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タバコの真実に迫る書籍(新刊を中心に)

山代寛

沖縄大学 山代 寛

ずうずうしくも、沖縄大学で自称本邦初の禁 煙学教授を名乗って4 年目になります。禁煙学 とは何か?タバコの真実を知り、これと対抗す る総合的な学問と考えますが、そのものズバリ 「禁煙学」という本が4 年前に南山堂より発刊 されました。共著者として「地域の喫煙対策」 の項を担当させていただき、岡山の地方中核病 院での勤務経験から地域の禁煙に医療者の果た す役割について書かせていただきました。昨 年、日本禁煙学会編『禁煙学改訂第2 版』が南 山堂から発刊されました。日本禁煙学会認定禁 煙指導者制度公認テキストでもあり、第1 版よ り大幅に改訂され構成・内容などが広範囲にな り深くなっています。第1 版にはなかったバレ ニクリン(チャンピックス)の項は、ちばなク リニック(沖縄市知花)の清水隆裕先生の手に よるものですが、初めて処方する方にもわかり やすく書かれています。禁煙治療は薬だけ出し ておけばいいというものではありません。この 本を読まれれば治療だけでなく喫煙対策が医師 にとってきわめてやりがいのある仕事であるこ とがご理解いただけるものと思います。

大学こそ地域の禁煙の核になりうると考え、 沖縄大学に沖縄ニコチン依存症研究会を立ち上 げ、活動を続けています。高校、中学での講演 会に呼ばれる機会も増えてまいりましたが、痛 感するのは、学生のみならず教職員たちがタバ コの真実について知らないことです。那覇市医 師会では禁煙指導医制度を発足させ未成年喫煙 に取り組んでいただいていますが、そこで、指 導用の指定図書としてお勧めしたのが、平間敬 文先生による『小学生からの禁煙教育自由自 在』(かもがわ出版)です。50 万人近くに講話 した経験から練られた内容になっています。私 も講演の材料として使わせていただいているも のが多く含まれていますが、喫煙の害を実感す る医療従事者であれば付属のCD に入ったパワ ーポイントの資料を素材に、子どもたちだけで なくPTA にも説得力を持って講話していただ くことが可能です。那覇市医師会ではこの本を 40 部購入し禁煙指導医の先生方に配布してい ますが、評判が良いようです。付属のプレゼン テーションをご覧いただき、ここをこうしたら さらにいい、というような提案をいただければ 禁煙教育のよりいっそうの充実にもつながりま すので、ぜひご意見下さい。

3 冊目は大野竜三先生著、『タバコとわたした ち』(岩波ジュニア新書〈知の航海〉シリーズ) です。発刊されたばかりの中学生向けの本です が侮れない1 冊です。からだと社会に対してタ バコがどう関っているのか、癌の臨床家ならで はの視点で実にわかりやすく書いてあります。 本邦がFCTC を遵守せずタバコ対策がおくれて いる原因についてもするどく指摘されています ので読んでいただきたいと思います。

最後にご紹介するのは『二重洗脳―依存症の 謎を解く』(東洋経済新報社)です。著書の磯 村毅先生には3 年前、沖縄ニコチン依存症研 究会立ち上げの会で、この本のさわりの部分を ご講演いただいたのですが、依存症の本質がお どろくほどわかりやすく書かれています。じっ くり読むことで様々な気づきがおこる仕掛け が、著者のベストセラー『リセット禁煙のすす め』同様この本にも仕込まれています。禁煙す る気のない知り合いの精神科医にこの本を勧め たところ読んだ途端にタバコをやめて患者さん に積極的に禁煙を勧めるようになった経験もあ り、禁煙外来でインテリジェンスの高い方にお 薦めしている本です。

紙面の関係で4 冊にとどめますが、どの本も タバコの真実に迫るものです。ぜひご一読いた だきタバコの害から県民を救う活動に役立てて いただきたいと思います。