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当院電子カルテにおける医療安全システム

伊泊広二

沖縄医療生活協同組合
沖縄協同病院
医療安全管理部長 *伊泊 広二
リスクマネージャー 玉城 淳子

当院は1976 年に開院し2009 年の新築移転を 経て現在、一般病床280 床の急性期病院です。

1999 年に某メーカーのオーダリングシステ ムを導入しました。その後、独自開発の電子カ ルテでオーダリングと連携、制御できるシステ ムを構築し、外来診療へ導入しました。

2007 年にはオーダリングと電子カルテの統 合版を開発し、2008 年には病棟カルテを電子 化しました。

システムは医師を始めとする当法人内のスタ ッフで開発を行っており、実際に使う医療者の 意見が多く反映されています。

医療安全に関しても日々、職員の安全意識か ら提案されるシステムの作成、改良を行ってい ます。

以下にその一例を紹介します。

1. 当院電子カルテでの安全対策

1)使用禁忌薬の処方防止

副作用があることを確認している薬品を事前 に登録しておきます。(図1)

図1

図1 :禁忌薬品の登録

禁忌登録された薬を処方しようとするとエラー表示が出て、処方発行ができません。(図2)

図2

図2 :禁忌薬処方時のエラー表示

2)抗凝固剤・抗血小板剤使用患者の把握と観血的処置時の警告表示

過去63 日以内に抗凝固剤・抗血小板剤が処 方されていると自動的にカルテの基本情報画面 に表示されます。(図3)

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図3 :抗凝固剤使用の表示

その患者に手術や内視鏡などの処置を指示し ようとすると警告表示が出て、注意を促しま す。(図4)

図4

図4 :抗凝固剤・抗血小板剤使用者への手術・処置指示時の警告

3)インシデント報告の電子化

院内にある約400 台のカルテ端末より報告が 行われると、即座に当該部署長や安全管理室な どで確認ができます。(図5)

図5

図5 :カルテ端末からのインシデント報告

報告を確認し、対応内容や改善策などを部署 長、医療安全管理室、管理部で追加記入します。

また、病棟ではノート型カルテ端末を使用し ベッドサイドで注射開始前の確認を行っていま す。薬剤に貼られているラベルと患者リストネ ームバンドをバーコードリーダーで照合した 時、万が一患者間違いがあると、カルテ画面に エラー表示がされます。

また、注射施行者のID を読み込むことが実施記録となり正確な施行時間が残ります。

薬剤についてはその他に処方の上限量設定、 重複投与時の警告、安全重視薬のアクセス制限 などのプログラムをしました。

輸血についてはオーダーから製剤発注管理、 実施前の照合と輸血中のバイタルサイン測定な ど一連の作業を1 つのシステムにまとめました。

その他、予防接種管理として予約システムか ら受注発注し、製剤のロット番号登録、払い出 し時のチェックリスト印刷などを行っています。

このようにコンピューターの有意性を大いに活 用し、ヒューマンエラーの防止に努めています。

2.今後の課題・展望

患者間違い防止として注射薬のバーコードチ ェックを行っていますが、投与速度や投与時間 の間違いが時々インシデント報告として上がっ てきます。

バーコードでエラーが出なかったことからそ の他、重要点の確認意識が薄くなった感が伺え ます。システムに頼るだけではなく、人の目で 確認すべき点があることは忘れてはいけません。

また、今後は普段、患者がテレビ視聴に使っ ているベッドサイド端末を利用して、スタッフ と患者向けに安静度や予定検査の表示、安全学 習教材の放映などを検討中です。

現在、一部の役職者に権限があるインシデン ト報告内容閲覧を全職員ができるようにしてほ しいとの希望が聞かれるようになりました。

全体の安全文化醸成のために、分かりやすい 内容表示と個人情報の保護を重視した公開用イ ンシデント事例システムの作成案も出ています。