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沖縄県麻酔科医会の紹介

須加原一博

麻酔科医会会長 須加原 一博

さて、沖縄県医師会史2 にも掲載した(p171) が、昭和62 年琉球大学医学部に麻酔科学講座 が開講され、初代奥田佳朗教授のもとに発足し た沖縄県麻酔研究会(昭和63 年1 月23 日)が 麻酔科医会の前身である。まだ麻酔科医が少な く、麻酔に携わる外科医や歯科麻酔医も加わり、 沖縄県の麻酔科学の進歩と普及を目的に、研究 会を作った。

麻酔科の啓発や研究会の更なる発展のため に、平成4 年度(1992 年、第6 回総会)に沖縄 県医師会医学会への加入を申請した。しかし、 沖縄県医師会医学会の分科会としては、会員が 「沖縄県医師会の会員」でなければならず、承 認されなかった。沖縄県医師会加入の医師のみ による麻酔科医会として再度医学会分科会への 加入を申請した。その会員数は31 名(麻酔科 医2 1 名) であった。そして、平成6 年度 (1994 年)より分科会として承認された。

麻酔科医会は、沖縄県麻酔研究会と協力して 沖縄県の麻酔科学の進歩と普及を目的に活動し ている。発足当時は、会長:奥田佳朗、幹事は 知念清、新崎康彦、櫻谷香織、花城久米夫、中 原巌、太田敏久、事務局:平良豊、伊波寛と、 現在沖縄県内で活躍の面々で組織された。平成 12 年(2000 年)4 月、サミット沖縄の時に奥 田教授退職後、熊本大学より私が第2 代目教授 として赴任した。麻酔科領域の活性化を図るた め、年1 回であった研究会は平成13 年度より 年2 回(夏と春)開催された。それまで琉球大 学医学部で開催していたが、各関連病院の視察 や交流も兼ね持ち回りで開催していくことにし た。特別講演では、平成15 年9 月に、県立南 部病院で開催、特別講演に島根医科大学麻酔科 教授齋藤洋司先生を招聘した。齋藤教授は、県 立南部病院(当時部長村田謙二、現久米島病院 院長)の初代麻酔科部長であり、先生および病 院関係者も再会を喜び感激した会となった。平 成16 年度からは、麻酔科学分野のみでなく集 中治療分野へも寄与できるよう研究会を沖縄県 麻酔・集中治療研究会と改称した。本研究会は 沖縄県の若手医師の学会への登竜門でもあり、 専門医取得前の医師に学会賞(高嶺徳明賞)を 設け活性化を図った。ご存知の先生も多いと思 うが、高嶺徳明は、華岡青洲が日本で初めて全 身麻酔下に乳がんの手術をした1804 年より 115 年も前に全身麻酔で口唇裂手術をしたとの 記録があり、琉大医学部構内には沖縄県医師会 による顕彰碑が建てられている。このことは、 アメリカの医学雑誌Bulletin of Anesthesia History にもセントルイス大学の池田重政先生 により紹介(2011)されている。

平成20 年3 月には、新築された県立南部医 療センター・こどもセンター(部長新崎康彦) で、病院視察を兼ね開催、平成21 年2 月には、 同センター麻酔科部長新崎康彦先生の退職記念 講演会を兼ね、新築の沖縄県医師会館で開催し た。新崎先生から沖縄麻酔黎明期、小児麻酔の 修得、伝達などの貴重な講演を聴き、会員に沖 縄における医療の困難さおよび使命感を強く抱 かせて頂いた有意義な会および懇親会となっ た。その他、新築の沖縄赤十字病院、大浜第一 病院などホテル並みの会場で気持ちよく開催さ れている。

沖縄県麻酔・集中治療研究会の会員数は、 年々増加し150 名近くに達している。その他、 沖縄県麻酔科医会として、沖縄MOF(多臓器不全)研究会、麻酔科学サマーセミナー、沖縄 県敗血症研究会、麻酔の日、沖縄周術期管理セ ミナー、周術期循環管理セミナー、沖縄県ペイ ンクリニック・緩和ケア研究会などかなりの研 究会を開催している。このような活動が、沖縄 県のペインや緩和を含む麻酔科の発展だけでな く、医療の質向上に寄与していると考えてい る。一般演題としてもかなり興味深い発表が多 いのには毎回驚かされるが、この貴重な症例を できるだけ文章で残して沖縄から発信していく ことが、沖縄県の麻酔科医会の課題であり、さ らなる発展に繋がるものと考え活動している。

沖縄での活動などが認められ、日本臨床麻酔 学会第31 回大会を、2011 年11 月3 日(木)〜 5 日(土)の3 日間沖縄コンベンションセンターに て開催させて頂いた。大会のテーマは、「臨床麻 酔の新たなる飛躍―アウトカムの向上を目指し て―」とした(写真1)。現在、Outcome-Based Medicine に基づく質の高い臨床麻酔が求められ ている。アウトカム向上に関する講演やシンポ ジウムを中心に企画した。特別講演では、若き 研究者上田泰己氏と柳沢正史氏に生命予後に影 響する遺伝子を含め最新知見を話して頂き、若 い麻酔科医に研究に対する新たな興味と情熱を 与えて頂き、大好評であった(写真2)。1,000 題 を超える一般演題を頂き、3,000 名を超える会員 に参加して頂いた。企業など関係者を含めると 5,000 名近くの参加者を得て盛会裡に終了でき た。中国からも70 名の医師に参加頂き、タクシ ー業界でこんな人の多い会ははじめてだったと 今も噂になっていると最近タクシーに乗った教 室員が笑顔で話してくれた。沖縄への経済効果 も大きかったと喜んでいる。協力して頂いた麻 酔科医会の先生方に感謝する。

最後になるが、沖縄県医師会からは、麻酔科 医会に対して毎年貴重な助成金を頂き、支援し て頂いていることに心より感謝申しあげるとと もに、県医師会と協力・連携して、地域医療の 向上に寄与できるよう活動していきたいと考え ている。今後とも御指導の程よろしくお願い申し上げる。

(写真1)

(写真1)


(写真2)

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