当山美容形成外科 當山 護
お礼
平成23 年2 月10 日(木)、11 日(金)の両 日に亘り、標記学会を当院主催で開催し、第1 日目を当院での技術研修会にあて、2 日目を男 女共同センター「てぃるる」にて学術集会を開 いた。
当学会開催に際し、沖縄県医師会より多大な るご援助、お骨折りを頂き深く感謝申し上げ、 以下に集会内容をご報告し御礼の一助とさせて 頂く。
我々は十数年前にも日本美容外科学会(於: ハーバービューホテル)を開催したが、組織力 のない開業医が小さな学会とは云え、全国規模 の学術集会を開催させて頂けたのは有難い反 面、やはり荷が重い部分があった。
その点、今回も前回同様に県医師会の力をお 借り出来た事が学会開催成功の第一歩となった 事は否めない。
本学会の歴史と特徴
本学会は絶縁針脱毛の発案者、故小林敏男氏 の提案等で昭和62 年に発足し、本年で26 年目 を迎えるが、小林先生と私は旧知の間柄ゆえ、 会発足当時から参加している。
年1 回の総会と学術集会が定期的であるがそ の間、地方会が数回開催されているので今回が 37 回目となっている。
会員数は少なく、全国200 人規模で開業医 (皮フ科・形成外科医)が圧倒的に多く、脱毛 師を目指す看護師さんも年々増加の一途を辿っ ている。
反面、平成10 年(1998 年)頃から始まった レーザー脱毛の普及により脱毛する医療機関が 増えた割には入会者が少ない現況がある。
レーザー脱毛は手軽に出来ると云う印象があ るが、施術に関しては脱毛部屋の清潔な取扱 い、機具の消毒、脱毛部位の麻酔、レーザー脱 毛機の種類によって違うそれぞれの取り扱い 方、施行前の患者への説明と後のケア、毛の発 育・成長の解剖・生理学的知識の習得、トラブ ル防止の研究とトラブルが生じた時の対策、そ して疎かに出来ない経営手腕、この様に専門性 がある一方で、現実にはエステティシャン脱毛 師との競合・競争、医療行為の是非が常に社会 的背景として横たわっている。
それ故、本学術集会の意義と特徴がこの辺に あると捉えて良いであろう・・・と考えている。
今回の学術集会のポイント
我々は本学術集会を開催するに当たり、ポイ ントを3 つに絞ってみた。
第1 点目は誰もがやれると思っているレーザ ー脱毛は誰しもが簡単に同じ事をやっているの であろうか?機械メーカーが違えば脱毛レーザ ーの取扱い方が違い、かつ脱毛技術に差が出る のではないか?とする疑問、さらに絶縁針脱毛 は今でも大変素晴らしい脱毛方法であるが、実 際にどうしたら良いか経験者が少ない事の解決 を目指す。
その為、脱毛レーザー各メーカーに呼び掛 け、メーカー毎の特徴を述べてもらう事、絶縁 針、レーザーそれぞれの実際を当院の脱毛看護 師に実演してもらい多くの方に学び取ってもら う事を主眼とした研修会を第1 日に行なった。
いわゆるライブ形式である。
2 点目はトラブルに陥ったケースを再検討してもらうシンポジウムを開催し、全国で技術の 高いとされる先生方5 人にシンポジストをお願 いした。
きれい事ではない忌憚のない意見交換をする 事こそ脱毛技術者のトッププロとしての生き方 を示しえると思ったのである。
第3 点目は医療行為とは何か?法解釈につい て厚労省の行政マンをご招待しご講演をお伺い した。
脱毛はエステが行なっても良いとする一般認 識は広くあるが・・・脱毛が医療行為とするのな ら取締りはどうなっているのか不思議だったか らである。
厚生労働省小川善之係長をお招きしその辺の 事をお伺いしたが、彼は現在、正に特定看護師 制度について検討しているワーキンググループ 所属の役人なのであった。
講演内容や質疑内容から小川氏は明確に表1 の平成13 年医政局通達は今でも生きており、 脱毛は医業行為であり、看護師さんは医者の補 助として医業行為を行なう事が出来ると述べ、 資格のないものがやった脱毛行為に明らかに違 反した場合、取締りの対象になり、監督官庁の 指導を受け、悪質な場合は警察取締りの対象に なると述べている。
表1
医政医発第105号 平成13年11月8日
各都道府県衛生主管部(局)長殿 厚生労働省医政局医事課長
医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて
最近、医師免許を有しない者が行った脱毛行為 等が原因となって身体に被害を受けたという事例 が報告されており、保健衛生上看過し得ない状況 となっている。
これらの行為については、「医師法上の疑義に ついて」(平成12 年7 月13 日付け医事第68 号厚 生省健康政策局医事課長通知)において、医師法の適用に関する見解を示しているところである が、国民への危害発生を未然に防止するべく、下 記のとおり、再度徹底することとしたので、御了 知の上、管内の市町村並びに関係機関及び関係団 体等にその周知を図られるようお願いする。
記
第1 脱毛行為等に対する医師法の適用
以下に示す行為は、医師が行うのでなければ保 健衛生上危害の生ずるおそれのある行為であり、 医師免許を有しない者が業として行えば医師法第 17 条に違反すること。
(1)用いる機器が医療用であるか否かを問わず、 レーザー光線又はその他の強力なエネルギーを 有する光線を毛根部分に照射し、毛乳頭、皮脂 腺開口部等を破壊する行為
(2)針先に色素を付けながら、皮膚の表面に墨等 の色素を入れる行為
(3)酸等の化学薬品を皮膚に塗布して、しわ、し み等に対して表皮剥離を行う行為第2 違反行 為に対する指導等違反行為に関する情報に接し た際には、実態を調査した上、行為の速やかな 停止を勧告するなど必要な指導を行うほか、指 導を行っても改善がみられないなど、悪質な場 合においては、刑事訴訟法第239 条の規定に 基づく告発を念頭に置きつつ、警察と適切な連 携を図られたいこと。
最後に
私は長年の医学研究者から足を洗い(?)そ の後、臨床家としての道を歩んできた。
然し、臨床の場にいると直に患者さんの悩み と接触し、地域住民の医療的苦悩に直面する場 合が多い。その中のひとつとして県人の毛深い 悩みをどうするのだと云う形成外科医の命題に 立ち向かい30 年近く脱毛現場に携わって現在 に至っている。
その間、高額な脱毛レーザーに振り回され、 脱毛専門看護師の養成に汗を流してきたが、ひ とつの難関をクリアすると又、その次に大きな 山が見えてくる。
臨床家とし山に登る事を躊躇する余裕は全くなく、その高いと思われる山に挑戦している自 分を後日に発見するが、これが多くの臨床医の 姿でもあろう。
山があるから登るのは登山家であるが、地域 に悩みの深い方がおられれば治す努力に汗を流 す、これが臨床医の生き様であると覚悟して生 きている・・・が然し、やはり一人では疲れる し、無理が来て、そして長続きはしない。
今回、その意味でも県医師会に助けて頂けた 事に感謝、一介の素浪人に賛助の手を出して下 さり、全国からかけさんじて親睦の輪を広げて 下さった方々に深謝して、筆をおきたいと思う。
(平成23 年3 月初旬 記)
レーザー脱毛メーカー側からの説明会
学術集会シンポジウムにおける質疑応答
脱毛研修その1
脱毛研修その2