理事 平安 明
今回から、診療科毎に取り上げてポイントの 解説をしていく。前回お知らせしたとおり、集 団的個別指導の類型区分に沿って進めていこう と思うが、内科は透析を含めてひとまとめにし て取り上げる。また、各科毎といっても共通の 事項として触れざるを得ないこともあるので、 重複する内容も出てくるかと思われるがご了承 いただきたい。
因みに類型区分については適切な区分とはい えないとの指摘も多く、日医では厚生労働省と の指導・監査に関する協議の中で見直しを求め ていくために動き出しているところである。今 回敢えてこの区分を参考にしたのは、今のとこ ろ実際に医療機関がこの類型区分で区分けされ 集団的個別指導の選定作業が行われているとい うことを知っていただくためである。
基本診療料については全科共通であり、別の 機会にまとめて取り上げたい。また、誌面には 限りがあるので全ての事項を取り上げることは できないことを併せてご了承いただきたい。
特掲診療料は基本診療料と合算で請求される ものであり、原則的には初・再診料とセットに なって請求が可能となるため、医師の指示や診 察、カルテへの必要事項の記載が求められる。 また、特定保険材料(青本22 年4 月版P803 〜) として規定されている場合を除き、必要な衛生 材料の費用も含むものとして設定されているた め、別に実費徴収ができないことがあるので注 意する必要がある。さらに保険医療材料を患者 に持参させたり購入させたりしてはならないと されていることにも留意しなければならない。
T)医学管理等
処置や手術等と異なり、医師の指導や管理等 いわゆる“見えない技術”を評価するために設 けられたものが多いため、カルテ記載が唯一の 担保となる。従ってレセプト審査では査定され ていなくても個別指導ではカルテの記載が不十 分として診療報酬の返還となることがある。日 頃意識していないときちんと診察で当該医学管 理を行っていてもカルテへの記載が漏れること があり、実際個別指導ではチェックされやすい ところなので必要事項のカルテ記載や書類の漏 れがないか、十分に注意しておく必要がある。
以下、主だった医学管理料の注意点を挙げる が、共通して言えることは、とにかくこの項目 の算定には全てカルテ記載が必要であり、これ が抜けていると認められないということであ る。記載は医師の裁量に任されるが、青本に明 記されている事項は出来るだけ抜けがないよう に抑えておきたい。
○特定疾患療養管理料
定められた主病を実態として診ていること が前提となる。例えば、糖尿病性網膜症の治 療で眼科を通院中の患者に対し糖尿病を主病 として当該医学管理料を算定する場合は、実 際に糖尿病に対する投薬等の治療や療養上の 指導を行っていないと要件を満たさないとさ れる。
個別指導で問題となるのはほとんどがカル テへの要点記載の漏れである。治療計画に基 づいた療養上の管理に関する指導内容を簡潔でよいが記載することが算定の要件となって いるため、問診やバイタルの記載だけでは不 十分とされる。
また、初診日より1 カ月以内は算定できな いので間違えないこと。
○特定薬剤治療管理料
カルテ上に医師の指示、検査結果、それに 基づいた治療計画の要点記載が必要である。 治療計画(投与量の変更や継続等)の記載が ないために返還となる事例がある。
○悪性腫瘍特異物質治療管理料
悪性腫瘍であると既に確定診断がされた患 者が対象となる。上記同様、医師の指示、検 査結果、治療計画の要点がカルテに記載され ていることが要件である。
○在宅療養指導料
これは在宅療養している器具(人工肛門、 気管カニューレ、ドレーン等)を装着してい る患者が医療機関を受診した際に、医師の指 示を受けた保健師や看護師が個別に30 分以 上療養上の指導を行った場合に算定できるも のであり、医師は保健師や看護師に指示した 内容をカルテに記載する必要がある。実際に 行うのが看護師であるため、医師が最初に指 示した時点の記載が抜けたりして要件を満た さないとされることがある。
○生活習慣病管理料
脂質異常症、高血圧症、糖尿病を主病とす る患者が対象。青本の様式あるいはそれに準 じた様式の療養計画書を作成し、患者の同意 を得て同意書に署名を受けた場合に算定でき る。交付した計画書(患者の署名があるも の)の写しをカルテに貼付。計画内容に変更 がなくても4 カ月に1 回以上は交付すること となっており、初回のみで以後の交付が抜け ていて返還となることがある。
○ニコチン依存症管理料
「禁煙治療のための標準手引書」に沿って TDS で診断し、ブリンクマン係数が200 以 上であることが必要である。文書による同意 書も必要。
○診療情報提供料(T)
いわゆる「返書」で当該算定は出来ない。 レセプト審査では内容までみないので査定さ れないが、個別指導では実際の内容を確認す るため返還となることがある。
○薬剤情報提供料
これを算定した場合は、薬剤情報を提供し た旨をカルテに記載する必要がある。薬情と いった略語でもよいが、何れにしてもその旨 がないと返還となる。
U)在宅医療
○在宅患者診療・指導料
往診料は定期的ないし計画的に行った場合 は算定できない。患家の求めに応じて患家に 赴き診療を行った場合に算定する。計画的な 医学管理の下に定期的に訪問して診療を行っ た場合は在宅患者訪問診療料を算定する。
尚、ここに含まれる診療・指導料には計画 書や説明同意等細かく決められているものが あり、カルテ記載とともに書類の整備を日頃 から注意して行っておく必要がある。個別指 導では書類上の不備のため算定要件の確認が できず、結果として要件が不十分と見なされ 診療報酬の返還となることがある。
○在宅療養指導管理料
医科点数表の解釈(P285 〜 304)。これら の在宅療養指導管理料においては、当該在宅 療養を指示した根拠、指示事項(方法、注意 点、緊急時の措置を含む。)、指導内容の要点 をカルテに記載する、と明記されており、こ れらの記載事項が抜けていると算定要件が不 十分と見なされるので注意が必要である。指示書等が別にあってもカルテに記載がなけれ ば、個別指導においては診療報酬の返還とな ることがある。
V)その他
○禁忌投薬(例:胃潰瘍の病名があって消炎 鎮痛剤の投与等)はレセプト審査では医師 の裁量で慎重投与がなされていると判断さ れれば認められることもあり得るが、個別 指導では原則として赤本で禁忌となってい るものは認められず薬剤料の返還となる。
○呼吸心拍監視はカルテにコメントがないと 認められない。
○医師の診察や指示がないと集団栄養指導料 の算定や入院時食事栄養指導料の算定は認 められない。特に入院時は食事の指示等看 護師が行う場合もあろうが、上記栄養指導 料等を算定する場合は医師の診察や指示を カルテに記載する必要があるので注意して ほしい。
○ビタミンB 群製剤及びビタミンC 製剤の薬 剤料を算定する場合は、医師が必要かつ有 効と判断した趣旨を具体的にレセプトとカ ルテに記載しなければならない。病名があ ればレセプト審査では問題ないが、その場 合もカルテには記載が必要となっているの で注意してほしい。
○透析の指示や回診記録等を透析記録に残し てカルテには記載がない場合、医師が確実 に回診していることが担保されていれば (透析記録にその都度医師の署名がなされ ている等)指摘で止まることもあるが、原 則的にはカルテにも透析を行う旨の記載を 残しておいた方がよい。カルテは5 年間の 保存が義務づけられているが、それ以外の 書類は3 年となっており、透析記録はカル テとは見なされないことがあるので、場合 によっては算定要件がないとされることが あり注意が必要である。
また、透析で来院している患者に特定疾 患療養管理料等の医学管理料を算定する場 合も透析記録でなくカルテに要点等の記載 が必要である。
先日開催された九医連第2 回各種協議会医療 保険対策協議会において日医の鈴木常任理事か ら、日医は指導・監査について厚労省と運用の 見直しに向けて議論を始めているとの報告があ った。それによると、レセプト1 件当たりの平 均点数が上位の医療機関が対象となっている集 団的個別指導の類型区分の見直し、集団的個別 指導を医師会と行政との共催にしてはどうかと の提案、そして集団的個別指導後にも継続して 診療報酬が高点数の医療機関が対象となってい る個別指導への連動の改善等の交渉をおこなっ ているとのことである。集団的個別指導につい ては以前から問題点が指摘されており、廃止を 含めた見直しを要求してきているところである が、とりあえず運用面で上記のような改善が実 現すればそれにこしたことはない。
個別指導を主とした指導・監査に関する情報 を今後も可能な限り提供していこうと思うの で、会員の皆様にはご指摘やご批判を含め様々 なご意見を頂ければと思う。