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平成23年度女性医師の勤務環境整備に
関する病院長等との懇談会

涌波淳子

沖縄県医師会女性医師部会委員
涌波 淳子

去る9 月22 日(木)沖縄県医師会館に於い て、公・民各病院の代表者や事務長等が参加 し、沖縄県福祉保健部からの医師確保対策関連 事業の解説を含め、県内の女性医師の就労支援 体制について、意見交換を行なったので、その 概要について報告する。

参加者は病院代表者が15 名、事務方11 名、 県庁職員2 名、女性医師部会役員7 名の計35 名であった。

議 事

(1)第5 回沖縄県女性医師フォーラムについて 〜専門医取得への今後の対応〜
沖縄県医師会女性医師部会副部会長
銘苅 桂子
銘苅桂子

去る7 月23 日(土)、 本会館に於いて女性医 師フォーラムを開催し たので、簡単にその報 告をする。

近年、施設側の女性 医師就労環境についての理解と取り組みが進む につれ、女性医師側の意識改革も求められるよ うになってきた。そこで女性医師部会では、平 成22 年度の女性医師フォーラムでは「医師を 続けていく為に必要な事とは?」と題して、視 点を女性医師自身に向け、就労を継続するため に、また、責任を果たすために何が必要か議論 を行なった。その結果、「専門医の取得」も女 性医師が医師として責任を果たすことの一つに 繋がるとの方向性を得た。ところが、医局に属 さない若手医師が増えた現在では、男女を問わ ず専門医の取り方についての情報が行き届いて いない現状が垣間見えたので、今年度の第5 回 フォーラムは「専門医をめざそう」をテーマと して開催した。

県内で働く各専門分野の先生方に指南役とし て集まっていただき、各診療科ブースを設け、 将来専門医を目指す医師や研修医、医学生等に 対して、専門医取得に必要な臨床経験や必要年 数など様々な情報提供をしたり、女性医師なら ではの疑問や相談に応えるなど、良いコミュニケーションの時間になった。

(2)医師確保対策関連事業の概要
沖縄県福祉保健部医務課
金城 由桂、太田 雄一郎
金城由桂

1.女性医師等就労支援 事業[補助事業]

医師の再就業の促進 と勤務環境の整備によ る離職防止を図ること を目的として、平成22 年度から女性医師等就 労支援事業を開始した。

本事業は、1)医師の再就業の促進:復職研修 を実施し、離職した医師の職場復帰を支援する 事と2)勤務環境の整備:医療機関において仕事 と家庭の両立ができる働きやすい環境整備の改 善を行う事であり、各医療機関が、これらを目 的として改善施策を実施する際の病院の経費負 担に対し補助するものである。昨年の総額は 11,938 千円で、補助率は国10/県10(H23 年 度現在)となっている。

補助金の活用例は次のとおりである。

当事業は育児、介護、その他やむをえない事 情により、仕事と家庭の両立が難しい男性医師 も支援の対象となっている。

来年度も予算要求しているが、予算そのもの が一律10 %縮減されるという報道もあるため、 これまで同様の運用は難しくなるものと予想さ れる。(今年度は、5 医療機関92 %の内示額。) しかし、当事業が何らかの形で、女性医師支援 のきっかけになればと考えているので、各医療 機関は、ぜひ活用していただきたい。

2.専門医等人材育成・確保事業[旅費]

1.事業の目的・概要

県内の専門医等を育成するとともに、県内に おける専門分野の後進指導を推進するため、専 門研修会等へ出席する際の旅費を支給する。ま た県内へ講師として医師を招聘する際の旅費を 支給する。

2.対象

(1)沖縄本島以外の島に所在する病院及び診療所に所属する医師

(2)へき地診療所に所属する医師

(3)沖縄県内に所在する病院のうち、次に掲げる病院に所属する医師

  • ア へき地医療拠点病院
  • イ 救急告示病院
  • ウ 地域医療支援病院
  • エ 特定機能病院

(4)その他沖縄県における医療の重要課題に 係る業務に携わっている医師で、知事が認め る者

(5)前4 号に掲げる者のほか、講師等として招 聘する必要がある医療従事者

(6)前5 号に掲げる医療従事者と共に研修に参 加する必要がある医療従事者で、知事が認め る者

○該当医療機関へは平成22 年10 月13 日付け 文書にて通知済み。

要綱等は県庁医務課ホームページへ掲載 (H22.10.28 付け)

次の4 事業は、勤務環境が厳しい診療科の医 師に対して、各医療機関から手当を支給するこ とで、処遇の改善を図り医師確保を支援するこ とを目的としている。事業概要は次のとおり。

3.救急勤務医支援事業(救急勤務医手当)[補助事業]

1.目的

この補助金は、二次 救急医療機関等におけ る医師の確保が非常に 困難な状況であるため、 休日・夜間における救 急勤務医手当を創設 (増額)する医療機関に対して助成をすること で、過酷な勤務状況にある救急医療に携わる医 師の処遇改善を促し、医師の確保を支援するも のである。

2.対象医療機関

二次救急医療機関、総合周産期母子医療セ ンター又は地域周産期母子医療センターのう ち、平成21 年度以降から新たに「救急勤務医 手当」を創設、または既存の手当てを増額する 医療機関。

ただし、救急勤務医手当の創設に当たって は、既存の手当の減額を伴う就業規則の改正等 を行ってはならないものとする。

3.補助額

・補助率:対象経費の1/3

・補助基準額: 1 人1 回当たり休日の昼間(13,570 円)

・1 人1 回当たり夜間(18,659 円)

・補助額の算定:

  • 手当額が補助基準額未満の場合 → 補助額= 手当額× 1/3
  • 手当額が補助基準額以上の場合 → 補助額= 補助基準額× 1/3

4.新生児医療担当医確保支援事業(新生児担 当医手当) [補助事業]

1.目的

この補助金は、医療機関におけるNICU(診 療報酬の対象となるものに限る)において、新 生児医療に従事する医師に対して、新生児医療 担当医手当等を支給することにより、過酷な勤 務状況にある新生児医療担当医の処遇改善を促 し、医師の確保を支援するものである。

2.対象医療機関

NICU を設置している医療機関

3.補助対象経費

以下1)と2)を比較して、いずれか低い金額が 補助対象経費となる。

1)出産後NICU に入院する新生児を担当する医師に対し、新生児の件数に応じて支給される手当

2)4 月1 日〜 3 月31 日までの間に担当するNICU 入院新生児数× 1 万円

・新生児医療担当医手当が補助対象となるに は、就業規則や雇用契約書又はそれに類する 書類に手当について明記されていることが条 件となる。

4.補助額

・補助対象経費の1/3(新生児1 人あたり1 万 円× 1/3 が上限)※ NICU 入院初日のみ

5.産科医等確保支援事業(分娩手当)[補助事業]

1.目的

この補助金は、産科医・助産師に交付される 分娩手当の一部を補助し、産科医・助産師の処 遇改善を通じ、分娩施設の人材確保を支援する ものである。

2.対象医療機関

・分娩を取り扱う病院・診療所・助産所(法 人・個人を問わない)

・平日昼間に初産の妊産婦が分娩する場合に、 入院から退院までにかかる分娩費用として、 妊産婦から一般的に徴収する額(分娩(管 理・介助)料)、入院費用、胎盤処理費、処 置・注射・検査料等)が55 万円未満である こと。

※妊産婦が任意に選択できるサービス(記念品・特別料理等)の費用を除く。

3.補助対象経費

・以下、1)と2)を比較して、いずれか低い金額 が補助対象経費となる。

1)産科・産婦人科医師及び助産師に対し、取り 扱った分娩の回数に応じ支払われた手当(分 娩手当等)

2)4 月1 日〜 3 月31 日までの間の分娩件数× 1 万円

・分娩手当等が補助対象となるには、就業規則 や雇用契約書又はそれに類する書類に手当に ついて明記されていることが条件となる。

・産科・産婦人科医師以外の医師(小児科医、 麻酔科医など)や看護師は対象外で ある。

・個人の開設者の場合は、会計処理上、御自分 への給与(手当)を費用として計上できない ため、以下の1)、2)いずれかの場合には、開設者本人についても、他の医療従事者への手 当の支給単価で補助対象経費として申請する ことができる。

1)雇用されている他の産科・産婦人科医・助産 師に対して分娩手当が支給されている場合。

2)現在は他の産科医を雇用していないが、就業 規則等に雇用した場合の分娩手当を支給する ことの定めがある場合。

4.補助額

・補助対象経費の1/3(一分娩あたり1 万円×1/3 が上限となる。)

6.産科医等育成支援事業(研修医手当)[補助事業]

1.目的

この補助金は、臨床研修修了後の専門的な研 修において、産科を選択する医師に対し、研修 手当等を支給することにより、将来の産科医療 を担う医師の育成を図ることを目的とする。

2.対象医療機関

医師法第16 条の2 第1 項に規定する臨床研 修修了後、産婦人科専門医の取得を目的とし て、指導医の下、研修カリキュラムに基づき研 修を受けている者を受け入れている医療機関 (社団法人日本産婦人科学会が指定する卒後臨 床研修指導施設等)。

3.補助対象経費

・以下、1)と2)を比較して、いずれか低い金額が補助対象経費となる。

1)産科研修医手当1 人1 月あたりの実費
2)産科研修医手当1 人1 月あたり50,000 円

産科研修医手当等が補助対象となるには、就 業規則や雇用契約書又はそれに類する書類に手 当について明記されていることが条件となる。

4.補助額

・補助対象経費の1/3(産科研修医1 人1 月 あたり5 万円× 1/3 が上限となる。)

(3)女性医師支援に関するアンケート調査結果並びに
当院(北中城若松病院)における女性医師等就労支援の具体例
沖縄県医師会女性医師部会委員
涌波 淳子

アンケート結果の報告

本年8 月中旬、県内各病院(公的病院含む) 並びに琉球大学医学部附属病院各診療科を対象 に女性医師支援に関するアンケート調査を実施 した。(回答率は68.8 %)

【女性医師数】常勤の15 %、非常勤の25 %、 研修医の30 %が女性医師である。この結果よ り、今後ますます女性医師の割合が増えていく と想定され、これらの研修医をきっちりサポー トしていかなければ、将来の病院の医師不足は 更に厳しさを増すと思われる。

【完全休職者】昨年度実施のアンケート結果と も照らし合わせると、おおよそ毎年20 名前後 の医師が完全休職に入っている。しかし、復職 の目処が立っている医師も多く、何とか復職さ せている現状が見える。

【院内保育施設設置の有無】平成21 年度のアン ケート結果と比較して、保育所設置施設は増加 している。(H21 年度: 43 施設中12 施設、 28 %、H23 年度: 77 施設中25 施設、32 %) また、病児保育実施の有無に関しても、平成 21 年度に比べ、実施数は増加している。(H21 年度: 43 施設中1 施設、2.3 %、H23 年度: 77 施設中4 施設、5 %)これらの結果から環境 整備は、少しずつ整ってきていると感じる。

北中城若松病院における「女性医師等就労支援」の報告

院長に就任して10 年になる。これまで実施 してきた女性医師支援について紹介する。これ らは補助金のある無しに関係なく行なってきた ものであるが、昨年幸いにして県が実施する補 助事業を受けることができ、一部充当すること ができたので、それも含めて紹介する。

(1)男女問わず柔軟な勤務時間制:当院は、入 院機能が中心で、外来専属のパート採用は難し いが、週20 時間程度の勤務であっても、持て る時間を最大限に活用し、後述するカバー体制 で、それぞれが、きちんと医療を提供できるよ うに配慮。

(2)急な休みにも対応できるカバー体制:女性 医師が多いため、通常の代診体制では間に合わ ず、第3 代診まで入れ込んだ代診表を作成。病 棟毎の急変の確率やカバーする医師の受け持ち 患者数および不在率を考慮し、負担が偏らない ように配慮したり、非常勤医師であっても、支 えあい精神を持ってもらうために、常勤医師が 休んだ場合の第一代診として組み合わせること で、休む医師側の精神的負担感を軽減するよう に心がけている。

(3)日直・当直のサポート体制:県内外からの 日直医・当直医の確保をしたり、当院医師が日 直あるいは当直を6 回以上行った場合は、日当 直料に追加料金を支給。また、子育て中の医師 が日直をする時には、臨時で保母さんを採用。 昨年度は、県外からの日直医・当直医の航空券 代や当直料の上乗せ料金、保母さん費用に補助 金を活用させていただいた。

(4)給与のメリハリ:どの程度働けるかを本人 と相談して、給与にメリハリを付け、給与基準 をオープンにすることで、短時間勤務者の申し 訳なさや多くカバーに入る医師の精神的肉体的 なストレスの解消につながるように配慮。

(5)定期面接の実施:年に2 回院長と定期面接 を行い、それぞれの医師の諸事情の把握に努め ている。また、その中で小さな個人目標をたて てもらい、モチベーションの維持・促進に努め ている。

(6)年度末ボーナス:各関係部署の管理者から の評価に加え、自己評価や院長評価、実際の数 字的評価(患者数、勉強会開催など)を反映さ せて、特にチーム貢献度を評価。

院長は相談役でもあり調整役でもある。大変 な面も多々あるが、このようなことを通じて、 2001 年8 月院長就任当時、内科医が7 人(女 医3 人)であったのに対し、2011 年7 月には 12 人(女医6 人)と医師を確保することができ、医療の質も上がってきたと感じる。これら のことは、各施設の医療提供体制や周辺環境で 異なるものだが、急性期病院には急性期病院な りの、慢性期病院には慢性期なりの強みと弱み があり、今後、ますます女性医師の割合が増え る事を考えるとそれぞれの施設に合った工夫 を重ね設定していく事しかないと思われる。

<追加議事>

国立病院機構琉球病院における「女性医師就労支援事業」の報告
国立病院機構琉球病院 副院長
福治康秀先生
福治康秀先生

昨年度女性医師等就 労支援事業を活用した 実績について次のとお り報告があった。

1.取組内容

・育児休業、育児短時間 勤務制度の活用

2.具体的な内容

・育児短時間勤務制度等の活用に伴い代替医師 1 名を増員し、並びに医局事務補助者1 名 (非常勤)及び病棟担当事務補助者1 名(非 常勤)を配置して医師の負担軽減を図った。

3.取組にかかる負担等

  • 費用:人件費として医師1 名に係る給与費 11,860,479 円
  • 医局事務補助1 名(非)に係る給与費 1,455,397 円
  • 病棟事務補助1 名(非)に係る給与費 1,243,507 円
  • 法定福利費(事業主負担分)として 2,466,570 円
  • 合計17,025,953 円の負担を要した。

4.実施結果

・女性医師のライフステージに応じた勤務体制 の確立及び医師の医局並びに病棟における事務的な負担軽減に繋がった。

5.評価・実施効果

・当院は、医師総数15 名中7 名の女性医師を 採用しており、4 名が既婚でうち2 名が育児 休暇中で1 名が育児休暇より復婦している。 4 名の既婚医師は当院就職後に結婚している。

・出産後の医師の業務環境は厳しい状況が続く が、当院では、女性医師の子育て就労支援を 強化することで、女性医師が働き続けやすい 環境をつくることが出来た。

意見交換

フリートーキング形式にて、意見交換を行った。

医師確保対策関連事業予算について

依光たみ枝部会長(県立八重山病院副院長)

依光たみ枝部会長

女性医師等就労支援 事業における「医師」 の定義について、後期 研修医や非常勤も含ん でいるか。






金城由桂(医務課) 研修医については今 のところ想定していない。本事業の目的は、勤 務期間に定めがない雇用契約や雇用形態を援助 する事であり、今のところ正規雇用者を対象と して考えている。しかしながら、病院によって は様々な雇用形態があると伺っているので、具 体的に事例をあげて頂ければ、国へ確認してい きたい。後期研修医については、確認し後日改 めて報告する。

仁井田りち副部会長(南斗クリニック院長)

同事業における来年度の実施予定は。

金城由桂(医務課) 来年度も国の補助があ る限りは可能であると考えている。但し、現在は 補助率が10/10 となっているが、その内の半分は 再生基金を活用しているため、26年度以降は、国の予算としては1/2 になる可能性が強い。

伊波久光副院長(県立精和病院)

伊波久光副院長

専門医等人材育成・ 確保事業について、精 神科領域には指定医制 度があるが、その研修 でも当該事業が利用で きるか。






金城由桂(医務課) どのような研修会なの か分かる資料を事前提示いただければ、予め審 査の上、返答したい。因みに、どの申請に関し ても事前に情報提供をいただいた後、審査する 手続きを取っている。

各医療機関の就労支援体制について

西巻正副院長(琉球大学医学部附属病院)

西巻正副院長

本院では、前院長の時 代から女性医師支援につ いては大きな努力目標の 一つとして掲げ、その方 針で進めている。実際に は専門研修センター内に 働く場の環境支援部門を 設け、そこを窓口に支援業務を行なっている。こ れは大学病院の特徴だが、妊娠や出産、育児など で、支援が必要な女医の多くは医員(非常勤)で あり、社会的に弱い立場の人たちである。行政も その辺りを考慮して、立場の弱い非常勤のサポー トも是非考えて欲しい。



大屋祐輔センター長
(琉球大学医学部附属病院卒後臨床研修センター)

大屋祐輔センター長

本研修センターでは、 専門医取得を目指す医 師をサポートするための 体制を構築している。 女性医師にフィットし た柔軟性のあるプログ ラムを作っている。将来的には、シミュレーションセンターの活用等 も考えたい。これまで10 数名の利用実績があ る。また、復帰相談等にも応じ、沖縄県全体の 女性医師支援の部署としても手伝っていきたい。



石川清司院長(国立病院機構沖縄病院)

石川清司院長

当院では、公に認め られる臨床研究部を作 りたいという方針によ り、臨床研究のみで良 いという条件で毎年若 干名の医師を採用して いる。学会発表や論文 等、好きな勉強だけで良いとしている。女性医 師にとっては、働きやすく、専門医取得の最短 コースにもなる。学会発表も全く制限していな い。旅費も全て支給している。




中山朝行院長(南部病院)

中山朝行院長

女性医師支援の取り 組みについて勉強に参 った。当院での就労対 策として唯一取り組め ているのは、今年7 月 から始めた院内病児保 育である。男女問わず 全職員を対象としている。今後の目標は、院内 保育所の新設である。





松本強副院長(豊見城中央病院)

松本強副院長

当院の全体医師数は 128 名おり、常勤医84 名の内、女性医師が 15 %を占めている。ま た、研修医は44 名いる が、初期研修医の45%、 後期研修医の32 %が女 性医師である。

当院は、女性医師に対して働きやすい勤務環 境を心がけている。例えば、勤務時間の調整、 当直免除、休憩室完備、学会は演題があれば回数の制限はない。専門医取得に関しても、研修 指定病院への出向も随時許可している。産休な ども取りやすい環境にあると思う。また、院内保 育所も設置しており、女性医師も利用している。

また、育児・介護休業法の改正以前から夫婦 両名が医師の場合、男性医師の育児休業も認め てきた実績もある。

大山朝賢院長(沖縄メディカル病院)

大山朝賢院長

涌波先生の報告にあ った給与への反映につ いては、男女問わず実 施しているのか。(回 答:実施している)






諸見川純副院長(沖縄協同病院)

諸見川純副院長

当院は、8 5 名中 2 2 % が女性医師であ る。特徴としては、小 児科に女医が多く9 人 中5 人いる。また、研 修医には専門医を取得 するよう促している。 子育て中の医師のために、時間短縮の勤務形態 (2 名)を採用している。病児保育は既に始め ているが、今後、院内保育の設置を目指してい る。しかしながら運営費の問題もあり、行政的 に援助があればありがたい。



良英一院長(沖縄赤十字病院)

良英一院長

当院でも家庭の事情 で日勤しかできない医 師や、当直ができない 医師もいる。昨年もこ の会で同じ事を伝えた が、県内全体として勤 務医そのものが足りな い現状だと思っている。女性医師はどの病院で も遠慮せず自身の希望する勤務形態を提案して 欲しい。引いては、それが勤務医の環境改善にも繋がる。




糸数功院長(糸数病院)

糸数功院長

最近は女医を希望す る患者が増えている点、 また、40 歳以下の産婦 人科医の7 割が女性で ある点を踏まえると、 今後女性医師を雇用す る機会を積極的に考え ていかなければならない。当院の理事長は5 年 前から院内保育所の設置を考え、場所は既に確 保しているが運用方法について検討中である。




上里忠正副院長(天久台病院)

上里忠正副院長

30 年前に保育所を運 営していたが、経営が うまく行かず廃業した 経緯がある。現在、当 院では、男女関係なく、 なるべく学会に参加さ せている。また、専門 医取得の際の出張費用も病院が負担している。 今のところ女医からも不満の声はないと思う が、女性医師の勤務環境については、今後いろ いろな問題が出てくると思うので、良い職場環 境を目指し勉強していきたい。



洲鎌則子副院長兼看護部長(海邦病院)

洲鎌則子副院長兼看護部長

育児期間中は、民間 病院の方が先生方のニ ーズに柔軟に対応でき ると考えているので、 子育て期間中は、民間 病院に目を向けて貰え たら良いと思う。当院 では女性専用の医局があるが、残念ながら未だ 利用されていない。また、小児デイサビースも あり安心して働ける職場環境がある。




上田裕一理事長(もとぶ野毛病院)

上田裕一理事長

この数年、ナースの 就労が安定し、出産後 も離職しないケースが 増えている。半年前に ナースを対象に院内保 育所に関するアンケー トを実施したが、院内 保育所を作ったとしても即利用に結びつかない と思われる結果になった。また、女性医師専用 の当直室も考えてはいるが、他の施設の状況も 参考にしながら取り組みたい。




諸喜田林院長(北部地区医師会病院)

諸喜田林院長

当院では、常勤の女 性医師が5 名、非常勤 が1 名おり、3 名が子育 て中である。また、3 ヶ 月前に1 年間の育児休 暇を終えた女医が復帰 したが、復帰の際、勤 務体制について希望を聞き、柔軟に対応した。

専門医に関しては、現在麻酔科医が1 名いる が週一回の割合で一年間大学病院へ派遣して いる。

院内保育所を長く運営しているが、学童保育 のニーズも出てきており、今後の課題としてど う支援できるか検討したい。

宮里善次院長(中頭病院)

宮里善次院長

法人全体で25 %、34 名の女性医師がいる。 女性医師には3 つの立 場がある。1)医師の立 場、2)女性の立場、3)母親の立場である。

1)医師の立場は、男 女区別することなく多様な雇用形態を心がけて いる。男性医師にも同様の働きかけをしなけれ ば、理解が得られにくく、かえって働き辛くな ってしまう点を注意している。2)女性の立場で は、女医だけの休憩室を設けている。3)母親の 立場では、保育所を運営している。30 人中6 名 が女医の子供であるが、正直、年間1 千万程度 の赤字である。医療機関で医療以外の事を行う と殆どが赤字になる。国も赤字にならないよう な支援のあり方を検討して欲しい。

女性医師バンクメーリングリストの活用について

仁井田りち副部会長

仁井田りち副部会長

本バンクでは、メー リングリスト(登録者 約220 名)を活用した 求人情報等を配信して いる。配信内容は常勤 から非常勤、スポット 対応の求人まで幅広く 扱っている。メーリングリスト登録者へは、情 報配信後、友人・知人へもメール転送するよう 依頼しており、配信後、直ぐに内定するケース もある。各医療機関も是非ご活用いただきたい。




閉 会

沖縄県女性医師部会委員 大湾勤子

大湾勤子

本日は県の担当者か ら医師確保対策の具体 的な利用方法について の説明もあり、各医療 機関にとっても有意義 な情報提供になったと 思う。私自身が、女性 医師部会の活動を通じて感じているのは、女 性、男性という事ではなく、一人の医師とし て、どれだけモチベーションを維持し、仕事を 継続していくかが大切であり、今回は、女性の 立場からを切り口にしたが、実際は男女問わず 皆で支え合っていくことが大事であるという事 である。

我々が医師になった頃と比べ、今は恵まれて いる。あの当時は、当直の免除申請を行うと断 られた。今はそのようなことは無いと思うが、当時は男女平等だと言われ、それぐらいの気概 でやっていかなければならなかったのである。 女性医師に対する環境改善もしながら、あのよ うな働く意識も継承しなければならないと感じ ている。先日行なわれた女性医師フォーラムに おいて何名かの琉大の学生の参加があった。彼 らは、自らの将来設計を行う上で、我々の話を 真剣に聞き、様々な質問や相談を積極的に行っ ていた。医師になってからではなく、学生の頃 からあの様な機会を増やし、若い医師をサポー トする事が大切である。今後に繋げていきたいと思う。

本日は多くの管理者の方々に参加していただき、誠にありがとうございました。

印象記

沖縄県医師会女性医師部会委員 涌波 淳子

病院長等との懇親会も、第5 回目となりました。アンケートの結果や各施設の院長先生たちの お話の中からは、保育所の問題や短時間勤務制、日直・当直免除など、女性医師の両立支援とし ての環境改善は着実に進んできていると感じました。そして、今回の懇談会では、それらの支援 対策を経済的にバックアップするための女性医師等就労支援事業や専門医等人材育成・確保事業 その他の医師支援補助金に関する説明を県福祉保健部医務課から直接伺うことができましたし、 飛び入りで国立病院機構琉球病院副院長の福治康秀先生より昨年度の同院における補助金活用の 具体的なお話もあり、各病院にとっては、良い情報提供になったと思います。これらの補助金を 上手に活用する事と「現場にとって本当にかゆい所に手が届く」ような活用しやすい補助金制度 に育てることも大切であると感じました。

県内でも確実に女性医師が増加してきます。この女性医師たちがしっかりと育ち、仕事を続け、 沖縄の医療を支えられるように、各医療機関も女性医師たちも国も県も医師会も皆で努力を重ね ていくことが必要だと思います。