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女性医師支援センター事業九州ブロック会議

銘苅桂子

沖縄県医師会女性医師部会副部会長
銘苅 桂子

去る12 月4 日(日)鹿児島県医師会館に於 いて、日医女性医師支援センター役員並びに九 州各県において積極的に女性医師支援に取り組 まれている先生方の参加の下、標記連絡協議会 が開催された。

協議会では、各県医師会の女性医師支援にか かる取り組みについて、それぞれ報告があり意 見交換を行った。以下に会議の模様を報告する。

挨 拶

鹿児島県医師会会長 池田 哉

今回初めて鹿児島県医師会担当の下、九州ブロック会議を開催させていただくことになった。

本会議は、昨年度より北海道・東北・関東・ 甲信越・近畿・中四国・九州の各ブロックで開 催され、いずれも活発な意見交換が行われたと 伺っている。

女性医師支援は、各医療機関が独自で行うに は費用の面で限界がある。保坂常任理事のご尽 力により、今年度も国の予算から女性医師支援 事業の補助金として1 億5 千万円もの予算を獲 得していただいたと聞いている。保坂先生の努 力には心から敬意を表すると共に、今後ともご 活躍を期待する。また、現在の予算を基に、 様々な支援事業が展開されているが、医師会や 行政が一致協力して、これらの事業を実施する ことが医療機関の負担を減らすことになる。今 後も女性医師支援が継続できることを深く感謝 している。

鹿児島県医師会では、平成14 年度より女性 医師支援を事業計画に掲げ、さまざまな問題に 取り組んできている。平成22 年4 月に女性医 師支援室を立ち上げた。また、医師協同組合で は医療従事者無料相談所を運営している。この 他、ドクターバンクかごしまと日医女性医師バ ンクとの連携により、積極的な女性医師支援に 取り組んでいる。

本日は、各県より特色ある報告がなされると思うので、是非参考にさせていただきたい。

日本医師会女性医師支援センター長 羽生田 俊

本会議は、全国7 つのブロックで開催され る。先日中部ブロックで開かれた会議に参加し たが、非常に活発な意見が出たと同時に、これ からの女性医師支援センター事業にいろいろな 示唆を頂いた。

本日は九州から沖縄まで多くの先生方に集ま っていただいた。九州だからこそ出る意見もあ るかと思う。全国的な支援事業ではあるが、そ れぞれの地域で特色を活かした支援が出来るよ う心掛けている。

担当がパワフルな保坂常任理事であるので、 皆様から叱咤激励していただき、本支援事業が 盛んになることをご期待申し上げる。

日本医師会常任理事 保坂 シゲリ

ブロック別会議を各地で開催させていただ き、本日で4 回目となる。全国の皆さんが励ま してくれるお陰で、これからも頑張っていきた いと思う。

先程、池田会長から過分な言葉をいただいた が、来年度予算についても厚労省の概算要求で は、通常一割カットで要求されるが当事業に関 しては増額で概算要求が出ている。国の予算編 成時に少しばかりカットされるとしても、今年 並みには確保できるだろうと考えられている。 来年も安心して各県にお願いが出来るものと思 うので、引き続き、ご協力をお願いしたい。

報告・協議事項

1)日本医師会女性医師支援センター事業について

鹿島直子日医女性医師バンク西日本センター コーディネータよりみだしセンター事業の活動 について報告があった。

日本医師会女性医師支援センターでは、女 性医師の活躍を支援すべく各種事業を展開している。

1)日本医師会女性医師バンクによる就業継 続、復帰支援(再研修を含む)をはじめとし て、2)都道府県医師会等との共催により、「女 子医学生、研修医等をサポートするための会」 等の講習会を開催し、啓発活動に努めている。 3)各都道府県医師会での女性医師の相談窓口の 設置促進や、4)本センターと地域との双方向に よる情報交換を目的として、ブロック別会議を 開催している。また、5)育児中の医師の学習機 会の確保を目的として各医師会が主催する講習 会等への託児サービス併設促進・補助を行って いる。この他、6)女性医師支援における広報活 動の一環としてキャリア支援のためのDVD の 作成を予定している。また、7)昨年7 月29 日 より女性医師支援センターのホームページを開 設した。これまで7,593 件のアクセスがある。 8)ホームページの充実に向けて女性医師の就労 環境の改善や健康支援等の様々な支援情報配信していきたい。

なお、女性医師バンクの運営状況は、平成 19 年1 月の開設以来、就業実績件数は284 件 (就業成立268 件、再研修紹介16 件)となって いる。今年度300 件を目指している。

その後、各ブロックコーディネーターの自己紹介が行われた。

○「『2020.30』推進懇話会」の開催(1/27)について

保坂常任理事よりみだし懇話会の開催趣旨について説明があった。

国が2020 年までに指導的地位に女性が占め る割合を30 パーセント程度にするとの基本計 画を閣議決定していることに付随して、各団体 でも積極的な改善措置をお願いしたいとの呼び かけがあった。

日本医師会でも検討した結果、本会でも「女 性一割運動」として、「2020 年に30 %」を目指 す積極的改善措置(ポジティブ・アクション) に関する取り組みを進めていくことになった。

具体的には、1)平成24 年度までに、委員会 委員に女性を最低1 名登用。2)平成26 年度ま でに、理事・監事、常任理事に最低1 名登用 し、役員の女性の割合を一割に増やすことを数値目標として掲げている。

本件については、先般、各県に委員の推薦を依頼している。

数値目標を達成するために、女性医師会員に 日医の組織・運営・活動に関わる理解を深めて いただき、将来日医の活動に参加して頂くこと を目的として、「2020.30」推進懇話会を開催 することに決定した。

開催期日は、平成24 年1 月27 日(金)日医 会館にて開催する。委員は各都道府県医師会か ら推薦された先生方、男女共同参画委員会委 員、その他執行部からの推薦もいただいており 約90 名程度になる予定である。また、来年度 以降は年に3 回程度会合を開く予定である。

○女性医師支援事業連絡協議会の開催(2/17)について

女性医師支援事業連絡協議会を年1 回様々な テーマで開催しているが、本年は2 月17 日 (金)に開催する予定である。今回のテーマは 例年、各都道府県医師会等との共催より開催し ている「女子医学生、研修医等をサポートする ための会」について、双方向の情報交換を計る べく、事例発表を中心に協議会を開催する。既 に10 県から報告したいとの希望があり、当該 県へ事例発表を頂く予定である。

2)各県における女性医師支援の活動報告について

女性医師支援にかかる取り組みについて、それぞれ報告があった。

福岡県医師会理事 佐藤薫

福岡県下の取り組み状況について報告する。

福岡大学では「先輩医師と話そう」をテーマ に、勤務中の子育て先輩医師に講演をお願いし た。講演会には男子学生の参加もあり、勉強に なったとの感想があった。

九州大学のきらめきプロジェクトでは「どう する結婚、そしてその後の夫婦の絆と仕事」を テーマに、弁護士を招き「離婚裁判からみえてきた結婚の真意」と題した講演を行った。ま た、パネルディスカッションでは「そこが知り たい夫婦の本音」として4 組の夫婦を招き本音 トークを行った。また、きらめきプロジェクト では柔軟な勤務形態が功を奏し、非常に高い評 価を得ている。

女性医師に関わる委員会として男女共同参画 連絡協議会を設けているが、今回、臨床研修病 院から代表者に参加いただきミニレクチャーを 開催した。今後は臨床研修病院への出張講演会 を検討しており、研修医を取り込んでの活動を 活発化していきたい。

今後の予定として、福岡県医師会では、内閣 府政策統括官の村木厚子氏を招き基調講演を予 定している。

その他、育児支援では、宗像医師会病院で看 護師のための院内保育所を地域の女性医師にも 開放しようという動きがある。病児保育が重要 であるが、費用の面で難しく行政との連携が必 要である。

佐賀県医師会副会長 松永啓介

本県では、佐賀県医師会ホームページに日医 女性医師バンク、日医女性医師支援センター、 佐賀県女性医師等就労支援事業等各ホームペー ジとリンクを張っている。また、これまでに 「女性医師の勤務環境を整備に関する研修会」、 「女子医学生・研修医等をサポートする会」、 「子供をもつ女子医学生・結婚出産を経験し復 職された女性医師・病院管理者との懇談会」等 を開催してきたが、今回初めて講演後のティー パーティーを開催し、非常に盛り上がった。

女性医師相談窓口事業では、今年1 月より佐 賀県女性医師等就労支援事業を活用し、佐賀大 学に女性医師相談窓口を設置した。求職者、離 職者に対して希望する診療科にあわせた実践的 研修をコーディネートすることや、再研修を受 けやすくするための託児施設等の子育て支援情 報の提供等が中心に行われている。また、ホー ムページも開設しており、離職中の医師(男女 問わず)に対し、再就業へ向けた情報の提供や復職に向けた講演会の紹介、ベビーシッター、 保育施設の相談等を行っている。また、医療施 設側からは就職斡旋の相談を受けている。

長崎県医師会常任理事 森崎正幸

長崎大学病院にワークライフバランスセンタ ーを設置することがほぼ決定しており、院内に 医師の相談窓口を設置する予定である。

また、昨年より女子医学生・研修医をサポー トする会を開催しており、今年度は、産婦人科 医で夫婦共に留学された医師の「ベルギー生活 と海外での出産体験談」と「将来医師をめざす みなさんへ」と題する講演を予定している。託 児サービス等については、昨年度から日本医師 会の補助を受け、講習会等での託児サービスを 行っている。

熊本県医師会理事 坂本不出夫

県医師会はあまり活動していないのが現状で ある。実際活発に活動しているのは市医師会で ある。本日は、国保水俣市立総合病院医療セン ターで国の補助事業(建築費の半額補助を得 る)として院内保育所を設置したので、その概 要について報告する。

院内保育所は、平成21 年4 月に県の補助で 定員20 名の院内保育所を開設した。保育所で は年齢に応じた食事(アレルギー、離乳食にも 対応)と、保護者による直接授乳が可能であ る。基本的には午前8 時から午後5 時45 分ま でだが、延長保育も可能で夕食にも対応してい る。延長保育の追加料金は不要で、土日祝祭日 も対応している。また、一時保育、一日保育も 可能である。

この他、内科、小児科による定期的な検診も あり、体調不良の際は保護者の空き時間を利用 して小児科の受診が可能となっている。

院内保育所の設置は、看護師の確保対策にも非常に効果がある。

また、女性医師に配慮した住宅整備を行い、 市内4 ヶ所に医師専用住宅を38 戸分、3 年計画 で進めており、今年度は10 戸の住宅の完成を 目指している。整備にあたり女性医師から提案 のあった内容(1 階は駐車スペース、2 階に住 居空間)を取り入れた。

勤務条件に関する配慮として、出産後1 年以 内は当直、宿直免除及び時間外勤務にならな いよう担当患者数を制限する等の配慮を行っ ている。

女性医師は情報交換が活発なので、口コミで これらの支援が広がり、現在では(男女合わせ て)45 名の常勤医師が勤務している。

大分県医師会女性医師の会会長 谷口邦子

本県では女性医師支援対策の一環として、短 時間正規雇用支援事業を行っているが目標5 医 療機関に対し、現在のところ1 医療機関のみに 留まっている。また、病院内保育所運営事業も1医療機関のみである。

中小企業子育て支援助成金事業の方が利用しやすいようで、こちらを利用している医療機関が多いようである。

大分大学では、平成22 年度文部科学省科学 技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」 事業に、「地域社会で育む『輝く女性研究者』 支援」が採択され、同年7 月26 日より大分大 学女性研究者サポート室が設置された。主な支 援内容は、1)キャリアサポート、2)環境サポート、3)情報サポート、4)地域連携サポートを行っている。

大分県医師会ではこれまで女性医師への研修 等を行ってきたが、今年度は管理者向けのアン ケート調査を実施する予定である。また、大分 大学が独自に女子医学生対象の研修を行ってい るため、医師会では研修医をターゲットに企画 していく予定である。

この他、保育支援に関しては、県下162 の病 院中、29 施設で院内保育所を設置していた。 県の補助金以外で設置したのは11 施設(21 世 紀職業財団)であった。

宮崎県医師会事務局地域医療課長 小川道隆

本会では、平成21 年10 月より女性医師相談窓口を県医師会内に設置し、週2 回相談員(女 性医師)による面談を行っている。また、研 修・講習会時の託児所サービスを県医師会館託 児ルームで行っている。保育者は業者(NPO 法人)からの派遣保育士に依頼している。費用 は無料で医師会負担である。

また、本県の臨床研修病院(大学病院を含む)6 ヵ所のうち、3 病院に保育施設が設置されている。他に無料託児サービスと女性医師メーリングリストの案内を、県医師会会報及びホームページで年4 〜 5 回ほど掲載している。メーリングリストでは活発な情報交換が行われている。

宮崎大学清花アテナ男女共同参画推進室室長
補佐 清水鈴代

宮崎大学では、男女共同参画を推進すべく、 本年10 月より「清花Athena 男女共同参画推進 室」を設置(大学独自予算)した。これまで本 学では平成20 年度から3 年間、文部科学省科 学技術振興調整費による女性研究者支援モデル 育成事業に取り組んできた。これらの経験を生 かし、今後、男女共同参画に関する幅広い取り 組みを進めていきたい。

また、平成23 年8 月より、内閣府「地域医療 における男女共同参画連携支援事業」に採択さ れ、宮崎県・宮崎市・宮崎県医師会・宮崎大学 の4 者が連携し「地域医療現場における働きや すい環境を考える会」を設置した。事業のコン セプトは、医療人、地域、自治体による「メデ ィカルトライアングル」と称した検討会等を開 催している。主な取り組みとして、女性医師を 対象としたヒアリング調査の実施やコミュニテ ィサイトの設置、シンポジウムの開催等である。

沖縄県医師会女性医師部会副部会長 銘苅桂子

沖縄県女性医師部会の主な活動として、年1 回の「女性医師フォーラム」と女性医師側から の意見や要望を伝える「病院長等との懇談会」 を開催している。この他、女性医師バンクの設 置や大学病院との連携等を行っている。また、 本部会専用のメーリングリストには現在240 名 が登録している。

病院長等との懇談会において、女性医師の環 境改善は進みつつあるものの、「それでも女性 医師側が辞めてしまう」との意見が複数あっ た。それをうけて、今年度の女性フォーラムで は、女性医師が果たすべき責務とは何か、とい うことを考えてその切り口の一つとして「専門 医をめざそう」をテーマに多くの参加者により 議論が行われた。

今回フォーラムを開催するにあたり、事前に 医療機関に出張するプチフォーラムを開催し、 研修医の生の声を聞いたが「日々を過ごすのに 精一杯で、専門医について全く考えていない」 「取得方法もわからない」という現状であった。 フォーラムでは、診療科毎にテーブルを配置 し、21 の専門医が指南役として、男女を問わ ず、世代、立場の異なった参加者等で意見交換 を行った。また大学病院以外での専門医の取得 について、今後のテーマとして揚げられた。

鹿児島県医師会女性医師支援室長 鹿島直子

本会では、医師確保を目的として「鹿児島県 医師会医師不足対策基金」を設立している。当 基金は、鹿児島県内で研修する一定の要件を充 たした医師に対し研修期間中の生活支援を助成 している。

また、本県では臨床研修医確保対策の充実・ 強化を図るべく、県内の臨床研修病院及び関係 機関が協力し、「鹿児島県初期臨床研修連絡協 議会」を設立しているが、その中で女性医師の 復職研修も行っている。

本年7 月、医師をめざす中・高校生を対象に 「医師である生きがいと使命」と題した公開講 座を開催した。当日は女子高校生等300 人が参 加した。全国の医師会の中でも初めての試みで あったが、生徒たちは熱心にメモをとっていた。

各県の活動報告のあと、意見交換に入った が、本県においては復路便の都合により、意見 交換を行うことができず退席した。

印象記

沖縄県医師会女性医師部会副部会長
銘苅 桂子

医師不足対策の一端として、女性医師支援活動が活発化している昨今、女性医師支援事業に対 する国の補助金として、1 億5 千万円もの予算が厚労省から日本医師会に割り当てられていると の事です。その内訳は、日本医師会女性医師バンクの運営、女性医学生・研修医をサポートする ための講習会の開催、女性医師の現状を題材にしたCM ・DVD の作成などとされています。今 回の九州ブロック会議への派遣費用や本県における年一度の女性医師フォーラムの託児所等の運 営として30 万円を限度に補助をいただいておりますが、そのような大きな税金が毎年女性医師支 援のために使われていると感じることは、あまりなかったように思います。しかし振り返ってみ ますと、ここ数年の女性医師をとりまく環境改善に、日本医師会女性医師支援センターの果たし た役割はとても大きいのではないかと思います。私たち沖縄県医師会女性医師部会もゼロからの スタートで、何から手を付ければいいのか、女性医師は何を求めているのか、暗中模索の状態で ありました。女性医師の置かれる立場は多様であり、それに応じたニーズも多様であるため、対 策を一元的に講じるのは困難であります。そのような中、女性医師支援センターは、最も重要で あると思われる「女性医師を取り巻く環境」についての啓発活動をされ、少しずつですが多くの 医師・患者さんの意識改革が行われてきているのではないかと感じます。お腹の大きな産婦人科 女性医師が夜遅くまで働いるCM をごらんになった方も多いと思います。女性医師への直接的な 支援のみならず、女性医師をとりまく病院、医師、患者さんなどの「サポートをしてあげよう」と いう意識の変化が、間接的に女性医師の環境改善につながっていると感じます。

今回のブロック会議でも、各都道府県が自発的に、積極的に女性医師支援を行い、その先に男 女が共同して働きやすい医療現場にならんことを共通の認識として確認しました。家庭や育児と の両立に悩み、医師を辞めることを考えている女性医師には、国をあげてこれだけの組織が動き、 税金が投入され、辞めないよう支えるサポートがあることを知ってもらえたらと思います。そし てそのサポートを上手に利用し、一時期は仕事を制限せざるを得ない期間があるとしても、それ を乗り越え、次の世代の女性医師をサポートする立場に成長してもらえたらと願います。そのよ うな女性医師が現場に増えたとき、「女性医師支援」という言葉は不要になるのかもしれません。