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沖縄県立中部病院院長 宮城 良充 先生

患者、医療人、職員の選に値する病院 元気、勇気、やる気の気の漲る病院 言動、協働、感動の動に満ちた病院 を目指します。

Q1.院長就任に際して率直な御感想をお聞かせ下さい。

この度平安山英盛先生の後を受けて院長を拝 命しました、宮城です。よろしくお願いいたし ます。

中部病院に勤務する正職員の中で、とうとう 年齢が上から2 番目になってしまいました。こ こ数年、団塊世代の定年退職が続き、慌ただし くも新世代への転換期であることを実感してお ります。

知人に「院長就任おめでとう」と言われる と、正直困ってしまいます。というのも、私も 団塊世代のまっただ中で、あと2 年で定年退職 だからです。常日頃から院長は10 年やらない と何も成し得ないと思って、公言もしてきまし た。それが2 年ですから、なにをかやいわんや です。そのうえ2 年後には、後でも触れます経 営形態の選択という重大なイベントがあり、2 年で現場を離れる者が無責任に決めることは出 来ないとの思いもありました。先輩、同僚、友 人に相談すると、一応に院長を受けるべきとは 言ってくれるのですが、わずか2 年と聞くと、 皆さん一応に顔を曇らせるのが明らかでした。 どうしょうかと思いあぐねていたところ局長よ り「伊達に40 年間、中部にいたわけではない でしょう。2 年と言っても新たな職場に移動しての2 年とは違う。40 年の集大成として引き受 けて」と助言され、さらには事務長に「なんや かんや言って、先生は結局敵前逃亡するの か!!」と苦言をいただきました。そこまで言 われては引けないと、人事を受け入れることに しました。考え方の視点を変えて“立つ鳥後 を濁す・・”ように、大きくかき回し、完全燃焼す ることに決意しました。亥年生まれらしく猪突 猛進しますので、職員の皆さんにはよろしくお 願いしたいと思います。

Q2.就任早々所信表明をされたそうですが、 その内容はどのようなものでしたしょう か?

院長の所信表明は、今後の目指すべき病院像 を具体的に示すものです。従来は「今年度は○ ○を整備します。入院患者を○%増し、収益を ○%増やします。」といったものに終始してい ました。所信については思い入れがあり、2 ヵ 月前から準備していました。事の経緯は次の通 りです。ある日のこと、事務の方と色々話をし ておりました。恐らく病院経営の話しであった と思います。突然「先生! 我々はどこに向か っているのでしょうか。経営云々といわれて も、病院の将来像も示されないのに頑張りよう がありません!」と訴えられました。ハッとしました。まさに天に吐いた唾が我に罹ったので す。なぜなら同じような言葉を自ら県庁に発し ていたのですから。そこで意を決し、次年度も 引き続き管理職になる幹部を集め、合宿し、今 後50 年間の世界情勢を分析し、これからの中 部病院の将来を見定めました。少子高齢化は 我々が思っている以上に多方面に影響が大きい ことを認識しました。少子は若い労働力不足や 年金制度の疲弊をきたし、高齢化はがんの発症 率を上げると共にがん対策の整備や独居老人の 生活支援など医療に及ぼす影響は大きいものが あり、もはや公的病院として、今ままでのよう に急性期のみの医療では、地域医療の担い手と しては立ちゆかない現実に直面しています。地 域連携を進めながら慢性期ケアの視点と実践を 併せ持つ事ではじめて、我々の使命を果たせる ものと結論しました。紙面の都合もあり詳しく お示しできませんが、上記の考えのもと、今後 中部病院が進むべき道を示し、45 実施項目に ついて、開始年・達成年を決めて、大まかな行 程表を職員に提示しました。

Q3.経営形態の選択についてお聞かせ下さい。

公立病院改革プランの一貫で、経営形態を変 更することにより、経営効率を上げ赤字体質の 病院を変えようというものです。沖縄県も経営 改革を3 年計画で行い、平成23 年が最終年で、 その成果をもって経営形態を決することが予定 されています。南部病院のような民間委譲の例 をはじめ、公設公営、公設民営、独立法人化、 企業体運営さまざまな場合があり得ます。中部 病院は公的病院として現在の役割を同様に果た すことができれば経営形態はいずれでも構わな いと考えています。ただ現在の機能は、各職員 の並々ならぬ努力と献身でなされており、健康 や家庭を顧みる事を犠牲にして頑張っている要 素も多々あります。経営上好転することは重要 な選択ポイントではありますが、公的病院とし ての機能を果たしつつ、職員が楽しく、やりが いを感じ、健康的な生活を送れるような運営形 態を選びたいと思います。そのためにも、院内 でも自ら集めた経営形態の情報・資料を基に職 員間で十分に討論をこの1 年続けていくことに しています。

Q4.たくさんの経営改革を計画されています が、その内最も力を入れたいものは何でし ょうか?

再三お話していますように、あと2 年しかあ りません。私が後輩たちに何を残し、何を引き 継いでいく事ができるのかを、2 年前から考え てきました。県立病院の医師は勤続20 年〜 30 年の人が多く、県立病院の良いところ悪いとこ ろ、得意なこと、苦手なところを知り尽くして います。良いところはさらに伸ばし、悪いとこ ろは改善する。それにはどうしても、ひと、も の、金が入用です。ところが医師は患者を診察 することは得意でも、それらを手に入れる術に は長けていません。そこで事務方の登場となる はずですが、事務職に相談しても、3 年でロー テーションする人には真剣に聞いて貰えない し、時には余分な仕事はゴメンとのことで積極 的に取り組んでくれないことが繰り返されてま いりました。中部病院の医療実績は全国的に知 られ、その実力は高く評価されており、さらに 事務力が加われば、さらに大きな社会貢献をす ることができます。そこで去年から事務総合力 アップを様々な仕掛けをして実践しているとこ ろです。優秀で強力な事務職を、つぎの後輩に 残していくことに最も力を入れていきたいと思 っています。

Q5.県医師会に対するご要望がございました らお聞かせ下さい。

将来の沖縄県の医療を、社会情勢や財政状況 を加味して考えた時、病院の機能分化や再編 が、公的施設間、民間施設間、公的・民間施設 間、県内・県外施設間において大局的な見地か ら推進されていくべきであろうと思います。 “県民のための医療”を根幹に、次の日本の医 療を担う人材育成にも更なる援助をいただき、 連携強化を強く押し進めながら県内医療界を牽引する役割を医師会が担ってもらいたいと思い ます。

Q6.最後に日頃の健康法、ご趣味、座右の銘 等がございましたらお聞かせ下さい。

学生時代は毎日10 qを走っていたこともあ り、40 代までは体力に自信がありました。ど んなに疲れても1 日休めば元気でした。ところ が50 代後半からは、いままでの蓄えを使い果 たし、年末年始は大掃除の後は腰痛で寝正月、 運動すると肉離れ、それが治るのに6 ヵ月、運 動再開すると再び肉離れという悪サイクルに入 ってしまっています。現在は毎朝体重測定し、 5 キログラム減量をめざして、夜30 分ジョッグ を始めたところです。

座右の銘は沢山ありますが、自作の“負怒勝 笑”です。〜怒るは負け笑うが勝ち〜を唱え ながら亥年生まれの猛進型院長への戒めとして 毎日仕事をしています。

この度は、インタビューへご回答頂き、誠に 有難うございました。

インタービューアー:広報委員 金城正高