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沖縄漢方医学研究会

仲原靖夫

沖縄漢方医学研究会 前会長(仲原漢方クリニック)
仲原 靖夫

沖縄漢方医学研究会は沖縄県医学会東洋医学 分科会の名称であります。会員は平成23 年7 月 現在85 名。県内の日本東洋医学会会員を持っ て構成されます。昭和62 年設立当初は会員も少 なく、漢方学習の機会も少なかったため漢方医 学研究会は貴重な情報収集の機会でありまし た。ところが最近ではメーカーによる勉強会も 増え、漢方医学研究会の影も薄れてきました。 それでも設立以来、8 月と12 月の二ヶ月を除く 毎月の勉強会は毎年続けてきました。原則毎月 第四火曜日午後7 時30 分から県医師会館二階小 会議室でテキストの輪読を行なっています。勉 強会では基本的には一人ではなかなか勉強しな いようなテキストを取り上げ、持ち回りで講義 を担当してきました。すると勉強会の常連の先 生方は漢方の難しい概念や病態生理についての 理解が次第に深まりますが、途中参加の初心者 の場合は解説の内容が理解できず1 〜 2 回参加 してやめてしまうことが多く、限られたメンバ ーの勉強会になる傾向が強かったようです。

そこで初心者の参加者を増やす目的で入門的 な教材も取り入れながらやるものの、勉強会に 継続して参加する人はきわめて少ないのが現状 です。これは漢方という医学の特殊性にも起因 しているように思いますが、何事においても新 しい分野を開拓し、継続することは骨の折れる ことに変わりはないので仕方のないことかもし れません。したがって少数でも継続することに 意義があると考えてこつこつと活動を続けてい ます。

漢方を勉強するには強い動機付けが必要であ ります。現代医療では西洋医学を一通り修得 し、更にそれぞれの専門分野に進み、専門医の 資格を取ることは必須の要件になってきまし た。漢方の場合、その上で更に漢方専門医の資 格を取らなければなりません。それぞれの分野 の専門医の資格を取得、維持することだけでも かなりの努力が必要であるのに、更に一から漢 方を習得するにはそれなりの強い動機がなけれ ばならないのは当然のことではあります。漢方 を勉強するきっかけは多くの場合、それぞれの 専門分野で診療しているうちに、現代医学で対 応困難な症例を経験して、新たな発想による治 療の必要に迫られ、そんな時漢方に目を向け、 勉強を始めるのではないでしょうか。入門の動 機がしっかりしていると現代医学と全く発想を 異にし、専門用語も異なる漢方医学体系の習得 の面倒さに耐えられますが、興味があるからち ょっと齧ってみようかという程度では途中で投 げ出してしまうのが落ちではないかと思われま す。基礎的な概念が理解できるまでは歯を食い しばって辛抱する覚悟が必要です。そこに漢方 医学研究会の常連のメンバーが簡単には増えな い理由があるように思います。

また、漢方の専門医を目指す人にはいくつか の研修関連施設がありますので気軽に事務局に でも相談してください。小生のクリニックにも 三名の先生が毎週見学に見えています。また勉 強会に参加されたときに、わからない用語や概 念について古参の先生方に質問していただくと 的確な答がもらえると思います。

現在の教材は大塚敬節著『傷寒論解説』、『金 匱要略講話』、『漢方診療三十年』創元社を分担 して解説しています。その間に関連する臨床治 験例などを各科の専門の先生に経験談として話 していただいております。これまでに使用した教材は浅田宗伯著『勿誤薬室方函口訣』、矢数 道明著『漢方処方解説』創元社などです。傷寒 論、金匱要略は漢方の基本になる原典でそれら を勉強することにより漢方的病態認識、薬方な どの基礎力を身につけようとするもので、日本 漢方の基本になっております。

現代医学における治療は常に新しい治験に取 って代わられますが、漢方では後漢の時代の 『傷寒論』の処方が現在の患者さんについても 威力を発揮し、現役で活躍するという、いわば 時空を超える医療が展開されています。そこに 漢方の病態認識の真面目、普遍性があると考え ています。漢方的病態認識を現代医学に翻案す れば現代医療もさらに幅広く患者のニーズに応 えられるのではないかと考え、日々漢方に勤し んでおります。従来の現代医学的治療に限界を 感じておられる先生方には是非漢方の世界をの ぞいていただきたいと思います。

現在の東洋医学分科会の課題は年二回の沖縄 医学会でセッションをもてていないことです。 同じ時期に日本東洋医学会総会と九州支部総会 があり、その準備で手が回らないためです。い つか余裕ができて同じ会場で東洋医学分科会が 持てることを願っております。ただし、7 年毎 の九州医学会総会では東洋医学会九州支部会総 会を東洋医学分科会として参加しておりますの で他の分科会と同じ時期に開催しております。(H23.7.15)

※沖縄漢方医学研究会の会長は、平成23 年8 月23 日より梁哲成先生(やんハーブクリニ ック)へ代わりました。