副会長 玉城 信光
常任理事 安里 哲好
協 議
【提案要旨】
本会では、今回の東日本大震災における災害 支援を通して、今後の県内における災害が発生 した際の対応と支援体制を検討していくにあた り、九州各県の対応状況を確認にしたい。ま た、原子力災害対策も含め、九州各県の災害支 援計画等の対応状況について伺いたい。
また今後、大規模災害発生時への対応が的確 に行われるよう、行政側も含めた九州ブロック としての協力体制について協議の場を持つこと が必要であると考えている。各県の意見を伺いたい。
【提案要旨】
各県の防災計画見直しの内容並びに進捗状況 について伺いたい。また、原発がある県並びに その隣接県においては原発に対する今後の対応 策についても併せて伺いたい。
因みに本県では、地域防災計画の見直しとし て、地震・津波及び原子力に関する学識経験者 14 名を専門委員に委嘱し、検討することとなっているが、具体的な内容は未だ示されていない。
【提案要旨】
原子力発電所設置県である佐賀県では、現 在、地域防災計画の見直しが進められており、 原子力災害に備えた対策が強化されることにな っている。
原発から20 キロ圏内は避難計画を策定する こと、20 〜 30 キロ圏内は屋内退避に備えると ともに避難先を確保することが規定される。
入院設備をもつ医療機関については、入院患 者の転院先を決めておかなければならず、災害 弱者である入院患者等の転院先については、医 療機関毎に転院先を決めることは現実的には難 しい。この問題は医療提供体制全体に影響を及 ぼすことから、県及び市町の行政機関が主体と なり、郡市医師会、県医師会と連携し、転院先 や避難場所を確保する必要があると考える。各 県の状況と日医の見解を伺いたい。
上記3 題については関連議題として一括協議された。
【各県回答】
各県で念頭に置かれている災害の種類や重要 性については、一部異なる部分はあるが、今回 の震災で地域防災計画や災害マニュアルなどの 見直しが始まっているとの報告があった。主な 意見は次のとおり。
宮崎県:平成18 年3 月に策定された「宮崎県 災害医療活動マニュアル」の改訂の検討が行わ れている。特に救急告示医療機関への防災無線 等の通信手段確保や各郡市医師会への衛星電話 の配備、JMAT の定期的な研修等の開催を要 請している。また、防災対策については、国の 防災会議の指針に基づき、今後検討される。
原子力災害対策については、原発の隣県ではあるが具体的な検討は行われていない。
沖縄県:今後、県地域防災計画の見直しにあた り、他県での災害にも医療支援活動の対応がで きるよう協定の締結をめざす。また、出動した 際に県行政からの費用負担等についても検討を 進めていく。
原子力災害対策については、国や県による安 全な避難策が講じられるべきであり、避難困難 者への対応についても、医療機関任せではな く、行政による避難場所の確保や人的支援も検 討されるべきである。
大分県:「大分県地域防災計画(地震・津波対 策編)」について、生活・福祉・医療など区分 毎に見直しを行っている。原子力災害対策につ いては、平成21 年8 月から隣県の愛媛県(伊 方原子力発電所有)と安全対策について情報交 換を行っている。また、県防災計画には、県内 で放射性物質の漏洩や飛散等を想定した対策を 定めている。転院先や避難場所の確保について は、行政を中心に医師会や保健所等が連携し、 広域災害救急医療情報システム(Emis)など の活用を検討している。
長崎県:原子力災害対策については、従来避 難対象地域を10 キロ圏内としていたが、3.11 以降、国の見直し決定を待たず、地域性を考 慮し30 キロ圏内に拡大し、これに合わせ輸送 体制や医療体制も今後検討していく。11 月20 日には松浦市を中心に大規模な防災訓練を実 施した。
県境を越えての緊急時医療体制については災 害・救急担当の医師会理事を始め、医師会の事 務方や県行政も含めた包括的な話し合いの場を 早急に立ち上げるべきである。
熊本県:県と県医師会との間で「県との医療救 護に関する協定書(災害時の医療救護に関する 協定書)」を締結しているが、解釈上、県外の 災害救護には対応しておらず、来年度の県防災 計画見直しにおいて、大規模災害時における広 域応援の必要性を検討する。
また、本年1 月より熊本県ヘリ救急搬送体制 が2 機体制になった。運営要綱では活動範囲が 熊本県圏域となっているが、県境が4 県に跨っ ているため、緊急度に応じ応援体制を取るよう 要望した。
原子力災害対策については、九州内に立地す る2 原発からPPA(概ね50km 圏内)に4 市町 がかかる見込みで、今後国での検討結果を踏ま え対応する。
福岡県:県内災害について、会員毎に各地域 50 名の会員に対して、医師2 名、看護師1 名、 連絡員1 名の医療救護チームを編成している。
東日本大震災でもJMAT として一部が出動 した。また、日本DMAT ・福岡DMAT、併せ て30 チーム程度あり、年に3 回程度訓練を行 っている。この他、我々が大災害を受けた際 に、他から応援を求めるときの段取りも考えな ければならない。
津波・原子力災害については、第一に避難が 重要であるが、急性期の救護活動については、 我々がしっかり出ていく必要がある。
鹿児島県:新燃岳の火山災害や奄美豪雨災害、 高速船の海難事故、原子力発電所もあり、多彩 な課題を抱えている。2 年前に県医師会で災害 医療救護計画を作成した。事故が起きた際、県 医師会内に対策本部を設置し、対応する手順書 はできている。原子力災害対策については、県 が策定した「原子力防災計画」の中で対応する こととし、現在、福島での原子力災害を受けて 「原子力災害対策暫定計画」を作成中である。
基本的には原発の計画は、情報の伝達、収 集、非難が主体であり、救護計画はごく一部で ある。救護被ばく医療は、1 次除染チームが9 チーム、2 次除染チームが地元の2 チームとな っている。高度被ばくは、県内での治療が出来 ず、千葉県の放射線医学総合研究所にお願いす る手順である。
佐賀県:原子力災害対策も含めた地域防災計画 の見直しを行っており、今年度中に新計画を纏 めることにしている。加えて、災害医療提供体 制の見直しも必要となることから、県災害時医 療救護マニュアルや県緊急被ばく医療マニュア ルの見直しについても検討している。
【提案】
●行政を含めた九州ブロックとしての協力体制構築のための協議の場の設置について
古賀義行座長より標記の件については、殆ど の県で「賛成」との回答が得られた為、次回福 岡県で開催される「九州各県保健医療福祉主管 部長および各県医師会長合同会議」において提 案されることが確認された。
【藤川謙二日医常任理事からのコメント】
災害支援計画の対応状況について
1.日本医師会では、東日本大震災の一年前に JMAT を提案した救急災害医療対策委員会 において、今回のJMAT 活動の課題、今後 のあり方を検討している。来月中には、報告 書がまとめられる予定である。
2.その報告書(案)の中では、医師会ブロッ クでの都道府県医師会相互の協定、あるいは 都道府県医師会と知事との協定の締結の推進 を改めて主張する方向で書いている。また、 知事との協定の中では、費用負担や二次災害 時の補償責任の規定、緊急時は医師会の判断 で出動し、事後承諾を以て知事からの要請が あったと見なす規定、都道府県の境界を越え た県外派遣の規定、協定の形がい化、風化を 防ぐための定期的な見直しの規定などが重要 であるとしている。
3.日医では3月10 日(土)に「JMAT に関する災害医療研修会」を開催することにしている。
4.本研修会では、従来の災害医療教育とは一線 を画し、避難所等の支援活動に必要な公衆衛 生や災害における倫理を含んだ教育を内容と し、今後、各地域医師会で行われる災害医療 研修会におけるモデルケースとなることを目 指すものである。また、都道府県医師会災害 医療担当理事連絡協議会を兼ねて開催する。
緊急時の各県における防災対策について
1.都道府県の防災計画や5 疾病5 事業や医療 計画においてもJMAT を位置づけて頂ける ようお願いしたい。
2.日医でも国に対し、JMAT の位置づけを要 求しているが、日医が現在、指定公共機関で なく中央防災会議の一員ではないため、JMAT を国の防災基本計画に未だ記載され ていない。
3.原中会長が中央防災会議の専門調査会であ る防災対策推進検討会議の委員に就任したの で、災害対策の中での医療の重要性、とりわ け今回のJMAT の活躍を強く主張している。
4.近く当会議が開催されJMAT 活動報告をする予定である。
原子力災害対策について
1.原子力災害対策を始め、CBRN、ケミカル、 バイオロジカル、ラジオロジカル、エクレア ル災害への対応はこれまで最も遅れた取り組 みと考えている。
2.佐賀県医師会のご指摘の通り、都道府県医 師会、郡市区医師会が行政と連携し、原発事 故時の対策プランを作る必要があると思う。
3.日医としても、放射線医学総合研究所、自 衛隊などの特殊災害を担う機関との連携をさ らに強める所存である。
4.3 月10 日(土)に予定しているJMAT 研修 会では、緊急被ばく医療として郡山一明先生 に講演をいただく予定である。
5.翌日の医療シンポジウムでは福島第一原発 事故と放射線被ばくについて、明石真言先生 に放射線医学総合研修所理事、兼緊急被ばく 医療研究センター長へ講演をお願いしている。
6.さらに救急災害対策委員会報告書には、郡 山一明先生、明石医師協力のもと一般の医師 に対する放射線の入門テキストを添付してい る。一般の医師が患者に説明できるようわか りやすく解説されており、被曝や放射線に関 する基本的な事項を含んだものとなっている。
7.なお現在までの日医の主な対応としては、 原子力災害に関し国庫補助の要望、23 年度 の補正予算、24 年度の通常予算、日医総研 の調査支援、東京電力との交渉、福島県知事 への要望、日医ニュースへの掲載、放医研・ 自衛隊との連携強化、防災担当大臣への要 望、被災者健康支援連携協議会の定期的な開 催、学校医対象の講習会、除染等の問題で文 科省への抗議等を行っている。
【提案要旨】
本県では、広域災害情報システムとして平成 13 年に「ひむか救急ネット」を構築運用した が、年間運用経費が約3,500 万円を要する一方 で、有効性に乏しいとの判断の下、平成19 年 度に運用を中止した。
今後、システム導入を検討するにあたり、導 入県の実情と未導入県の今後の対応について伺 いたい。また、日医のEMIS への評価および、 現場に関わる医師会の広域災害・救急医療情報 システム構築への関わりについて伺いたい。
【各県回答】
EMIS を導入している大分・福岡・佐賀の3県から運用面等について意見があった。
○大分県:EMIS は画面が見辛い等、使い勝手が悪く、今後システムの改善が必要である。
○福岡県:入力訓練を適度に開催するも一部の 機関で使いこなせていない現状があり、今後ど う使いこなすかが課題であると提起した。
○佐賀県:同様、近年入力訓練の入力率は約7割程度に留まっていると報告があった。
【藤川日医常任理事コメント】
1.EMIS は、平時は県内の救急医療情報シス テムとして活用するものであるが、東日本大 震災の発生前から実際の運用稼働状況は十分 ではなかったとされている。
2.厚生労働省の科学研究調査によれば、情報 システムの予算措置、人員確保、依存度、稼 働率等に地域差があるとのことである。
3.日医としても入力容易な端末システムの開 発などを要望し続けている。その上で、厚労 省に対し、被災地、全国の関係医療機関、行 政関係団体などが有効活用できるようシステ ムの改善について予算要望した。
4.参加医療機関も災害拠点病院や救急病院だけではなく、被災地の患者の後方転送を受け入れる医療機関も参加できるよう求めている。
5.さらに今回EMIS 上のDMAT の掲示板で 活発な情報交換が行われたことを聞いている ので、日医としてもJMAT や全国の医師会 が情報が得られるよう要求している。
【提案要旨】
佐賀県では、総合防災訓練や航空機事故対策 総合訓練、原子力防災訓練などに出動し、実際 の事故を想定したトリアージ・医療救護実地訓 練を行っているが、災害の種類や災害発生から の時間軸により、医療救護班の活動・支援内容 やそれに伴う装備なども異なることから、医療 救護班は今後更に実態に即した訓練や研修が必 要になってくると思われる。各県の意見を伺い たい。
【各県回答】
各県ともにJMAT の明確な位置づけを求める意見があった。
また、災害時の基本的対応や訓練方法等につ いて、定期的な研修会等の開催を求める意見が 相次いだ。各県からの主な意見は次のとおり。
○沖縄県:平成19 年那覇空港で起きた旅客機 炎上事故に際し、医師会医療救護班が自衛隊ゲ ート前で通行を拒否された事例や警察による交 通規制で空港への道路が封鎖されてしまい、現 場に辿りつけなかった医師もいた。指揮系統の 検証や見直しも必要である。
○大分県:県知事が災害対策本部を組織する 際、統括JMAT のような人事を配置するとし て、県医師会に派遣要請がある。また、日医に 対して、JMAT が今後災害時に地域でどの様に かかわるかガイドラインやモデルケースを作成 するよう求める。
○長崎県:情報の集約化と医療救護班などの派遣・配置調整をコーディネートする機関の設置が必要ではないか。
○福岡県:九州医療センターや四大学を中心に 11 の災害拠点病院を有しており、当施設に従 事する救急救命専門医等を通じて、地域での研 修指導をお願いしている。また、3 年前に救急 医療活動時のテキスト本としてポケットサイズ の冊子を作成し、ゴールドスタンダードとして 有効活用している。
【藤川日医常任理事コメント】
1.国の防災基本計画の中へのJMAT の位置づ けは、日医が指定公共機関の指定を受け、 中央防災会議に参画することが先ず大前提になる。
2.現在のところ指定が得られていないため、 会に参画はできていないが、何とか乗り越えていきたい。
3.都道府県知事や空港などとの災害時の医療 救護協定の締結、費用負担や二次災害時の 補償責任、緊急時には、知事の要請がなくと もプロフェッショナルオートノミーに基づ く、医師会の判断で出動し、事後承諾で要請 があったものとみなす規定や県外派遣、形骸 防止のための定期的な見直しとすべきと考えている。
4.JMAT に関する災害医療研修会は定期的に 行っていく予定であり、各県においても連動 して様々な研修会を催してほしい。
5.コーディネート機能は被災地の医師会・郡 市区医師会が中心となるべきと考えており、 厚労省や消防庁などの検討の場で繰り返し要 望している。
6.今回、東京都知事が3 人のコーディネータ ーを指名したが、内1 人は都立医師会病院の 医師である。
7.コーディネーター機能を持つ医師について は、災害救急を訓練したような医師が望まし く、時には寝ずに体力勝負や精神的なタフさ が求められると思うので、コーディネーター の候補になるような人を早めに人選する必要がある。
【提案要旨】
熊本県は、県境地域の救急体制整備の一環と して、県境を越えた各医療圏との連携強化に取 り組んでいる。今後、医療連携を着実に進める ため、各県で取り組んでいる好事例や方策があ れば教示いただきたい。
また、救急搬送体制をスムーズに進めるため には、MC 協議会でのプロトコール・プレホス ピタルレコードの共通化が必要と考えるが、検 討している地域があれば教示いただきたい。
【各県回答】
県境を越えた各医療圏との連携強化への取り 組みについては、他県自治体からの運営補助金 の拠出や診療報酬上の評価など様々な例が報告された。
また、長崎県から、今後、九州ブロック内の 県境地域で、災害・救急担当の医師会理事を始 め、医師会の事務方や行政も含めた包括的な話 合いの場を早急に立ち上げるべきとの意見があった。
プレホスピタルレコードの共通化について は、長崎県で平成16 年4 月から県内全域で統 一された様式(救急活動記録票)を活用してお り、鹿児島県では、県内6 地域において試験運 用を開始、現在他地域への導入も検討中とのこ とである。佐賀県では今年度から「傷病者の搬 送及び受入れの実施に関する基準」を策定して おり、県外搬送にも活用しているとの報告があった。
主な事例は次のとおり。
県域を越えた主な医療連携の事例について
○宮崎県:都城市が鹿児島県曽於市との間で、 救急患者の受入体制を確立する代わりに自治体 から運営補助金を拠出してもらっている。ま た、えびの市と熊本県人吉市の病院間で患者の 転院受入態勢の協議を予め行う等の対応を取っ ている。この他、「救急搬送患者地域連携紹介加算」「救急搬送患者地域連携受入加算」等、 診療報酬上の評価枠を設け、地域医療の連携を 図っている。
○大分県:県境の西部・北部医療圏において、 平成18 年度から福岡県のドクターヘリの共同 運航(福岡県、佐賀県、大分県)を開始してお り、福岡県と連携した広域救急医療体制の整備を図っている。
○福岡県:大牟田市医師会と荒尾市医師会(熊 本県)が協力し休日在宅当番制を実施してい る。また、豊前築上医師会と大分県(中津市、 宇佐市、豊後高田市)で広域医療圏(24 万人 の住民が住居)の医療体制の確立に向けて「中 津市民病院広域医療圏対策研究協議会」を設けている。
【藤川日医常任理事コメント】
1.日本は地形が複雑で長い歴史を誇り更に交 通網が高度に発達した国である。九州以外の 地域でも瀬戸内海の様に県境を越えた地縁的 な繋がりがあり、隣の県の方がアクセスが良 いと言うケースは全国で各地にみられる。
2.また、大災害のような災害対策は県境を越えた連携を前提として策定されなければならない。
3.平成21 年消防法改正に基づく傷病者の搬送受入実施基準は、この度47 都道府県で策定された。
4.日医としては、実施基準は現在の体制を壊さないよう、なるべく既存のシステムを基につくり、その上で必要な補強をして、定期的に見直していくことを主張している。
5.そして、見直し作業の中で、当然県境を越 える救急搬送体制も考えていくべきと考えて いる。都道府県医師会は常にブロック単位で 連携をしている。更に県境で隣り合っている 郡市区医師会同志でも日頃から連携が取られ ていると思う。
6.日医は、地域の医療連携はそれぞれの地域の実情に応じて構築されるものでなければならないと考えている。
7.地域の実情を鑑みて、県境を越えた連携が必要であるならば、それが反映されるシステム作りが必要である。
8.都道府県医師会メディカルコントロール協 議会、地域メディカルコントロール協議会で は、医師会代表が重要なポストに就いている と思うが、県境を越える搬送体制の立案を是 非ともお願いしたい。
【提案要旨】
本県の中・南部保健医療圏(全県人口の 85 %を占める)の救急病院は平均在院日数9 〜 14 日、病床利用率95 〜 104 %で、恒常的に 満床状態である。特例病床の増床について、県 福祉保健部に問い合わせたところ(県議会でも 要望があったとの事)、救急病院の現状分析と 消防隊の救急搬送件数も分析し、救急医療対策 協議会・県医療審議会で検討し、かつ厚生労働 省とも協議し来年3 月頃までに増床を検討中と のことである。
平成25 年度の県保健医療計画は、平成24 年 11 月頃までに見直されると思われるが、二次 保健医療圏の現状分析や5 〜 10 年後の医療需 要分析に基づいて、平均在院日数及び病床利用 率を加味した基準病床数(適正病床数)を早急 (来年早々に)に検討することを県行政に要望 している。
一方、救急病院では、長期入院患者(寝たき り患者も含め)が20 〜 30 %近くを占めている と言われている。医療型・介護型療養病床はす でに満床状態で、老人保健施設(在宅復帰・在 宅療養強化型)等の増も含めた、医療・介護施 設とのスムーズな連携、また、在宅・居宅療養 との密なる連携や介護施設、在宅・居宅での看 取りの推進が望まれる。
以上を踏まえ、下記3 点について各県の現状 をお伺いしたい。また、ネッワーク型在宅療養 支援診療所等の今後と介護施設・在宅(居宅) での看取りについて日医のお考えをご教示いた だきたい。
1)救急医療に関する特例病床の増床について
2)平成25 年度保健医療計画における二次保健医療圏の基準病床について
3)医療と介護におけるスムーズな連携について
【各県回答】
1)について、宮崎県では、宮崎大学医学部附 属病院の救命救急センター化に伴う特例病床の 増床(3 床→ 20 床)。大分県では、大分大学医 学部附属病院でドクターヘリ導入による特例病 床の増床を予定しており、厚労省と協議中とな っている。その他の県は医療機関からの要望も あがっておらず、県に対しての要望も行ってい ない。
2)について、九州各県ともに、今後の国の方 針(医療法施行規則の規定)提示後に検討を予 定している。また、福岡県では1 月の医療審議 会でも議論を予定している。熊本県では、熊本 市が政令指定都市になることから基準病床の見 直しが出てくると思われる。
3)長崎県、福岡県、佐賀県では各県の実情に 応じた連携が行われている。その他の県は具体 的な連携は行われてはいないものの、高齢化の 進展に伴い、その必要性を感じており、地域の 様々な社会資源の活用による継続的かつ包括的 な支援体制整備を求めている。
【藤川日医常任理事コメント】
ネットワーク型の在宅療養支援診療所等の今 後と介護施設・在宅(居宅)での看取りについ ては介護保険対策協議会で詳しく協議されてい るところである。
特例病床については、都道府県医師会が地域の実情を勘案すれば特に問題ないと思う。
基準病床については、厚労省の「医療計画の 見直し等に関する検討会」に鈴木常任理事が参 加している。二次医療圏を人口規模20 万人、 患者の流入・流出率を基に再編することとして いる。当然、基準病床数の算定にも影響がある。これに対し、機械的に圏域を策定するので はなく、医師会を中心とした地域の特性・実情 によって体制づくりを行うよう主張している。
医療と介護の連携については、平成22 年以 降、救急隊の出動件数や搬送数が急増してい る。搬送患者のうち急病患者の搬送件数は6 % 以上増加しており6 %弱が高齢者となってい る。高齢化の進展が搬送件数の増加に繋がるこ とは、消防庁の将来推計にも示されており、平 成37 年の出動件数は約600 万件、搬送人員数 は約547 万件とされている。消防庁と厚労省に 対し介護施設からの搬送例が課題であると訴え ている。
高齢者の搬送については、地域医師会と救命 救急センターで話し合い、介護施設から医療機 関への搬送希望がある場合、まずは、かかりつけ 医が診たり、二次救急医療機関である有床診療 所が受け入れられるようにする。多死社会の中 で、特別養護老人ホームや介護老人保健施設で も同意書をとって、看取りを出来るようにするべ きである(今度の診療報酬改定に取り上げる)。
終末期を迎えた高齢患者の心停止事例への対 応は救急搬送や救急医療の領域だけでなく、医 療界全体又は国民全体で考えていかなければな らないテーマである。施設で看取るということ について、地域の文化の中で納得のいく仕組み づくりをし、それが国全体で共有され合意形成 されなければならない。
【提案要旨】
平成18 年の診療報酬改定において、看護師 の配置基準が改定され「7 対1」入院基本料が 創設された。それ以来、中小病院の看護師不足 が深刻となっている。また、夜間勤務者を必要 とする有床診療所においても夜勤可能な看護師 のなり手の減少により、無床化する施設もある 等より深刻な状況となっている。各県の状況を 伺いたい。
【各県回答】
各県ともに慢性的な看護師不足にあり、抜本 的な改革を行われなければ地域医療が崩壊して しまうとの報告があった。
○大分県:看護の重要性や魅力の再認識に繋が るよう診療所や福祉施設などへの研修を毎年実 施している。
○沖縄県・佐賀県:有床診療所の入院基本料 の引き上げや癌患者の緩和医療への適正な評価 を求める意見があった。
○熊本県:更に大きな問題として、医師会立准 看護学校がこの10 年で14 校から7 校に半減。 また、カリキュラムの拡充で有床診療所に在籍 したまま通学が困難な状況になっている。
○宮崎県:地域医療再生基金(拡充分)を活用 して、医師会立看護師等養成所を通じ、看護教 育教材整備事業、看護教員等養成支援事業を展開する。
【藤川日医常任理事コメント】
1.従来から看護職員不足において、7 対1 看 護の導入が拍車をかけ、今なお看護師の引き 抜き等が行われ、中小病院や有床診療所の特 に夜勤可能な看護師の不足が深刻な状況とな っている。
2.特に有床診療所で看護職員の確保が難しい のは、もともと看護師不足であるのに加え、 各県からご指摘のとおり診療報酬は極めて低 いため、十分な待遇を提示できないことが大 きいと思う。
3.診療報酬上の適正な評価を得るための前提 として、有床診療所に対する理解を得ること が必要である。
4.日医としては2010 年12 月と2011 年7 月の 社会保障審議会医療部会において、有床診療 所の役割や現状について、横倉副会長が資料 を提出し意見を求めている。
5.他の委員からも有床診療所への期待の声が 上がり、大分理解が進んできたものと思う。
6.また、国民の方にも有床診療所を知ってい ただくことが必要であり、全国有床診療所協議会と共催で、昨年12 月4 日「有床診療所 の日」記念講演会を開催したところ300 名を 超える有床診療所関係者や一般の市民の方に 参加いただいた。
7.有床診療所の入院基本療法については、日 医としても医師や看護職員が医学的管理を行 い、密度の濃い医療を提供していながら、介 護施設よりも評価が低いのは不合理であると して是正を求めている。
8.引き続き、改善に向けて対応していく。
9.有床診療所に限らず、地域の医療機関では 本当に看護職員が足りず困っている。
10.国の7 次看護職員需給見通しでは、平成 23 年末で56,000 人の不足、平成24 年末で は51,500 人の不足が見込まれている。
11.この需給見通しは、各都道府県において医 師会も関わり積み上げたものである。
12.日医も努力はするが、各県でも行政に看護 師・准看護師養成所を増やす等の対応をする よう強く働きかけていただきたい。
13.また、看護大学が急増しているが、県内へ の就業率は半分程度であり、加えて大病院、 DPC 等の7 対1 看護を実施している国公立 病院への就職が多く、地域の中小病院や診療 所の看護職員の確保には繋がっていないのが 現状である。
14.医師会立看護学校は、地域の看護職員の 確保に重要役割を果たしているが、看護大学 増加の煽りを受け、医師会立看護学校の実習 施設の確保が非常に困難になってきている。
15.地域の病院も実習を引き受けたくとも、た だでさえ看護師が不足し、実習指導者講習会 に派遣することが難しい状況や、男性の母性 実習等の問題もあり、厚労省に対し机上の理 想論ではなく、現実に対応した柔軟な運用を 引き続き求めていきたいと考えている。
16.また、既にお知らせのとおり教員確保につ いては、来年度厚労省概算要求で教員養成講 習会のe ラーニング導入のための予算が盛り 込まれた。24 年度にコンテンツ等作成し、 25 年度より実施する方向で考えているとのことである。
17.教員や学校の負担をいかに少なくするかが 課題である。日医としてその点に注意し意見 を述べていきたい。
【提案要旨】
NP 特区構想に始まり、特定看護師(仮称) 論議・試行事業を経て、平成23 年11 月7 日開 催の第17 回チーム医療推進のための看護業務 検討WG において、厚労省が「看護師特定能力 認定制度」の骨子案を提示した。
現在民主、自民の各委員会においても議論さ れており、厚労省は、この制度の導入をめざ し、今通常国会に保健師助産師看護師法改正案 を提出する予定でいる。当初からの流れを考 え、この制度は将来どのようになっていくの か、日本医師会の見通しを伺いたい。
【各県回答】
大分県・沖縄県・福岡県・鹿児島県からは明 確に反対との回答があり、宮崎県・長崎県・熊 本県・佐賀県からは日医の見解を伺いたいと回 答した。
また、鹿児島県は、この問題は深刻な看護師 不足を更に崩壊に突き進めるものであるとし、 地域の看護師不足を助長させると指摘した。
【藤川日医常任理事コメント】
1.昨年11 月に厚労省が示した看護師特定能力 認証制度骨子案は、特定行為を法制上法令上 に定め、一定の教育を終了し大臣の臨床を受 けた看護師は医師の包括的指示での実施が可 能であり、認証がない看護師は、安全体制を 整えた上で具体的な指示を受けた上で実施す るというものである。
2.日医が実態調査を基に、現場では多くの医 行為が医師の指示のもとに診療の補助として 実施されており、新な業務独占資格を創設す れば一般の看護師の業務縮小につながり、地 域医療は成り立たないと主張したことを受けて、厚労省は「業務独占」も「名称独占」も しない「認証制度」とし、一般看護師も具体 的な指示があれば実施できるという案を出し てきた。
3.ますます制度創設の意味が不明確になってきている。
4.チーム医療推進会議でも纏まっていないも のを社会保障審議会医療部会に諮ることは時 期尚早であるとして、日医も医療関係団体も 揃って反対したが、厚労省は社会保障審議会 医療部会に検討状況を報告するだけとして、 12 月の社会保障審議会医療部会の議題にの せた。
5.厚労省は報告するだけと言っておきながら、 医療部会の意見の纏めの案の中に、しっかり 「一定以上能力を公的に認証することは重要 である」と入れてきた。
6.当然、出席していた横倉・中川副会長が強 く反対し、病院団体からも反対意見が出さ れ、最終的には「公的に認証することを含 め、一定以上の能力を認証する仕組みは重要 であり、この認証の仕組みのあり方について は、医療現場の実態を踏まえたものとする必 要がある」と修正された。
7.「法制化」という文言はなく、「公的」も国 の認証とは限らず幅の広い物で学会等の認証 も含まれることを確認している。
8.今後は看護業務を検討ワーキンググループ で「特定行為を法的に位置づける場合と位置 づけない場合の違いは何か」、特定行為を法 的に位置づけた場合、「看護師の能力を厚労 大臣が認証した場合としない場合の違いは何 か」議論されることになっている。
9.1 月24 日、特定行為のたたき台が具体的に 出され、非感染創の縫合や電気メス使用によ る止血、褥瘡等、腹腔穿刺もまだ残ってい る。
10.これが本当に患者のための地域医療の推進 に必要なのか、むしろ医療の質の低下や医療 安全の低下は免れないのではないかと考えて いる。
11.厚労省は今通常国会の法案提出を目指し ているため、各県医師会に地元選出の議員へ の働きかけをお願いしたところそれぞれ対応 いただき感謝する。
12.業界誌の報道では、民主党厚労省部門会 議、副座長の梅村議員は、関係団体や議員で 賛否分かれている状態であり今通常国会での 法案提出は絶対無理だと断言したとのことで ある。
13.しかし、厚労省として認証制度の旗を降ろ したわけではない。
14.看護職員不足にあえぐ地域の現場において 求められているものは、一般の看護職員不足 の解消であり、認証を受けた看護師を求めて いるわけではない。
15.チーム医療推進会議の次回の会議は未定 であるが、日医から3 月までにあと1 回会を 開くよう厚労省には要望している。
16.今後とも医療安全の視点を第一に、現場 が混乱する事のないよう対応していきたい。
【提案要旨】
本県の基幹型臨床研修病院数は6 病院で全国で2 番目に少ない県である。
平成21 年度に実施された「基幹型臨床研修 病院の指定基準」の強化において、現行の激変 緩和措置が廃止されると、県内1 病院が「入院 患者数年間3,000 人以上」に該当せず、指定取 り消しになる。この他「2 年間連続して研修医 の受入れ実績がない場合の指定取り消し」の項 目に3 病院が該当しており、指定取り消しが危 惧される。
九州各県の「入院患者数年間3,000 人以上」 と「2 年間連続して研修医の受入れ実績がな い」に該当する基幹型臨床研修病院の有無と意 見を伺いたい。また、併せて日医の支援をお願 いしたい。
【各県回答】
○大分県・長崎県・福岡県:激変緩和措置が廃止されると指定取り消しが危惧される。
○鹿児島県:既に1 医療機関が入院患者数年間の要件を満たず指定取消しになっている。
○熊本県・鹿児島県・佐賀県:地域の実情を考慮し弾力的な運用が必要である。
○沖縄県:大学病院に研修医を集め医師派遣機 能復活の重要性を強調し、本年4 月開設の「お きなわクリニカルシミュレーションセンター」 を中心に、県下3 つの研修群(県立病院群、群 星沖縄研修群、RyuMIC 群)が連携の下、県全 体の研修システムの確立に向けて医師会も支援 している。
【藤川日医常任理事コメント】
1.宮崎県の稲倉会長には厚労省へ確認の上次のように回答した。
2.要望(1)基幹型臨床研修病院の指定基準 については、現在激変緩和措置の適応を受け ている病院に対しては訪問調査を行うことと している。
3.本調査は、基幹型臨床研修病院の指定取り消しを前提として実施するものでは無いことを確認している。
4.本調査により対象病院における研修の質を 確認し、その結果を踏まえ医道審議会、医師 分科会、医師臨床研修部会において当該病院 の指定取り消しの可否を検討すると共に、今 後の指定基準の見直しの際の参考とすること になっている。
5.この調査の訪問者は、地方厚生局医政局医事課、NPO 法人卒後臨床研修評価機構の講習会を受講したサーベーヤーが訪問する。
6.調査機関については、今年の3 月まで。宮崎生協病院は既に調査を終えているとのことである。
7.評価方法としては、研修医の基本的診療能 力と病院の指導管理体制を総合的に評価、臨 床研修病院としての外形基準の審査、指導医 等への聞き取りや研修医における症例提示ア ンケート等となっている。
8.要望(2)臨床研修病院の指定取消要件(2 年以上研修医を受け入れていない時)につい ては、2 次医療圏において医師不足である場 合には運用上、臨床研修病院の取り消しは行 わない配慮をしている。地方厚生局に確認い ただきたい。
【提案要旨】
当県においては2010 年に大分大学地域医療 学講座が開設され、本年から医学部6 年生にお ける地域医療実習が始まっている。県下8 カ所 の病院をベースにして1 クール2 週間の実習が 行われたが、その中に診療所実習が含まれ外来 診療・訪問診療・介護施設訪問などが行われて いる。医学部在学中から地域医療に接すること で卒後の進路選択へとシームレスな効果も期待 されると思われるが、各県における医学部の地 域医療カリキュラムの現状とそれに対する医師 会の関わりなどについて取り組みを伺いしたい。
【各県回答】
○福岡県:平成21 年度より県下3 大学(福岡 大学、久留米大学、産業医科大学)において 「地域医療活動や医師会の役割」をテーマに、 役員が講義(1 コマ程度)を行っている。
○宮崎県:県医師会、宮崎大学、市町村及び県 で構成された宮崎県地域医療支援機構におい て、宮大医学部地域医療学講座及び医学教育改 革推進センターと連携した「医学生へき地医療 ガイダンス事業」を実施し、へき地公立病院等 での臨床等実習や講義が行われている。
○鹿児島県:鹿児島大学において離島僻地実習 (医学部6 年生対象)が行われている。また県主 催による同大学の地域枠医学生を対象に1 年生 から離島医療実習が行われるなど、離島・僻地 診療、在宅医療等を学ぶ機会が設けられている。
○佐賀県:佐賀大学医学部6 年次を対象に地域医療実習(必修)が行われており、診療所や小 規模病院で2 週間の実習を行っている。また、 学部内に教育研究の先導的組織として「地域医 療科学教育研究センター」が設置されている が、佐賀県医師会も同センターの運営委員を務 めている。
○沖縄県:地域医療に関する動機付けを高める べく、琉大医学部で地域医療カリキュラム(1 年 次:外来患者付添実習の実施、3 年次:地域の 医療・福祉施設を見学実習、4 年次:離島地域 病院実習、5 〜 6 年次:地域医療実習)を実施 している。また、現在卒後研修2 年間の内の半 年間でも、内容を卒前研修に持っていけるよう な背景作りが検討されているか伺いたい。25 年 度に卒後研修の再検討がなされるとのことだが、 国策として6 年次の半年間を地域と一体となり 実技研修ができる背景づくりを考えてほしい。
【藤川日医常任理事コメント】
1.複数の医師会が医学部における地域医療の 実習や講義にかかわっている事に関して敬意 を表している。
2.今後とも医学生に地域医療を理解してもら うために、地域の実情に応じて積極的に取り 組んでいただきたい。
3.なお、日医においては「指導医のための教 育ワークショップ」を開催しており、医学生 の指導を行う医師や臨床研修制度の指導医の 養成を行っている。
4.同様のワークショップは都道府県医師会に おいても開催されており、既に4,500 名以上 が終了している。地域においてこの指導医の 先生方に是非とも活躍して頂きたい。
5.沖縄県から照会のあった卒前研修で6 ヶ月 程度を地域医療に参加させることについて は、5 年生や6 年生へ出来る限り地域医療、 救急医療に参加させ、卒業時点である程度 の医療が熟せるようにしては如何かと考えて いる。
6.早く現場に出すことで、多様なプライマリ ケアの習得が期待できる。卒業後、数年で相 当レベルプライマリケアが期待でき、また3 年目以降、専門医取得をめざす際に、豊かな 経験を活かせるのではないかと考えている。
7.現在6 年目が国試対策の予備校化してしま っている。勉強も大切なことだが、早く現場 に参加させる方が良いのではないか。原中会 長他、役員も殆ど同様の意見であり、その方 向で提言していきたい。
【提案要旨】
平成20 年度の本協議会において、がん検診 の受診率向上への取り組みについて、長崎県医 師会より提案があがっていたが、本県のがん検 診受診率は毎年度わずかな増加はみられるもの の、がん対策推進計画による平成23 年度まで に受診率50 %以上の目標を達成することは非 常に困難な状況である。
本県においては、平成20 年度に乳がん検診 部会に受診率向上のためのプロジェクトを立ち 上げ、受診率向上のための対策について協議を 行うとともに、県内市町村に対してアンケート 調査を実施したところ、啓発事業を実施してい ない市町村が約4 割あり、その主な理由として は、予算確保が困難なことやマンパワー不足に よるものであった。
また、女性特有のがん検診無料クーポン事業 においても、クーポン利用率は約20 %にとど まっている状況である。
そこで、平成20 年度以降の各県自治体にお ける受診率向上のための具体的な取組みとその 成果についてお伺いするとともに、受診率向上 に結び付いた対策などあれば、ご教示いただき たい。
【各県回答】
九州各県ともに、医師会や市町村において 様々な取り組みが行われているものの、がん対 策推進計画による受診率50 %以上の目標達成 には非常に困難な状況となっており、20 〜30 %台に留まっている。だからといって、今 後、受診率の向上が望める具体的な取り組みが ないのが現状である。
長崎県医師会の釣船常任理事(日医公衆衛生 がん対策委員会委員)からは、国民事業とし て、1)がん検診の義務化、2)がん検診の無料化 の2 点が無ければ、受診率の向上は難しいと述 べられた。
大分県医師会の井上常任理事からは、欧米で は80 〜 90 %の受診率があるので、日医から国 民への理解を得られるような働きかけをお願い したいと述べられた。
鹿児島県医師会からは、医療と検診の整合性を図るべきであると述べられた。
【藤川日医常任理事コメント】
当件については、担当の保坂常任理事よりコメントをいただいている。
九州各県医師会からの報告にもあるように、 がん対策推進計画による受診率50 %の目標に 対し、全国的にも各がん検診の受診率は20 〜 30 %に留まっている。
しかし、この受診率自体が対策型検診のみの 対象としているのか明確でないことも問題であ ると認識している。
また、受診率をあげることと並列して検診の 精度管理を徹底しなければならない。国は対策 型検診を推進しているものの、有効性を検証し たガイドラインそのものが、開かれた議論でな いことから基本的な問題があると認識してい る。これらの課題について厚労省の担当局とも 認識を共有しており解決に向けて参る所存であ る。具体的には厚労省として対策型検診の有効 性に関する検討会を年度内に立ち上げることと している。その中で、何をもって受診率とする のかを視野に入れて検討を行ってまいりたい。 併せて精度管理の向上についても検討していき たい。さらに、補助金から地方交付税・交付金 へ移行したがん検診費用のあり方について検討 が必要であると考えている。
WHO では、がん、脳卒中、慢性呼吸器疾患 等の非感染性疾患の警告を発するとともに、こ れらの疾患は生活習慣病の改善により予防でき ると強調していることを受け、日本も、がん、 その他の疾患に対する包括的な対応を進めてい くこととしている。
日本医師会としても、今後とも、がんをはじめ、様々な疾患に対する対策の推進に取り組んでいくので、ご理解ご協力を賜りたい。
【提案要旨】
今般、健康増進法及びがん対策基本法に基づ き、県内におけるがん患者について、がんの罹 患、転帰その他の状況を登録し、本県における がんの実態を分析する等、今後のがん対策の総 合的な推進を図ることを目的に、平成23 年8 月より再開され、9 月から登録を行っている。
今回、届出票の提出先を本会にしたり、がん 検診の講習会等でがん登録についての説明を予 定する等、多くの会員医療機関の協力が得られ るよう、本会でも地域がん登録の推進について 積極的に関わっているところであるが、各県の 地域がん登録の実施状況についてお伺いしたい。
【各県回答】
宮崎県を除く全ての県において地域がん登録を実施している。
本県では、昭和63 年よりがん登録を開始し ており、沖縄県衛生環境研究所に中央登録室を 設置している。また、平成21 年9 月から全国 基準の「地域がん登録標準データベースシステ ム」を導入している。
大分県では、平成23 年1 月症例分を同年4 月より登録開始し、届出件数は、拠点病院で 7,402 件(平成21 年1 月〜 23 年10 月)、それ 以外の医療機関で767 件(平成23 年1 月〜 10 月)となっている。
長崎県では、昭和33 年に長崎市医師会が開 始した時から始まり、昭和59 年に「長崎県が ん登録評価事業」として引き継いで実施してい る。全国でも精度の高い地域がん登録として、全国の罹患率の推定やWHO の「5 大陸のがん 罹患率」等へ利用されている。
熊本県では、平成5 年度から地域がん登録事業を県直営で実施し、地域がん登録に関することは、すべて県庁内登録室で実施している。
鹿児島県では、県民総合保健センターに委託 して実施され、平成22 年の医療機関毎届出数 は、県内43 機関から8,836 件であった。
佐賀県では、昭和59 年度から実施されてお り、平成17 年度までは、届出票の配布と回 収・返信用封筒の配布などの一部を県医師会が 受託していた。平成18 年度より、医療機関か らの届出票の収集・解析等全ての事業につい て、財団法人佐賀県総合保健協会に委託して実 施している。
【藤川日医常任理事コメント】
日本で地域がん登録が始まって半世紀になるが、未だ実施していない地域があるのが実状である。
地域がん登録が普及しない原因として、手続 きの煩雑さや、その必要性が患者のみならず、 医療従事者にも必ず十分に認識されていないこ とがあげられる。また、登録事業が欧米より普 及されていないことも要因の一つである。
がん診療連携拠点病院は、院内がん登録が指 定要件となっており、国立がん研究センターと 共通のフォーマットによる登録が行われてき た。しかし、データの共有化が図れず、これま では国立がんセンター、各学会、地域、病院に よる様々なフォーマットにより、登録事業の普 及の阻害要因となっていた。現在は、次第に標 準化されつつある。
我が国のがん対策が遅れた理由の一つに、精 度の高い罹患情報としての登録事業の形態が指 摘されている。欧米諸外国や韓国は、国をあげ てがん登録を事業化し、がん対策を推進してい る中、我が国も地域がん登録を推進していく必 要があると考えている。がん対策の推進のため にも精度の高い標準化された罹患情報が重要で あり、臨床現場で活用しやすいがん登録制度の 確立と国民に対する周知、広報の徹底が必要で ある。そのためには、地域がん登録の法制化や それに伴う個人情報保護法の徹底についても検 討すべきと考えている。
印象記
副会長 玉城 信光
今年の1 月28 日佐賀市で九医連の協議会が開催された。
早朝那覇をたち福岡空港から地下鉄にのり、唐津に降り立った。唐津城にのぼりさて駅に戻ろ うかと思ったとき、唐津城周辺にはタクシーがいないのである。なんと田舎の町かと思ったが、駅 まではさほど遠くないので歩いて行くことにした。歩くと面白いものが目に入った。唐津城の隣 が早稲田唐津高校であった。佐賀に早稲田の高校を誘致したときいたが、唐津という人口の少な い町に誘致されているのであった。名護にも誘致したらどうかと思っている高校である。唐津駅 から佐賀駅までSUICA が使えると思い入場したが駅舎のポスターをみていると途中駅では SUICA は使えないと書かれている。駅員に聞くとやはり使えないらしい。SUICA の入場記録を 消して頂き改めて切符を買ったのである。田舎の風景を見ながら、やっと佐賀駅に到着である。
各種協議会はいろいろな意見がよせられ面白いものである。しかし、今年は多くが災害時の医師会のありように時間が割かれた。
沖縄県からは「九州各県における災害等への対応状況および九州各県の連携構築について」質問させて頂いた。
今回の東日本大震災における災害支援を通して、沖縄県内において災害が発生した際の対応と 支援体制を検討していくために九州各県の対応状況を確認したいと質問した。また、沖縄県には 原発はないが原子力災害対策も含め、九州各県の災害支援計画等の対応状況について伺った。
今後、大規模災害発生時への対応が的確に行われるよう、行政側も含めた九州ブロックとしての協力体制について協議の場を持つことが必要であると考え各県の意見をもとめた。
各県ともJMAT やDMAT の活動を通じて災害対策の重要性を認識し、体制の再構築を検討していることがわかった。
宮崎でも「宮崎県災害医療活動マニュアル」の改訂の検討が行われ、救急告示医療機関への防 災無線等の通信手段確保や各郡市医師会への衛星電話の配備、JMAT の定期的な研修等の開催を 要請していると報告された。
沖縄県が行った大槌の支援でも連絡手段の大切さが指摘されており、どのような手段が有効なのか検討が必要である。
行政を含めた九州ブロックとしての協力体制構築のための協議の場の設置については殆どの県 で「賛成」との回答が得られた為、次回福岡県で開催される「九州各県保健医療福祉主管部長お よび各県医師会長合同会議」において提案されることになった。
九州各県の連携も大切ではあるが、基本は各々の県における体制固めが先で、それらの業務提 携の中から基本的な行動が生まれると思われる。会員有志で作られた「災害医療支援にかかるワ ーキンググループ」より提言された「沖縄県医師会災害救助医療班派遣要領草案」の実行を見な ければならない。
災害に際し、医師会が先に行動を起こすことが考えられる。それに対し行政があとから公的派 遣であると承認することが大切であり、これらが九州各県への広がりを認めてもらうことが重要 になる。
藤川常任理事からも日本医師会では、東日本大震災の一年前にJMAT を提案した救急災害医療 対策委員会において、今回のJMAT 活動の課題、今後のあり方を検討しており来月中には、報告 書がまとめられる予定であるとのべられた。
宮崎県から提案された広域災害・救急医療情報システム(EMIS)の有用性についてであるが、 そのようなシステムがあることを知らなかった。しかし、かなり使い勝手の悪いもののようで、国 が考えることは金がかかる割には使いづらいシステムが多いものであることを改めて認識した。
沖縄県ではどのように災害対策を構築していくのか、来年度の大きな事業の一つであると認識した。
印象記
常任理事 安里 哲好
九州地区代表の藤川謙二日医常任理事の出席のもとに、佐賀県の古賀義行常任理事が座長され、 各項目について日医の考えや方向性も述べてもらい、13 項目について、2 時間の協議が進められた。
小生は協議事項(7)より以降を担当し、印象に強く残った事項を報告したい。協議事項 (7):「救急医療に関する特例病床と今後の二次保健医療圏における基準病床、そして医療連携 について」は、急性期医療から看取りまでの諸問題を含む大きなテーマを沖縄県から提案した。 特例病床は宮崎大学医学部附属病院の救命救急センター化、大分大学医学部附属病院のドクター ヘリ導入に伴う増床を予定しているとの事。基準病床については、各県ともこれから検討すると 述べていた。藤川常任理事は両項目について、都道府県医師会を中心とした、地域の特性・事情 によって体制づくりを行うのが望ましいと主張していた。一方、介護施設からの搬送数が急増し ているのが課題で、多死社会の中で、特別養護老人ホームや介護老人保健施設でも同意書をとっ て、看取りが出来るようになるのが望ましいと述べていた。
(11):「医学部での地域医療カリキュラムに地域の医師会がどのように関わっているか」に ついては、各県1 コマ程度の講義から2 週間の実習(診療所や小規模病院)等が行われている様 だ。平成25 年に卒後研修の再検討がなされるとのことだが、卒後研修の2 年間のうち、6 ヶ月分 を5 ・6 年次に地域医療機関と一体となって実技研修ができる背景づくりを考慮して欲しいと要 望した。
(12):「がん検診の受診率向上への取組みについて」と(13):「地域がん登録について」 は、がん対策推進計画によるがん検診受診率の目標は50 %以上で、各県は30 %前後、本県は 20 %台でかなり低い印象を受けた。一方、がん登録に関しては、本県では昭和63 年よりがん登 録を開始しており、沖縄県衛生環境研究所に中央登録室を設置している。また、平成21 年9 月か ら全国基準の「地域がん登録標準データベースシステム」を導入しており、今後に期待したい。
今回は、日医での地域医療対策委員会の次の日に福岡に入り、博多駅で皆と合流した。また、 当日、協議会終了後の懇親会や翌日の親善ゴルフ大会にも参加せず帰沖し、慌ただしい一日であ った。今年度は佐賀県に何度も足を運び、その折り一度だけ唐津を回ったが、あいにく雨が強か ったので、駅の近くの商店街の唐津焼の見学に終わった。第1 回各種協議会の親善ゴルフコンペ と第111 回九州医学会総会の親善ゴルフコンペ(88 名参加)で連続優勝をすることができ、思い 出深い佐賀県医師会主催の1 年で、池田秀夫会長並びに佐賀の先生方には心より感謝申し上げた い。平成25 年度は沖縄県が主催することになっており、県医師会理事者は平成24 年度の宮崎県 の協議会には積極的に参加していただきたい。また、当県主催となる平成25 年度には、各地区医 師会の協力も得て、1 年を精一杯乗り切りたいものだ。