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沖縄、5年

青木陽一

琉球大学医学部附属病院 産婦人科
青木 陽一

新潟から沖縄に来て5 年が経ちました。今だ に「・・しましょうーねぇ。」の表現はすんな り入って来ませんが、最初はなんだろうと非常 に不思議だった、屋根の上の大きな貯水タンク にも慣れ、なくてとても残念だった紅葉と温 泉、これも沖縄は寒くないからいいかと我慢、 納得出来るようになった今日この頃です。この 「沖縄、5 年」を思いつくままに。

『沖縄そば』おいしいですねぇ。特にスープ がおいしく感じ、いつも飲みほしてしまう。「豚 骨+鰹節」は、あっさりしてるんですね。好き な沖縄そば屋は「山原そば」「中村そば」そし て、首里城内のレストランの沖縄そば。聞く人 によって、ひいきの沖縄そば屋さん、全くちが いますよね。来た当初は、新潟燕の背脂ラーメ ン、札幌すみれの醤油ラーメン、喜多方まこと ラーメンが無性に食べたくなったのですが。

『沖縄の台風』この5 年で平日に台風が本島 を通過し、体験できたのは一つだけでした。翌 日その台風直撃という日の午後、うちの医局の 先生達は、「今回のは、今、925hPa だから相 当でかい、明日早朝に上陸するさぁ。明日は病 院が休みになるから、・・・」と病院が休みに なった場合の当直配置等をイキイキと相談して ました。皆の顔が気象予報士に見えました。当 初は台風で病院休みにしなくても(新潟ではあ り得ない)と、高を括っていたのですが、沖縄 の台風は本物の台風ですね。病院、学校、官公 庁等すべて休みにしないと危険だと痛感しまし た。翌日、気象予報士たちの言ったとおり本当 に病院が休みになり、一日中、外の雨風を眺め ていました。雨はそんなに大したことなかった のですが、風は凄い、大きな木が根本からへし 折られ、葉っぱ、小枝は吹き飛ばされ。午前中 は表側からの暴風が強かったので、裏側の窓を 開けて、午後は裏側からの暴風で、表側の窓を 開けて、目の前で台風を直視してました。沖縄 に生育している木はこの猛烈な風に強い木が生 き残っているんですね。つい先日の台風は、地 元の人も驚くもっとすごい暴風だったようです (琉大病院正面玄関の風に強いガジュマルの大 木が倒れた!)が、私、出張中で台風とはすれ 違いでした。

『沖縄の冬』1 月にも初夏のような日が時々 ありますよね。外に出て暑い風が吹いて・・・、 今1 月だよね。なんとも不思議な感覚です。暖 かい中での師走、忘年会、年末年始、新年 会・・・、寒さに凍える中でしか経験してませ んでしたから、これも不思議でした。沖縄で冬 と使っていいのか、寒い時でも晩秋くらいの寒 さかと思います。南風原「ニトリ」のビルが建 築中の頃、そこの看板に「ニトリ、今冬オープ ン」と書いてありました。この「今冬」を最初 見た時、まったくしっくりせず、「今冬」? 沖縄に冬はないから、一生オープンできないさ ぁと思ってました。沖縄の「真夏の石焼いも」、 これも驚きました。福井県で水ようかんを「冬、 こたつで食べる」の逆バージョンでしょうか。 あの暑い夏に琉大病院の正面玄関の脇に車を止 めて、石焼いもを売っているのを見て、どうし てこの暑い夏にと思ったのですが。「木枯らし 吹きすさぶ、焚き火の季節に似合うのが石焼き いも」と思っていましたから。でも石焼いもの トップシーズンの寒い冬を待っていると一生商 売ができないですよね、ここ沖縄では。今は、 沖縄の冬の暖かさに感謝、感激しています。

『沖縄と新潟』今年の元旦に、小雪舞い散る 寒空のもと、新潟市内の白山神社へ初詣に行っ て参りました。この神社にシーサーによく似た 備前焼きの狛犬がいるんです。ここ数年、新潟の冬の寒さに耐えきれず、初詣は遠慮し家の中 に引き籠もっていたのですが、今年は沖縄で二 つの学会・研究会開催を控えていたこともあり 無事の開催をお祈りするため、あの寒さの中を 出かけてまいりました。神社の参道の両脇に出 店が沢山出て、昔ながらの新潟名物「ぽっぽ焼 き」(茶褐色で細長くて、やや扁平な棒状、一 見蒲の穂に似ている。暖かいまま売っていて、 モチモチした食感と黒砂糖の素朴な風味の甘い 焼き菓子。沖縄産の黒糖を使用。)(写真)の店 には、神社境内のなかに全部で4 〜 5 件のぽっ ぽ焼き屋さんがあったのですが、あの寒さにも かかわらず、すべての店で行列ができていまし た。私も新潟に住んで初めてぽっぽ焼きの存在 を知ったのですが、新発田市(新潟市の東20 km に位置します)が発祥(いわゆる町民の焼 き練り菓子として明治後半に考案された)で、 新潟市近郊だけで売られているようです。お祭 りなどの屋台、出店でしか買えないこともあ り、新潟の人はあのぽっぽ焼きが大好きです。 新潟県の新発田市発祥で、なぜ黒糖を使っているのか、不思議です。聞くところによると、沖 縄の「ぽーぽー」、「煎餅(ちんびん)」が新潟 に伝わったとする説(ちんびんの方がぽっぽ焼 きに近いようですが)があるそうです。いわゆ る北前船説で、沖縄のぽーぽー、ちんびんが北 前船航路に乗って、越後の国の寄港地である新 潟港か岩船港あたりに落とされ、近くの新発田 でぽっぽ焼きの原形ができあがり、明治後期に ぽっぽ焼きになったとする説です。北前船にど うやって載ったかが、ちょっと無理があるかも しれませんが、新潟の佐渡が島(北前船の寄港 地になっていました)に佐和田、国仲という伊 良部島にある地名と同じ地名もあり、夢が膨ら む説かもしれません。

ぽっぽ焼き

ぽっぽ焼き

また白山神社の参道に戻りますが、ぽっぽ焼 きのほか、たこ焼き、お好み焼き、バナナチョ コレート、焼きそば等々の店が軒を並べていま した。参拝客の列にならび、そんな出店を眺め ていると、はっと目に飛び込んできたのが、 「沖縄名物サータアンダギー」! の看板。はぁ 〜?驚きです。ちょっと覗いてみると、見た感 じはサータアンダギー、揚げが足りないような 色合いデハある。店で揚げている人は、明らか に新潟顔のお兄ィさん。でも店の板壁に沖縄製 粉のポスター(本物)が貼ってありました。と ても不思議な現象、気持ちでした。沖縄でのこ とを祈願しに行った新潟の神社で、これほど多 くの沖縄由来?沖縄のもの?!に出会うとは。 さらに歩みを進めると、ありました子供達の人 気キャラクターのお面屋さん、どらえもん、ア ンパンマン、ウルトラマン、仮面ライダ ー、・・・えっまさか、「琉神マブヤー」は、 さすがに見つけキレナイッ!