副会長 小渡 敬
去る5 月21 日(土)、佐賀市(佐賀県担当) において標記定例委員総会が開催され、九州医 師会連合会の平成22 年度決算、平成23 年度事 業計画並びに予算等が審議され承認されたの で、会議の概要を報告する。
はじめに、司会の徳永委員(佐賀県)より開 会が宣され、前年度九州医師会連合会担当県の 鹿児島県池田会長より平成22 年度の九州医師 会連合会諸事業への協力に対するお礼と、去る 3 月11 日に発生した東日本大震災でのJMAT 派遣において、多数の希望者があったことに対 するお礼の言葉が述べられた。
その後、池田九州医師会連合会長(佐賀県医 師会長)並びに、原中勝征日本医師会長より挨 拶、横倉義武日本医師会副会長、藤川謙二日本 医師会常任理事より中央情勢報告があった。
去る4 月16 日の常任委員会において、今年 度の九州医師会連合会会長に選任され、1 年間 九医連を担当させていただくことになった。昨 年度は鹿児島県医師会の池田会長はじめ役職員 の方々に大変お世話になった。この場をお借り してお礼申し上げる。
今年は東日本大震災という未曾有の災害が発 生し、更には福島原発事故が未だ収束しておら ず、日本全体に元気が無く暗雲が立ちこめてい る状況にある。今回の震災で改めて確認したこ とは、国民の安心・安全にとって医師・医療機 関が提供する医療は無くてはならない存在であ り、それを日常的に国民に提供する社会的なシ ステムが国民皆保険制度であるということであ る。現在、6 月末の閣議決定に向け、社会保障 と税の一体改革が議論されているが、ここに巨 額の資金が必要になるということで医療情勢も 一段と厳しさを増すことは確実のようである。 しかしながら、国民の幸せ社会の安定のために 私どもは国民皆保険制度をなんとしても堅持していかなければならない。九医連の旗の下、九 州各県のリーダーである先生方と共に、日本医 師会をもり立て、これを実現していきたいと考 えている。
厳しい情勢の中で九医連を担当することに不 安もあるが、昨年度みごとな運営をされた鹿児 島県医師会をお手本とし、九医連副会長である 稲倉宮崎県医師会長に種々ご相談申し上げると 共に、九州各県と連携を取り対応して参りたい と考えているため、ご支援ご協力をお願い申し 上げる。
来賓祝辞
この度の東日本大震災においては、JMAT の 組織化が未定の中、先生方に無理なお願いをし た。しかしながら、全国から960 名以上の先生 方にご協力を頂いており感謝申し上げる。本件 については、菅総理とお会いした際にも、日本 医師会に対して初めて敬意と感謝を述べておら れた。
原発問題がいつ収束するのか全く見通しがつ いておらず、私が生まれた福島県浪江町は原発 から半径20 q圏域内となっており、町全体が 無くなっている。今回の原発事故に際し様々な ことを考えさせられた。
今回、被災地を訪れる際に公に私が行くこと で、地元の先生方の活動の妨げになるのではな いかとの思いがあり、個人的に被災地を回らせ て頂いた。
特に宮城県では地震が発生してから3 週間経 っているにも関わらず、がれきの中に未だ手足 が見える状態であったことから、日本政府に対 し直接申し入れ、すぐに対応して頂いた。
また、福島県の浪江町の被災者は二本松市に 124 カ所に分かれて避難生活を送っていた。被 災後3 週間であるにも関わらず、風呂にも入れ ず、下着も交換出来ず、食事にいたっては朝は 乾パンと水、夕方は即席カップ麺という状況で あり、怒りをもって政府に対し抗議した。ま た、川上で用を足している姿があったかと思え ば、その川下ではその水を飲料水として使用し ている状況を目の当たりにし、これが本当に日 本なのかと感じたほどである。自衛隊が炊き出 しをすれば長蛇の列ができるもすぐに無くなり 殆どの方に行き渡らない状況であった。
現在は温泉宿などにも住めるようになり改善 されてきてはいるが、未だ放射能問題が残って おり、政府に対しては正確な値を国民に知らせ るよう要望しているところである。
今般、復興のための委員会が設置されたが、 教育と医療の委員が入っていない委員会が何の ための復興計画かと質したところ、医療関係者 だけの委員会が新たに設置されることになり、 医師会も助言をしていくことになった。
併せて中医協委員の選出も医師会に任せるよ う総理に申し上げている。
私どもは今回の医療費改定に関し、少なくと も医療費の変更はやめて欲しい旨申し入れをし た。この件に関して中四国、九州ブロックの先 生方から上がるとの意見があるのになぜストッ プさせるのかというご意見が多く寄せられた が、恐らく誤解が生じている。民主党有志「あ るべき社会保障と財源を考える会」の意見を耳 にしてのことかと思うが、この委員会は理想論 を述べているだけで政府には全く声が届いてい ない。この会の意見を聞いて判断した場合には 大変な間違いを起こしてしまう。
この未曾有の大災害時に財源をどこに求める のか。医療費を下げることについて急先鋒であ る、野田財務大臣、与謝野国務大臣がいる限り 医療費改定が行われた際には、大幅なダウンは 避けられないとの情報を日医は得ていた。
そのような中にあって、多くの避難所におい て不自由な生活をされている方々がいる現場に おいていち早く状況を把握し、中央政府に対応 を求める役割を担うべき厚労省が何もしていな いことに強く抗議を行ったところである。
そのため、本会から厚生労働大臣に対し下記 の5 つの要請を行った。
細川大臣との面談の結果、厚労省・医療界共 に復興に全勢力をかけるという点については一 致したものの、同時改定の見送りについてはは っきりと明言しなかったが、見送りもあり得る と間接的に認めている。
実態調査については、官僚があらゆる手段をつ かっても実態調査を行わんとする中、鈴木常任理 事の尽力によって決定を見送ることになった。
更には、厚労省に対しては、被災地の現場に 入り実態調査を行うことが先であると強く申し 入れている。
現在、大学病院が9 %の延びを示している が、本来、大学病院としての機能を維持するた めに文部科学省から出すべき予算が毎年3 %削 られている。その3 %分を保険料で補っている 状況である。
これは全くの間違いであり、地域医療支援病 院の紹介率が80 %であったものがいつの間に か40 %になり、外来で来た患者を逆紹介して いる状況にあり、このような地域医療支援病院 が本来の役目を果たすならば100 億円が浮く。 本来の医療機関のあるべき姿、役目をこの機会 にきちんと棲み分けをすることに全力を注ぐべ きであり、そのためにも医療費の改定を延期す るよう提案している。
大臣からは引き続き本件について協議したい との申し出があったことから、日本医師会はぶ れることなく国民・会員のために対応していき たい。
現在、日本医師会はあらゆる政治家や官僚か ら様々な情報を得られるようになっている。
全国の先生方の結束をお願いすると共に、日 本の医療のあるべき姿に正していくべく、今後 ともご指導をお願いしたい。
報告・議事
その後、座長に池田九州医師会連合会会長が 選出され、報告、議事が進められた。報告(1) の第318 回常任委員会については池田会長か ら、(2)の平成22 年度九州医師会連合会庶務 並びに事業報告については、鹿児島県の池田徹 委員より資料に基づいて報告が行われた。
引き続き、行われた議事については、次の7 議案が上程され、それぞれ各担当委員より提案 理由の説明があり、協議した結果、全議案とも 全会一致で原案どおり承認された。
第1号議案 平成22年度九州医師会連合会歳入歳出決算に関する件
第2号議案 平成23年度九州医師会連合会事業計画に関する件
第3号議案 平成23年度九州医師会連合会負担金賦課に関する件
第4号議案 平成23年度九州医師会連合会歳入歳出予算に関する件
第5号議案 平成23年度九州医師会連合会監事(2 名)の選定に関する件
第6号議案 平成23年度第111 回九州医師会医学会事業計画に関する件
第7号議案 平成23年度第111 回九州医師会医学会会費賦課に関する件
なお、第5 号議案の監事(2 名)の選定に関 する件については、長崎県の福島建一委員、福 岡県の堤康博委員が選出された。
第6 号議案の平成23 年度第111 回九州医師 会医学会事業計画に関する件については、平成 23 年11 月19 日(土)ホテルニューオータニ佐 賀において九州医師会総会・医学会が開催され る旨報告があった。
中央情勢報告
原中会長から同時改定や、大震災における救 援活動についてお話があったが、各県医師会の ご協力に心から感謝申し上げる。
なぜ、同時改定について日医が延期の申し入 れをしたかという点については、4 月23 日に開 催された日医代議員会の際に東京都、埼玉県か らブロック代表質問を頂き、会長および保険担 当の中川副会長から回答させていただいたとこ ろである。その後金井代議員から緊急動議とし て提案をされてご存じのとおり大きな議論がな された。各先生方がそれぞれ様々な意見があっ たことから代議員会での決議には至らなかった。
現在政府の協議会が様々あり、その会議にお ける議論の中で発信者によって話が食い違って いた。最終的に判断を下すのは、社会保障と税 の一体改革を司る、与謝野国務大臣と野田財務 大臣である。約1 ヵ月ほど前に与謝野大臣が日 本医師会の考えを聞きたいとの申し入れがあっ たことから、私と中川副会長が伺い、日本医師 会の考えを示した。その際、与謝野大臣から免 責制について問われ、ある意味国民皆保険制度 を破壊するような横行であり日医は長年反対を してきたことを強く申し入れた。
今回の診療報酬改定は厳しい改定になること は財源的な問題から明かである。日本医師会は 国民医療を確保するために国民皆保険制度を堅 持しなければならないことが第一の目標であ る。第二の目標が会員医療機関の経営が地域の 中で行われる環境を維持することである。
そのようなことから、今回の改定に持ち込む ととんでもないマイナス改定になることは明か であった。その間には国家公務員の給与を一割 近く下げる話も出ていた。日医では有力な議員 と定期的に情報交換を行っているが、その中で 国家公務員の給与を1 割近く下げ、今回の大震 災の復興に充てるとの話があった。診療報酬改 定の手法は過去の物価推移、人件費推移を勘案 して医療費をどうするか決めていく手法であっ た。現在、公務員は昇級がほぼ行われていない 状況が数年間続いている。物価もデフレ状況で あり、物価指数としてはマイナスである。それ らを勘案すると国家公務員の給与を1 割近く下 げるということは、大変な問題となることが考 えられる。
もちろん、東北大震災の救援と地域の復興が 我々の最大の願いであるが、そういったバック グラウンドがあったということで、今回の申し 入れを行ったことをご理解頂きたい。
先週中医協が開催され、そこで医療経済の実 態調査及び薬価調査を行うことを決めるという 状況にあった。
そのため、鈴木常任理事が中医協において厳 しい状況の中、奮闘されその日には結論を出さ せないまでに持って行った経緯がある。
その翌日には、会長、私がそろって大臣に正 式に申し入れを行った結果、現在、厚労省から 様々なアプローチが行われている。役人側の言 い分では医療経済実態調査というものは、震災 が発災してから平成23 年4 月1 日(調査期間 終了日)までの期間は約20 日しか無いとして、 その期間を除外すれば十分分かるというが、実 際は4 月以降も震災の影響が全国に波及してお り、医療機関の休止や、医療従事者の不足・偏 在等の問題や、さらには薬品の不足の問題もあ り、長期投与を控えるよう日医から厚生労働省 に申し入れ、各医療機関にご協力いただいると ころである。これにより受診回数が増え、通常 の受診行動と大分違っていることから、そのよ うな状況の中で実態調査をすればおかしな数字 が出ることは明白であることから調査をすべき ではないと主張している。そういう活動をして いく中、現在の診療報酬体型の矛盾点について 制度を見直すことで改善に繋げるよう日本医師 会として提案しているところである。
診療報酬が上がるというお話があったことか ら、調査をしたところ私的な審議会の事務局長 をしている代議士がそのような発言をしたとの ことであったため早速お会いしたところ、現在 の医療事情を非常に心配し絶対に引き上げると 述べておられたが、財源的な裏付けが無いことが分かった。
今後もこの問題については、中医協を中心に 紆余曲折があろうかと思うが我々の使命であ る、国民医療を守り、国民皆保険制度の堅持し ていくこと、更には会員の医療機関が地域にお いて十分に力を発揮できる環境を維持していく ことが重要であるため、ご理解を賜りたい。
今回の震災に際し、JMAT は5 月までしっか り対応していただくことになっているが、昨日 の情報では、気仙沼、岩手においては6 月以降 も派遣するよう要請があることから、何とぞ九 州各県の先生方に引き続きご協力頂きたい。現 在、今後起こりうる様々なことについてできる 限り、医療団体・福祉団体が連携を取って、息 の長い支援をしていくこと、更には、将来的に 東海地方、東南海地方の震災が起こりうる可能 性が十分にあることから、今回の反省点も踏ま え、DMAT、JMAT、TMAT、日赤、看護協会 等様々な団体が連携を取りながら国からの要請 の下、迅速に動き情報を共有できるシステムを 作るべく検討しているところである。原中会長 のもと、日本医師会主催による被災者救援のた めの連絡協議会を立ち上げている。当初は国会 において民主党主導により各団体を集めて会議 を開いていたが、結局何も決まらなかったこと から日医としては、厚労省が事務局として法的 に各医療団体に要請する形をとらなければ参加 も辞さない旨伝えたところ、仙石、足立、梅村 議員がお詫びに原中会長のもとに来られ、官邸 から要請し日本医師会を中心にやって頂くとの 要請があったことから日本医師会主導によるオ ールジャパンの体制で会議を持つことになった。
現在のトピックスとしては、特定看護師の問 題が賑わっているが、先日2 時間ほどかけて三 上常任理事と厚労省の次官と話し合いを持ち、 特定看護師という業務独占の肩書きは決して認 めないということを伝えている。特定医療行為 のできる認証制度ではどうかとの打診があった が、先ずは特定看護師という名称を削除させ、 専門看護師、認定看護師については問題無い が、ファジーな特定看護師という表現は認めな いと強く申し入れている。
また、今回の災害時に医療法人の問題が突如 出てきた。株式会社が医療法人を設立できるよ う閣議決定された。そのため、我々も危機感を 感じ、なんとしても医療法人の相続の問題につ いて殆どの医療機関が困っていること、理事が 抜けた時に訴訟になって困っている話があるこ とから、後継者が帰ってくるにしても、多額の 相続税がかかると若手は中々帰れない。そうな ると益々過疎地域で頑張っておられる高齢の開 業医の跡継ぎがいなくなり、地域で医師不足が 進行することになる。そのため、医療法人の問 題も災害救急とは別に勉強会を開催し、会計 士、税理士と共に議論している。
また、平成18 年の社会医療法人について日 本医師会で決めた方針を或る程度修正したい。 地域医療を守るための医療法人の相続ができる よう税制の改正を日医の方針として社会医療法 人を認めるが、持ち分ありも存続できるような 制度にしていく大きな舵を切らなくてはいけな い時期に来ているようである。そのことについ ては、会計士からも政治的な判断をしてもらわ ないと税制だけではなく、医療法の改正にも触 れなくてはいけないのではないかとの決断を迫 られているところである。
今後ともご指導をよろしくお願いしたい。
印象記
副会長 小渡 敬
平成23 年5 月21 日、九州医師会連合会第101 回定例委員総会に参加した。今年度は佐賀県医 師会が担当となり、初めての会合で例年通り第1 回目は平成22 年度の決算報告、23 年度の事業 計画並びに予算等が審議され承認された。
日医からは原中会長をはじめ横倉副会長、藤川常任理事が来賓として参加され、それぞれ中央 情勢について話していた。詳細は本文を参照していただきたい。
原中会長の話の中で、宮城県では地震が発生してから3 週間経っているにも関わらず、瓦礫の 中にいまだ手足が見える状況であったという話を聞いて、私も国の対応に怒りを感じた。現在、 菅(首相)おろしがマスコミで連日報道されているが、そのレベルのリーダーはさっさと退陣し て欲しいものである。
また、診療報酬・介護報酬の改定を見送る件については、厚生労働大臣は改定を実施する方向 で考えているようであり、今後の日医の対応も含め、どうなるのか気がかりである。
さて、沖縄県医師会では、会員へ各種通知、事業案内、講演会映像等の配信を行う「文書映像デー タ管理システム」事業を本年4 月から開始致しましたのでお知らせ致します。
また、各種通知等につきましては、希望する会員へ郵送等に併せてメール配信を行っております。
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