長嶺胃腸科内科外科医院 長嶺 信夫
写真は今年5 月、チベットの標高4,900m に位置するチョー・オユー・ベースキャンプからネパール方向を撮影したものです。
中国の圧政に苦しむチベット人がネパールを経由してインドに亡命するルートの一つだと、チベット人 ガイドが耳元で囁いてくれました。亡命は中国の警備隊の活動がにぶる厳冬の1 月ごろ決行され、チベッ ト人しか分からないヒマラヤ越えのルートがいくつもあるそうです。ベースキャンプには中国の警備隊が 駐屯し、近くの丘の上にはいくつも監視塔が見えました。ネパールやブータン国境に近いヒマラヤ地方で は厳重な警備態勢がしかれ、パスポート提示を伴う検問がたびたびありました。中東や北アフリカの民主 化要求デモなど政権に都合の悪い情報はチベット国内には入らず、去った6 月25 日から7 月25 日までは 外国人のチベット自治区内への立入りが禁止されました。5 月23 日が中国とチベットの間で強制的に調印 された17 か条の条約締結60 周年で、7 月1 日が中国共産党創設90 周年にあたり、その期 間における騒乱情報の海外流出を警戒してのことと思われました。
写真には写っていませんが、左側にチョー・オユー峰(8,201m)がそびえ、正面の美 しい峰がチョー・ラプサン(6,666m)です。ヤクが荷物を運んでいました。チベットの ことを思うと胸が痛みます。
コメント
広報担当理事 當銘正彦
平成23 年の会報誌の表紙を飾る写真のGrand Prix は、長嶺信夫先生の「自由への道」と決定しました。見 事な一点透視図法で捉えられた画面、その遠く中心に 聳えるチョー・ラプサンは、自ら霊峰の威厳を放ってい ます。この素晴らしい写真の出来映えは、単に光学的な 技術のみならず、ダライ・ラマを擁するチベットの人々 への熱い連帯の発露でもあることが、長嶺先生の解説か らもしみじみと伝わります。長嶺先生は、この写真の提 供と共に、昨年10 月号には「チベット高地における血 中酸素飽和度について」という学術的論説も投稿を頂 きました。長嶺先生にはGrand Prix の表彰に重ね、何 時もながらの会報誌作りへのご協力に、心より感謝申し 上げます。
この会報表紙写真Grand Prix 選考ですが、一昨年まで はプロ写真家の新嘉喜祐司氏の指導の下に行っていたの ですが、昨年8月にご逝去されました。従って今回の選考 は広報委員会独自の作業となりましたが、氏のこれまで のご協力に感謝申し上げ、衷心よりご冥福をお祈り致し ます。