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九州医師会連合会平成22年度 第2回各種協議会

去る1 月29 日(土)、城山観光ホテルにおいて開催された標記協議会(医 療保険対策協議会、介護保険対策協議会、地域医療対策協議会)について、 以下の通り報告する。

1.医療保険対策協議会

理事 平安 明

挨 拶

○鹿児島県医師会 三宅副会長

この会議に先立ち開催された次期診療報酬改 定の要望事項取り纏めの協議会については長時 間に渡り熱心なご討議を頂き感謝申し上げる。

今回は全部で12 題の協議事項が上がってい るが、私共が喫緊の課題として取り組むべき重 要案件等であるので、忌憚のないご意見を賜り 本日の会議が有益なものになるよう祈念する。

○日医・鈴木常任理事

先ほども非常に熱心なご意見を頂いたところ である。本協議会についても引続き忌憚のない ご意見をよろしくお願いしたい。

協 議

(1)指導・監査について(福岡県)

各都道府県医師会から提出された意見等を参 考に、日本医師会において指導大綱の見直しに ついて検討されているかと思いますが、その進 捗状況をお尋ねいたします。

また、10 月の日本医師会代議員会の質問に 対する回答の中で、原中会長より日本医師会に おいて指導大綱・監査要綱の原案を作成して厚生労働省に提示したい旨発言がありましたが、 この件について、今後どのように検討されてい くのかお聞かせ願いたい。

指導大綱・監査要綱の見直し、あるいは、日 医案を作成にするにあたり、事前に各都道府県 医師会にご相談いただいた上で厚生労働省と交 渉していただくことを併せて要望いたします。

(2)指導・監査について(熊本県)

九州厚生局は、「新規指定全保険医療機関に 対し指定後、概ね1 年以内に新規個別指導を実 施する」ことを重点項目に挙げている。

これを受けて、熊本県では「次年度から集団 指導を年間2 回、その直後から3 回程度の個別 指導を行い、概ね「指導実施マニュアル」に沿 った全国統一的な基準による指導を実施した い」と提案している。九州各県の状況とご意見 をお伺いしたい。

また、先に日医で開催された「第123 回臨時 代議員会」で、集団的個別指導の廃棄、選定委 員会や平均点数の算定方法の透明化、病院・診 療所の診療区分の見直し等が指摘され、現行の 「指導大綱」、「監査要綱」の改正が求められて いる。

日医の見解と法改正の進捗状況についてお伺 いしたい。

(3)厚生局の指導について(宮崎県)

厚生局の指導についての問題点は再三指摘さ れているが、一向に改善されず、青本の文言を 杓子定規に当てはめて、重箱の隅をつつくよう な指導が行われている。

皆保険制度の基に地域医療を守るという精神 ではなく、請求誤りの指摘による診療報酬返還 が目的化されていると感じる。

日医は、会長と厚労省との会談により、「医 療、医療給付費の締め付けを主眼とするのでは なく、地域医療を守り再生させるという原点に 立ち返るべきである」との意見で一致したとの ことである。その結果、地方厚生局や各県の指 導官にどのような連絡・通知が行われているのかを確認して、お教えいただきたい。

(4)新規個別指導や個別指導における指導医の委嘱について(福岡県)

指導は行政の責任において行われるものであ り、指導医療官が不足している県においては非 常勤医師等の委嘱により対応することとなって いる。福岡県においては社会保険事務局当時、 新規個別指導については委嘱を受けた会員が指 導にあたっていたが、厚生局に業務が移管され てからは委嘱はなされていない。各県の指導医 の委嘱現状をお教えいただきたい。又、日医に は全国の状況及び指導医の委嘱についての考え 方を伺いたい。

上記の4 題については一括協議された。

<各県の回答状況>

(1)(2)について。各県とも提案県と同様に 「指導大綱」、「監査要綱」を改正し、個別指導の 選定理由の公開、平均点数の算出方法及び病 院・診療所の診療科区分の見直し等が必要だが、 見直されることで医療機関にとってより厳しい 指導が課されないよう注視することが重要であ るとの意見であった。また新規個別指導につい ては、教育的指導として返還が伴わないよう日 医から強く要望して欲しいとの意見が出された。

(3)について。日医会長と厚労省とのトッ プ間で合意されたとしても、通知が末端までは 行き届いてないことから、確実に都道府県の担 当者レベルまで周知されるよう意見が出された。

(4)について。各県の状況は次のとおり。
 佐賀県…医師会を通じての委嘱はなし。
 宮崎県…医師会を通じての委嘱はなし。
 沖縄県…医師会を通じての委嘱はなし。
 大分県…特殊科目(眼科、耳鼻科、産婦人科)のみ、医師会より委嘱。
 長崎県…医師会より委嘱。
 熊本県…医師会を通じての委嘱はなし。
 鹿児島県…医師会会員ではあるが、医師会を通じての委嘱はなし。

□日医・鈴木常任理事コメント

指導大綱、監査要項の件については、去る1 月18 日に開催された都道府県医師会長会議に おいても協議された事項である。

厚生労働省との折衝の方針としては、まず運 用で見直し出来るところから見直そうというこ とで議論を開始している。今、話が出ているの は、レセプト1 件当たりの平均点数が上位の医 療機関が対象となっている集団的個別指導の類 型区分の見直しのほか、集団的個別指導を医師 会と行政との共催としてはどうか(例えば午前 中は医師会からピアレビューを行い、午後から は行政による指導を行う等)、集団的個別指導 後にも継続して診療報酬が高点数の医療機関が 対象となっている個別指導への連動の改善等つ いて交渉をしている。

厚生労働省自身も昨年9 月に指導に関する不 祥事があり、再発防止策が必要となったので、 見直しには前向きな姿勢である。その不祥事に 対して“指導・監査の検証及び再発防止に関す る検討チーム”が作られ、12 月に中間とりま とめの報告書を公表しているが、その中で「今 回の事例を踏まえ指導大綱・監査要項等の体系 に基づき行われている指導監査業務について、 不正行為の発生を防止できるものとなっている かという観点から確認を行う。また、現在の体 系が平成7 年12 月に定められ、時間が経過し 保険診療を巡る情勢の変化に対応するものとな っていないという指摘があることや、実施状況 に差が生じている現状を踏まえ、指導対象の選 定方法等そのあり方について見直しを行う。」 との文言が入っている。

これは指導大綱や監査要項の改正に限定され たものではなく、様々な問題点についてまず日 医と厚生労働省の間で議論を行い、運用面での 対応が可能かどうかを含め検討を進めることと 理解をしている。厚生労働省がこのような中間 とりまとめを公表した以上、日医としてもまず 方針に沿って折衝していきたいと考えている。 まずは運用の見直しということであるが、もち ろん指導は医療費削減のためではなく、保険診 療を理解していただくことを目的に行われるべ きものであるので、これからもその折衝はして いく。

先ほどお話のあった平均点数についてである が、近畿厚生局管内ではホームページ上で公開 されており個々の医療機関から問い合わせる と、どの区分で選定されたかが分かるようにな っているが、計算式等については非公開となっ ている。また選定委員会についても、医師が委 員として入っているところもあるようだが、基 本的には入れたくないという方針のようで、医 師が入った場合には選定は別のところで決めら れてしまい、選定委員会そのものが形骸化され ている現状である。

医科の指導医療官については、全国的に欠員 気味のようである。全ての都道府県に確認をし たわけではないが、現時点で10 数カ所の県にお いて厚生局から医師会へ依頼が来ているようで ある。人材確保のためにも都道府県においては 積極的に候補者の相談へご協力をお願いしたい。

(5)入院患者の他医療機関受診の取扱い(福岡県)

この件に関しては、4 月の改定後に早急な是 正を求める声が多くの会員より起こり、九医連 では5 月22 日付けで日医に是正を求める要望 書を提出。その後、6 月4 日付け厚労省通知に より出来高病棟の専門的薬剤の投薬のみ認めら れることになった。9 月の九医連医療保険対策 協議会でも5 つの県からこの件に関して更に改 善を求める提案がなされ、早急に是正されるべ きとの意見が大半であった。その後の、この件 に関する日医の中医協等での対応をご教授願い たい。

(6)日医における次期診療報酬改定に向けた取り組みについて(鹿児島県)

本県では、入院中の患者の他医療機関の受診 について、いまだに医療機関からの照会が絶え ない。

特に、外来受診先の医療機関から投薬にかかる照会が多く、「一般病棟入院中と聞いて処方 せんを発行したが、翌日から療養病棟に入院し ていた」「療養病棟入院基本料算定患者なので、 入院先に連絡したら、保険請求するように言わ れた」等、医療機関間のトラブルにまで発展し かねないものまである。

前回の協議会において、九州各県から提案が 多かった地域医療貢献加算や、入院中の患者の 他医療機関受診の見直しの問題等について、鈴 木日医常任理事から、日医「基本診療料のあり 方に関するプロジェクト委員会」の中で、次期 改定に向けて議論を深めていく旨回答を頂いた ところであるが、同委員会におけるその後の検 討内容をお聞かせ頂きたい。

<各県の回答状況>

(5)(6)については、各県からも提案県と 同様、早急に是正すべきとの意見が出された。

□日医・鈴木常任理事コメント

前回の各種協議会では、中医協において病院 内の複数科受診の問題も併せてしっかり検討し ていくとご報告したところである。

その後10 月27 日の中医協において、日本病 院団体協議会(日病協)が実施した“同医療機 関における同一日の複数診療科の受診状況調査 結果”が報告されている。

この調査は日病協に加盟している病院から無 作為抽出した2,529 の病院を対象に実施され、 674 病院から回答があり回答率は26.7 %であ った。その結果として初・再診料が算定できな かった患者の割合は、病床数が多いほどその割 合が大きいことが分かった。200 床未満8.7 %、 200 〜 400 床未満10.5 %、400 床以上11.8 %、 全体の平均では11.3 %であった。

また、同一日の複数診療科受診の状況をみる と、患者1 人当たりの受診科数は200 床未満 1.09 科、200 床以上は400 床以上も含めて1.1 科となっている。今回は調査を基に複数診療科 受診の場合でも再診料を算定出来るようにした 場合の影響額、年間医療費を推計し出してきている。2009 年の病院報告の病院規模別の外来 患者数割合を基にした推計では3 7 3 億円、 2009 年医療施設動態調査報告の病床数に基づ いた推計では446 億円の数字まで出しており、 全日病の西沢委員からは「日病協としてはこれ ぐらいの額であれば複数診療科受診の際には 初・再診料の算定を是非認めて頂きたいとの意 見が多かった」との発言があった。これに対 し、私からは「大病院ほど、収入に占める入院 割合は高く、病院全体での初・再診料の算定制 限の影響は低いのではないか。一方、中小病院 や有床診療所は入院中の患者の他医療機関受診 の際の算定制限の問題もある。これは小規模施 設にとっては不利なものであり、この内容も併 せて見直して欲しい」と要望している。本件に ついては今月になって鈴木医療課長があるメデ ィアの取材で、必要性にはある程度理解を示し つつも、一定の診療機能のある病院に財源を回 すことになるので、全体の財源を睨みながら慎 重に議論を進めるとの考えを示している。

入院中の患者の他医療機関の受診について は、昨年6 月に出来高病棟の薬剤の費用につい て是正されてから、表面的な改善については進 展が見られない状況である。ごく最近になって 同じような問題を抱える日本精神科病院協会と 全国有床診療所連絡協議会が一緒になって入院 の影響額を含めた調査を行うような動きがある が、複数科受診問題では具体的な金額まで出し て要望していることから、他医療機関を受診し た場合の影響額についても同様に算出する必要 があると考える。

(6)の日医の次期診療報酬改定の取り組み についてであるが、次期診療報酬改定の要望事 項の取り纏めについては日医の社会保険診療報 酬検討委員会で行うことになっている。特に基 本診療料のあり方と医療と介護の同時改定につ いては2 つのプロジェクト委員会を立ち上げ、 検討をしている。2 つの委員会は答申書を纏め るというのではなく、中医協との懸案事項につ いて対応することで設置をしている。基本診療 料に関する中医協の審議の状況はご存じのとおり、診療側は基本診療料の中に各種コストがど のように評価されているのか整理・明確化する 為にコスト調査分科会が実施した医療機関の部 門別収支に関する調査の調査結果を再集計し て、各種コストの具体的な金額の内訳に関する 調査を実施すべきと提案している。コスト調査 分科会の調査というのはDPC 病院のデータの みを使って行うものである為、診療所のコスト の把握についてはプロジェクト委員会の方から 日医で調査・分析を行って欲しいとの要請があ り、執行部で検討した結果、いくつかの診療所 でパイロットスタディを実施して、その結果か ら今後の対応を検討することになった。現在、 茨城県と京都府の診療所にお願いをして調査を 実施しているところである。

コスト調査分科会は1 月21 日に開催され、 専門家によるワーキンググループでの検討の 後、4 月の中医協総会で結果を報告する予定と 聞いている。前回改定では入院と外来の改定率 の枠が決められた上に、様々な改定項目が決め られた後で財源がないという理由で再診料が 69 点に統一されたしまった結果があるので、次 回は簡単に引下げにならないよう診療側はコス ト分析を主張したわけだが、どのような報告と なるか今から予測することは難しい。しかしな がらこれまで議論されてこなかったコスト分析 やコストに基づいた診療報酬について根本的な 話をまさに現在しているところである。

地域医療貢献加算については評価する声や、 廃止して再診料に含めた方がよい等、様々なご 意見を頂いている。特に名称が不評であるが、 もともとは“かかりつけ医加算”という名称だ ったものを“かかりつけ医”を改定の最後の議 論に出してくるのはいかがなものかということ で、その場の議論の中で付けた名称なので、深 い意味はない。今となれば“時間外対応加算” 等の名称のほうがよかったと考える。いずれに しても加算ではなく基本診療料そのものの評価 をしていくべきと考えているが、長年の医療費 抑制政策のもとで、もとの点数ではなく加算で 配分してきたという経緯があることも踏まえ て、どこかを上げるかわりにどこかを下げるな どという、いわゆる財政中立では限界であるの で、とにかく財源を確保していただき、2 期連 続のプラス改定となるように交渉しているとこ ろである。

<日医コメントに対する追加意見・質疑応答>

■長崎県:次回は慢性期医療に関して見直され ると言われているが、実際はどのよう状況か。

□鈴木常任理事:医療は急性期の大病院だけで 成り立っているわけではなく、連携先が成り立 たないと急性期も成り立たない、つまりバラン スが大事であると我々は繰り返し申し上げて いる。幸い“在宅医療の推進”との大きな方 針もあるので、慢性期の入院や診療所、有床 診療所等の評価をして欲しいと申し入れてい るので、認識はしていただいていると思う。

(7)経皮的冠動脈形成術(PCI)に係わる医 療材料の保険審査について(佐賀県)

冠動脈疾患に対して経皮的冠動脈形成術 (PCI)が多く施行されるようになりました。

使用するシース、ガイディングカテーテル、 ガイドワイヤー、バルーンステントなど保険審 査で査定される件数が増加しています。他県で は、いかがでしょうか。

例えば、

  • 1)多枝疾患では複数本のステントが必要で す。全て認められていますか?
  • 2)ファインクロス・クルセード等のマイクロ カテーテルは、慢性完全閉塞部位以外でも 認められていますか?
  • 3)PCI 不成功例の取扱いはいかがですか?
  • 4)急性閉塞などPCI 後、1 週以内の再PCIの取扱いはどうされていますか?

<各県の回答状況>

各県における取扱いの状況が報告されたが、 各県とも国保・社保間で異なっており、また審 査会の審査員によっても取扱いが異なる場合も あるので、統一することは難しく各県から報告された状況を参考にしていただきたいとの意見 が出された。

(8)柔道整復師の療養費問題について(長崎県)

柔道整復師の療養費が3,300 億円を超え、急 速に伸びている。

そもそも柔道整復師の療養費の適応疾患は骨 折、脱臼、打撲、捻挫の急性期疾患であり、骨 折、脱臼には応急手当を除き、医師の同意が必 要とされている。さらに、はり・灸施術におい ては、同施術と保険診療は並行して行えないル ールとなっている。多額の療養費は適応疾患以 外の請求、あるいは回数の水増しなど、不正請 求が多く含まれていると言われている。

医療財源が逼迫する中、柔道整復師の多額の 療養費はもはや看過できない問題である。その 対策として、指導、監査の厳格化や養成施設の 数量規制、受療委任制度の廃止、医療機関や国 民への周知・広報などがあるが、対策が進んで いるとは思えない。

この問題に対する各県および日医のお考えを お聞きしたい。

(9)療養費同意書について(熊本県)

最近、あん摩・マッサージ、はり及びきゅう 等の施術業者が著しく増加しており、医療機関 に執拗に「同意書」を求めてくる場合がある。

「療養担当規則第17 条」にあるように、「み だりに同意を与えてはならない」と郡市医師会 を通じて会員へ広報しているが、その対応に苦 慮している医療機関も多いと考えられる。

熊本県では、定期的に九州厚生局熊本事務所 と医療保険打合せを行っているが、厚生局自体 もこの施術業者の実態については十分に把握し ていない。施術業者が医療保険を適応する限り においては、その開設状況、レセプトの点検や その電子化、個別指導等医療機関と同様の対応 が行われるべきである。

九州各県の実情とご意見、日医の見解をお伺 いしたい。

(10)はり・灸及びあん摩・マッサージ・指 圧師の施術に係る医師の同意書、診断書 について(沖縄県)

はり・灸及びあん摩・マッサージ・指圧師等 については、当該施術を必要とする症例や適応 症については療養費として保険給付を行う対象 とされており、給付の適否の判断にあたっては 医師の同意書又は診断書の添付が必要となって いる。療養担当規則では、施術の同意について 「保険医は、患者の疾病又は負傷が自己の専門 外にわたるものであるという理由によって、み だりに、施術業者への施術を受けさせることに 同意を与えてはならない」とあるが、よく来ら れる患者さんから同意書の発行を求められた場 合、「専門外だから」として無下に断ることも できず対応に苦慮している医療機関が見受けら れる。

本県では、同意書の交付を求められた場合に は、施術業者やその施術方法等を確認し、その 内容が不明である場合には、同意書の交付を控 えるよう会員に指導しているが、各県ではどの ように対応されているのかご教示いただきたい。

上記の3 題については一括協議された。

<各県の回答状況>

各県からは柔道整復並びにはり・きゅう、あ んま・マッサージ等への同意や同意書の交付に ついては、療養担当規則にもあるように安易に 交付するものではなく、出来れは専門科を受診 していただくよう患者さんの理解を求めるとと もに、施術業者に対しては医療機関と同様、厳 しい行政指導が実施されるべきであるとの意見 が出された。

□日医・鈴木常任理事コメント

この問題は全国的にも問題となっている。厚 生労働省でも非常に問題意識を持っており、対 策をいろいろと検討しているようである。

昨年の5 月31 日の厚生労働省の行政事業レ ビューの中で、医療給付費の適正化が取り上げられており、論点として保険医療機関への指 導・監査の強化、柔道整復・療養費への審査・ 監査の強化により医療給付費が縮減できるので はないかという指摘がなされた。指導・監査の 強化について日医は、6 月9 日の定例記者会見 において誤った指導が是正されるよう強く求め るとともに、地域医療を守り、再生させるとい う原点に立ち返るべきと主張したところである が、柔道整復・療養費については特にコメント していない。行政事業レビューの具体的な論点 の中には柔道整復・療養費について「多部位請 求の多い施術所に対し指導・監査を重点的に行 うため、保険者の審査情報と指導監査の連携を 密にすべき」とあり、これについては日医とし ても同様の見解である。また、これを受けて柔 道整復・療養費の算定基準の見直しが昨年6 月 より実施されている。通常は医科の外来の改定 率に連動して行われており、医科の外来の改定 は+ 0.31 %であったが、今回の柔道整復の方 は± 0 %、はり・きゅう、マッサージの方は+ 0.15 %と大変厳しいものとなった。このような ことからも厚生労働省が問題意識を持っている ということが具体的に表れていると考えている。

本件については、日医が強く主張するだけで 解決するという問題ではなく、日医としては厚 生労働省に働きかけて厚生労働省による是正に しなければならないと考えている。今や柔道整 復の療養費は国民医療費の1 %にも及ぶ額にな っているが、法的資格や職務責任における法的 規制においても医師による医業とは全く異なる ものであり、そもそも国民医療費に計上される こと自体が適切ではないと考えている。中医協 においても柔道整復の医療費がどこにはいって いるのかは明らかにされていない。療養費の金 額は年々大きくなっており、見過ごせない問題 となっているので、日医としては引き続き厚生 労働省に強く働きかけていくつもりである。

<日医コメントに対する追加意見・質疑応答>

■長崎県:柔道整復師で開業される方が増えて いる。今の勢いで増えてくれば、医療費は増 えてくると思われるが、柔整師養成学校等の 数をコントロールしようとする国の考えはな いのか。

□鈴木常任理事:日医としても養成学校の数の コントメールは重要だと考えているが、日医 が要望してもすんなり通るものとは思えな い。先生のおっしゃるとおりこのままだと医 療費の増額に繋がっていくと思われるので、 そうなればいろんな方向から問題視する声が 上がってくると思われる。

(11)長期処方加算について(長崎県)

患者側の要求があり、外来での長期処方例が 増えている。通院が困難な高齢者が増えている ことを考慮すると、安定した病状の慢性疾患患 者に対する長期処方を必ずしも否定するもので はない。医療機関にとっても、一日当たりの外 来患者数が減ることにより、余裕をもって診察 できるという利点がある。また症状の急変時に はいつでも受診可能なので、患者の病状悪化に つながるとも思えない。

このように患者、医療機関双方にとって利点 があると思われる長期処方だが、問題は、長期 処方例の増加による受診回数の減少が診療所の 経営悪化の主な要因の一つとなっていることであ る。現在、診療所および200 床以下の医療機関 に対して長期処方加算として65 点が算定されて いる。国に同加算の大幅な増額を要求すべきと 考えるが、各県および日医のご意見を伺いたい。

<各県の回答状況>

各県とも概ね提案県と同様な意見であった が、「長期処方は慢性疾患患者の一部には容認 できるが、適切な外来医療を提供できるか否か は問題点が多いと考えられる。したがって、長 期処方加算の増点はさらに長期間の投薬を助長 させる危険性があり、むしろ慢性疾患指導管理 料の引き上げや長期投薬の上限設定、該当する 薬剤を指定するなどの医学的見地から、この長 期処方を規制する方向性が望ましい」、「このよ うな変動する加算点数ではなく、診察料本体について、それにかかるコストをも明確にし、正 確な評価をするべき」、「加算の大幅な増額を求 めることは医師会が長期処方を認めたと誤解を 招く恐れがある」等の意見も出された。

□日医・鈴木常任理事コメント

日医は長期処方に関するアンケートを実施し たが、その結果を12 月8 日の定例記者会見で 公表したところである。アンケート調査のデー タについては、役員のいる都道府県ということ で北海道、茨城、群馬、千葉、広島、福岡のパ イロットスタディとなっている。

今ご指摘のあったように、「長期処方により 病状が悪化している」との個別の事由が日医に かなりの寄せられたことから調査を実施したも ので、調査期間は昨年9 月30 日から11 月5 日 であった。有効回答実数は病院が2,820 名・有 効回答率35.3 %、診療所医師が1,395 名・有 効回答率が43.6 %で、合計4,215 人であった。 このうち外来診療を行っている医師は3,904 人 であった。調査の結果から明らかになったこと を整理すると、最も多い処方期間が5 週以上と いう先生方が3 割近くあり、処方が長期化して いることが分かった。また慢性疾患の患者に限 ると最も多い処方期間が8 週以上であるという 医師が半数以上いた。

比較的長期(5 週以上)により患者の容体の 変化に遅れたことがある医師が2 割近くであっ た。高齢者は長期処方中に容体が変化しても遠 慮して次回の診察まで我慢してしまうとの報告 もあった。さらに病院医師の中には、外来患者 を少なくしてじっくり診療する為との理由もあ った。

これに基づく長期処方のあり方に関する日医 の見解であるが、慢性疾患等の患者に対する処 方期間が長期化したことで重篤化したことや、 病状が安定しているという理由の一方で、新た な疾病の発症や併発している疾病の重症化に気 付くことが恐れることがあると指摘をした。さ らに患者の要望であっても患者の安全は最優先 されなければならないということから、医師の 責務として適切な処方期間を確保するよう自ら 務めると共に、中医協等においてしっかりと調 査をし、実態を正確に把握した上で、例えば長 期処方を法的に規制すべきかどうか等も含めて しっかり議論をし、方向性を決定すべきとして いる。

また、病院の医師が忙しい為に長期処方を頻 発している恐れがある為、このようなことを解 決するには大病院の外来と診療所のあり方、つ まり機能分化・連携の議論を深める必要もある のではと考えている。

そもそも薬の投与日数については、実は平成 14 年度の診療報酬改定において日医の社会保 険診療報酬検討委員会の要望を受け、例外を除 いては“基本的に医師の裁量とする” となっ た経緯がある。これにより受診回数が減り、特 定疾患療養管理料等の算定も減って、診療所や 中小病院の経営悪化の原因の一つとなっている と理解している。ご指摘の長期加算65 点につ いては処方料・処方せん料の加算で28 日以上 の処方を行った場合の加算点数であるが、患者 の容体が悪化しているような無責任な超長期処 方は是正されるべきであり、そうでない場合は 医師の処方責任の重さや経営悪化の改善の為に もこの点数の引き上げを含め、何らかの対応が 必要であると考えている。前回の改定は急性期 の大病院に手厚く配分されたが、次回の改定は 慢性期、あるいは在宅の充実を通して、診療所 や中小病院等を中心とした改定にすべきと考え ているので、今後とも中医協等を通じ働きかけ ていくつもりである。

(12)認知症の簡易機能検査を診療報酬上で評価を(大分県)

認知症の早期発見、早期診断は、その後の医 療対応も含めた迅速な対処が可能となるため、 非常に重要である。さらに今後の人口構造の推 移から高齢者全体に占める後期高齢者の割合が 増加するため、何らかの支援等を必要とする認 知症の高齢者数も増加の一途をたどることにな る。そのような状況の中、特にかかりつけの医師には、日常診療の気づきの中で、認知症に係 る簡易検査等を実施し、認知症を早期に発見す る機会は多く存在すると考えられる。

一方、この簡易検査には、本人への質問また は家族等からの聞き取りが必要で、手間がかか るが、現時点で診療報酬上の特化した評価は行 われてはいない。

認知症対策の観点からも、次期診療報酬改定 での評価を要望致したく、各県のご意見と日医 の見解をお伺いしたい。

【代表的なアセスメントツール】

  • ・改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS−R)
  • ・ミニメンタルステート検査(MMSE)
  • ・Functinal Assessment Saging(FAST)
  • ・初期認知症徴候観察リスト(OLD)

<各県の回答状況>

各県からは、提案県と同様に診療報酬上の評 価が重要との意見が出された。本県としても診 療報酬による評価はあるに越したことはない が、それにより何らかの縛りが設けられたり、 必要性が乏しいのにルーチンとして行われるこ とで医療費の圧迫に繋がることも考えられることから、現在の臨床心理・神経心理検査との整 合性も含め専門団体の意見を十分に踏まえた上 で検討すべきであるとして意見を出した。

<追加意見>

■熊本県:基本的には初期対応する内科医のス テップアップが必要である。また、検討には 時間を要するので、特定疾患療養管理料の対 象病名に含めてもらうことが近道だと考える。

□日医・鈴木常任理事コメント

ご指摘のように認知症も早期発見、早期診断 が重要である。検査だけを評価するのではなく 生活管理もした場合には指導管理料とすること も考えられる。この分野は中医協では慢性期医 療分科会において認知症に関する診療報酬等が 検討されることになるが、熊本県よりご指摘の あった特定疾患療養管理料に含めることが近道 だろうと私も考えている。

日医しても早期発見、早期診断、早期治療の 評価について我が国における高齢化社会に向け て重要な点であるので、これからも働きかけて いきたいと考えている。

印象記

平安明

理事 平安 明

平成23 年1 月29 日鹿児島県城山観光ホテルにて開催された平成22 年度第2 回各種協議会医療 保険対策協議会に参加したので報告する。

医療保険対策協議会では全部で12 題の協議事項があった。厚生局の指導・監査、入院患者の他 科受診、療養費問題、については複数県から提案があり一括協議された。

指導・監査については厚生局に移管されてからどのように標準化されていくのか未だに見えて こない。指導大綱、監査要綱についてはまず運用面で見直しできるところから見直すとの方針で 厚労省と折衝していくようである。とにかく医療機関にとって謂れのない厳しい指導が行われる ことは避けていただくように改善してほしい。

療養費問題に関する昨今の医療費の伸びは既に看過できなくなっており、適正な請求が行われているのかのチェック等様々な問題が指摘された。政治的な対応を含め難しい点もあるが、まず は議論の場に挙げていくことが次に必要な対策に繋がるので、この問題は継続して取り上げてい くべきだと感じた。

その他の協議事項に関しては報告書に詳細が記載されているので目を通していただきたい。こ の一年は次期改定のために重要な議論が繰り返されると思われ、会員の皆さんにも是非関心を持 って日医や厚労省、中医協の動きを見ていただきたいと思う。