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平成23年度第2回都道府県医師会長協議会

小渡敬

副会長 小渡 敬

去る1 月17 日(火)、日本医師会館において 標記協議会が開催され、宮城会長(日医理事) の代理で出席した。

はじめに、司会を務めた今村聡常任理事より 開会の辞があり、引き続き日医原中会長より概 ね次のとおり挨拶があった。

「TPP、医師法21 条、消費税等日本医師会 に山積された諸問題について、引き続き先生方 のご意見を聞きながら逐次日本医師会の主張を 説明するという立場で政治活動をしながら推進 して行こうと思う。受診時定額負担に関して は、各県における署名活動、或いは地元出身の 政治家に対する働きかけが大きな力となって阻 止された。政治活動においては、日本医師会だ けではなく、県医師会、郡市区医師会の先生方 の活動が大変重要となる。」

引き続き協議に移り、各県並びに日本医師会 から提出された議題等について協議が行われた ので概要について報告する。

協 議

(1)国際戦略総合特区申請にみる治験・臨床研究並びに先制医療推進の問題点(兵庫県)

<提案要旨(抜粋)>

今回、オール関西による「総合特区」に京 都・大阪・兵庫3 府県それに京都・大阪・神戸 の3 政令都市の手あげになる「関西イノベーシ ョン国際戦略総合特区」が書面審査(第一次評 価)を経て調査検討会(第二次評価)で最高点 を獲得したとの報に接し一層危機感を募らせて いる現況である。

地城医療に常に住民目線で関わり続ける地元 医師会として、産官学一体化となる新しい波に 如何に対処すべきか、特区指定の有無に拘ら ず、既に特区の域を超えた国を挙げての動向に 日医として如何に対峙していく所存か、執行部 のお考えをお聞かせいただきたい。

【今村定臣常任理事回答】

総合特区制度の問題点であるが、国際戦略総 合特区として申請されている「関西イノベーシ ョン国際戦略総合特区」については、様々な事 業の認可権限が大臣から都道府県知事に移譲さ れること等が想定される。そのため提案されて いるPMDA 特区内分局は開発企業が実用化を 加速させるための認可を行使する権限を持つ可 能性がある。このことは企業の利益に合致する 一方、国民の利益には相反する部分が出てくる 恐れがある。内閣官房の総合特区制度の概要に おいては、総合特区制度は個別の法令と共に特 例措置に加えて地方公共団体の事務に関し政省 令で定めている事項を条例で定められることと するために地域主権改革を加速する突破口と成 り得ることが記されている。しかしながら、医 薬品、医療機器の治験の実施は国が承認者とし て国民医療における安全性を担保すべきもので あり、軽々に地方に委ねるべき性格のものでは ない。

今回提案されている総合特区、これは個人情 報保護の観点からも重大な問題がある。個人の 遺伝情報にアクセスする医療関係者は遺伝情報 の特性を十分理解し、個人の遺伝情報を適切に 扱うことが求められており、このために各種の ガイドラインが定められている。具体的には限 られた特区内であっても複数の医療機関等でや られた疾病データは国の関与なくして活用すべ きものではない。以上の問題を踏まえて日本医 師会は医療現場が適切な医療提供に専念できる ように国は手続きの効率性や迅速性の向上を図 ると共に安全性・有効性の十分な確保を前提と すべきであると考えている。医療における開発 企業の経済合理性の追求は国が国民の医療の安 全を守るという大原則のもとに行わなければな らないということを強く主張する。

これらのことから今回の総合特区の動きは 「関西イノベーション国際戦略総合特区」の提案 内容をみても医療の営利産業化の動きと密接に 関連している。特に特区における株式会社の病 院経営への参入、医療ツーリズムによる営利目 的の外国人患者の受け入れ、これらのことは日 本の公的医療保険の給付範囲の縮小、或いは実 質的崩壊に繋がることは必至であると考えてい る。日本医師会は、必要な医療は全ての国民が 受けることができる国民皆保険の堅持が大原則 であると考えている。したがって、医療特区を創 設し、生命を預かる医療現場において患者そし て地域住民の不利益に成り得る懸念というもの を抱きながら実施することは到底容認できない。 本特区提案は国と地方の協議会において複数の 特例措置のみならず、税制財政金融上の支援措 置等が議論、検討される段階になる。こうした 様々な特例措置や優遇措置を受けて、一つの事 例が作られると医療制度にダブルスタンダードが でき、瞬く間に全国に広まり、医療への株式会 社参入等の蟻の一穴になることが大いに懸念さ れる。日本医師会は、特区制度や規制制度改革 によって安心安全な医療が損なわれることがない ように国に対して積極的に働きかける。

(2)特定機能病院・地域医療支援病院の要件見直しについて(徳島県)

<提案要旨(抜粋)>

特定機能病院、及び地域医療支援病院の外来 診療は厳格な制限のもと行われるべきと考えて いるが、この点についての日本医師会の見解を 伺いたい。

また、特定機能病院と地城医療支援病院の要 件の見直しが国によって行われようとしていると きに、日本医師会として、それぞれが果たすべき 役割を明確にし、厳格な承認要件設定が行われ るよう強く国に働きかけられるよう要望する。

【鈴木邦彦常任理事回答】

特定機能病院、地域支援病院に対しては、本 年度中に厚生労働省に検討会が設置される予定 で、日本医師会として横倉副会長を委員として 推薦している。昨年7 月の社会保障審議会医療 部会においては、横倉、中川両副会長がそれぞ れ意見書を提出して見解を述べた。特定機能病 院では、特定機能病院が本来の役割、機能に集 中できるよう原則紹介外来以外の外来診療を行わないことを提案した。また、地域医療支援病 院では、当初の趣旨に沿って承認要件を見直し たうえで、真に必要な病院機能に対してのみ診 療報酬財源を投入すべきとした。その後、昨年 末に医療部会が取り纏めた医療提供体制の改革 に関する意見では、特定機能病院は一般の医療 機関では通常提供することが難しい診療を提供 する病院として地域医療の最後の拠り所として の役割を担っていくべきとした。貴重な医療資 源、財源の効率的配分及び勤務医の労働環境へ の配慮の観点から特定機能病院の外来診療のあ り方を見直す必要があると結論づけている。ま た、地域医療支援病院は当初の理念を踏まえ、 外来診療の見直しが必要としたうえで、承認要 件の見直しが必要としている。このような書き ぶりは日本医師会の主張が反映されたものと思 うが、今度設置される検討会においても承認要 件をより厳格なものとするよう主張していく。

(3)日本医師会会員証の改定について(東京都)

<提案要旨(抜粋)>

この度の東日本大震災の教訓として、被災地 へ入る際、医師の証明手段として身分証が有用 であることが幾度となく確認された。日本医師 会が発行する会員証が、今後、災害発生時等に 医師の身分証として活用されるべく、その様式 についてご検討いただくことを提案する。

【今村聡常任理事回答】

日本医師会会員証は平成13 年度の都道府県 医師会長協議会においてご承認いただき発行し ており、当初、医師の認証という話もあった が、日本医師会の顧問弁護士の回答では、医師 の認証を会員証の中に載せることについては難 しいとのことであった。また、都道府県医師会 も様々な会員証を作っているが、載せている情 報がバラバラになっており、それを統一するこ との困難性、発行費用等の問題があった。

しかしながら、日本医師会には認証局があ り、厚労省の運営する認証基盤と相互に連携し ており、今後国がIT 化を進めていく中で日本 医師会の認証局は重要な要素であると位置付け されている。認証局を上手く活用して新たなカ ードが発行できれば、ご提案いただいたことも 対応できるいのではないかということで、現在 日医のIT 委員会、或いは日医総研の中で議論 をしながら検討していくところであるので、暫 くお時間をいただきたい。

(4)後発医薬品に関する問題点について(秋田県)

<提案要旨(抜粋)>

国は後発医薬品使用と医薬分業の双方を推奨 しているが、我々は安心した医療を提供する立 場から、次の問題を払拭できずにいる。これらの 問題について日医の見解を伺いたい。1)後発医 薬品の情報提供不足、適応不一致、安定供給体 制の問題、価格設定の問題等、国が責任を持っ て全てを証明し情報を提供すべきである。2)先 発医薬品の特許が切れた場合、その製品を安く するというような薬事法改正を含む政策議論を すべきである。また、日本においての新薬開発を 国の責任としてどう考えるのか、その方向性を示 すべきである。3)薬局での後発医薬品での問題 発生の責任については医師側にあるということに なるのか。4)地域性が配慮されていない。

【鈴木邦彦常任理事回答】

我々医師は医療の専門家として患者さんに対 して品質が同等であるということの確認をした うえでないと使えないということは治療に責任 を持つ以上当然のことである。中医協等で後発 医薬品の使用促進について議論する際、診療側 は必ず現場の実感として、有効性・安全性等に 差異がないという国の結論に対する違和感を主 張し、更に、安定供給体制、情報提供、価格設 定等の問題について指摘している。

医師としては、信頼性という観点から、これ まで使い慣れている先発医薬品の特許が切れた 際に薬価を後発医薬品なみに下げて引き続き使 えることが望ましいという点もそのとおりであ る。現在、イノベーションの評価という観点か ら新薬創出加算の施行が継続されており、この加算で薬価が維持された医薬品が特許切れにな ると薬価の引き下げが行われるルールとなって いるが、その価格も後発医薬品より2、3 割程 度高いという状況である。

新薬開発を国の責任としてどう考えるか方向 性を示すべきとの指摘については、希少疾病用 医薬品の開発支援や既存の治療薬が無効で困っ ている患者さんに有効な医薬品の開発を更に推 進する対策を講じていくべきと考える。

後発医薬品の使用促進については、中医協の 検証調査により、医療機関よりもむしろ薬局の 対応が問題となっていることから、診療報酬上 の加算によりインセンティブが与えられていた が、最近の中医協の議論では安さが後発医薬品 を選ぶ理由であるのに、薬局に対して様々な加 算が設定されていることについて、費用対効果 の検証が必要とされ、後発医薬品への切替によ る薬剤費減少分と各種加算による医療費の増加 分を比較検証することが求められている状況で ある。今回の改定で薬局の後発医薬品調剤加算 は廃止される予定である。

一般名の処方箋を受けつけた薬局が患者さん の同意の下で後発医薬品を調剤し、その後発医 薬品により問題が発生した場合、処方医や薬剤 師に副作用の責任は生じないとの国会答弁がな されている。なお、今回の診療報酬改定におい て更に一般名処方の推進が図られる予定であり、 現在現場の先生方や患者さんの負担や不安、更 には混乱のないように折衝を続けている。

地域性についてもご指摘のとおりで、後発医 薬品メーカーの情報提供努力の不足と共に地域 の薬剤師会の対応不足もあると考えている。

今回の診療報酬改定率が決まった際に、財務 大臣と厚生労働大臣が折衝で合意した中に後発 医薬品の推進については新たなロードマップを 作成して強力に進めると明記されている。更に 改定の骨子案にも今後は後発医薬品メーカーに よる品質の確保及び向上への取り組み、情報の 発信をより一層促すと共に、それに加え厚生労 働省やPMDA 等が中心になり、医療関係者や 国民向けの後発医薬品についての科学的見解を 作成したり、ジェネリック医薬品品質情報検討 委員会の検討結果について、より積極的に情報 提供を図ると明記されている。

平等で質の高い我が国の医療制度において、 後発医薬品を推進することに対しては違和感を 感じることは否めないと思うが、他の先進各国 においても取り組まれている医療費抑制策を踏 まえて我が国においても現実的な対応が求めら れていると考える。

(5)特定健診受診率向上に向けた滋賀県の試み(滋賀県)

<提案要旨(抜粋)>

特定健診受診率は、当初の目標を大きく下回 っている。電子化の数を見ると、受診者は減少 傾向にある。その原因としては、健診メニュー の貧困さと、通院中の患者の健診回避などがあ げられる。このことは昨年1 月のこの会長協議 会で発表し保坂常任理事にご賛同を頂いた。特 定健診・特定保健指導は、受診率を含めその結 果成績が、後期高齢者医療制度への拠出金負担 の増減につながる制度設計になっており、各保 険者には今後の保険財政に関わる問題も含んで いる。そこで滋賀県ではより充実した健診内容 を目指すと共に、受診率向上に向けた試みを市 町と十分相談し、同意を得て次年度より実施す ることとした。健診内容の充実として、国保加 入者については、尿潜血、血清尿酸、血清クレ アチニン、HbAlc、空腹時血糖(食後10 時間 未満のものはHbAlc のみ)の追加健診を県下 全市町で実施することにした。受診率向上の試 みとして、慢性疾患を含め、何らかの疾患で医 療機関を受診した患者や入院中の患者のうち、 本人の同意が得られれば、その医療機関内での 特定健診相応のデータを有料で各市町国保に提 供し、治療中の検査データを健診データとして 活用することとした。

【保坂シゲリ常任理事回答】

現在、厚生労働省保険局所管の保険者による 健診・保健指導等に関する検討会、更に健康局 所管の健診・保健指導のあり方に関する検討会において受診率向上を含め、制度実施上の課題 と対策等について様々な角度から検討が進めら れている。両検討会ともメンバーとして参加し て様々な提言をしているところである。被用者 保険の被扶養者の受診率が特に低いことに対し て議論の結果、市町村国保への委託を認める方 向で、更にそれを組織的にやっていくことにつ いても議論されているところである。また、が ん健診との同時実施等の対応も検討されてい る。しかし、受診率に応じた後期高齢者支援金 の加算・減算制度、メタボリックシンドローム に特化した健診項目等、制度の設計の脆弱制自 体が問われているというふうに考えている。ま た、健康局の検討会では国民に受診のインセン ティブがなかなかないのは、周知等の方法論よ りも腹囲基準に象徴されるようなメタボリック に限定された健診項目に問題があること、国民 の健康をもっと広い視点で捉え、見直すべきと 強く指摘し、大多数の意見が見直しに賛同いた だいている。国民のための健診制度のあり方に ついては、本会の公衆衛生・がん対策委員会に おいてもがん健診を含め議論いただいていると ころであるが、近く答申がまとめられることに なっている。

現実的な対応としては、支援金の加算・減算 制度の見直し、被扶養者の市町村国保への委 託、健診項目の必要な拡大等、特定健診・特定 保健指導の制度的課題を一つ一つ解決して参り たい。

(6)国民皆保険体制維持へのアピールについて(愛知県)

<提案要旨(抜粋)>

「患者に最適な医療」が現行の保険制度のも とで、基本的に保障されていること、これを今 後も維持しなければならないことを広く国民に アピールしなければならない。

同時に、医療に市揚原理主義を入れることに より、「最適な医療保障」が「最低限の医療保 障」に退化し、たとえ皆保険体制が続いたとし ても、皆保険の精神が大きく変質してしまう可 能性を、わかりやすい言葉と、キャッチコピー を使って広く会員、国民に訴えかけて欲しい。

【鈴木邦彦常任理事回答】

国民の皆様にもご理解いただけるよう出来る だけ分かり易く医療分野における規制改革の問 題点をまとめた「医療における規制制度改革に 対する日本医師会の見解― TPP 交渉参加表明 に関連して―」という冊子を全都道府県医師 会、郡市区医師会に送付し活用いただいてい る。これらは日本医師会のホームページ上から もダウンロード出来るようになっており、国民 の皆様にも広く利用できるようになっている。

TPP の参加に巡っては、国民皆保険体制を 維持することが医師会の利益ではなく国民の利 益になることを広く一般の国民に理解していた だき、国民皆保険体制を守れないTPP への参 加には国民が反対するように働きかけていくこ とが必要と思われる。日本医師会として更に国 民の皆様への働きかけを積極的に展開していく 予定である。

【石川広巳常任理事回答】

TPP の問題については、ご指摘のとおり国 民には解り難い。こういう問題については、 我々も読売新聞の突き出し広告で、分かり易い 言葉とキャッチコピーを使って工夫しているが、 なかなか難しい。難しい医療政策であるが、今 後とも工夫して頑張っていきたいと思う。

(7)消費税対策について(宮崎県)

<提案要旨(抜粋)>

普通税率による課税を選択するのが現実的で はないかと考える。国民・保険者に消費税非課 税制度の仕組みを十分に説明し、理解していた だくことが重要であると考える。課税の原則 は、公平・公正・平等・簡潔である。国民・保 険者の負担増の解釈は、増収となる消費税の配 分を含めた政治の問題となると考える。

普通税率による消費税課税制度を主張した場 合の問題点、特に事業税及び4 段階制税制に与 える影響等についてもご教示いただきたい。

【今村聡常任理事回答】

我々医療界はこの問題について政治家、官僚 等に訴え続けて来たが、既に解決しているとい うのが公式の見解であった。今回社会保障・税 一体改革の素案に、厚生労働省内に、医療機関 の消費税負担について定期的に検証する場を設 けることが書き込まれたということについて は、大変意味があったと思っている。その中で 今までの負担が適正であったかどうか、消費税 を8 %にした時にどれだけの上乗せをすればよ いのか、そして将来的に課税をするのかどうか を含めてあり方を検討していくと言われてい る。先ずは問題をきちんと検証して、国民や保 険者に目に見えるところにこの問題を出して、 実態を知ったうえで議論し、それが10 %の時 に抜本的に解決するよう、また国民の税の負担 がないよう配慮することを要望する。これから が本当の勝負の時だと思っている。最後は法律 的な事項になる。今素案であるので、これを大 綱にして最終的に法律にするということになれ ば、与野党の国会議員の了承がなければならな い。10 %の時にきちんと解決が出来るという ことを明記できるような形で進めたいと思って いるので、都道府県医師会の先生方にご支援い ただきたい。

(8)病床再編について

<提案要旨(抜粋)>

社会保障制度改革の1 つとして、一般病床の 効率化・重点化のため、急性期病床の再編が行 われようとしている。そこで、1)急性期の定義 について、2)一般病床再編の基準と振り分けの 方法について、3)「急性期病床群」法制化と病 床再編の必要性について伺いたい。

【横倉副会長回答】

急性期病床群(仮称)の認定制度は次の医療 法改正に向けて、昨年厚生労働省が社会保障審 議会・医療部会に提案したものである。現在、 急性期医療に関する作業グループが設置されて おり、私がその委員として参画している。急性 期病床群は、現在の一般病床の中から要件を満 たす病床を病棟ないし病室を単位として急性期 病床群と認定しようというものである。私は次 のような理念で議論に臨み、急性期病床群制度 を直ちに導入することには反対している。機能 分化は必要であるが、それはあくまでも地域の 関係者で作る医療計画で推進すべきである。ま た、機能分化を制度で決めてしまうと硬直的に なる。一般病床は幅広い概念である現在の定義 だからこそ地域の医療ニーズの変化、多様化に 柔軟に対応ができている。一つの病院が様々な 機能を持ち地域に密着して医療を提供している ことが日本の医療を支えている。今後の高齢化 の進展により、患者さん方の様態が様々となっ ていく。急性期でなく、むしろ慢性期の方から 病床のあり方を考えていくことが必要ではない かということを考えている。そのためには、平 成13 年度に行われた一般病床、療養病床の区 分分類の結果、起きた問題が様々ある。療養病 床への医療区分の導入と低い診療報酬の評価、 介護療養型医療施設の廃止の問題の検証をきち んとすべきであると主張している。

急性期の定義については、厚労省では、例え ば心筋梗塞によって入院した患者や手術後の患 者の様に状態が不安定であって、症状の観察等 医学的管理や傷の処置等を日常的に必要として いる場合を想定している。また、更に広く難治 性疾患等で高密度な医療を必要とする患者も対 象としている。これについては、どの病床にど の患者を入院させるべきかは、医師が判断する ものであって、法令で急性期を定義して、法律 や行政が過度に立ち入るべきではないと考える。

急性期病床群は、法律で細かく区分すること ではなく、社会保障・税一体改革成案の高度急 性期と一般急性期の両方を急性期病床群と位置 づけると現在の時点では言っている。急性期病 床群の設定方法は、先ず人員配置と構造設備機 能、平均在院日数を要件として、次に救急搬送 等の入院経路、処置の内容、疾病病態で評価を するというような提案をされているところであ る。急性期病院の認定を受けなかった病院でも 法律上は急性期医療を行えると言われているが、診療報酬の評価がなければ、実質的には難しい。 また、大都市と地方での格差も懸念される。

ご質問の中で、不要・不急な制度の創設や急 激な病床再編は地域医療の混乱を招くと指摘さ れているが、そのとおりである。急性期への偏 った医療資源の投入ではなく、地域で入院医療 を支えている一般病床全体の充実に努めていく という主張を今後も続けていく。

(9)平成22 ・23 年度定款・諸規程改定検討委員会答申について(日本医師会)

【今村聡常任理事説明】

本日、標記答申について、定款・諸規程改定 検討委員会蒔本委員長(長崎県医師会長)から 原中会長へ報告があった。定款・諸規程改定検 討委員会は、「新公益法人制度に向けた諸規程 類の改定について」との諮問を受け、委員会を 平成22 年9 月から7 回にわたり開催し、検討 を重ね、新公益法人制度に対応した「日本医師 会定款・諸規程変更案」がまとめられている。 本答申では、前期の委員会より答申された新制 度移行後の日本医師会定款変更案の一部に変更 を加えると共に、定款施行細則、日本医学会規 則、裁定委員会規則、代議員会議事規則、議事 運営委員会規則、役員等の報酬及び退職慰労金 に関する規程の変更案についても取りまとめて いる。主に、役員選挙のあり方について役職毎 の理事の選任を可能とする条件付きの役員選任 決議を採用した。また、代議員・予備代議員の 任期については、都道府県医師会にアンケート をさせていただいて、その結果を踏まえて現行 の4 月1 日から2 年間となっていたものを6 月 開催予定の定例代議員会から2 年後の定例代議 員会開催の前日までというふうに変更させてい ただいたというところが、大きな修正である。 本答申は、都道府県医師会、郡市医師会、代議 員へ発送する予定である。本答申を基にして、 執行部として新制度移行後の定款諸規程変更案 を取りまとめて平成25 年4 月1 日の移行登記 を目指して、本年の10 月開催の臨時代議員会 に議題を上程したいと考えている。

(10)「総合医」と「総合診療医」の語句の定義について(日本医師会)

【三上裕司常任理事説明】

昨年の年末から都道府県医師会の先生方にご 意見を伺っていた「総合医」、「かかりつけ医」、 「総合診療医」の定義の問題について、結果を 報告させていただく。

先生方からいただいたご意見を踏まえ1 月11 日に開催された厚生労働省専門医のあり方に関 する検討会のヒアリングにおいて、「総合医」、 「かかりつけ医」、「総合診療医」の語句の定義 について意見を述べた。

「総合医」と「かかりつけ医」については、 就業形態や診療科を問わず、「医療的機能」以 外に、「社会的機能」すなわち「かかりつけ医 機能」を有する医師である。主に地域医療を担 う地域の診療所や中小病院の医師であることが 多いが、病院勤務医等もこうした役割を担って おり、どの医師であっても該当する。なお、国 民皆保険下のフリーアクセスにおいて、既に患 者から選ばれ、地域を担っている医師も、「か かりつけ医」であり、「総合医」であるとさせ ていただいたところである。

「総合診療医」については、内科、外科、精 神科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、 小児科、産婦人科など、広い領域にわたって行 う診療について、「医療的機能」の面のみから 評価された医師であるとさせていただいたとこ ろである。

この問題については執行部間で議論を続けて いるところで、3 月1 日に都道府県医師会生涯 教育担当理事連絡協議会でも議論いただく予定 にしている。

○その他:診療報酬改定率について

診療報酬改定率について原中会長の考えをお 伺いしたい旨フロアーから質問があり、概ね次 のとおり回答があった。

【原中会長回答】

経済界、税制調査会等、様々なところから、 医療費だけが上がるのはとんでもないとういうことで、非常に強い圧力があり、恐らくマイナ スになるだろうと言われていた。その中で、最 終的に厚労大臣と財務大臣の話し合いが3 回行 われ、我々は厚労省に対して絶対にマイナスに しないで欲しいと訴えた。それで今回初めて、 政党の中の意見を聞いてからということになっ た。その時に、我々は、桜井充議員を中心とし た「適切な医療費を考える議員連盟」等いろい ろな方面へ行動を起こして、最終的に民主党と しては2 %プラスという案を決めていただき、 なんとか両大臣と官房長官と前原政調会長の四 者会談を作りあげてもらい、そこで決着がつか ないということになり、総理大臣に持って行っ てもらった。結局、どこから財源を持ってくる かということになり、薬剤のマイナス分の財源 が一部介護費用に持って行くことが決まってい たが、それを医療費に戻してプラスになった。 自然増の2,200 億円を確保したうえでプラスに なったことは一応の評価ではないかと思ってい る。全ての予算が削られている中で、医療費が 僅かでもプラスになったことは、医師会の主張 が通ったということだというふうにご理解願い たい。

印象記

副会長 小渡 敬

平成24 年1 月17 日、第2 回都道府県医師会長協議会が行われ参加した。今回も各県より10 題 の議題が提出された。協議の前に会長の挨拶があり、受診時の定額負担を阻止することが出来た のは、各県の署名活動と政治家に対する働きかけが大きな力になったことを強調していた。議題 の中では、総合特区については日本医師会はあくまで反対であり、その理由としては1)企業の利 益になるが国民の利益には必ずしもならない恐れがある、2)治験の承認等は国が行うべきであり 地方(特区)に委ねるべきではない、3)個人情報保護の観点からも問題がある等である。また医 療ツーリズムについては、日本の公的医療保険の給付範囲の縮小、あるいは実質的崩壊に繋がる ことは必致であると述べている。

次に「総合医」と「総合診療医」の語句の定義については、本文中に記載されているが、分かったような分からないような定義であり、再度検討する必要があると思われる。

今回は協議事項以外に、診療報酬改定を日医会長はどう評価しているかという厳しい意見もあった。