎炎、腎硬化症の順に多く、特にメタ ボリック症候群の多い沖縄県では今後も透析患 者の増加に歯止めを掛けるためには各専門医と の連携が必要である。また、死因では感染症、 心血管系疾患、悪性腫瘍などが多く関連各専門 医との連携が透析患者の生命予後改善にとって 重要である。更に、透析導入年齢や維持透析患 者の高齢化、認知症の増加などに伴う介護施設 との協力も重要と考える。近年、CKD(慢性 腎臓病)が末期腎不全のみならずCVC(慢性 腎臓病)の重要な危険因子であること、CKD が集学的治療により治療可能となってきたこと などを背景に世界的にCKD 対策は喫緊の課題 で腎疾患専門医のみならず、かかりつけ医や一 般県民への啓発活動がより重要となってきてい る。現在、わが国のCKD 対策は学術面は日本 透析医学会、日本腎臓学会が中心的な役割を果 たし、診療報酬など医療政策面では日本透析医 会が厚生労働省との交渉に当たっている。この ような透析医療を取り巻く状況下で沖縄県にお いても透析医会設立が要望されていた。

【沖縄県透析医会設立の経緯】

透析医会設立の目的は1)透析患者にとって望 ましい透析医療である満足透析を行い、透析患 者のQOL の向上、生命予後を改善するための 適正透析を真摯な態度で実践し、良質な透析医 療を実践すること、2)今後のわが国の医療制度 の流れから考えると、各都道府県単位での行政 との関わりが重要となることが予想され、沖縄 県の透析医療の受け皿として沖縄県透析医会の 設立は喫緊の課題であること、3)学術団体とし ての沖縄県人工透析研究会は1983 年から年1 回学術講演会を開催し2008 年3 月、第26 回を 数え沖縄県の透析医療の充実に大きな貢献を果 たしてきた。しかし、透析に関する医療保険制 度への対応や災害対策・感染対策等に対応する 組織がなかった。その役割を沖縄県透析医会が 担い、学術団体としての沖縄県人工透析研究会 と役割分担し透析医療の両輪としての活動が重 要であること、4)日本透析医会との連携などを 挙げることができる。以上のような背景があ り、2008 年3 月9 日、沖縄県透析医会設立総 会を開催し正式に発足致した。沖縄県で透析医 療を担っている医師を会員として設立時会員数 は68 人である。会長、副会長、診療報酬適正 化担当顧問、災害対策担当顧問、学術担当顧 問、監事、及び沖縄県下透析施設の北部地区、 中部地区、中城・宜野湾・浦添・西原地区、那 覇地区、南部地区、宮古地区、八重山地区の7 管轄ブロックから選出された各2 名の理事によ る役員会で運営している。主な事業内容は、1) 診療報酬適正化対策、2)大規模災害対策ネット ワークの構築、3)感染対策(新型インフルエン ザ対策、HIV 対策など)、4)学術講演会(年2回)の開催などである。

設立時から、沖縄県医師会医学会に分科会として承認され活動することが特に重要事項と考 えていたが、設立3 ヵ月後、2008 年6 月、入 会が許可された。その後、2008 年8 月、日本 透析医会への入会も承認された。沖縄県透析医 会は、沖縄県福祉保健部、沖縄県人工透析研究 会、日本透析医会、沖縄県腎臓病患者連絡協議 会など関連機関との連携を密にし、沖縄県医師 会医学会のメンバーとして透析医療分野におけ る役割を果たしたい。

以下、沖縄県透析医会のこれまでの学術講演会、学会発表、論文など活動状況をまとめてみた。

=沖縄県透析医会学術講演会=

第1回;平成20年5/10
 『福岡県における大規模災害ネットワークの取り組み』
  日本透析医会専務理事くま腎クリニック院長
                   隈 博政先生

第2回;平成20年10/4
 『透析室はどこが危ないか』
  とうま内科 臨床工学技士 譜久村和徳
 『沖縄県下透析施設における災害対策の現状 〜アンケート結果より〜』
  沖縄第一病院 臨床工学科 名嘉眞尚子
 『大規模地震災害と透析医療』
  刈羽郡総合病院 内科部長 倉持 元先生
 『透析医療における災害対策の在り方』
  赤塚クリニック院長 赤塚 東司雄先生

第3回;平成21年1/24
 『我が国における新型インフルエンザガイドラインに関して』
  中外製薬 福岡支店学術室 原田
 『沖縄県の新型インフルエンザ医療体制について』
  沖縄県福祉保健部健康増進課結核感染症班
                 班長 糸数 公先生
 『透析施設における新型インフルエンザ対策ガイドライン』
  東京女子医科大学血液浄化療法科
              教授 秋葉 隆先生

第4回;平成21年6/20
 『沖縄県における新型インフルエンザ対策』
  沖縄県福祉保健部医務課結核感染症班
                班長 糸数 公先生
 『透析室における新型インフルエンザ対策
    〜福岡県・日本透析医会の現状〜』
  日本透析医会 副会長 くま腎クリニック
                  院長 隈 博政先生

第5回;平成22年4/17
 『沖縄県における災害対策の現状調査2010 〜2008 との比較〜』
  沖縄第一病院 臨床工学科 名嘉眞 尚子
 『沖縄県透析医会中部地区の活動』
  県立中部病院 腎臓内科 宮里 均先生
 『透析医療の過去・現在・未来 =日本透析医会が果たすべき役割= 』
  日本透析医会会長 山崎 親雄先生

第6回;平成23/1/22
 『沖縄県におけるHIV の現状』
  琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器・
   消化器内科学講座   仲村 秀太先生
 『HIV 感染とCKD 透析療法について』
  国立医療研究センター腎臓内科 科長
               日ノ下 文彦先生

=アンケート調査=

『沖縄県下透析施設における災害対策の現状調査』平成20/10 月
 『沖縄県における災害対策の現状調査2010 〜2008 との比較〜』平成22/4 月
 『沖縄県における新型インフルエンザ罹患状況調査』平成22/3 月
 『沖縄県の透析施設におけるHIV 感染症対策の現況』平成23/3/7 〜 3/10

=学会発表、論文掲載=

『沖縄県における新型インフルエンザ罹患状況』
  沖縄県透析医会 会長 徳山 清之
  第55 回日本透析医学会総会にて発表、平成22/6/22 神戸

『沖縄県における透析患者新型インフルエンザ罹患状況調査』
  沖縄県透析医会 会長 徳山 清之
  日本透析医学会雑誌(平成22/12 月Vol,43,No,12)に論文掲載