琉球大学大学院皮膚病態制御学
(皮膚科学教室) 宮城 拓也
【当医局について】
私が所属する皮膚病態制御学講座は主任の上里博教授を中心に日々の診療、研究に励んでお ります。皮膚科学教室は上里教授のコンセプト のもと、診療は主に皮膚外科グループ、皮膚内 科グループ、そして研究グループに分かれてあ たっております。
皮膚外科グループは皮膚悪性腫瘍の診療を中 心に行っておりますが、その中には「成人T リ ンパ細胞白血病」と「頭部血管肉腫」といった 非常に悪性度が高く予後が厳しい疾患もありま す。現在、当科では他科との密な連携のもとで それらの治療に携わっており、患者様のより良 い未来のために頑張っております。
皮膚内科グループに私は所属しており、「強 皮症、皮膚筋炎、SLE」といった膠原病を中 心とした自己免疫疾患の診療に力を入れてお り、非常に積極的な治療を行っております。
このような臨床にあたっている当科に、去年 4 月より京都大学医学部皮膚科にて角化症の研 究をされていた高橋健造先生が准教授として赴 任され、研究室が立ち上がり大学病院としての 責務である研究業務を行う体制が整ってきまし た。このように当医局は臨床・研究ともに充実 し、やりがいのある医局へと邁進しております。
医局集合写真
【入局した理由】
私は研修医の当初から自己免疫疾患、特に膠 原病の診療に携わりたいと考えておりました。 そのため、免疫抑制療法において避けられない 重篤な副作用である感染症について勉強したい と思い、研修医時代は当院の第一内科(主任: 藤田次郎先生)、中頭病院感染症内科(主任: 医局集合写真 新里敬先生)で研修させていただきました。ま た、沖縄における膠原病・リウマチ診療の拠点 である豊見城中央病院腎臓・リウマチ・膠原病 内科(主任:潮平芳樹先生)でも短期間ではあ りますが研修させていただき、非常に充実した 研修生活を過ごさせていただきました。そし て、膠原病の最も重要な身体所見の一つである 皮膚症状を中心に勉強するために皮膚科に入局 しました。
日常診療において、我々は検査値についつい 目が行きがちですが、診療を行う上での基本で あり診断において最も重要な要素は身体所見だ と私は考えています。そのため、皮膚症状がほ ぼ必発である膠原病において、皮膚症状を読み 取ることは非常に重要だと思います。身体所見 を中心に診療することによって、血清学的に診 断困難な膠原病の診断が可能となります。その 代表例が皮膚筋炎です。現在、皮膚筋炎の責任 抗体は研究室レベルでしか測定できないため、 その診断は皮膚症状によることが多いのが現状 です。もちろん、血清学的な裏付けも重要であ るため、結果は数カ月かかりますが金沢大学医 学部皮膚科に責任抗体の同定もお願いしてお り、将来的には当科で責任抗体の特定が可能に なるよう努めております。
【学会開催に向けて】
現在、我々は今年の来る10 月8 日(土)、9 日(日)に行われる第63 回日本皮膚科学会西 部支部学術大会の開催にむけ、準備を進めてお ります。皮膚科の枠に囚われない学会にしよう と多彩で多様な講演を企画しており、そのひと つとして宇宙航空研究開発機構( J a p a n Aerospace Exploration Agency:JAXA)よ り若田宇宙飛行士や野口宇宙飛行士の宇宙長期 滞在フライトで運動プログラムを担当しておら れた、大島博先生にご講演を依頼しおります。 大島博先生には医学的にみた宇宙環境における 人体の話をしていただけると思います。
また、私の個人的な希望が大きく反映された 膠原病のセッションも非常に楽しみであります。ご講演していただく先生は、聖路加病院の 岡田正人先生(主任:岡田正人先生)、東京医 科歯科大学の上阪等先生(主任:宮坂信之先 生)、京都大学の藤井隆夫先生(主任:三森経 世先生)、金沢大学の藤本学先生(主任:竹原 和彦先生)、和歌山医大の古川福実先生(主 任:古川福実先生)といった国内の第一線でご 活躍されている先生方ばかりです。内容も膠原 病の抗体やT ・B 細胞との関連といった基礎研 究の話から、膠原病の合併症の一つである肺動 脈性肺高血圧症の診断・治療、日本では保険適 応外ですがハイドロキシクロロキンによる治療 といった実際の臨床的な話まで幅広くお話しい ただく予定になっております。
このように多彩で充実した学会でありますの で、皮膚科医のみならずご興味がある先生方は どなたでも遠慮なく当医局にご連絡ください。
【国内学会発表】
学会を主催する側になって良かったことは、 前述したように学会講演を自分が聞きたいよう にセットアップできることです。しかし、当然 のように学会主催は良いことばかりではありま せん。準備の手間や苦労はもちろんのこと、資 金の問題があります。今回の学会では昨今の不 況や震災の影響をうけ、寄付金が予定の予算を 遥かに下回りました。そのため、赤字分を埋め るべく、去年から今年にかけて国内の大きな皮 膚科学会に参加し宣伝活動に努めてきました。 もちろん、学会にただ宣伝のために参加したわ けではなく、参加の度に発表もしてきました。 そのため去年は国内学会の発表は3 回、その他 の地方会・勉強会での発表は8 回を数えまし た。そのうち、最も印象に残っているのは宮城 県仙台市で開催された第74 回日本皮膚科学会 東部支部学術大会(会長:相場節也先生)で す。その理由として、豪華な懇親会や美味しい 食事なども挙げられますが、幸運にも学会会長 賞を頂けたことが最大の理由です。自分の発表 が学会会長賞を受賞するとは夢にも思わなかっ たので確認もせずに懇親会の途中で退席してし まい、授賞式を欠席してしまったことが非常に 心残りではありますが、それも今となっては忘 れ難い思い出の一つです。
【最後に】
皆さんご存じのとおり宮城県を始めその周辺 地域は東北関東大震災での被災地であり、現在 も復興の端緒についたばかりであります。遠く 離れた沖縄から震災の被害を受けた方々を支援 できることは限られていますが、我々が協力で きることは確実に存在します。特に、阪神大震 災の際にも話題になりましたが、復興は1 〜 2 年で成し得ることではなく十数年以上もかかる かもしれません。今できることを可能な限りや ることも大事ですが、支援し続けることが最も 大切だと思います。金銭的には苦しい西部支部 学術大会ではありますが、学会を通じて持続的 な支援の姿勢を打ち出していければと思ってい ます。
【連絡・問い合わせ先】
琉球大学皮膚科医局
沖縄県西原町字上原207 臨床研究棟902号室
098-895-3331 Fax098-895-1417
E-mail : hihuka@jim.u-ryukyu.ac.jp